日程 : 2019.9.15(日) 日帰り
ルート: 上高地・帝国ホテル → 西穂山荘 → 西穂高岳(ピストン)
天候 : 晴れ 時々 ガス
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天気や都合でまともに山に登れなかった夏が過ぎて、いつの間にか秋の足音が大きくなっていた9月の3連休。
このまま夏を終わらせるわけにはいかないと思い、駆け込みで西穂高岳へ。
上高地から穂高連峰を見上げた時、「これが西穂高岳」とちゃんと同定する自信はなかったりする。
奥穂高と吊尾根が一番目立って、その左側に続く、細かくギザギザとした稜線。
その中に西穂高はあるわけだが、その周辺は見た目通り、険しい岩稜に囲まれている。
それ故、初心者は安易に近づくべきでないとされ、僕にも「挑戦」と言える部類になるかな。
ただ、登り終えて思うのは、岩場歩きの基本ができれば、恐れる必要はない、ということ。
確かにそれなりの緊張感を味わいながらの山行になった。
しかし、それ以上に、目の前に広がる穂高が壮大過ぎて、そのイメージが強く残っている。
険しくも美しかった西穂高岳の稜線。
そのレポートをスタートしよう。
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西穂高岳の登山で最も一般的なのは、新穂高ロープウェイを利用するルートである。
しかし、3連休のロープウェイの混雑は相当なものになるに違いない。
そこで計画したのは、“敢えて”上高地から登り上げるプラン。
600m以上も余計に登る必要はあるが、時間的な制約(経費節約も…?)もなく、ぜひおすすめしたい。
上高地へシャトルバスで入山となるので、今回のアクセスは沢渡。
平湯でもいいのだが、こちらの方が20分、始発(5:00)が早いので。
5:30 上高地帝国ホテル(登山開始)
西穂高岳の登山口に最寄りとなるバス停は帝国ホテル前である。
バスは満員に近い状態だったが、ここで降りたのは僕だけだった。
お洒落すぎる帝国ホテルの外観。
いつか泊まってみたいが、山を引退してからかな?
帝国ホテルをスタートして、田代橋を渡る。
天気予報だと朝から快晴のはずだったが、上の方はガスっているようだ…。
そんな不安を吹き飛ばすべく、今回から山行の相棒となる「てるてる坊主」を紹介しよう。
この夏、映画「天気の子」に感化されたところ、会社の山友が作ってくれたものだ。
なかなかのクオリティの高さで、かなり気に入っている。
ありがたく使わせてもらうが、効力のほどはどうだろう?(笑)
いつもどおりに清らかな梓川の流れ。
この透明度はいつ見ても美しい。
田代橋を過ぎて、突き当たりまで進むと「西穂高岳登山口」。
なんだかお寺の門みたいな雰囲気。
登山口から西穂山荘までのコースタイムは3:30となっている。
しかし、ネットの山行記録を参考にすると、だいたい2時間ぐらいで登れてしまうようだ。
そうすると、ロープウェイが7時始発(夏期週末の早朝運転)なので、混雑する前に西穂高アタックできる、という算段になる。
これが上高地出発を推奨したい、もうひとつの理由である。
コースも登り一辺倒ではなく、適度に緩急があるせいか、とても登りやすい印象。
基本的には、西穂山荘までずっと樹林帯の中だが、一瞬だけ稜線が見えた。
あれ、いつの間にか晴れてきている。
早くも、てるてる坊主効果か?
順調に高度を稼いで、中間点ぐらいにある水場の「宝水」。
せっかくなので、家から持ってきた水道水と入れ替える。
全体の水量は結構あったが、上手く汲めるところがなく、そこそこ時間が掛かった。
傾斜がなだらかになったら焼岳への分岐となり、そこからもうひと登りで西穂山荘となる。
木々の間から焼岳が見えるようになると、山荘は目前。
7:50 西穂山荘
登山口の門から2時間と少しで西穂山荘に到着した。
事前情報どおりで、体力の消費もあまりなく、ここまですこぶる順調である。
この時間だと山荘の前も空いていた。(ちなみに下山時はすごい混雑だった…)
ちゃんと確認はしなかったけど、おそらくロープウェイ組に先着できていると思う。
さて、いよいよ稜線を辿って、西穂高岳に向かう。
少し登っただけで、背後には焼岳と乗鞍岳のパノラマが広がって来る。
笠ヶ岳も登場。
ハイマツの茂る稜線の先に、西穂高の岩稜たちが見えて来た。
いよいよ始まるぞ、といった感じで、なんだか気持ちが高揚してくるのを感じる。
登るごとに高まって行く"箱庭感"がいい。
この穏やかな道の先に、どんな険しい風景が待っているのか、楽しみで仕方ない。
西穂山荘から10分ちょっとも登れば、西穂丸山という小ピークに到着する。
ここは笠ヶ岳の最高の展望台である。
てるてる坊主でちょっと遊んでみる。
朝のガスからすっかりいい天気になっており、初陣として十分な働きをしてくれた(笑)
ハイマツの緑が眩しいほどに美しいが、足元はガレガレで少し登りづらい区間を通過。
ガレ場の登りから振り返って。
いよいよ本格的な岩稜地帯が近づいて来た。
右の平らになっているピークが西穂独標である。
西穂独標をアップで。
ひと際、目立っているのがピラミッドピークである。
目指す主峰は一番奥のピークと思われる。
独標が近くなると岩場が登場するが、このあたりは難しい場面はまだない。
独標に登り上げる岩壁は、距離は短いが、なかなかハードだった。
ただし、しっかりとした鎖も設置されているので、岩場初心者でも進退窮まるといったような事態には陥らないだろう。
9:00 西穂独標
山荘を出発してからちょうど1時間で西穂独標に到着。
ここは11峰ということで、主峰の1峰までカウントダウンが始まる。
独標はさすがにいい眺望である。
まず目に飛び込むのが、これから行く先の険しい稜線。
登山道というよりは、稜線上の岩場がルートになっているように見える。
ちょっと緊張感が高まる。
核心部に進む前に、眺望をぐるりと一周、紹介しよう。
奥穂高岳から前穂高岳への吊尾根。
これこそが穂高を代表する風景といえるだろう。
眼下の上高地と霞沢岳。
背後には南アルプスや中央アルプスも並んでいる。
南アルプスが勢揃い。
甲斐駒、北岳から光岳ぐらいまで見えているのかな?
甲斐駒の左側には富士山もしっかりと見える。
焼岳と乗鞍岳は安定の配置というか、本当にバランスの取れた風景である。
少し湧いてきた雲もいいアクセントになっている。
西側は遠くに白山。
夏山は一度、登っているので、今度は紅葉の時期に訪れてみたい。
そして、大きな存在感を持っているのが笠ヶ岳である。
きれいな縞々の地層がなんだか興味深い。
独標の先、最初の下りを上から見下ろしたところ。
写真で見ると、垂直か!って感じだが、実際に現場に立つともっと余裕はある。
ただ、緊張感は嫌でも高まっていく。
それでは、いざ、核心部に向かおう。
まずは正面のピラミッドピークを目指す。
岩稜に取り付く先行者。
一見、不安定そうに見える足元だが、どの岩も意外にしっかりとしていて、安心感があった。
こんな感じで、各ピークに番号が付いているが、すべての写真を撮ることは放棄している。
そこまでの余裕はなかったので…。
ルートはずっと息が抜けないというわけではなく、危険が少ない箇所も多い。
こういう区間こそ、特に注意なのかも知れないが。
ここがコース上、最も緊張を強いられた場所である。
写真は通過した後、振り返って撮影している。
ピンクのウエアの登山者が下ろうとしている部分が、なかなか怖かった。
まずまずの高度感があり、後向きで足の置き場がわかりづらかった。
独標から20分ほどで、ピラミッドピークに到達。
ここは広くないながらも平場があるので、一息つくことができる。
美しい吊尾根を眺めながら、息を整える。
続きを進む。
ここまで来ると、主峰がしっかりと目立つようになる。
先行の登山者が歩いているところを見ると…、やはり落ちたら一溜まりもないだろう。
気を引き締めて行こう。
7峰を通過。
ここは鎖が付いているが、鎖場はそんなに多くあるわけではない。
穏やかな水平移動区間は風景を楽しみながら。
奥に黒部五郎岳や薬師岳などの北アルプス最深部が見える。
正面の鋭峰は左側から巻いて、どっしりとした4峰・チャンピオンピークへ。
振り返って、越えてきたギザギザの稜線。
チャンピオンピークへ到達。
ここまで来ると、ゴールまではもうひと踏ん張り。
西穂高岳・主峰を大きく捕らえた。
カウントダウンも"2"まで来て、さあ、ラストの登り。
ここまでは小刻みにアップダウンを繰り返して来たが、主峰は単体でも厳しい登りとなる。
シンドイ登りなので、笠ヶ岳の稜線を眺めて小休止。
ゴールは本当に目前まで迫っている。
主峰直下の登りは、とにかく急だった。
一枚岩っぽくなっているところもあるので、しっかりとルート選択をしながら登る。
最後の急登をクリアすれば、エンディングは穏やかと言ってもいい。
ここまで来ればもう安心である。
一歩一歩を噛みしめるように最後のピークへ。
10:40 西穂高岳
そして辿り着いた西穂高岳・主峰。
独標からは1時間20分での登頂だったが、緊張と集中のせいか、もっと長い時間に感じた。
ただ、意外とあっさり登れてしまえた感じがする。
それでも達成感は半端ない。
この時間の頂上は数名の登山者がいるのみだった。
ロープウェイ組には先着、西穂山荘に前泊した組は下山を始めているところで、ちょうどいい時間に登頂できたようだ。
張り詰めていた気持ちをクールダウンするように、周囲の大眺望を見渡す。
まずは、目の前に大きく奥穂高岳が鎮座している。
登っている時は完全にクリアだったが、直前に岳沢からガスが湧いて来てしまったようだ。
それでも、視界を遮るほどではなく、穂高の壮大な風景が大きく展開されている。
この先は上級者のみ踏み入ることが許される世界だ。
奥穂高岳、涸沢岳、そして槍ヶ岳。
笠ヶ岳と双六岳に繋がる稜線。
笠ヶ岳のアップ。
新穂高から登り上げる笠新道は噂にたがわぬ急登であることが、容易に見て取れる。
それでもぜひ登ってみたい山である。
黒部五郎岳。
この夏、計画したけど、叶わなかったので、来シーズンはぜひ行きたい。
重なるように鷲羽岳と水晶岳。
そして、槍ヶ岳は無条件に格好いい。
ガスが絡む奥穂高岳も格好いい。
ちなみにジャンダルムってどれなのか、こちら側だといまいち分からない…。
ガスの動きは速く、吊尾根がまた見えて来た。
手前の登山者が見えるピークは"P1"という名前で、あそこまで行ってみれば良かったな。
30分ほどゆっくり眺めを楽しんでいると、だいぶピークが混雑してきた。
そろそろ下山に掛かろう。
当たり前だが、帰りもあのギザギザを越えて行かなければならない。
下り初めはザレ気味の箇所があって、少し嫌らしい。
アップダウンはあるが、帰りは下り基調なので、行きよりだいぶ楽に感じる。
ただ、スリップしないように慎重に進む。
遠ざかる西穂高岳。
ピラミッドピークに立つ人影が、なんとも画になる。
ここから見上げると、西穂高岳の存在感はすごい。
ピラミッドピークからの下り。
終始、登って来る登山者とのすれ違いが多いので、気を遣う。
独標まで戻ってくると、狭いピークにはすごい登山者の数。
独標まで戻って来ると山岳パトロールが交通整理していた。
恐らくピークが人で溢れないようにしているのだろう。
少し休憩して、西穂山荘へ向けて下りの続きを始める。
さよなら、西穂高の稜線。
ここのザレザレの下りは、足の疲れを助長していやらしい…。
ガスも上がって来て、正面の焼岳と乗鞍岳は見えなくなってしまった。
あちこちで渋滞気味だったせいで、西穂高岳・主峰から西穂山荘まで2時間20分掛かった。
山荘前は大混雑である。
独標で折り返す人も多いが、静かな山頂を楽しめたのは、今回のプランニングによるところも大きいかなと。
あとは上高地に下るだけだが、これが修行の時間だった。
足がなかなかの疲労感で、階段がキツい。
ヘトヘトになりそうな頃、上高地に降り立った。
帝国ホテル前のバス停だと乗れる保証はないので、気力を絞ってバスターミナルへ向かう。
途中、梓川沿いから見上げる穂高の山々。
西穂も少しだけ頭が見えている。
そして、西穂山荘から2時間と少しで上高地のバスターミナルにゴール。
無事下山のご褒美にサイダーを。
このあと、バス待ちがビックリするほどの長蛇の列で、おそるべき3連休…。
河童橋まで続いてるんじゃないかと思ってしまったが、実際には梓川に出る少し手前まで。
まだまだ列は伸びる感じだった。
それでもバンバン臨時便を出してくれるおかげで、40分待ち程度で乗ることができた。
西穂高岳の稜線は険しく、そして美しく。
独標から先は怖さを感じる箇所もあったが、足場は安定していて、それほど苦労はなかった。
行く前は結構、緊張していたけど、それぐらいが丁度いいだろう。
戻って来た時は、気分的な疲れも確かにあったが、充実感が上回っていた。
この次は雪山シーズンに訪れてみたいが、でもまあ、独標までかな。
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