稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

常念岳 - 蝶ヶ岳からの縦走、穂高と槍を真横に眺めながら(Day2)

<1日目の山行日記> 

 

2日目の記録

 天候:ガス のち 晴れ

 コースタイム:

 蝶ヶ岳ヒュッテ 5:50 → 蝶槍 6:30 → P2562 7:20 → 常念岳 9:55 - 10:20

 → 常念小屋 11:10 - 11:20 → 一ノ沢 14:20

 登山時間:8時間30分

蝶槍から常念岳へ縦走、スタートはガスの中…

5:50 蝶ヶ岳ヒュッテ(2日目スタート)

2日目の朝。

天気はいい予報だったはずだが、真っ白なんだけど…

常念岳への縦走がすごく楽しみだったので、正直、心折れた。

日の出時刻から1時間待っても回復しないので、仕方なしに出発する。

 

 

時折り、雨もパラつく中、何も見えない稜線を行く。

横尾に下りて、そのまま上高地に戻ることも考えたけど、いちおう予報では回復基調みたいなので、それを信じて進むことに。

 

 

こういう天気なので、雷鳥に会うことができた。

近くには母親の姿もあった。

可愛くて、ちょっとだけテンション上がる。

 

 

6:30 蝶槍

蝶槍蝶ヶ岳から続くなだらかな稜線の終点。

この先は常念岳までアップダウンの繰り返しになる。

まだガスガスは取れない。

蝶槍からは下り。

正面の2592ピークが見えているので、これは回復して来てくれているのかも。

 

しばらくは樹林帯の中を進むことになる。

 

絵にかいたようなキノコたち。

安曇野側では陽が差して来た。

これは期待してしまう。

 

 

登山道の脇には、雨を含んで活き活きとした花たち。

マルバダケブキ

サラシナショウマ

シモツケソウ

ミヤマトリカブト

P2592を過ぎてしばらく行くと、それは突然だった。

木々が開けた先に、常念岳が大きくどっしりとそこにあった。

ちょうどガスが切れて行くところで、5分待って撮ったのがこの写真。

 

 

P2512は常念岳手前、最後の小ピーク。

ここも格好いい常念岳を見ることができそうだが、山頂は再びガスの中に。

休憩がてらに15分ほど粘ってみたが、残念ながらクリアにはならず。

 

 

鞍部まで下りたら、あとは常念岳本体の登りが残るのみ。

ただ、山頂まではなかなか険しいルートとなる。

常念岳へ最後の登り、刻々と変化する穂高の表情

おおっ、穂高のガスも取れて来たようだ。

雲を割るように姿を現しはじめる穂高の山々。

思わず息を呑む風景である。

 

 

ややガレている岩稜線を登る。

 

 

振り返ると蝶ヶ岳

ちょっとだけ尖って突き出ているのが蝶槍である。

 

 

穂高の上には青空も出て来た。

一瞬一瞬で移ろっていく風景に、ちょっと感動してしまっているかも。

そして、やっぱり穂高が好きなんだって確信。

 

 

躍動する雲と山容が輝き、力強くも美しい光景に心が震える。

前穂高岳に陽が当たる。

北穂高岳を光が照らす。

キレットの切れ込み具合がすごい。

穂高に心奪われている間に、常念岳の山頂が一気に近くなったように感じる。

大きな岩々のピークは縁を回り込むように行く。

 

 

槍ヶ岳の稜線に掛かるガスはしつこいが、抜けてくれることを祈りながら。

 

ガスの中に浮かびあがる槍のシルエット。

目の前では、山頂への距離が近いようでなかなか縮まらない。

ただ、息は絶え絶えだけど、山に登っている、って実感できる時間でもある。

 

 

常念岳に延びる稜線の向こうには浅間山の姿も。

 

 

常念岳の直上も雲が晴れて青空が広がって行く。

それにしても、最後の登りが苦しすぎる…

 

 

もがいている横で、いつの間にかクリアな姿になっている槍ヶ岳

穂高と槍、本当に好きなのはどっちなんだろ?みたいなことを考えて今回の山行をしていたけど、結論、どっちも同じように好きってことがわかった瞬間。

 

 

逆ルートで常念から蝶ヶ岳に向かう登山者も多かった。

ガレている下りは注意して。

いや、ほんと、いつになったらこの登りは終わるんだろう…

風景のスケールが大きすぎて、距離の感覚がおかしくなっているのかも。

 

 

秋の空のようなヒツジ雲を見上げて、もうひと踏ん張り。

山頂の登山者の声が聞こえて来る距離なので、本当にもう最後だろう。

 

 

9:55 常念岳

思ったより苦戦した感のある常念縦走。

蝶ヶ岳のスタートから4時間で常念岳に到達となった。

山頂はなかなか賑わっていた。

 

常念岳山頂の空。

今朝から歩いて来た稜線を振り返って。

なかなか疲れたが、そこには確かな達成感がある。

 

 

残念ながら穂高は再びガスの中に隠れてしまった。

でも、ここまで心動かされるような風景をたくさん見せてくれたので、これでも良し。

 

 

新しい風景は横通岳大天井岳へと続く稜線。

 

 

山頂の祠で記念撮影。

てるてる坊主たちは風で傾いて、目線が合わず(苦笑

 

 

常念岳から稜線も気持ち良さそう。

 

一ノ沢に向けて下山、槍穂に別れを告げる

軽く休憩をしたら下山開始。

常念小屋から一ノ沢に下る。

 

 

このまま歩いて行きたくなるような横通岳、大天井岳への稜線。

いつか大天井岳まで線を繋ぎに歩きに来よう。

 

大天井岳裏銀座縦走路。

常念小屋が思った以上に下に見える。

これはなかなか骨の折れる下りだ…

常念岳山頂と小屋の標高差は400mある。

心が折れそうな時は槍穂の景色を見よう。

穂高方面のガスも再度、取れてくれたようだ。

 

 

それにしても、ガレ気味の下りはスピードも出ないし、急斜面を九十九折で下るので、見かけ以上に時間が掛かる。

 

 

もうすぐ見えなくなる槍ヶ岳の雄姿。

また会いに来るよ。

これぞ夏山って感じで好き。

11:10 常念小屋(常念乗越)

山頂から1時間近く掛かって常念小屋に到着。

小屋で一ノ沢登山口のタクシーを手配する。(100円だったかな)

コースタイムどおりの3時間後に予約。

 

一ノ沢まで長い下りになるので、焦らずに行こう。

さようなら、常念岳

 

 

稜線は風があって心地良かったけど、樹林帯に入るとかなり蒸し暑い…

どんどん体力が奪われる感じがする。

 

 

30分ほど下ると「最終水場」で沢に出る。

ここで顔を洗ってリフレッシュ。

 

 

登山道は沢に沿って付いていて、ずっと水音が聞こえるので、疲れているけど気が紛れる。

 

 

何度か丸太橋で沢を横切って、どんどん下山する。

 

 

タクシーの時間も気にしながらなので、ちょっと気が急いで、いつもより疲れた気がする。

王滝ベンチのところで沢に下りて最後の休憩。

沢を渡る風が涼やかだった。

すっかり傾斜は穏やかになりましたが、最後がなかなか長い。

 

 

立派なトチの木を祀った「山の神」

今回も無事に帰って来れたことに感謝のご挨拶を。

 

 

最後はヘトヘト。

タクシーの予約時間を5分オーバーしたけど、なんとか一ノ沢登山口に下山完了。

 

 

タクシーで穂高駅、そこから大糸線松本駅に戻って、今回の山行は終了。

車を回収した後、日帰り湯「湯の華銭湯 瑞祥」に移動して、2日間の汗を流してさっぱり。

入浴後は食事処でボリューム満点の山賊焼き定食を食す。

なんで納豆ついているんだろう?

あとがき

2日間ともすっきり晴れてはくれなかったが、楽しみだった眺望を満喫できた今回の山行。

蝶ヶ岳から常念岳の縦走は特に最後の登りがきつかったが、穂高岳槍ヶ岳が隣に寄り添ってくれているようで。

 

ガスが取れて槍穂の稜線が姿を現す度に、一喜一憂する自分がいた。

それに気づいた時、穂高という場所が心底好きで、特別なんだって、改めて思った。

 

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<参考>

・ 常念小屋:一ノ沢登山道の終点。常念岳大天井岳の分岐に建つ山小屋。

 

・ 南安タクシー:各登山口への料金表や駐車場情報あり。