稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

鹿島槍ヶ岳 - ガスからの逆転、過ぎゆく夏空と十五夜の月(Day1)

鹿島槍ヶ岳:山登りの記録

 日程:2022. 9. 10 - 11(2日間;小屋泊)

 天候:1日目;晴れ のち ガス のち 晴れ,2日目;晴れ 時々 ガス

コースタイム

 1日目

 扇沢(市営第二駐車場) 5:25 → 柏原新道登山口 5:35 → 駅見峠 6:45

 → 種池山荘 8:35 - 8:50 → 爺ヶ岳南峰 9:35 → 爺ヶ岳中峰 9:55 - 10:00

 → 冷池山荘 11: 10(泊)

 登山時間:5時間45分

 2日目

 冷池山荘 4:40 → 布引山 5:40 → 鹿島槍ヶ岳 6:25 - 6:50 → 布引山 7:20

 → 冷池山荘 8:00 - 8:20 → 爺ヶ岳南峰 9:40 - 9:50 → 種池山荘 10:25 - 10:35

 → 駅見峠 12:05 → 柏原新道登山口 13:00 → 扇沢 13:10

 登山時間:8時間30分

(総歩行距離:22.9km)

Introduction:夏の終わりに、美しい双耳峰を目指す

夏の終わりの鹿島槍へ。

 

この夏はすっきり晴れることが少なく、最後にしっかりアルプスの風景を眺めたいと思い、天気予報と睨めっこ。

もともと金曜に冷池山荘を予約していたが、確実に雨だったのでキャンセル。

土曜になると南には台風があるけど、北日本には高気圧が出現。

高気圧の縁を回って湿気が入って来て不安定ではありそうだが、予報マークはそこそこ晴れが付いたので山行決定。

運よく冷池山荘にキャンセルが出ていて、速攻で再予約した。

 

鹿島槍ヶ岳後立山連峰の主稜線に位置し、南峰と北峰を有する双耳峰である。

「槍」の名前が付くように、信濃大町側からは鋭いふたつのピークが良く見える。

 

一番メジャーな登山ルートは、黒部アルペンルートの起点である扇沢から柏原新道爺ヶ岳を経由するコースである。

北側は険しい八峰キレットを経て五竜岳に続いており、登る時はぜひ縦走で、と思っていた。

しかし、今回は1泊しか取れないので、おとなしく扇沢からのピストンとなった。

柏原新道、快適な登りで種池山荘へ

午前4時半、扇沢の無料市営第2駐車場。

柏原新道の登山口は少し手前で、そのあたりにも駐車場はあるのだが、すでに埋まっていた。

 

 

一旦、扇沢ターミナル駅にトイレに行き(片道10分ぐらい)、準備を整えて出発。

登山口に向かうと針の木岳方面の稜線がモルゲンロートに。

幸先のいいスタートと、この時は思っていたが…

 

 

5:35 柏原新道登山口(登山開始)

まずは柏原新道で稜線上の種池山荘を目指す。

 

 

柏原新道は整備が完璧で、めちゃくちゃ登りやすいルートだった。

雨上がりで湿気が多いのには参ったが…

序盤は樹林帯の中なので、淡々と行く。

ひと登りで眼下に小さく扇沢のターミナルが見えた。

スタートから1時間も経っていないが、稜線はガスに隠れてしまった。

 

 

中盤は比較的、傾斜が緩やかな区間もあって、ひと息つくことができた。

 

 

快調に柏原新道を登って行くと、木々の間から向かいの稜線が姿を現した。

いつの間にか、ガスの上に出られたようだ。

 

まだ遠く小さいが、種池山荘も望むことができた。

ガスはどんどん取れて、針ノ木岳から種池山荘に続く通称「針ノ木サーキット」の稜線がはっきりと。

見えているのは岩小屋沢岳のあたりだと思う。

 

 

しばらく「水平道」と名前の付いた平坦路を行く。

 

 

柏原新道で唯一の危険箇所といえるガラ場を通過する。

片側が切れているが、難しさはない。

種池山荘まで最後の急登「鉄砲坂」。

ここはさすがに息が上がる。

 

8:35 種池山荘

登山口からちょうど3時間で種池山荘に到着。

あれ? さっきまでの青空はいずこへ…

 

爺ヶ岳、無念のガスの中を冷池山荘まで

山荘前で小休憩した後、爺ヶ岳に向かう。

晴れていれば、背後に立山連峰の素晴らしい眺望が広がっているはずで、このガスは残念すぎる…

 

 

爺ヶ岳は南峰、中峰、北峰の三峰からなる。

まずはガラガラと小さな岩が敷き詰められた道を登って南峰へ。

 

 

南峰には巻き道が付いていたので、ピークは華麗にスルー。

このガスでは、登っても得られるものは少ないし…

 

 

楽しみにしていた眺望が全然なく、心折れそうに進む。

紅葉の始まったウラシマツツジには、ちょっとだけ救われた思い。

 

 

爺ヶ岳最高峰の中峰は、いちおうしっかり踏んでおくことにした。

翌日の下山でも通るが、同じようにガスの可能性もあるし。

 

 

9:55 爺ヶ岳・中峰

ということで、視界皆無の爺ヶ岳・中峰に到着。

 

 

あとは淡々と冷池山荘を目指す。

北峰には登山道が付いておらず巻いて行く。

冷乗越まではガレ気味の下りで、やや神経を使った。

 

 

11:10 冷池山荘

種池山荘から2時間半ほどで本日の宿泊地、冷池山荘に到着。

晴れていれば今日中に鹿島槍へ登頂する予定だったが、このガスでは期待できないので、翌日に賭けることに。

 

 

とりあえずお昼にする。

今回のメニューは個人的に流行りのカップヌ-ドルチャーハン。

以前、カレー味でやってみて美味しかったので、今回はトムヤンクン味を試してみた。

辛さと酸味が絶妙で、個人的には大正解だった。

付け合わせは「キュウリとチーズのナムル」。これも美味。

デザートは十五夜ということで、うさぎ形の白あん大福。

逆転の劇的展開、鹿島槍に過ぎゆく夏空、夕焼けも

やることないので、小屋の談話室で漫画(山と食欲と私)を読んだりでまったり。

14時頃、昼寝でもしようかなと部屋に戻ろうとすると… ガスが晴れて来てるし!

小屋2階のテラスから立山の眺め。

10分ほど上のテン場からは剱岳が見えるとのことなので散歩に。

上空はまだガスっぽいけど、立山別山剱岳の峰々がはっきり。

今日はダメかなと思っていたので、この逆転劇は嬉しい誤算すぎる。

 

剱岳はやっぱり格好いい。

テン場からさらに先へ進めば、鹿島槍のビューポイント。

こちらはまだガスが纏わり付いているが、いずれ晴れて来そうな気配がする。

見えている三角のピークは布引山。

道脇の岩に腰掛けて、のんびり待ってみる。

すると、20分ぐらいしたら一気にガスが消えて行くではないか。

劇的な展開に、ちょっと心が震える感じがする。

 

 

ついに露わとなった鹿島槍ヶ岳

双耳峰の南峰と北峰、その吊尾根に絡むガスが画になる。

 

 

そして、ついに完全に姿を現し、目の前に広がる鹿島槍の雄姿。

格好いい、すごい。

そんな簡単な言葉しか出て来ない。

 

 

南峰の山頂には登山者の姿も見える。

 

 

振り返ると、爺ヶ岳も見えるようになっていた。

 

 

麓の信濃大町方面。

躍動する雲だって、飽きることなく、いつまでも眺めていられる。

なんだか、この晴れがいつも以上に嬉しい。

 

 

1時間半近く、のんびり風景を眺めて小屋に戻ろうとすると、爺ヶ岳は再びガスの中に。

 

 

東側から流れ込んで来るガスにブロッケンが発生。

 

 

夕飯前、空が晴れ渡っていたので、ちょっとだけ爺ヶ岳を撮りに。

 

 

17時、冷池山荘にて夕食の時間。

量は少しずつだが、豊富なメニューでどれも美味しかった。

特にロールキャベツが優しい味で嬉しい。

夕食後は再びテン場まで登って、夕焼けの風景を眺める。

立山剱岳に掛かりそうな雲が輝いて美しい。

 

 

鹿島槍は完全にクリアとなっているが、東向きなので、もうすっかり暗くなってしまった。

 

 

稜線上の雲を抜けて、眩しい夕陽が顔を出す。

 

 

背後から流れ込んで来たガスを夕陽が照らす。

あたり一面がオレンジ色に染まって幻想的だった。

 

 

剱岳の肩のあたりに夕陽が沈んで行く。

 

 

日没後、少しずつ、でも確かに夜に向かうこの時間、この風景が大好き。

 

剱岳の向こうは茜雲に。

静かに時は過ぎて、今日の日の終わり。

 

あとがき(1日目)

種池山荘から爺ヶ岳、冷池山荘に着いても濃いガスに包まれた午前中。

楽しみにしていた鹿島槍立山連峰を見ることができず、ちょっと憂鬱になっていた。

そこから夕刻に向かって、ちょっと大袈裟かも知れないが、劇的な展開。

諦めかけていただけに嬉しく、いつも以上に心揺さぶられるような北アルプスの風景。

こういう瞬間があるから、もっと山が好きになってしまう。

 

明日の鹿島槍登頂では、どんな景色を見せてもらえるだろう。

 

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<つづき:2日目の山行日記> 

執筆中…

 

<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

・ 冷池山荘:爺ヶ岳鹿島槍の中間に位置する山小屋。

 

常念岳 - 蝶ヶ岳からの縦走、穂高と槍を真横に眺めながら(Day2)

<1日目の山行日記> 

 

2日目の記録

 天候:ガス のち 晴れ

 コースタイム:

 蝶ヶ岳ヒュッテ 5:50 → 蝶槍 6:30 → P2562 7:20 → 常念岳 9:55 - 10:20

 → 常念小屋 11:10 - 11:20 → 一ノ沢 14:20

 登山時間:8時間30分

蝶槍から常念岳へ縦走、スタートはガスの中…

5:50 蝶ヶ岳ヒュッテ(2日目スタート)

2日目の朝。

天気はいい予報だったはずだが、真っ白なんだけど…

常念岳への縦走がすごく楽しみだったので、正直、心折れた。

日の出時刻から1時間待っても回復しないので、仕方なしに出発する。

 

 

時折り、雨もパラつく中、何も見えない稜線を行く。

横尾に下りて、そのまま上高地に戻ることも考えたけど、いちおう予報では回復基調みたいなので、それを信じて進むことに。

 

 

こういう天気なので、雷鳥に会うことができた。

近くには母親の姿もあった。

可愛くて、ちょっとだけテンション上がる。

 

 

6:30 蝶槍

蝶槍蝶ヶ岳から続くなだらかな稜線の終点。

この先は常念岳までアップダウンの繰り返しになる。

まだガスガスは取れない。

蝶槍からは下り。

正面の2592ピークが見えているので、これは回復して来てくれているのかも。

 

しばらくは樹林帯の中を進むことになる。

 

絵にかいたようなキノコたち。

安曇野側では陽が差して来た。

これは期待してしまう。

 

 

登山道の脇には、雨を含んで活き活きとした花たち。

マルバダケブキ

サラシナショウマ

シモツケソウ

ミヤマトリカブト

P2592を過ぎてしばらく行くと、それは突然だった。

木々が開けた先に、常念岳が大きくどっしりとそこにあった。

ちょうどガスが切れて行くところで、5分待って撮ったのがこの写真。

 

 

P2512は常念岳手前、最後の小ピーク。

ここも格好いい常念岳を見ることができそうだが、山頂は再びガスの中に。

休憩がてらに15分ほど粘ってみたが、残念ながらクリアにはならず。

 

 

鞍部まで下りたら、あとは常念岳本体の登りが残るのみ。

ただ、山頂まではなかなか険しいルートとなる。

常念岳へ最後の登り、刻々と変化する穂高の表情

おおっ、穂高のガスも取れて来たようだ。

雲を割るように姿を現しはじめる穂高の山々。

思わず息を呑む風景である。

 

 

ややガレている岩稜線を登る。

 

 

振り返ると蝶ヶ岳

ちょっとだけ尖って突き出ているのが蝶槍である。

 

 

穂高の上には青空も出て来た。

一瞬一瞬で移ろっていく風景に、ちょっと感動してしまっているかも。

そして、やっぱり穂高が好きなんだって確信。

 

 

躍動する雲と山容が輝き、力強くも美しい光景に心が震える。

前穂高岳に陽が当たる。

北穂高岳を光が照らす。

キレットの切れ込み具合がすごい。

穂高に心奪われている間に、常念岳の山頂が一気に近くなったように感じる。

大きな岩々のピークは縁を回り込むように行く。

 

 

槍ヶ岳の稜線に掛かるガスはしつこいが、抜けてくれることを祈りながら。

 

ガスの中に浮かびあがる槍のシルエット。

目の前では、山頂への距離が近いようでなかなか縮まらない。

ただ、息は絶え絶えだけど、山に登っている、って実感できる時間でもある。

 

 

常念岳に延びる稜線の向こうには浅間山の姿も。

 

 

常念岳の直上も雲が晴れて青空が広がって行く。

それにしても、最後の登りが苦しすぎる…

 

 

もがいている横で、いつの間にかクリアな姿になっている槍ヶ岳

穂高と槍、本当に好きなのはどっちなんだろ?みたいなことを考えて今回の山行をしていたけど、結論、どっちも同じように好きってことがわかった瞬間。

 

 

逆ルートで常念から蝶ヶ岳に向かう登山者も多かった。

ガレている下りは注意して。

いや、ほんと、いつになったらこの登りは終わるんだろう…

風景のスケールが大きすぎて、距離の感覚がおかしくなっているのかも。

 

 

秋の空のようなヒツジ雲を見上げて、もうひと踏ん張り。

山頂の登山者の声が聞こえて来る距離なので、本当にもう最後だろう。

 

 

9:55 常念岳

思ったより苦戦した感のある常念縦走。

蝶ヶ岳のスタートから4時間で常念岳に到達となった。

山頂はなかなか賑わっていた。

 

常念岳山頂の空。

今朝から歩いて来た稜線を振り返って。

なかなか疲れたが、そこには確かな達成感がある。

 

 

残念ながら穂高は再びガスの中に隠れてしまった。

でも、ここまで心動かされるような風景をたくさん見せてくれたので、これでも良し。

 

 

新しい風景は横通岳大天井岳へと続く稜線。

 

 

山頂の祠で記念撮影。

てるてる坊主たちは風で傾いて、目線が合わず(苦笑

 

 

常念岳から稜線も気持ち良さそう。

 

一ノ沢に向けて下山、槍穂に別れを告げる

軽く休憩をしたら下山開始。

常念小屋から一ノ沢に下る。

 

 

このまま歩いて行きたくなるような横通岳、大天井岳への稜線。

いつか大天井岳まで線を繋ぎに歩きに来よう。

 

大天井岳裏銀座縦走路。

常念小屋が思った以上に下に見える。

これはなかなか骨の折れる下りだ…

常念岳山頂と小屋の標高差は400mある。

心が折れそうな時は槍穂の景色を見よう。

穂高方面のガスも再度、取れてくれたようだ。

 

 

それにしても、ガレ気味の下りはスピードも出ないし、急斜面を九十九折で下るので、見かけ以上に時間が掛かる。

 

 

もうすぐ見えなくなる槍ヶ岳の雄姿。

また会いに来るよ。

これぞ夏山って感じで好き。

11:10 常念小屋(常念乗越)

山頂から1時間近く掛かって常念小屋に到着。

小屋で一ノ沢登山口のタクシーを手配する。(100円だったかな)

コースタイムどおりの3時間後に予約。

 

一ノ沢まで長い下りになるので、焦らずに行こう。

さようなら、常念岳

 

 

稜線は風があって心地良かったけど、樹林帯に入るとかなり蒸し暑い…

どんどん体力が奪われる感じがする。

 

 

30分ほど下ると「最終水場」で沢に出る。

ここで顔を洗ってリフレッシュ。

 

 

登山道は沢に沿って付いていて、ずっと水音が聞こえるので、疲れているけど気が紛れる。

 

 

何度か丸太橋で沢を横切って、どんどん下山する。

 

 

タクシーの時間も気にしながらなので、ちょっと気が急いで、いつもより疲れた気がする。

王滝ベンチのところで沢に下りて最後の休憩。

沢を渡る風が涼やかだった。

すっかり傾斜は穏やかになりましたが、最後がなかなか長い。

 

 

立派なトチの木を祀った「山の神」

今回も無事に帰って来れたことに感謝のご挨拶を。

 

 

最後はヘトヘト。

タクシーの予約時間を5分オーバーしたけど、なんとか一ノ沢登山口に下山完了。

 

 

タクシーで穂高駅、そこから大糸線松本駅に戻って、今回の山行は終了。

車を回収した後、日帰り湯「湯の華銭湯 瑞祥」に移動して、2日間の汗を流してさっぱり。

入浴後は食事処でボリューム満点の山賊焼き定食を食す。

なんで納豆ついているんだろう?

あとがき

2日間ともすっきり晴れてはくれなかったが、楽しみだった眺望を満喫できた今回の山行。

蝶ヶ岳から常念岳の縦走は特に最後の登りがきつかったが、穂高岳槍ヶ岳が隣に寄り添ってくれているようで。

 

ガスが取れて槍穂の稜線が姿を現す度に、一喜一憂する自分がいた。

それに気づいた時、穂高という場所が心底好きで、特別なんだって、改めて思った。

 

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<参考>

・ 常念小屋:一ノ沢登山道の終点。常念岳大天井岳の分岐に建つ山小屋。

 

・ 南安タクシー:各登山口への料金表や駐車場情報あり。

 

常念岳 - 蝶ヶ岳からの縦走、穂高と槍を真横に眺めながら(Day1)

常念岳:山登りの記録

 日程:2022. 8. 10 - 11(2日間;小屋泊)

 天候:1日目;曇り 時々 雨,2日目;ガス のち 晴れ

コースタイム

 1日目

 上高地バスターミナル 7:25 → 明神 8:20 → 徳沢 9:10 - 9:35

 → 長塀山 12:40 - 12:55 → 蝶ヶ岳ヒュッテ 14: 00(泊)

 登山時間:6時間35分

 2日目

 蝶ヶ岳ヒュッテ 5:50 → 蝶槍 6:30 → P2562 7:20 → 常念岳 9:55 - 10:20

 → 常念小屋 11:10 - 11:20 → 一ノ沢 14:20

 登山時間:8時間30分

(総歩行距離:23.0km)

Introduction:槍・穂高連峰と向き合う縦走路

以前、残雪期に登って至近距離で眺める穂高の風景に魅せられた蝶ヶ岳

そこから見た常念岳もまた、心引きつけられる山容で、いつかは登りたいと思っていた山。

その時はぜひ蝶ヶ岳から縦走で、と計画していた今回の山行。

 

安曇野から眺める常念岳は、しっかりとしたピラミッド型で目を引く存在である。

そして、その南北に続く常念山脈の向こう側には、穂高岳槍ヶ岳がある。

麓からは槍穂はあまり見ることができず、常念山脈に遮られている格好だ。

反対に言えば、常念の稜線に立てば、槍穂を一望、ということになる。

 

常念山脈縦走の定番と言えば、三股から蝶ヶ岳常念岳の三角周回が良く歩かれている。

前回の蝶ヶ岳も三股からだったので、今回はなんとなく別コースを歩きたかった。

ということで選んだのは、上高地出発で徳沢から長塀尾根蝶ヶ岳に登るルート。

1日目は蝶ヶ岳ヒュッテに泊り、翌日、常念岳まで縦走して、一ノ沢に下山する計画である。

スタートの上高地、ウォーミングアップ気分で徳沢へ

今回の山行の出発は松本駅

駅近くの駐車場に車を停めて、バスで上高地に向かう。

公共交通機関上高地にアプローチする場合、新島々まで電車で行ってバス乗り換えが多いと思うが、松本から直通のバスも数本だけ存在する。

それが「ナショナルパークライナー」で、1本目の5時半発に乗車。

ちなみに、帰りは一ノ沢からタクシー、電車で松本に帰って来ることになる。

早朝の松本駅。「楽都・岳都・学都」の時計台。

ナショナルパークライナーは予約制。

7:25 上高地(1日目:登山開始)

バスは1時間半と少しで上高地のターミナルに到着。

準備を整えて、7時半前にスタートを切る。

天気予報から予想はできていたけど、上の方はガスっていて、穂高も見えない。

今日は雨に降られず、蝶ヶ岳ヒュッテに到着できれば良しかな。

梓川はいつもどおりに清い流れで、それが救い。

 

 

まずは徳沢を目指して梓川左岸の遊歩道を行く。

小梨平を過ぎて森に入ると、不意に陽が差して来た。

そんなに天気は悪くないのかも、と淡い期待を感じながら進む。

 

 

それでもやっぱり、明神岳の上はガスの中なんだけど。

 

 

河童橋から45分で明神まで来て、ここは素通りで先へ。

 

 

9:10 徳沢

明神からさらに50分で徳沢に到着。

ここの開けた明るい雰囲気は何回来ても良くて好き。

 

 

そして徳澤園

蝶ヶ岳に向けて、長塀尾根はかなりキツイらしいので、その前に休憩とする。

ここでまとまった雨が降って来て、気が滅入りそうに…

でも、すぐに弱まってくれたので、なんとか頑張れそう。

 

スタートしたばかりだけど、やっぱり食べておかないとね。

ということで、朝からソフトクリームをいただく。

やはり安定の美味しさだった。

長い登りの長塀尾根、花たちに励まされながら

では、長くて、急で、と評判の長塀尾根へ、いざ。

徳沢は多くの登山者で賑わっていたが、ほとんどが涸沢や槍ヶ岳を目指すので、こちらには人影がない。

 

 

取り付きからめちゃ急登だった。

木々に囲まれていて湿気も多く、一気に汗が吹き出して来る。

 

 

所々にこんなミニ木製梯子もあり、どんどん高度を上げて行く。

ちなみに、徳沢から蝶ヶ岳の標高差は1100mほど。

 

 

とにかくずっと樹林帯の中なので、特にイベントもなく淡々と進む。

徳沢からもう2時間以上歩いたのに、やっと中間点の看板。

これには心が折れそうになった…

 

 

花の数が増えて来たので、撮影しながら。

カニコウモリはあちこちでたくさん咲いていた。

ゴゼンタチバナ

長塀尾根は後半に入ると傾斜がやっと落ち着いてくれて、ゆるゆると登って行く。

 

 

12:40 長塀山

長塀山に到着。

徳沢から3時間掛かったが、ここもまだ眺望はない。

ほんと登るだけで、修行の時間が続く…

 

 

折れそうな心を支えてくれるのは、たくさんの花たち。

カラマツソウ。雨で細い花がくっ付いている。

ミヤマアキノキリンソウかな?

ウサギギク

林の中にひっそりと妖精の池が現れた。

”妖精” は言い過ぎな気もするけど、池の畔には色々な花が咲いていた。

 

ハクサンフウロ

オトギリソウ

ウメバチソウ

ミヤマコゴメグサ

クルマユリ

ハクサンボウフウ

妖精の池から少し進むと、樹林帯を抜けてハイマツ帯へと変わる。

稜線はいよいよ間近である。

 

ヨツバシオガマ

ハクサンイチゲ

ミヤマキンポウゲ

不意に前方の視界が開けた。

何も見えないことも覚悟していたが、蝶槍に続く稜線とその背後の大天井岳が見える。

 

 

左手には穂高も見えて来た。

稜線はガスの中だが、その大きさははっきりと分かる。

ここまで眺望がなく、いきなりこの風景なら、晴れていれば、間違いなく感動できるだろう。

 

 

蝶ヶ岳ヒュッテと常念岳も見えて来た。

 

 

14:00 蝶ヶ岳

平らであまり山頂感はないが、蝶ヶ岳のピークでいちおう記録写真。

いやはや長かった…

 

 

穂高を正面に、まったりと山の時間

穂高槍ヶ岳は隠れてしまっているが、蝶ヶ岳ヒュッテのロケーションは抜群。

明日、縦走する予定の常念岳までの稜線がしっかり見える。

 

 

小屋で受付して落ち着いたら、ちょっと早いが、15時半から夕飯を兼ねたひとり酒タイム。

今回は自炊にして、まったりと山の時間を過ごすと決めていた。

前菜のつまみは、キュウリとちくわのナムル。

メインは「明太子さきイカのモヤシ炒め」。

空心菜を入れて、シャキシャキ食感とちょっぴりほろにががいい感じに仕上がった。

2本目は担いで来た「ほろよい甘夏」で。

これは酒が進む。

今回も「山めし礼讃」を参考にさせてもらった。

小屋からすぐそばにある瞑想の丘の展望盤から。

残念ながら穂高はいまだ見えずだが、ゆったりとした時間を過ぎて行く。

 

 

常念岳に続く縦走路を眺めると、明日が楽しみになって来る。

 

 

ほろ酔い加減で小屋に戻って1時間ほどウトウト。

18時過ぎに夕焼けはどうかな?と外に出てみると、穂高が姿を現していた。

空はまだ雲が覆っているが、これは嬉しい。

 

 

日没の時間(18:45ぐらい)まで、瞑想の丘で過ごす。

槍ヶ岳方面はまだガスが支配的。

 

 

と思ったら、わずかにその頂が見え隠れ。

これは晴れて来そうな予感。

 

 

常念岳の精悍な山容にも惚れ惚れとしてしまう。

 

 

前穂高岳、吊尾根、奥穂高岳

前穂の上は笠雲のように。

槍ヶ岳もいよいよクリアになって来た。

 

やはり槍の穂先は存在感がすごい。

南側の眺望は遠くに乗鞍岳御嶽山

雲の隙間もわずかに見えて、薄雲がほのかに茜色に染まっている。

 

 

穂高の上も真っ赤になってくれないかな、と思ったが、反対側の雲は厚く、難しそう。

 

前穂高岳

奥穂高岳

北穂高岳と大キレット

ちょうど日没時間の頃、薄暮の空は淡い群青色に。

雲間にはもうすぐ満月の月も昇って来た。

 

 

大天井岳裏銀座野口五郎岳あたり?)の向こうはしっかりと焼けているようだ。

 

 

ほぼ完璧にクリアとなった槍穂のライン。

こちらは残念ながら夕焼けにならず。

それでも、心満たされる時間だった。

 

あとがき(1日目)

長くて急な長塀尾根を登って、蝶ヶ岳にたどり着いた1日目。

ガスが掛かり、ご褒美感は少なかったが、それでも穂高雄大さは感じることができた。

夕刻になると、曇り空ではあったけど、穂高槍ヶ岳常念岳も顔を出してくれ、それだけで嬉しい気持ちに。

 

ゆったりと流れる山の時間は、やっぱりいい。

明日の常念岳への縦走ではどんな山の表情が見られるだろうか?

期待が膨らみながら、夜が更けて行く。

 

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<つづき:2日目の山行日記> 

 

<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

蝶ヶ岳ヒュッテ:蝶ヶ岳山頂に建つ小屋。雄大穂高の眺望が目の前に。