稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

鹿島槍ヶ岳 - ガスからの逆転、過ぎゆく夏空と十五夜の月(Day1)

鹿島槍ヶ岳:山登りの記録

 日程:2022. 9. 10 - 11(2日間;小屋泊)

 天候:1日目;晴れ のち ガス のち 晴れ,2日目;晴れ 時々 ガス

コースタイム

 1日目

 扇沢(市営第二駐車場) 5:25 → 柏原新道登山口 5:35 → 駅見峠 6:45

 → 種池山荘 8:35 - 8:50 → 爺ヶ岳南峰 9:35 → 爺ヶ岳中峰 9:55 - 10:00

 → 冷池山荘 11: 10(泊)

 登山時間:5時間45分

 2日目

 冷池山荘 4:40 → 布引山 5:40 → 鹿島槍ヶ岳 6:25 - 6:50 → 布引山 7:20

 → 冷池山荘 8:00 - 8:20 → 爺ヶ岳南峰 9:40 - 9:50 → 種池山荘 10:25 - 10:35

 → 駅見峠 12:05 → 柏原新道登山口 13:00 → 扇沢 13:10

 登山時間:8時間30分

(総歩行距離:22.9km)

Introduction:夏の終わりに、美しい双耳峰を目指す

夏の終わりの鹿島槍へ。

 

この夏はすっきり晴れることが少なく、最後にしっかりアルプスの風景を眺めたいと思い、天気予報と睨めっこ。

もともと金曜に冷池山荘を予約していたが、確実に雨だったのでキャンセル。

土曜になると南には台風があるけど、北日本には高気圧が出現。

高気圧の縁を回って湿気が入って来て不安定ではありそうだが、予報マークはそこそこ晴れが付いたので山行決定。

運よく冷池山荘にキャンセルが出ていて、速攻で再予約した。

 

鹿島槍ヶ岳後立山連峰の主稜線に位置し、南峰と北峰を有する双耳峰である。

「槍」の名前が付くように、信濃大町側からは鋭いふたつのピークが良く見える。

 

一番メジャーな登山ルートは、黒部アルペンルートの起点である扇沢から柏原新道爺ヶ岳を経由するコースである。

北側は険しい八峰キレットを経て五竜岳に続いており、登る時はぜひ縦走で、と思っていた。

しかし、今回は1泊しか取れないので、おとなしく扇沢からのピストンとなった。

柏原新道、快適な登りで種池山荘へ

午前4時半、扇沢の無料市営第2駐車場。

柏原新道の登山口は少し手前で、そのあたりにも駐車場はあるのだが、すでに埋まっていた。

 

 

一旦、扇沢ターミナル駅にトイレに行き(片道10分ぐらい)、準備を整えて出発。

登山口に向かうと針の木岳方面の稜線がモルゲンロートに。

幸先のいいスタートと、この時は思っていたが…

 

 

5:35 柏原新道登山口(登山開始)

まずは柏原新道で稜線上の種池山荘を目指す。

 

 

柏原新道は整備が完璧で、めちゃくちゃ登りやすいルートだった。

雨上がりで湿気が多いのには参ったが…

序盤は樹林帯の中なので、淡々と行く。

ひと登りで眼下に小さく扇沢のターミナルが見えた。

スタートから1時間も経っていないが、稜線はガスに隠れてしまった。

 

 

中盤は比較的、傾斜が緩やかな区間もあって、ひと息つくことができた。

 

 

快調に柏原新道を登って行くと、木々の間から向かいの稜線が姿を現した。

いつの間にか、ガスの上に出られたようだ。

 

まだ遠く小さいが、種池山荘も望むことができた。

ガスはどんどん取れて、針ノ木岳から種池山荘に続く通称「針ノ木サーキット」の稜線がはっきりと。

見えているのは岩小屋沢岳のあたりだと思う。

 

 

しばらく「水平道」と名前の付いた平坦路を行く。

 

 

柏原新道で唯一の危険箇所といえるガラ場を通過する。

片側が切れているが、難しさはない。

種池山荘まで最後の急登「鉄砲坂」。

ここはさすがに息が上がる。

 

8:35 種池山荘

登山口からちょうど3時間で種池山荘に到着。

あれ? さっきまでの青空はいずこへ…

 

爺ヶ岳、無念のガスの中を冷池山荘まで

山荘前で小休憩した後、爺ヶ岳に向かう。

晴れていれば、背後に立山連峰の素晴らしい眺望が広がっているはずで、このガスは残念すぎる…

 

 

爺ヶ岳は南峰、中峰、北峰の三峰からなる。

まずはガラガラと小さな岩が敷き詰められた道を登って南峰へ。

 

 

南峰には巻き道が付いていたので、ピークは華麗にスルー。

このガスでは、登っても得られるものは少ないし…

 

 

楽しみにしていた眺望が全然なく、心折れそうに進む。

紅葉の始まったウラシマツツジには、ちょっとだけ救われた思い。

 

 

爺ヶ岳最高峰の中峰は、いちおうしっかり踏んでおくことにした。

翌日の下山でも通るが、同じようにガスの可能性もあるし。

 

 

9:55 爺ヶ岳・中峰

ということで、視界皆無の爺ヶ岳・中峰に到着。

 

 

あとは淡々と冷池山荘を目指す。

北峰には登山道が付いておらず巻いて行く。

冷乗越まではガレ気味の下りで、やや神経を使った。

 

 

11:10 冷池山荘

種池山荘から2時間半ほどで本日の宿泊地、冷池山荘に到着。

晴れていれば今日中に鹿島槍へ登頂する予定だったが、このガスでは期待できないので、翌日に賭けることに。

 

 

とりあえずお昼にする。

今回のメニューは個人的に流行りのカップヌ-ドルチャーハン。

以前、カレー味でやってみて美味しかったので、今回はトムヤンクン味を試してみた。

辛さと酸味が絶妙で、個人的には大正解だった。

付け合わせは「キュウリとチーズのナムル」。これも美味。

デザートは十五夜ということで、うさぎ形の白あん大福。

逆転の劇的展開、鹿島槍に過ぎゆく夏空、夕焼けも

やることないので、小屋の談話室で漫画(山と食欲と私)を読んだりでまったり。

14時頃、昼寝でもしようかなと部屋に戻ろうとすると… ガスが晴れて来てるし!

小屋2階のテラスから立山の眺め。

10分ほど上のテン場からは剱岳が見えるとのことなので散歩に。

上空はまだガスっぽいけど、立山別山剱岳の峰々がはっきり。

今日はダメかなと思っていたので、この逆転劇は嬉しい誤算すぎる。

 

剱岳はやっぱり格好いい。

テン場からさらに先へ進めば、鹿島槍のビューポイント。

こちらはまだガスが纏わり付いているが、いずれ晴れて来そうな気配がする。

見えている三角のピークは布引山。

道脇の岩に腰掛けて、のんびり待ってみる。

すると、20分ぐらいしたら一気にガスが消えて行くではないか。

劇的な展開に、ちょっと心が震える感じがする。

 

 

ついに露わとなった鹿島槍ヶ岳

双耳峰の南峰と北峰、その吊尾根に絡むガスが画になる。

 

 

そして、ついに完全に姿を現し、目の前に広がる鹿島槍の雄姿。

格好いい、すごい。

そんな簡単な言葉しか出て来ない。

 

 

南峰の山頂には登山者の姿も見える。

 

 

振り返ると、爺ヶ岳も見えるようになっていた。

 

 

麓の信濃大町方面。

躍動する雲だって、飽きることなく、いつまでも眺めていられる。

なんだか、この晴れがいつも以上に嬉しい。

 

 

1時間半近く、のんびり風景を眺めて小屋に戻ろうとすると、爺ヶ岳は再びガスの中に。

 

 

東側から流れ込んで来るガスにブロッケンが発生。

 

 

夕飯前、空が晴れ渡っていたので、ちょっとだけ爺ヶ岳を撮りに。

 

 

17時、冷池山荘にて夕食の時間。

量は少しずつだが、豊富なメニューでどれも美味しかった。

特にロールキャベツが優しい味で嬉しい。

夕食後は再びテン場まで登って、夕焼けの風景を眺める。

立山剱岳に掛かりそうな雲が輝いて美しい。

 

 

鹿島槍は完全にクリアとなっているが、東向きなので、もうすっかり暗くなってしまった。

 

 

稜線上の雲を抜けて、眩しい夕陽が顔を出す。

 

 

背後から流れ込んで来たガスを夕陽が照らす。

あたり一面がオレンジ色に染まって幻想的だった。

 

 

剱岳の肩のあたりに夕陽が沈んで行く。

 

 

日没後、少しずつ、でも確かに夜に向かうこの時間、この風景が大好き。

 

剱岳の向こうは茜雲に。

静かに時は過ぎて、今日の日の終わり。

 

あとがき(1日目)

種池山荘から爺ヶ岳、冷池山荘に着いても濃いガスに包まれた午前中。

楽しみにしていた鹿島槍立山連峰を見ることができず、ちょっと憂鬱になっていた。

そこから夕刻に向かって、ちょっと大袈裟かも知れないが、劇的な展開。

諦めかけていただけに嬉しく、いつも以上に心揺さぶられるような北アルプスの風景。

こういう瞬間があるから、もっと山が好きになってしまう。

 

明日の鹿島槍登頂では、どんな景色を見せてもらえるだろう。

 

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<つづき:2日目の山行日記> 

執筆中…

 

<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

・ 冷池山荘:爺ヶ岳鹿島槍の中間に位置する山小屋。