稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

常念岳 - 蝶ヶ岳からの縦走、穂高と槍を真横に眺めながら(Day1)

常念岳:山登りの記録

 日程:2022. 8. 10 - 11(2日間;小屋泊)

 天候:1日目;曇り 時々 雨,2日目;ガス のち 晴れ

コースタイム

 1日目

 上高地バスターミナル 7:25 → 明神 8:20 → 徳沢 9:10 - 9:35

 → 長塀山 12:40 - 12:55 → 蝶ヶ岳ヒュッテ 14: 00(泊)

 登山時間:6時間35分

 2日目

 蝶ヶ岳ヒュッテ 5:50 → 蝶槍 6:30 → P2562 7:20 → 常念岳 9:55 - 10:20

 → 常念小屋 11:10 - 11:20 → 一ノ沢 14:20

 登山時間:8時間30分

(総歩行距離:23.0km)

Introduction:槍・穂高連峰と向き合う縦走路

以前、残雪期に登って至近距離で眺める穂高の風景に魅せられた蝶ヶ岳

そこから見た常念岳もまた、心引きつけられる山容で、いつかは登りたいと思っていた山。

その時はぜひ蝶ヶ岳から縦走で、と計画していた今回の山行。

 

安曇野から眺める常念岳は、しっかりとしたピラミッド型で目を引く存在である。

そして、その南北に続く常念山脈の向こう側には、穂高岳槍ヶ岳がある。

麓からは槍穂はあまり見ることができず、常念山脈に遮られている格好だ。

反対に言えば、常念の稜線に立てば、槍穂を一望、ということになる。

 

常念山脈縦走の定番と言えば、三股から蝶ヶ岳常念岳の三角周回が良く歩かれている。

前回の蝶ヶ岳も三股からだったので、今回はなんとなく別コースを歩きたかった。

ということで選んだのは、上高地出発で徳沢から長塀尾根蝶ヶ岳に登るルート。

1日目は蝶ヶ岳ヒュッテに泊り、翌日、常念岳まで縦走して、一ノ沢に下山する計画である。

スタートの上高地、ウォーミングアップ気分で徳沢へ

今回の山行の出発は松本駅

駅近くの駐車場に車を停めて、バスで上高地に向かう。

公共交通機関上高地にアプローチする場合、新島々まで電車で行ってバス乗り換えが多いと思うが、松本から直通のバスも数本だけ存在する。

それが「ナショナルパークライナー」で、1本目の5時半発に乗車。

ちなみに、帰りは一ノ沢からタクシー、電車で松本に帰って来ることになる。

早朝の松本駅。「楽都・岳都・学都」の時計台。

ナショナルパークライナーは予約制。

7:25 上高地(1日目:登山開始)

バスは1時間半と少しで上高地のターミナルに到着。

準備を整えて、7時半前にスタートを切る。

天気予報から予想はできていたけど、上の方はガスっていて、穂高も見えない。

今日は雨に降られず、蝶ヶ岳ヒュッテに到着できれば良しかな。

梓川はいつもどおりに清い流れで、それが救い。

 

 

まずは徳沢を目指して梓川左岸の遊歩道を行く。

小梨平を過ぎて森に入ると、不意に陽が差して来た。

そんなに天気は悪くないのかも、と淡い期待を感じながら進む。

 

 

それでもやっぱり、明神岳の上はガスの中なんだけど。

 

 

河童橋から45分で明神まで来て、ここは素通りで先へ。

 

 

9:10 徳沢

明神からさらに50分で徳沢に到着。

ここの開けた明るい雰囲気は何回来ても良くて好き。

 

 

そして徳澤園

蝶ヶ岳に向けて、長塀尾根はかなりキツイらしいので、その前に休憩とする。

ここでまとまった雨が降って来て、気が滅入りそうに…

でも、すぐに弱まってくれたので、なんとか頑張れそう。

 

スタートしたばかりだけど、やっぱり食べておかないとね。

ということで、朝からソフトクリームをいただく。

やはり安定の美味しさだった。

長い登りの長塀尾根、花たちに励まされながら

では、長くて、急で、と評判の長塀尾根へ、いざ。

徳沢は多くの登山者で賑わっていたが、ほとんどが涸沢や槍ヶ岳を目指すので、こちらには人影がない。

 

 

取り付きからめちゃ急登だった。

木々に囲まれていて湿気も多く、一気に汗が吹き出して来る。

 

 

所々にこんなミニ木製梯子もあり、どんどん高度を上げて行く。

ちなみに、徳沢から蝶ヶ岳の標高差は1100mほど。

 

 

とにかくずっと樹林帯の中なので、特にイベントもなく淡々と進む。

徳沢からもう2時間以上歩いたのに、やっと中間点の看板。

これには心が折れそうになった…

 

 

花の数が増えて来たので、撮影しながら。

カニコウモリはあちこちでたくさん咲いていた。

ゴゼンタチバナ

長塀尾根は後半に入ると傾斜がやっと落ち着いてくれて、ゆるゆると登って行く。

 

 

12:40 長塀山

長塀山に到着。

徳沢から3時間掛かったが、ここもまだ眺望はない。

ほんと登るだけで、修行の時間が続く…

 

 

折れそうな心を支えてくれるのは、たくさんの花たち。

カラマツソウ。雨で細い花がくっ付いている。

ミヤマアキノキリンソウかな?

ウサギギク

林の中にひっそりと妖精の池が現れた。

”妖精” は言い過ぎな気もするけど、池の畔には色々な花が咲いていた。

 

ハクサンフウロ

オトギリソウ

ウメバチソウ

ミヤマコゴメグサ

クルマユリ

ハクサンボウフウ

妖精の池から少し進むと、樹林帯を抜けてハイマツ帯へと変わる。

稜線はいよいよ間近である。

 

ヨツバシオガマ

ハクサンイチゲ

ミヤマキンポウゲ

不意に前方の視界が開けた。

何も見えないことも覚悟していたが、蝶槍に続く稜線とその背後の大天井岳が見える。

 

 

左手には穂高も見えて来た。

稜線はガスの中だが、その大きさははっきりと分かる。

ここまで眺望がなく、いきなりこの風景なら、晴れていれば、間違いなく感動できるだろう。

 

 

蝶ヶ岳ヒュッテと常念岳も見えて来た。

 

 

14:00 蝶ヶ岳

平らであまり山頂感はないが、蝶ヶ岳のピークでいちおう記録写真。

いやはや長かった…

 

 

穂高を正面に、まったりと山の時間

穂高槍ヶ岳は隠れてしまっているが、蝶ヶ岳ヒュッテのロケーションは抜群。

明日、縦走する予定の常念岳までの稜線がしっかり見える。

 

 

小屋で受付して落ち着いたら、ちょっと早いが、15時半から夕飯を兼ねたひとり酒タイム。

今回は自炊にして、まったりと山の時間を過ごすと決めていた。

前菜のつまみは、キュウリとちくわのナムル。

メインは「明太子さきイカのモヤシ炒め」。

空心菜を入れて、シャキシャキ食感とちょっぴりほろにががいい感じに仕上がった。

2本目は担いで来た「ほろよい甘夏」で。

これは酒が進む。

今回も「山めし礼讃」を参考にさせてもらった。

小屋からすぐそばにある瞑想の丘の展望盤から。

残念ながら穂高はいまだ見えずだが、ゆったりとした時間を過ぎて行く。

 

 

常念岳に続く縦走路を眺めると、明日が楽しみになって来る。

 

 

ほろ酔い加減で小屋に戻って1時間ほどウトウト。

18時過ぎに夕焼けはどうかな?と外に出てみると、穂高が姿を現していた。

空はまだ雲が覆っているが、これは嬉しい。

 

 

日没の時間(18:45ぐらい)まで、瞑想の丘で過ごす。

槍ヶ岳方面はまだガスが支配的。

 

 

と思ったら、わずかにその頂が見え隠れ。

これは晴れて来そうな予感。

 

 

常念岳の精悍な山容にも惚れ惚れとしてしまう。

 

 

前穂高岳、吊尾根、奥穂高岳

前穂の上は笠雲のように。

槍ヶ岳もいよいよクリアになって来た。

 

やはり槍の穂先は存在感がすごい。

南側の眺望は遠くに乗鞍岳御嶽山

雲の隙間もわずかに見えて、薄雲がほのかに茜色に染まっている。

 

 

穂高の上も真っ赤になってくれないかな、と思ったが、反対側の雲は厚く、難しそう。

 

前穂高岳

奥穂高岳

北穂高岳と大キレット

ちょうど日没時間の頃、薄暮の空は淡い群青色に。

雲間にはもうすぐ満月の月も昇って来た。

 

 

大天井岳裏銀座野口五郎岳あたり?)の向こうはしっかりと焼けているようだ。

 

 

ほぼ完璧にクリアとなった槍穂のライン。

こちらは残念ながら夕焼けにならず。

それでも、心満たされる時間だった。

 

あとがき(1日目)

長くて急な長塀尾根を登って、蝶ヶ岳にたどり着いた1日目。

ガスが掛かり、ご褒美感は少なかったが、それでも穂高雄大さは感じることができた。

夕刻になると、曇り空ではあったけど、穂高槍ヶ岳常念岳も顔を出してくれ、それだけで嬉しい気持ちに。

 

ゆったりと流れる山の時間は、やっぱりいい。

明日の常念岳への縦走ではどんな山の表情が見られるだろうか?

期待が膨らみながら、夜が更けて行く。

 

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<つづき:2日目の山行日記> 

 

<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

蝶ヶ岳ヒュッテ:蝶ヶ岳山頂に建つ小屋。雄大穂高の眺望が目の前に。