稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

木曽駒ヶ岳 - 紅葉と大展望のクラシックルート「西駒登山道」より

 

日程 : 2018.9.28(金) 日帰り
ルート: 桂小場 → 将棊頭山 → 濃ヶ池 → 木曽駒ヶ岳千畳敷 (ロープウェイ下山)
天候 : 晴れ


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金曜日に有休を使ってソロ山行。
どこの紅葉がいいかなと悩んだけど、一番天気が良さそうだった木曽駒ヶ岳に。

木曽駒といったら、ロープウェイ利用でお手軽に楽しめる、中央アルプスで一番人気の山。
しかし、今回は麓の桂小場から登る「西駒登山道」というクラシックルートに挑む。
西駒登山道は、片道で距離10km、標高差1700mの手強いコース。

せっかくの金曜登山ということもあり、当初予定は小屋泊でゆっくり山行のつもりだった。
山頂から宝剣山荘を経由して濃ヶ池を周回し、下山途中で西駒山荘に泊まる計画である。
しかし、翌日が朝から雨予報なので、強行日帰りを "プランA" とした。
このコースを日帰りしている記録はたくさんあったが、僕にはギリギリとなりそう。
そこで、途中でキツそうだったら、木曽駒山頂から千畳敷に向かい、ロープウェイで下山する "プランB" への変更も考えておいた。(下山後の車回収が大変ではあるが。)

結果を先に言ってしまえば、"プランB" を実行することになるのだが、こっちが正解だったのかも。
気持ちに余裕が生まれ、クラシックルートの雰囲気を満喫できたのが大きな収穫。
盛りの紅葉を愛でながら、驚くほどに静かな稜線を辿る、秋の小さな山旅。

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登山口となる桂小場へのアプローチは、中央道・小黒川PAスマートICが最も近い。
黒川渓谷キャンプ場から先はやや道幅が狭くなるが、それほどの困難はない。
林道(全線舗装)の終点は20台ぐらいの駐車スペースになっている。
ただし、学校登山の時期(7月?)はバス転回場となり、半分ぐらいしか使えないらしい。

5時半前に着いて準備をしていると、計3台が続けて到着。
平日の割には結構、入山者がいるんだなと思っていると、1台はもう1台の登山者を乗せて引き返していく。
おそらく、ロープウェイからスタートし、ここに下りてくる予定なのだろう。
残り1台の男性と挨拶を交わし(濃ヶ池までのピストンとのこと)、スタートする。


5:35 桂小場(登山開始)
「西駒登山道」はロープウェイが開通する前まで木曽駒へのメインルートであった。
後述する小説「聖職の碑」のモデルとなった学校登山で起きた大遭難事故は、100年前も昔のことであり、その頃から歩かれていた道なのである。
ちなみに「西駒」というのは、伊那地方での木曽駒ヶ岳の呼称。
となると「東駒」は? という問いは、甲斐駒ヶ岳が正解である。


最初の目標地は将棊頭山に向けて、スタートは比較的に緩やかな登りから入る。
すぐに9月はじめの台風の爪痕に出会い、2ヶ所で倒木が道を塞いでいた。
いずれも高巻きに迂回路が作られていたが、とても滑りやすく、ちょっと神経を使った。


登山口から20分弱で最初の水場「ぶどうの泉」に到着する。
序盤すぎて、ザックの重量的な恩恵はほとんど得られないが、せっかくなので持ってきた水を入れ替えることに。


クラシックルートとはいえ、道はしっかりと整備されており、気持ち良く歩くことができた。
自然林の中、順調に高度を上げて行く。


50分で最初のチェックポイントの野田場に到着。
ここにも水場があった。


カラマツの林に朝の陽射しが差し込んで、清々しい気持ちで登って行く。


横山という地区から登って来るルートあり。(写真は進行方向とは反対に振り返った構図)
廃道同然になっていた古道が数年前に再整備されたらしい。
ただ、横山からの距離が長いので、好きで歩く以外は利用価値は低そう。


馬返しでは、権兵衛峠から来るトレイルとも合流する。


伊那では多くの中学校で学校登山が行われるらしいが、その中で起きた落雷事故の現場。
有名な「聖職の碑」の遭難はこれとは別の話である。
安全そうな樹林帯の中で落雷被害?と思ったが、雷がこの木を直撃して、川の様になった登山道に雷電が走り、多くの生徒が火傷を負った、といった旨が書かれていた。
幸い全員が快復したそうだが、やはり雷は怖いと再認識。


標高が上がってくると、ツガが中心の林相に変わって来る。
その中に苔むした道が続いており、クラシックルート感を演出している。
将棊頭山までで会ったのは3名(うち下山者1名)のみで、静かな山歩きを満喫できた。


大樽避難小屋を過ぎてしばらくすると、左手から「信大ルート」が合流する。
信大ルートは、同じ桂小場を起点とするサブルートだが、歩く人は少なそう。
この場所は胸突八丁と名付けられており、ここから急登が始まることを予感させる。


と言っても、それほどキツい登りには感じなかった。
確かに斜度は大きくなったが、全国の「胸突八丁」の中では甘めの設定だろう。
学校登山のイベント的要素としてネーミング? などと勘ぐってしまうが、果たして?


陽の光がわずかに差し込むコメツガの森の雰囲気が良く、いっそう古道感が漂う。


一番勾配がきつい区間を過ぎると津島神社に到着するが、特に祠などはなかった。
大きな岩があり、それをお祀りしているようだったが、その上部には色鮮やかな紅葉。


なかなかのいい色付きで、この先も期待できそうだ。


コメツガや淡く色付いたダケカンバの混合林を登って行く。


さらに登って行くと、木々の間から稜線が見えるようになる。
稜線に茂る熊笹に混ざって紅葉がきれいだ。


紅葉はいっそう色濃くなって来る。
ダケカンバの黄色とナナカマドの赤色の組み合わせがいい。


ところどころで木々の間から南アルプスが見えた。
これは東駒(=甲斐駒ヶ岳)の眺望である。


胸突八丁ノ頭を過ぎると一旦、平坦な道になる。
それを進むと最初の目的地である将棊頭山をしっかり視認できた。
頂上までは、まだもう少し登る必要がある。


東側は伊那の街並みの向こうに八ヶ岳


木曽側の木曽駒高原から茶臼山を経由して登って来るルートと合わさり、その分岐から少し進むと、いよいよ大きく眺望が開ける。
まず目が向くのが、三角にきれいに整った行者岩であり、その下の斜面の紅葉も美しい。


御嶽山も大きく、そして近くに見える。
期間限定ながら、頂上への登山が可能になったとニュースでやったいた。
あの噴火は山に登る者として色々と考えさせられたが、純粋に御嶽山はいい山である。
またいつか、山頂に広がる風景を見に行きたいと思っている。


そして、行く先の正面にどっしりと鎮座する木曽駒ヶ岳
山頂はまだまだ遠いが、天気も最高で、登頂に挑む高揚感は増してくる。


行者岩と御嶽山


分水嶺」の標柱が立つ場所からルートがふたつに分れる。
西駒山荘に向かうトラバース路と将棊頭山に直接向かう稜線ルート。
後者は冬道と表記されているが、今回は眺望の良い稜線を進むことにする。


この稜線ルート、一部でハイマツがうるさく、やや歩きづらいところもあった。
基本的に道は明瞭だが、分かりにくい部分もあり、視界が悪い時は避けるべきだろう。


それでも、木曽駒の眺望は最高なので、ここを歩く価値は大きい。
ここからだとまだ小さいが、宝剣岳の姿も見える。
山頂に続く尾根下の斜面がいい具合に色付いており、この先も楽しみである。


歩いてきた稜線を振り返って。
一部、岩場を越える場所もあったが、特段、難しい場面はなかった。
やや雲が掛かっているけど、背後には穂高乗鞍岳の姿もあって、広々とした風景を行く。


9:40 将棊頭山
スタートから4時間で将棊頭山に到達。
最後が思っていた以上に急で、俄に疲労を感じることとなった。
そのせいもあって、普通にひとつの山を登頂したという感覚だった。
山頂柱は手書きで、なんだかちょっと違和感があるが…。
それは置いておいて、このピークは360°の大展望である。


まずは何と言っても木曽駒である。
これから歩く「馬の背」といわれる稜線を目で追うことができる。
陽のまわりが良くなって、紅葉もいっそう鮮やかに見えた。


西側に御嶽山と、少し雲が掛かった乗鞍岳


北側には槍ヶ岳穂高岳笠ヶ岳などの北アルプスの中核を一望。
こちらからだと、奥穂から西穂の縦走路が良く見える。


東側には伊那谷を隔てて、南アルプスの山並み。
三角の甲斐駒から、仙丈ヶ岳北岳間ノ岳、西農鳥岳と続く。
一番右には、富士山の頭も少しだけ見ることができた。


なかなか秀逸な眺望のピークだった将棊頭山。
ここでもっとゆっくりしたかったが、木曽駒まではまだ長いので10分程度の滞在であった。
でも、伊那側の斜面の下に見える西駒山荘は、どうしても寄り道したかった。
すぐそこに見えるが、植生保護のため直に下ることはできず、やや遠回りすることになる。

2014年に建て替えられた小屋はとてもきれい。
左側にある石室は小屋が拓かれた100年前に建てられたもので、有形文化財にもなっている。


ここで、西駒山荘の成り立ちについて、少し触れておこう。
それは、このルートが舞台となった「聖職の碑」の物語と切っても切り離せないものである。
浅田次郎の小説「聖職の碑」は、1913年(大正2年)夏に発生した学校登山での大量遭難事故を題材としている。

地元中学生、教師、同窓生の総勢37名で出発したパーティは桂小場から木曽駒を目指す。
登山計画は綿密だった。
しかし、当時の気象予報では把握しきれなかった台風との遭遇が悲劇を引き起こす。
宿泊予定だった伊那小屋(今の宝剣山荘付近)が登山者の失火で使い物にならない不運。
焼け跡にハイマツや合羽で簡易の屋根を作り、ビバークを試みる。
だが、暴風雨は防ぎきれず、低体温症で生徒のひとりが亡くなってしまう。

これで一行はパニックに陥る。
その中で、数名の同窓生が教師たちの制止を無視して、下山を始めてしまう。
彼らの合羽を失い、それまでも気休め程度の機能しかなかったビバーク小屋は、まったく意味をなさなくなる。
その結果、残った一行も暴風雨の中、下山することを余儀なくされてしまう。
そして、木曽駒から将棊頭山に掛けての稜線で計11名が遭難死する結果を招くのである。

以上が遭難事故の概要である。
なんて書いているが、実はまだ小説を読んでいないので、いつかは読まねばなるまい…。
物語は生徒たちを救おうと自身を犠牲にした校長に焦点を当て、教師として、人としての強さ、愛情を描いているようだ。

この遭難の後に、地元の多くの寄付により建てられた避難小屋が西駒山荘の原形となる。
遭難事故から2年後の1915年に完成した石室は、今でもほぼ当時のまま現存している。
100年に渡り木曽駒登山の安全を支えてきた石室はしっかりした造りで、風格すら感じる。
メインルートから外れても変わらずここにある、というのも、なんだか感傷的な気持ちにさせられた。

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水場で補給をしたら、木曽駒に向けて再出発。
将棊頭山で急に疲労感が強くなったので、この段階でプランBである「千畳敷からロープウェイ下山」に切り替える決心をした。
先を急ぐ気持ちから解放され、これで、この稜線をじっくりと味わうことができる。


すでに葉を落として、実だけ残したナナカマドが青空に映える。


東側に広がる斜面の紅葉が、雲の陰影でくっきりと色分けされていた。
このあたりから、紅葉が最高潮となってくる。


西駒山荘から緩やかな稜線をしばらく進むと、遭難記念碑に出くわす。
この大きな岩陰で力尽きた者もいたのだろうか?
今日のように晴れていれば、素晴らしい稜線なのに。
遭難を美談にするのとは違うが、彼らの足跡を辿る今回の山行は、どうしても胸が詰まるような思いになる。
静かに手を合わせて、さらに稜線を進む。


行く先は開放的な稜線であるはずだが、いつの間にか、伊那側からガスが湧いて来た。
少しずつ近づいているはずの木曽駒が隠れてしまい、ちょっとがっかり…。


ただ、紅葉(黄葉)はまさにベストなタイミングだった。
熊笹の緑色とのコントラストが最高である。


右手には御嶽山を眺めながら。


ここで一旦、稜線から離れて濃ヶ池に向かう。
当初、木曽駒から宝剣山荘経由で帰りに訪れる予定だったが、下山を千畳敷に決めたので。
でも、ここだけは外せず、寄り道をする。


振り返った斜面の紅葉がすごく、今回の山行でここが一番だったかな。
山肌を埋め尽くすオレンジ色に思わず息を呑む。


稜線の分岐から15分ほどで濃ヶ池のカールが見えて来た。
ここも期待通りにいい色付きのようだ。
先程まで掛かっていたガスも一時的なものだったようで、ひと安心。


さてさて、どんな風景を楽しませてくれるだろう?


11:00 濃ヶ池
これは美しい。湖畔に立って、紅葉の山肌を見上げる。


岩稜が小さな池を半分、取り囲むように続いている。
さざ波立って完全な水鏡ではなかったが、湖面への映り込みも。


黄色の密度が一番濃い部分。


例年だと、これにナナカマドの赤色が加わって、もっと艶やかな紅葉になるらしい。
今年は台風の影響で葉が散ってしまったのか、残念ながら赤色系は外れだったみたい。
ちょっと惜しい気もするが、これでも十分に思えた。


濃ヶ池の周辺はここまでと違って、登山者が多かった。
ロープウェイで千畳敷からスタートした人たちが、木曽駒との周回で訪れているのだ。
それでも大混雑ということは全然なく、静かでゆっくりと時間が流れているようだった。

濃ヶ池を楽しんだら稜線に戻る。
途中、しっかりと赤く色付いているナナカマドもあった。


谷の向こう側に見える壁は伊那前岳
その下の斜面は紅葉が谷に流れるかのようで、なかなか圧巻の秋の風景。


伊勢滝方面の紅葉はまだだったが、色付いたらここもすごいことになりそう。


最高の紅葉ゾーンを抜けて稜線に復帰したら、いよいよ木曽駒に向けてラストスパート。
横目で御嶽山乗鞍岳を眺めながら、馬の背の稜線を進む。


ウラシマツツジの紅葉も鮮やか。


緩急のある稜線を登って行く。
時々、山頂から降りて来る(おそらく濃ヶ池に向かう)登山者とすれ違うが、ここも静かだ。


振り返って、将棊頭山から続く稜線を一望する。
何とも穏やかな風景で、ここが悲劇の遭難事故の現場とは、とても思えなかった。


さっきまでいた濃ヶ池を稜線上から見下ろす。


山頂へはもうひとつ急登が待っていた。


再び振り返って、茶臼山、行者岩から将棋頭山に続く稜線。
稜線直下から谷底に向けてグラデーションになっている紅葉を眺める。


斜面の紅葉をアップにしてみる。


木曽駒から北に延びる支尾根の紅葉も濃密な色付きだった。
稜線と重なって写真では分かりづらいが、背後に見えているのは麦草岳。


ここが最後の頑張りどころで、軽い岩場も越えて行く場所もある。
ちなみに、見えているピークは頂上ではないので、騙されないように。


眼下には濃ヶ池のパノラマ。


急登をクリアして、あとは山頂に向けて緩やかな稜線を残すのみ。
長かったクラシックルートの仕上げに掛かる。


左手には宝剣岳と中岳。荒涼とした風景が広がっている。


頂上山荘への巻き道を分岐して、これが本当に最後の登り。


チングルマの葉の紅葉。


頂上直下だが…、本当にちょっとした登りなのに、なかなか前に進まない。


13:00 木曽駒ケ岳・山頂
そして、スタートから7時間半掛かって、ついに木曽駒ヶ岳に登頂完了。
濃ヶ岳の寄り道を差し引くと6時間半になる。
時間的にはほぼコースタイムどおりだが、正直、疲労困憊と言っていい。
思っていた以上にキツかったが、その分、達成感もひとしお。


木曽駒自体は残雪期に一度、登っているが、雪のある季節とは全く異なる風景である。
ここまでの静けさとは打って変わり、千畳敷からの登山者で賑やかな山頂。
その片隅で、麓から登り上げた成果をしっかりと噛みしめる。

まずは山頂の神社に参拝して、無事の登頂に感謝の意を。
社殿は伊那側と木曽側にふたつあり、こちらは伊那駒ヶ岳神社。


そして、こちらが木曽駒ヶ岳神社。
5月に登った時は、この鳥居は凍てついていた。


それでは山頂からの眺望を楽しもう。
まずは御嶽山方面。
至近の二峰は木曽前岳(左)と麦草岳(右)。
二峰の間にも登山道はあるが、かなりの険路のようだ。
なお、穂高方面は残念ながらガスの中で見えず。


ここからは反時計回りに。
ピラミダルの山容で存在感のある三ノ沢岳。
高山植物が素晴らしいようなので、いつか歩いてみたいと思っている。


空木岳と南駒ヶ岳は、何とかガスに隠れずにいてくれた。
ここの稜線もいつか辿りたい。


南アルプスも雲が大勢をを占めてきた。
手前には中岳、宝剣岳、伊那前岳


険しい岩稜の宝剣岳をアップで。


伊那前岳の稜線は伊那谷に突き出すようで格好いい。


風景をひと通り楽しんだら、お握りだけの簡単なランチ。
風は少し冷たくて、温かいものを食べたい気もしたが、本当に疲れてしまって、お湯を沸かすのも億劫に…。
苦労して登って来たことの充実感はあったが、早く下山して楽になりたい。

山頂滞在20分ほどで、千畳敷に向けて下山を開始する。
中岳は大した登りでないが、残雪期に登っているし、気力が湧かず、右手に伸びる巻き道へ。


その巻き道は岩がゴロゴロ。
滑落とかの危険はなさそうだけど、決して楽な道ではなかった。
山と高原地図」では、何気に破線ルートになっていたりする。


周囲には奇石がそそり立つダイナミックな風景が広がっている。


木曽駒は岩の山なんだな。
今回は宝剣岳に登るつもりはなかったので、ヘルメットを持ってきていないよ。
落石とか大丈夫か、ちょっと心配になる。


行きは中岳経由、帰りは巻き道を選ぶ人が多いのか、登山道は少々、混雑していた。
岩場ではちょっとした渋滞も発生。


中岳から下りて来るルートと合流すると、目の前に大きく宝剣岳
実はまだ登っていないので、三ノ沢岳とセットで計画はしている。


乗越浄土からは、登って来た馬の背の稜線ルートを見渡すことができた。
なんだか感慨深い気持ちになる。


正面に伊那前岳へ向かう稜線が続く。
こちらにも北御所という麓から登って来るルートがある。
残雪期には、見えているピークまで登ったが、なかなかいい場所だった。


ここで右に折れて、乗越浄土から千畳敷に向かって急降下を開始。
疲れた足は踏ん張りが効きづらいので、階段やザレている箇所は特に慎重に下る。


眼下の千畳敷カールは、木々の紅葉はすでに終盤だったが、草紅葉はきれいだった。
南アルプスは雲が掛かっているが、伊那の街が見下ろせて、最高のロケーション。


振り返り見上げれば、迫力のある岩稜。


最後まで見どころ満載のルートだったが、ガスが上空を覆って、カール内まで陽が届かなくなってしまった…。


午後の斜光で、光り輝く草紅葉の風景が見られるかなと思っていたので、ちょっと残念。
それでも、千畳敷カールは雄大だった。


カールの底に降りるルートを選んでいたので、最後はロープウェイ駅に向かって、登り返さなければいけなかった…。
こんなちょっとの登りでも、キツいと感じてしまう。


ロープウェイ駅の周辺は、それなりに混んでいて、乗車待ちの列ができていた。
平日でもこれだけいるとは、さすがは人気の木曽駒。(登山客は半分以下?)
ただ、整理券の配布はなく、列の最後尾に並ぶ必要があった。
ゆっくりコーヒーでも飲みながら待とうと思っていたのに、当てが外れたな…。


ダイヤは関係なしの順次運行で、30分強で順番が回ってきた。
その後はバスで駒ヶ根駅まで行って、飯田線に乗り換え。
ここでの電車の乗り継ぎが良くなく、40分待ちの後、伊那市駅へ。
さらにタクシーで桂小場に戻ると、千畳敷への下山から3時間も経っていた…。

途中、電車の中から夕陽に赤く染まる南アルプスが見えて、それはきれいだった。
下校中の学生さんたちで溢れる車内では、流石にカメラを向ける勇気はなく、写真はなし。
きっと稜線から眺める夕景は素晴らしいことだろう。
西駒山荘に泊まれなかったのが、唯一の心残りになった。

西駒登山道は、じっくりと存分に山に浸ることができる、実にいいコースだった。
そのクラシックルートは、どこか寂しげではあるが、静けさの中に山の息遣いを感じられたような気がした。
体力的にはキツい山行だったが、色鮮やかな紅葉とともに、確かな記憶として残るだろう。

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