稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

仙丈ヶ岳 - 麗しき南アルプスの女王、美しく優雅な夏山情景

 

日程 : 2018.7.22(日) 日帰り
ルート: 北沢峠 → 小仙丈ヶ岳仙丈ヶ岳 → 大仙丈ヶ岳 → 仙丈小屋 → 北沢峠 
天候 : 晴れ


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南アルプスの女王」仙丈ケ岳へ。
そこには、そう呼ばれていることを素直に納得できる風景が広がっていた。
ネットや本で幾度と見ていたはずなのに、それでもちょっと心が震えるようで。
そして、どこか優しい風景に心奪われてしまった夏山情景。

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南アルプスは前衛峰の日向山、鞍掛山は登ったことあるけど、主稜線は初めてだったりする。
特段の理由はないのだけど、少々アクセスが面倒くさいところは遠因なのかも。

仙丈ヶ岳の登山口である北沢峠へは、マイカーで乗り付けることはできない。
北沢峠に通じている南アルプス林道は通年、マイカー規制が敷かれているので、バスに乗り換えてのアクセスが必要になる。
長野側だと伊那の仙流荘、山梨側だと芦安が中継ポイントとなるが、前者が便利である。
芦安からだと北岳の登山口でもある広河原でバスを乗り継がなければならない。

仙流荘の駐車場に着いたのは4時前だった。
それでも、バス乗り場に近い「上の段」は満車に近い状態で、やはりすごい人気。
河原にある「下の段」もかなりの広さがあるので、停められないことは余程ないだろう。

時期や曜日によってバスのダイヤは異なるが、この日の始発便は5:30。
しかし、4時過ぎから列が出来はじめていた。
やることもないので、我々も4時半ぐらいに並ぶことに。


定刻より少し早く、5:15ぐらいからバスが運行を始め、2台目に乗車できた。
バスはカーブを攻めながら?なかなかのスピードで林道を登って行く。
僕は大丈夫だが、気持ち悪くなる人がいないか、ちょっと心配になった。


北沢峠への到着は6時。後続のバスも続々と到着する。
ここは甲斐駒ヶ岳への登山口でもあり、半々ぐらいに登山者が散っていく。
なお、下山の最終便は16時なので、日帰りの場合は注意が必要である。


6:10 北沢峠(登山開始)
トイレなど準備を済ませて、いざスタート。
登山口はバス停のすぐそばにある。
仙丈ヶ岳へはコースタイム240分の表示。


まずはシラビソの林を登って行く。
ところどころに急な部分もあるが、良く整備されており、とても歩きやすい道だった。


〇合目の表示があって、いい目安になる。
序盤は同じような林の中の登りが続くので、特に写真も撮らず、サクサクと四合目。
とにかく、仙丈ヶ岳の楽しみは森林限界を越えてからなので、ここはどんどん進む。


五合目の藪沢大滝ノ頭が近づくと、針葉樹に混ざって広葉樹も見られるようになる。
登山道の雰囲気も明るい感じに。


マルバダケブキの花畑があった。


所々で木々の間から眺望が開けるようになり、これは北岳


オベリスクが目立つ鳳凰三山も。


スタートから1時間20分で、五合目の藪沢大滝ノ頭に到着。
500メートル登って来たことになるから、なかなかのペースだろう。
馬の背ヒュッテ方面への道が分岐するが、ここはまっすぐ、小仙丈ヶ岳を目指す。


まだもう少し樹林帯が続くが、背後には甲斐駒ヶ岳も見えるように。


なんだか空が近くなった感じがする。
もうすぐ待望の風景が見られそうな予感。


そして、ついに森林限界を越えた。
見渡す先には素晴らしい青空が広がっている。
ここからが、いよいよ仙丈ヶ岳の本番と言って良い。


仙丈ヶ岳はまだ姿を現さないが、背後に大きく聳える甲斐駒と鋸岳がいい。
その後側には八ヶ岳も望むことができる。


下界には雲が広がっているが、北アルプスも見渡すことができた。


ガスってしまう前に遠方の山々を押さえておこう。
立山方面の雄山と剱岳。その右側に針ノ木岳蓮華岳


後立山連峰
左から、鹿島槍ヶ岳五龍岳、そして白馬三山。


ハイマツの茂る尾根を登って行く。
最初の目的地である小仙丈ヶ岳まではもう少し距離があるが、この道は歩いていてなんだかワクワク感がある。


登るごとにパノラマ感が増していく。甲斐駒の存在感がすごい。


となりの尾根の上に穂高岳槍ヶ岳が姿を現す。


乗鞍岳も。


登山道に続く人の列。
さすがに人気の山、人が途切れることはなかった。


北岳鳳凰三山の間に、富士山が登場。
これはなかなか贅沢な眺望ではないか。


8:35 小仙丈ヶ岳
藪沢大滝ノ頭から1時間で小仙丈ヶ岳に到着。


ここでついに南アルプスの女王、仙丈ヶ岳と初対面である。
「お目にかかれて光栄です」なんて、心の中で呟いてみたり(笑)
均等の取れた緩やかな曲線を描く小仙丈沢カールが美しすぎて、思わずため息が出る。


ここの眺望は、もちろん仙丈ヶ岳だけでない。
南側の方角に、富士山、北岳間ノ岳
日本の高峰 1,2,3位が揃い踏みである。
ちなみに間ノ岳は、2014年に標高の見直しがあって、奥穂高岳と同率の3位になった。


北岳から塩見岳まで続く南アルプスの主稜線。
塩見岳の背後には、赤石岳など南アルプスの南部まで見えている。
この山域も歩いてみたいが、いつになるだろう。


北側の眺望は穂高、乗鞍から中央アルプスの大パノラマが広がっている。
中央アルプスの後には、半分隠れるように御嶽山がある。
目視では白山も見ることができた。


さあ、ここからは山頂に向けて最高の展望ロード。
まだまだ登りはあるが、こんな風景の中なら疲れなど感じないというもの。


伊那谷に早くもガスが湧いてきて、中央アルプスがすでに危ない。
こちらも眺望が奪われてしまう前に、早く山頂に立ちたいところ。


それでも、これだけ雄大な景色を前にしたら、自然と歩みは遅くなってしまう。
本当に見事なカールである。
ただ美しいだけでなく、優雅で気品溢れる、といっても言い過ぎではないだろう。


仙丈ヶ岳からは一旦、少し下って、山頂に向けて最後の登り上げ。


ちょっとした急登と終えると仙丈小屋への道が分岐するが、ここは稜線伝いに山頂を目指す。
見上げる夏空がどこまでも青く、清々しい気分になる。


振り返ると甲斐駒が雲を堰き止めてくれている。
八ヶ岳はもうガスに飲まれてしまったようだ。


右手には藪沢カールが広がっている。
優雅な小仙丈沢カールとは異なり、こちら側は少し荒々しい風景である。


いくつか小ピークを越えて(実際にはどれも巻く)、山頂はもう目と鼻の先。
山頂にはたくさんの登山者がいるのが見える。


9:40 仙丈ヶ岳・山頂
そして、仙丈ヶ岳の山頂に到着。
スタートから3時間半での登頂となった。


山頂からの眺望はここまでと大きく変わらないが、当然の大展望である。
新鮮なところでは、隣の大仙丈ヶ岳へ続く稜線が格好いい。
この山行の計画当初から歩いてみたいと思っていた稜線である。
時間的にも、体力的にも余裕があるので、予定通り大仙丈ヶ岳まで足を伸ばすことにする。


北岳間ノ岳にも雲が迫っているようだ。


雲を押し返している甲斐駒、鋸岳も力強い感じがして格好いい。
眼下には、藪沢カールに立つ仙丈小屋も見える。


北アルプスも雲が優勢に。
こう見ると、一番天気に恵まれていたのはこの界隈だったのかも知れない。


それでは大仙丈ヶ岳に進もう。
こちら側には全然人が歩いておらず、ここからは静かな山歩きを楽しめそうだ。


この稜線は花畑ロードになっていた。
たくさん咲いていたのはイワギキョウ。


タカネツメクサ


イブキジャコウソウ?


イワベンケイとミヤママンネングサ


ウサギギク


稜線は岩稜帯になっていている。
難しいところはないが、伊那側は切れ落ちているので注意して進む。
なかなかのアルペンムードで、短い時間だったが、楽しい稜線散歩をすることができた。


鞍部から仙丈ヶ岳の山頂を振り返る。
随分と仙丈ヶ岳が上に見えるが、ここまで100メートルほど下ったことになる。
この稜線を分けて、穏やかな風景と荒々しい風景が同居していて、なんだか面白い。


仙丈ヶ岳から30分ちょっとで大仙丈ヶ岳に到着。
名前に「大きい」と付いているが、実際には仙丈ヶ岳よりも60メートルぐらい低い。


中央アルプスはガスで隠れて、断片的にしか見えない。


ここは塩見岳まで続く長大な「仙塩尾根」の入り口。
目を凝らして探してみたが、この尾根を歩いている人は見えなかった。
いつか歩いてみたいような、みたくないような…。


北岳間ノ岳にも雲が湧き立ってきた。
時期にガスに飲み込まれてしまいそうだ。


ここでランチ休憩とする。
凍らせて持って来た、デザートのゼリーが美味しかった。


ランチの間に、雲は随分と多くなっていた。
再び稜線を伝って仙丈ヶ岳に戻る。
左側に延びている尾根は地蔵尾根で、伊那側から登るクラシックルートが通じている。


仙丈ヶ岳の南東側に広がる大仙丈沢カールはとても雄大だった。


帰りも花を楽しみながら。
岩陰にひっそり咲くタカネツメクサ。


タカネニガナとイワギキョウ


ミネウスユキソウ


イワベンケイとイワギキョウのつぼみ


ミヤママンネングサとイブキジャコウソウ


仙丈ヶ岳の山頂は続々と登って来る登山者で、さっきよりも賑わっていた。


喧噪を避けるように、山頂を素通りして仙丈小屋の立つ藪沢カールに下りる。


ミヤマダイコンソウ(たぶん)


チングルマ


チングルマの果穂


ミヤマシシウド


仙丈小屋の前から見上げる藪沢カールと仙丈ヶ岳
下山は馬の背ヒュッテを経由して、藪沢大滝ノ頭に戻る。


小屋の下の水場は、細いけどちゃんと出ていた。
もう少し季節が進むと厳しくなるかも知れない。


カラマツソウ


仙丈ヶ岳があっという間に、どんどん遠ざかって行く。
こちらのルートは小仙丈沢カールの開放的な風景を見ることはできないので、行きは小仙丈ヶ岳経由がおすすめかな。


途中、柵で保護されている花畑があった。


馬の背ヒュッテを過ぎて、藪沢の上流部を渡りる。
ここから太平山荘に下る藪沢ルートは残雪で通行止と聞いていたが、規制ロープは外されていたので通れるようになったのかも。
今回は素直に大滝の頭(五合目)に向かい、登りのルートに復帰する。


クルマユリ


シナノキンバイ


1週間ぐらい前のレポートでは雪渓となっていた箇所。
雪解けが進んで雪はわずかに残る程度で、問題なく渡ることができた。


藪沢大滝ノ頭で朝来た道に合流したら、あとはひたすらの下り。
2合目には長衛小屋へのショートカット路の分岐がある。
途中でさらに北沢峠にも分かれるこの道は、直進ルートと異なり登り返しがなく、傾斜も緩やかなのでおすすめしたい。


北沢峠よりやや広河原側で林道に出て、緩やかに坂を登れば今回の山行は終了。


14:45に北沢峠着。
仙流荘に戻るバスはダイヤに関係なく、定員が集まったら順次出発していた。
少し前にバスは出てしまったようだが、待合小屋で残ったおやつを食べながら15分ぐらい。
思っていたより、早く帰路に着くことができた。

朝イチのバスに乗れば、帰りの時間に余裕はあると思うので、体力に不安がないのであれば、大仙丈ヶ岳まで足を伸ばすことを是非おすすめしたい。

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