稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

恵那山 - 梅雨の晴れ間、「がっかり百名山」をじっくり味わう

 

日程 : 2018.6.17(日) 日帰り
ルート: 神坂峠 → 大判山 → 恵那山(ピストン)
天候 : 曇り(ガス)時々 晴れ


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梅雨の貴重な晴れ間となりそうな週末、どこかに登らないともったいない。
でも、この時期、名古屋周辺で絶対に登りたい山がなく、選ぶのに迷う。
鈴鹿は暑いだろうし、ヒルも怖いし。

最終的に選んだのは「がっかり百名山」なんて言われていて、後回しになっていた恵那山。
眺望が良くないのが「がっかり」の理由らしいけど。
さてさて、その真相は?

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恵那山には東西南北から山頂を目指すコースがある。
その中で最もメジャーぽいのが、阿智村の園原側から登る広河原ルートである。
マイナス評判の割に多くの人が登るのは、やはりこの山が百名山であるからだろう。
最短で山頂に立てる広河原ルートは、それこそ眺望が期待できないようだが、百名山登頂がメイン目的の人たちはこのルートを選ぶ傾向にあるようだ。

僕が選んだのは神坂峠からの縦走ルート。
距離は長くなるが、このルートが一番、眺望がいいそうなので。
実際にはアップダウンが多く、かなりタフなコースだったことも、先に述べておく。

スタートとなる神坂峠へは中津川からのアプローチとなる。
最後は狭い林道をひたすらクネクネと登って行き、中津川インターからは40~50分は掛かっただろうか。
途中、小熊に出くわしてヒヤッとする場面も。
いけない…、熊鈴を忘れた。
ザックを雪山仕様から夏用にする時に付け忘れるミス…。
山友はしっかり持って来ていたので、まぁ大丈夫かな?

神坂峠には5時半前に到着。
駐車スペースは広くなく、7~8台が限度だろう。
下山時には路肩部分が少し広くなっている場所にも数台が路駐していた。


5:40 神坂峠(登山開始)
神坂峠は霧に煙っていた。
天気予報では朝のうちの方が晴れ間が多そうなので、回復を期待しながらスタート。


ガスがなければ見晴らしがいいはずの笹原を進む。


とはいえ、ガスはそれほど濃くなく、朝日が透けて見えた。
ここは、幻想的な山の朝、と心に言い聞かせておこう。


15分ほど登ると最初のピークである千両山に到着。
ここは360°のパノラマが得られるはずなんだけど…。


眺望ポイントが少ない恵那山登山の中で、早くも前半戦のハイライトといえるピークだったので、ちょっとがっかり…、
なんて思ってたら、何やら急にガスが抜けてきそうな気配がする。
少し待ってみると青い空が見えて来るではないか。


恵那山の特徴である平らな山頂部も、少しずつ姿を現しはじめた。


遠くには南アルプスの山並みまでも。


こちらはヘブンスそのはらスキー場から来る「富士見台パノラマコース」。
気持ち良い稜線が続いている。
ブログには書いていないが、冬に雪山ハイクで来ているが、その時も天気は良くなかった。
ちなみに、恵那山はこっちじゃないので要注意。(結構間違える人がいるみたい)


ガスは完全に抜けはしなかったが、恵那山はほぼ全容を見せてくれた。
そして気づく…、これ結構、遠いな。
もう少し待って、もっとクリアな恵那山を撮りたかったが、この序盤で多くの時間を費やすわけにもいかず、先に進むことにする。


千両山からは一旦の下り。
クリアではないが、中津川の街を見下ろしながら進む。


登山道には、あちこちにサラサドウダンが咲いていた。
ちょうどいいシーズンだったようだ。
朝露の雫を纏った姿が可愛らしい。


ルートは樹林帯に入って、ガッツリ下って行く。
今は帰りのことを考えるのはやめておこう。


千両山から20分ほどで鳥越峠に到着。
スタートの神坂峠よりも標高を下げている悲しい事実…。
ここには神坂峠の手前にある「強清水」から登ってくるルートもある。


鳥越峠からしばらくはほぼ水平の道が続き、全然、高度を稼がない。


基本的には樹林帯の中を進むが、少しだけ眺望が開けた場所から御嶽山が見えた。


ひと際、赤い花を付けていたサラサドウダンが瑞々しい。
個体ごとに色付きが異なっていて興味深い。


南アルプス塩見岳(中央)と農鳥岳(左側)。
右側のピークは蝙蝠岳だろうか?


大判山に向けた登りが始まる。


7:10 大判山
神坂峠から1時間半で大判山に到着。


ここからも恵那山が大きく見えるはずだけど、まだガスが抜け切ってくれない。
残念ながら、裾野が薄らと見えるだけだった。


登山道には相変わらずサラサドウダンがいっぱい。


大判山からはアップダウンを繰り返して、なかなかタフなコース。
これは辛い下山を覚悟する必要がありそうだ。


もうだいぶ色濃くなっていたが、新緑がきれいだった。


少しだけシャクナゲが咲いている場所があった。


青空がだいぶ多くなって来たようだ。
しかし、ここまで来てしまうと、どーんと恵那山が見える場所はないのが残念。


足元にも花が増えてきた。
マイヅルソウ


イワカガミ


ずいぶんと小さい松ぼっくり?が可愛いらしい。
これから大きくなるのだろうか?


ゴゼンタチバナ


このあたりまで来ると、もう登り一辺倒。
ここまであまり標高を稼いで来なかった分、最後は山頂に向けてしっかり登ることになる。
木々の隙間から覗く青空が気持ちいい。


ここはややザレている急登。


眺望は相変わらずほとんどない。
でも、少しだけ木々が途切れているところがあり、そこから北側を見渡すことができた。
見れば眼下には雲海が広がっている。
晴れてきたというか、ガスの上に出ることができたのか。
いまだ少し噴煙の上がる御嶽山を望む。


乗鞍岳も頭を出している。


穂高の吊尾根もくっきり見ることができた。


急登を登り終えると、宮前ルートと合流。
ここで平らな山頂部に乗り上げたことになる。
ちなみに、宮前ルートは古の信仰の道で、かのウェストンもこのルートを登ったらしい。
距離もコースタイムも長く、かなりきついルートのようだ。


山頂まではほとんど水平移動になり、この先、息の上がる場所はない。


木々が立ち枯れている場所があった。


そこのあたりからは、少しだけ西側の眺望を楽しむことができる。


山頂が近づくとお社が点在するようになる。
恵那神社の奥宮本社と6つのお社があるそうだが、これは三乃宮社。
一乃宮と二乃宮は宮前ルートにあるのだろうか?


さて、眺望なしで“がっかり”と言われる恵那山だが、しっかり眺望が得られる場所があった。
四乃宮社の裏手に踏み跡があり、進んでみると…、
これはいい場所ではないか。


中央アルプス八ヶ岳南アルプスの広角な眺望。


中央アルプス木曽駒ヶ岳空木岳


南アルプス甲斐駒ヶ岳仙丈ヶ岳北岳間ノ岳農鳥岳


さっきまで雲で隠れていた部分も見えて来た。
南アルプスが勢揃いである。


荒川岳悪沢岳)、赤石岳聖岳、上河内岳


聖岳と上河内岳の間には富士山まで見ることができた。


前情報では避難小屋裏の岩場が唯一の展望ポイントと思っていたので、嬉しい発見だった。
広河原ルートを歩く人が多く、ここまでは来ないのだろう。
ここはぜひおススメしておきたい場所である。

登山道に戻り、恵那山頂避難小屋に到着。


そして、裏手にあるこの岩場が有名な眺望ポイント。
難しくはなく、簡単に登ることができる。


こちらからも南アルプスを一望できる。
ただ、少し木々がうるさく、さっきの場所の方が開放感があるかな。


岩場を降りて、山頂の三角点に向かう。
その途中にあるのが、恵那神社の奥宮本社。
祀られている神様は、伊邪那岐イザナギ)、伊邪那美イザナミ)だそうな。


10:10 恵那山・山頂
奥宮本社の裏手に回り込むと、恵那山の山頂に到着である。
ちなみにここは最高点でなく、一等三角点がある場所となっている。
まぁ、山頂部はほぼ平らなので、あまり拘る必要もないが。

山頂標には「胞山」の表記もある。
日本神話は全然わからないけど、イザナギイザナミの子、天照大神アマテラスオオミカミ)の胞衣(エナ、へその緒)をこの地に納めたという伝説が、この山の由来らしい。


もうひとつの山頂標。阿智セブンサミットver.


そして、山頂の広場の一角にある、この展望台。
恵那山のことを記事にしているブログなどでは必ず登場し、何かと“評判”になっている。
僕も早速、登ってみる。


って、本当に何も見えない…。
これは完全にネタのレベル。
周囲の木が成長した、という時間的な要因でもない気がする。
ある意味、これが「がっかり百名山」のシンボルかも知れない(苦笑)


でも、登ってみると、ちゃんと景色もいいし、ルートも変化があって面白く、なかなか味わい深い山だった、とフォローしておく。

三角点と避難小屋の間に、少しだけ開けた場所があったので、そこまで戻ってランチ。
夏はノンアルビールが至福の時間となる。


ランチのあとは、早々に下山開始。
宮前コースとの分岐を過ぎた後は、一歩の段差が大きいところがあり、苦手な下りだった。


ミツバオウレン


サラサドウダン


まさに鈴なりに咲いていた。
今回の山行でこの花を好きになったかも。


天気は悪化傾向で、これ以上の眺望は期待できそうにない。


おそらく天狗ナギ。
登りではガスでちゃんと見えなかったが、登山道ギリギリまで崩壊が進んでいた。


そのうち、山全体が崩れてしまうのでは、とちょっと心配になってしまう。
ルートが付け替えられている箇所もあったので、このあたりの通過には注意が必要だろう。


笹原の混じる縦走路はアップダウンが多く、予想通りにかなりキツい下山となった。
本格的な夏山シーズンに向けたトレーニングと思って、修行の時を過ごす。


大判山への急登。


鳥越峠から千両山へ。
標高差は100メートルほどだが、しっかりと登らされる…


千両山の気持ちいい笹原は、すっかりガスの中だった。


ズミの花


14時半、疲労感たっぷりで神坂峠に下山完了。
下山に掛かった時間は3時間半だった。


色々いわれる百名山・恵那山。
個人的には「がっかり」では決してない山だと思った。
神坂峠ルートを選んだのが正解なのかも知れないが、変化があってなかなか面白いコース。
体力はまあまあ必要だけど、これから恵那山に登るならぜひ。

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