稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

木曽駒ヶ岳 - 白く穏やかな春の日、GW残雪ハイク (2017.4.28)

 

ルート : 千畳敷 → 乗越浄土 → 木曽駒ヶ岳 (ピストン)
天候 : 快晴


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GW突入前日に代休を使って木曽駒ヶ岳へ。

中央アルプスに位置する木曽駒は、ロープウェイを使って労せずに3000メートル級の本格的な山岳風景が体感できる「千畳敷カール」が有名で、多くの観光客が訪れる山である。
また、登山もロープウェイを降りて2時間程度で山頂に立つことができる。
山小屋も充実しているので、「はじめてのアルプス」にはもってこいの環境が整っているといえる。

ただ、それは夏山シーズンの話であって、冬は当然ながら深い雪に閉ざされる。
それでも、ロープウェイを利用できるため、一気に雪のアルプスの中心部に行けてしまう。
千畳敷の雪景色だけでも素晴らしいのだが、さらに登れば、美しく厳しい冬山に出会えることは間違いないだろう。

駒ヶ岳ロープウェイへのアクセスは路線バスとなる(タクシーも使えるみたい)。
駒ヶ根インター近くに位置する菅の台バスセンターに大きな駐車場があり、マイカーの場合、ここでバスに乗り換える。
バスの始発よりも早く着きそうなので、ひとつ手前の松川インターで降りて下道を行くことに。
途中、中央アルプスの眺望が良かったので愛車(今回からスバルのXVに)と一枚。
真っ白なピークは空木岳、南駒ヶ岳あたりかな?


駒ヶ根に入ると水仙がたくさん咲いていた。
水の張った田んぼに宝剣岳千畳敷カールが映り込んで、いい感じ。


菅の台からこの時期の始発は7:15。
ちょっと遅い気もするけど、山頂まで往復のコースタイムは4時間掛からないので、焦る必要はない。
GW突入前日のこの日は、20名ぐらいを乗せてバスは出発。
ちなみに、バスとロープウェイの運賃は往復¥3900で、少々お高いのは仕方ないか…


ロープウェイはいいポジションになれなかったので写真なし…。
ということで、いきなり、標高2600mの千畳敷カール。
雄大、そして真っ白な世界が目に飛び込んでくる。
これまでに写真で何度も見たことはあるけど、実際に目の前に広がる風景は圧倒的ともいえた。


ホテル前泊の人たちだろうか? 早くも乗越浄土まで目前の登山パーティが見えた。
しかしながら、とんでもない急斜面だ。


8:30 千畳敷(登山開始)
いきなりの素晴らしすぎる雪景色を楽しんだ後、準備を整える。
最初からアイゼン着用でスタート。
ルートは雪崩の危険を避けるため、まずはカールの底部に下りていく。

 
2日前の低気圧通過で、新たに雪が積もったようで、岩稜にうっすら雪が被っている。
その新雪が快晴の空に映え、最高の雪山日和となった。ここに立てただけでも、幸せな気分。
カールの中を蛇行して伸びるトレースに登山意欲が掻き立てられる。


木曽駒といえば、その本峰もさることながら、シンボル的な存在なのがこの宝剣岳である。
千畳敷側から見ると「剣」のようには見えないが、険しい岩稜は痺れるような格好の良さ。


出発した千畳敷のホテルからサギダルの頭方面に向かっていく団体さんたち。
山スキーだろうか?


雪の緩むこの時期、特に降雪があった後は雪崩を心配しなければならないが、思いの外、雪はしっかり締まっていて、不安を感じることはなかった。
乗越浄土に向かって徐々に斜度が増して行き、息も上がって苦しくなってくるが、目の前の一歩を確実に登り詰めていく。


振り返れば、伊那谷を挟んだ反対側には、南アルプスの峰々が連なっている。


着実に高度を上げ、千畳敷カールから見上げていた岩稜帯まで到達。
この岩、現地では「オットセイ」に見えたけど、写真ではあんまり?


乗越浄土の直前は、かなりえげつない登り…。容赦なく腿上げ運動を虐げられる。
前を行く歩荷さんもきつそうだった。


千畳敷のホテルはすでにかなり下に見えるようになった。
自分の後には、平日でそれほど多くないが、登山者の列が続いている。


息は切れているが、意外とあっさり乗越浄土へと登り切ることができた。
視界が開けて、目の前には中岳が現れる。


雪をまとった岩稜の向こうに、南アルプスを望む。
この画角だと仙丈ヶ岳から北岳間ノ岳塩見岳ぐらいまでかな。
富士山も見えているが、わかるだろうか?


緩やかな曲線を描く中央アルプスの稜線。
あの稜線の途中には西駒山荘があって、ロープウェイができる以前に賑わったクラシックルートになっている。
いかにも気持ちよさそうなルートで、いつか歩いてみたい。


大きな岩稜の向こうに見える白い頂は三沢岳。ピラミダルな山容に目を引かれる。


そして、これが宝剣岳の全容。
薄っすらトレースは残っているようだが、新雪でほとんど消えかかっていた。
端から挑戦する気はないが… 、機会があったら、無雪期には登頂してみたい。


稜線に出ると、さすがに風がある。
凍えるような寒さでは全くなかったが、しっかりエビの尻尾ができていた。


小高い丘といった感じの中岳は、労せずに登れてしまう。


息が上がる前に中岳のピークまで来ると、どっしりと構える木曽駒の山頂が目の前に広がった。
そして、その背後に御嶽山が控える。


美しい独立峰の御嶽山。この日は噴煙は見えなかった。


中岳は小さなピークだが、眺望は抜群、なかなかの絶景であった。
来た道を振り返ると、宝剣岳と背後に続く空木岳、南駒ヶ岳。三沢岳への稜線も秀逸だ。


伊那前岳の稜線と南アルプス連峰。


剣岳は改めて見るとすごい迫力。岩の要塞みたいな感じ。


三沢岳もなんだかとっても気になってしまう。
知名度も位置的にも地味なポジションだけど、これはいつか歩いてみないといけないな。 


さて、そろそろ木曽駒ヶ岳に山頂に向かいますか。
中岳からは一旦の下り。 雪原に続くトレースが画になる。


下っていく途中、雷に打たれたように大きく割れた岩が見えたけど、あっちが中岳の山頂だったみたい。帰りに寄ることにする。


さあ、山頂へ。


最後の登りは穏やかに見えたけど、山頂直下ではしっかり急斜面を登らされた。


10:10 木曽駒ヶ岳・山頂
そして木曽駒ヶ岳・山頂に到着。
千畳敷を発ってからわずか1時間40分だけど、濃密な時間だったように思う。


まずは登頂のお参りを。
木曽駒ヶ岳神社の鳥居とお社は凍てついていた。
ちなみに、山頂にはもうひとつ、伊那駒ヶ岳神社もあるはずなんだけど、雪で埋もれていて、どこだかわからなかった。


山頂からは北アルプスの眺望もばっちり。
居合わせたカップルの立ってる向こう側は切れ落ちていて(雪庇の上かも?)、見ていて少し怖い。


乗鞍岳と槍穂連峰の眺め。


乗鞍岳もまだ真っ白。


槍・穂高の重厚な峰々。その左側には笠ヶ岳黒部五郎岳など。


もちろん御嶽山も。


西駒山荘方面への稜線はやっぱり気持ち良さそう。
背後には八ヶ岳連邦が横に伸びている。


伊那前岳と背後の南アルプス


中央アルプスの全容。
北アルプスと比較していた訳じゃないけど、ちょっと侮っていたかも。


空木岳と南駒ヶ岳。いつか縦走してみたい。


そして、最後はやっぱり宝剣岳の存在感。今日は誰も登っていないようだ。


まだ、ランチって時間でもないので、景色を存分に楽しんだら下山に掛かる。


行きは素通りしてしまった中岳の山頂。小さな祠が祀られていた。


さくさくと乗越浄土まで戻ってきたが、時間はまだまだ余裕がある。
そこで、山頂から気になった伊那前岳の方へ歩いてみることに。


始めはトラバース気味のルート。
程よい雪質で歩きやすく、全然怖さはなかったけど、万全を期して慎重に進む。


この稜線、踏み抜くことはないけど、かなり雪深かった。
稜線の向こう側は雪庇になっているので、近づき過ぎない方が良いだろう。


こちら側から見る宝剣岳は切れ落ちていて、また違った迫力がある。
雪のある時期に、あの頂に立つなんて、よっぽどの勇気がないとできないのでは…


もう少し広角だと、こんな感じ。
ちなみに、崖に向かってトレースがある、山スキーヤーがここからドロップしたようである。


千畳敷カールへはこんな風に落ち込んでいる。
ここを滑り下りるなんてすごい、というか命知らず。。


伊那前岳九合目ピークと名付けられた場所(これは木曽駒への九合目?)に立つ。
この先は、雪庇の稜線が続いていた。
伊那前岳のピークまで行けば、きっと絶好の南アルプスの展望台になっているだろう。
ひとり分と思われるトレースが見え、慎重に行けば大丈夫かなと思ったけど、いかにも踏み抜きそうなので、おとなしくここまでとした。


乗越浄土まで戻って千畳敷へ下る。
ここはコンディションによってはアイスバーンになりやすく嫌らしいが、この日は心配なし。


それでも、転んでしまったら、ただ事では済まなさそうなので、細心の注意で下っていく。


斜度が緩くなったら尻セードで一気に。
でも、暖かさで雪が緩くなっており、勢いはイマイチ。(写真はイメージ…)



最後は少しだけ登り返してゴール。
千畳敷カールにはTバーリフトが掛けられ、春スキーを楽しむ人がいた。


最後に千畳敷カールと宝剣岳を見上げて。
真っ白で、真っ青で、穏やかな春の日。短いながらも、充実の雪山登山となった。



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