稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

焼岳 - 夏山はじめ、北アルプスの活ける山へ (2017.7.22)

 

ルート : 大正池 → 焼岳小屋 → 焼岳 → 新中ノ湯登山口
天候 : 晴れ 時々 曇り (山頂はガス)


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2017年、夏山はじめ。
まぁ、今年はいくつ登れるかわからないけど、とりあえず一発目。

春に鈴鹿の入道ヶ岳に登って以来、会社の後輩たちの間では俄にプチ登山ブームが起こっていた。
もう少しレベルアップ、そして、低山にはない特別感を味わって欲しく企画したのは、焼岳である。

焼岳は北アルプスで唯一の活火山。
火山活動という意味では立山の地獄谷などでも見られるが、山頂部から噴煙を上げる山は焼岳だけ。
僕たちが登った半月後には、新たな場所から噴気が観測された(ごく小規模の噴火?)とのニュースがあり、少々驚いた。
完全にお気楽な気持ちで登っていたのだが、火山に登る時はもっと気を引き締めないといけないな。
御嶽クラスの噴火は遭遇してしまったらどうにもならないのだろうけど、ヘルメットを携帯するなど、それなりの準備はしようと思う。

焼岳への主だった登山口は中の湯温泉か上高地になる。
この他だと新穂高の中尾や西穂山荘から縦走するルートもある。

今回、計画したルートは「上高地・スタート」→「中の湯・下山」である。
事前の調べだと、僕たちのように歩き抜ける場合は逆のルートを選ぶ人たちが多いようだ。
上高地への下山だと、バスにもタクシーにも乗りやすい。
一方で、中の湯だとバス停まで40~50分は掛かるし、タクシーは上高地、もしくは沢渡、平湯から回してもらうことになる。
つまり、下山後の交通手段という点で、やや不便といえる。
ちなみに逆ルートなら、中の湯登山口に駐車し、上高地からタクシーで帰ってくる方法がいいだろう。

それでも、今回のルートを選んだ理由はいくつかあるのだが、それはこのレポートを読み進めていただきたい。

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名古屋から高山経由で平湯温泉のあかんだな駐車場にアプローチ。
今回は4人なので上高地への入山はタクシーを利用した。
安房トンネルの通行料込みで大正池まで¥5,040(定額制)だった。

焼岳の登山口へは帝国ホテル前が最短となるのだが、今回はあえて大正池からスタート。
穂高の眺めがいい場所、と運転手さんにおすすめされて、バス停よりも手前でタクシーを降りる。

7:30 大正池(登山開始)
少しガスをまとっているが、大正池の向こうに連なる穂高の峰々。
去年、苦労して縦走した吊尾根を見上げると、ちょっと感慨深いものがある。


バス停付近まで移動していくと、大正池に映り込む焼岳を見ることができた。
大正池出発としたかった理由のひとつは、これから目指す頂をしっかりと目に焼き付けるため。
自然と登るモチベーションが高まってきて、いざ出発。


大正池にはうっすらと朝もやが掛かり、立ち枯れした木と相まって幻想的。


散策路を進み、田代湿原から見る穂高連峰
雲が多めなのが気掛かりだが、相変わらずの迫力に心が揺さぶられる。


上高地に来ると毎回思うが、梓川の清い透明感は感動ものである。
心地のよいせせらぎを聞きながら田代橋を目指す。


大正池からウォーミングアップ気分で40分歩いて田代橋を渡る。
正面に西穂高岳登山口を見て、左に折れて、焼岳登山口まではさらに15分ぐらい。
ここからいよいよ登山道に突入。


はじめは笹の茂った樹林帯を行く。しばらくはほとんど平坦。


このあたりの雰囲気は清々しくて、瑞々しくて、特別な風景ではないけど、なんか好き。
一言でいえば、いい森かな。

  
小さな沢を渡って。 


思いがけずギンリョウソウを発見。
不気味がる人もいるけど、僕は結構好きかも。 


登山口からしばらくは平坦とも思える道が続くが、そのうち斜度が少しずつ増していく。
やがて小さな梯子場が出てくるなど、徐々に険しくなっていくが、このあたりは全く問題なし。


所々で木立が切れ、背後には少しずつ展望が得られるようになる。
大正池の向こうに構えているのは霞沢岳。


大正池は上から見るとびっくりするほどの青い色だった。


登山道は深くえぐれた峠沢に付かず離れず沿う形で高度を上げていく。
途中、焼岳の山頂方面が見えたけど、少しガスっぽい。
これはタイミング良くガスが切れてくれるのを祈るしかないかな。


行く手には大きな岩塊が現れる。


ここはほとんど垂直の梯子で越えて行くことになる。
高度感はなかなかあり、途中で折れ曲がったりもしているので、嫌らしく感じる人もいるだろう。


梯子を過ぎると樹林帯を抜けて、ここで場面転換。
開放的な風景に変わって、なんだか足取りも軽くなった気分になる。
青空もまずまず頑張ってくれているようで何より。 


笹に針葉樹の混ざる小ピークを巻くように進む。


行く先の鞍部が焼岳小屋の建つ新中尾峠である。
草付きの斜面をジグザクに登って行く。


振り返ると意外なほどに雄大な霞沢岳の姿。
穂高の眺望が最高とのことなので、いつかは行ってみたい。


10:30 焼岳小屋
登山口から2時間で焼岳小屋に到着。ここで小休憩。 


焼岳小屋から山頂まではあと1時間20分のコースタイムである。
まずは焼岳展望台と名付けられた小ピークを目指して行く。
背後の焼岳はガスが抜けそうで抜けないけど、夏山らしい躍動感のある風景で、これはこれで好き。


小屋から10分のひと登りで焼岳展望台に到着。
山頂にまとわりついているガスがなければ、確かに絶好の展望台になるだろう。


笠ヶ岳方面も上の方はガスガスで、眺望は少し残念な感じになって、やや消化不良気味…


あたりにはノアザミがたくさん咲いて揺れていた。


出発しようとしたら、ずっと晴れなかったガスが抜けて、ドーム状の山頂部が姿を現した。
この展開はなかなか気分が盛り上がる。さあ、いざ山頂へ。
ここからは一旦下ってから一気に登り詰めることになる。


斜面にはオトギリソウ?のお花畑が広がっていた。


ニガナ系の花もたくさん。


最後の登りの途中から振り返ると、穂高連峰は終始、雲の中。
山頂ではその姿を見せて欲しいと願うが、難しそうかな。


ラスボス感が満載の山頂ドームが近づいてきた。なかなかのシンドイ急登で足が止まる。
あたりには噴気が出ている箇所もあって、硫黄の匂いが漂っている。


ドームを回り込むように山頂にアプローチ。


眼下には箱庭のような上高地が広がっている。


最後はちょっとした岩場を越えていくが、問題なくクリア。


傾斜が落ち着くと中ノ湯コースとの合流点に飛び出て、ここで登山者の数も一気に増えた。
正面に見えるのは南峰で、これから登る北峰よりも少し標高が高いけど立ち入り禁止。


登ることができる北峰はこっち。岩場をもうひと登りする。


ルートのすぐそばに巨大な噴気孔があって、硫黄の匂いがかなり強い。
あまり多く吸い込むのは、明らかに体に良くなさそうなので、風向きなどに注意したい。
ただ、化学系の仕事をしている身としては、天然の硫黄結晶に興味深々。


12:10 焼岳・北峰
そして、焼岳(北峰)に登頂。展望はイマイチでも確かな達成感。


眺望は残念ながら多くは望めない状況だったが、周囲を見渡してみる。
目の前にあるのは、いかにも崩れそうな南峰と火山湖の正賀池。


穂高方面は明神岳の端っこが少し見えるだけで、やっぱりダメだった。
こうして写真を撮っている間にも、見えている範囲はどんどん狭くなってきて、視界は悪化傾向…


これは火口跡なのだろうか? すごい迫力だった。


ガスの流れは速いので、何かの拍子にすっきり晴れてくることを期待しながら昼食を取る。
しかしながら、西側からどんどんガスが流れ込んできて、状況は悪くなるばかりで諦めモード。
ここは潔く下山へ。


中ノ湯への下山路は沢に沿ったガレ気味の斜面を一気に下っていく。
まだまだ登ってくるハイカーも多かった。


目の前には開放的な緑の斜面が広がっている。


可愛らしいアカモノが咲いていた。


焼岳があっという間に遠くなっていく。


樹林帯に入ったら、ひたすら修行の時間。
自分的にはちょっと歩きづらい感じの急な下りが続き、ペースが上がらなかった。


結局、終始調子は上がらず、コースタイム2時間のところ2時間15分掛かって、新中ノ湯登山口に下山。
ここはつづら折りの続くの安房峠旧道で、中の湯温泉にはヘアピンカーブふたつ分をさらに下る必要がある(ショートカット路あり)。
バスに乗る場合は、そこからさらに車道を40分ぐらい歩く。



事前の情報収集では、この登山口で携帯が繋がるか確認が取れなかった。
温泉の旅館からタクシー呼ぶことになるのかなと思っていたが、電波が通じていたのはラッキー。
平湯のタクシー会社に電話して、上高地から回送してもらうことになって、無事に帰りの足を確保。
上高地が混雑している時は、登山口まで呼べない可能性もありそうなので注意を。

平湯・あかんだな駐車場までは安房トンネルを通らず、旧道経由で¥5,050だった。
運転手さん、旧道を走るのはものすごく久しぶりらしく、何だかはしゃいでいたな(笑)

今回の山行を振り返れば、気持ちのいい森から、梯子、笹原の海、そして、荒々しく険しい活火山の山頂へ。
展開の変化があって、登り応えもしっかりあるいいコースで、このルート取りは正解だったと思う。
穂高の山々は雲を被ってしまい、大展望とはならなかったのは少し残念だったが、満足できる「夏山はじめ」となった。

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