稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

北穂高岳 - 自分史上最大の挑戦、目映い残雪の穂高へ(Day1)

 
日程 : 2018.5.11(金)-12(土) 2日間
ルート:
(5/11) 上高地 → 横尾 → 涸沢(涸沢ヒュッテ 泊)
(5/12) 涸沢 → 北穂高岳 → 涸沢 → 上高地
天候 :
(5/11-12)晴れ 時々 曇り
 
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山登りをはじめた頃、自分が雪の穂高に登るなんて想像もしなかった。

残雪の北穂高岳
登る前から、自分史上、最大の挑戦と意識して望んだ、この山行。

確かにキツかった。
でも、決して無謀ではなく、すべてをコントロールできていた山行であったはず。
だけど、登り終えた今でも、ちょっと現実感が湧かないというか。
恐らく、そこに広がり、自分を包んでいた風景が非日常すぎて、どこかフワフワした心地でいるのだ。

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僕らが穂高に向かったのは、GWの翌週。
山友と示し合わせて金曜に有休を取り、上高地を目指す。
1日目は涸沢に泊まり、翌日、北穂高へ登頂する予定なので、朝はそれほど早くなくていい。
バス乗り換えとなる平湯温泉のあかんだな駐車場に着いたのは7時。
準備を整えて、7:20のバスに乗り込む。


GW明けの平日ということで、車中には、我々の他にはソロの男性がひとりだけ。
釜トンネルを抜けると、車窓に広がるのは大正池越しの穂高
北穂は見えていないが、いよいよ来たぞと、気持ち昂ぶる時であった。


8:10 上高地バスターミナル(登山開始)
バスは8時前に上高地のバスターミナルに到着。
夏山シーズンからは考えられないほど静かな上高地は、なんだか新鮮だった。
一緒に乗り合わせた男性は槍ヶ岳に向かうとのことで、お互いの健闘を祈って別れた。

もう一度、装備を確認し、いざ出発。
本日の目的地、涸沢までは6時間ほどのコースタイムである。


歩きはじめてすぐに、梓川のせせらぎが聞こえて来る。
新緑の季節の上高地を訪れるのは初めてである。
目に鮮やかな若葉色の背後に聳える雪景色の穂高岳
これだけでもちょっと感動してしまいそうな景色であった。


梓川の清冽な流れの向こうには焼岳。


河童橋から眺める残雪の穂高岳は、眩しいほどに白く輝いていた。
実は一昨日から前日の朝に掛けて、標高の高いところでは雪が降ったのである。
景色的には申し分なく美しくていいが、登る上では雪の状態が気になるところだ。


小梨平のキャンプサイトを抜けて、横尾まで続く長い長い平坦路がスタートする。


鋭い岩峰の明神岳を横目に見上げながら進む。
横尾までは3時間の道のりとなるが、それなりに風景を楽しみながら歩くことができる。
ただし、10kmの距離はあまりにも長すぎて、途中で飽きてしまうが、それは仕方ないと割り切って歩くのみ。


明神を過ぎると明るく開けた林になり、ここは好きなところ。
林を貫く道の両側にはニリンソウがたくさん。


春の訪れを喜んでいるように咲き誇るニリンソウ


せせらぎの心地よい小川のほとりに、ずっと奥まで群生が続いていた。
この清々しい風景に、春っていいな、なんて思った。


ニリンソウに癒されながら、上高地から2時間で徳沢に到着。


前穂高岳を見上げるキャンプサイト
今のところテントを担いでの山行は考えていないんだけど、ここの泊まったら気持ちいいこと間違いないだろうな。


徳沢園の前にもニリンソウが咲いていた。


名物のソフトクリームに惹かれたが、ここは下山のご褒美に取っておくことに。
少し休憩して、横尾に向けて再スタート。
横尾まではあと1時間の林道歩きとなる。


迫力のある前穂高の東壁を眺めながら。


11:20 横尾
さすがにもう飽きたって投げ出したくなる頃、やっと横尾に到着。
休憩込みだが、上高地からしっかり3時間掛かっていて、本当にこれだけで疲れてしまう。
涸沢方面と槍ヶ岳方面の分岐点でいつも賑わっているが、今日は静まり返っている。


横尾大橋を渡って、いざ涸沢へ。


時折、木々が切れて屏風岩が大きく見える。


道はやっと登山道らしくなって来る。
涸沢ってお手軽に着いてしまうイメージがあるけど、横尾から700mは登るわけで。
当たり前だけど、しっかり登山なんだよね。
ちなみに、横尾から本谷橋までは、所々に残雪があったが、アイゼンは不要だった。


横尾谷から見上げる屏風岩が大きい。
初めて見る山友たちは、なかなか圧倒された模様。


ルートは基本的に樹林帯を進むので、しばらくは淡々と歩く区間が多い。
しかし、本谷橋が近づいて来ると、徐々に木々の間から北穂高岳の山頂部が見えるように。


北穂の山頂を望遠で。
涸沢側からの印象とはちょっと異なる山容で、本当にこれが北穂か疑ってしまった。


本谷橋で横尾谷を渡る。
例年だと、GWにはまだ橋が架かっていないようだが、今年はやはり雪が少ないみたい。


橋の上から。雪渓が割れて、雪解け水が轟音とともに谷を下って行く。
雪がしっかり多ければ、ここから涸沢まで沢を詰めて行けるようだが、今年は無理ぽい。
そっちの方が傾斜が緩くて楽なんだけど…


橋を渡ったところでアイゼンを装着。
ほぼ夏道をトレースするように、横尾谷の右岸斜面をトラバースして進む。
時々、ブッシュがうるさいが、それほど苦労をすることはなかった。


横尾本谷と南岳の眺め。


横尾本谷と分かれた"涸沢"に沿って登って行くと、前方に前穂高岳が見えて来る。
いよいよ穂高の懐に入ってきたことを実感する。


さらに進むと奥穂高岳も。
本日の目的地、涸沢ヒュッテもしっかりと確認。
ふと、涸沢より上の方だけ雪の色がひと際、白いことに気づく。
新雪の状態は気になるが、写真映りは抜群で、これは幸運だった。


どんどん展開されていく穂高の風景に、否応なしに気持ちが昂ぶって来る。
このあたりはヒュッテが近そうで、でもなかなか近づかない。
ここからが意外に長く、なかなか骨の折れる登りとなった。


正面に圧倒的な存在感を示す奥穂高
ひと塊の大きな岩山って感じで、どっしりとした迫力が半端ない。


14:45 涸沢
そして、涸沢に到着。
横尾からは3時間の登りだった。


まだまだ雪深い涸沢カール。
やはり、ここの風景には特別なものを感じてしまう。
これで、夏山、紅葉、雪景色の涸沢をコンプリートしたことになる。


まずは涸沢ヒュッテにチェックイン。
紅葉の時期に来た時は布団1枚に2.5人という地獄を味わったけど、今回は快適そのもの。


荷物を片付けた後、穂高を見上げながらコーヒータイム。
テラスでビールとおでんにしようと思っていたけど、意外に夕飯が近いので見送り。


テン場の端っこに陣取って、穂高を見上げながらの贅沢な時間を過ごす。
今回のおやつはトップバリュの「マーブルパウンドケーキ」。
これはなかなかの美味だった。


穂高はすっかり日陰になってしまったけど、雪面に映る陰影もいい感じ。


明日、登頂予定の北穂高岳
写真で見えるよりも、もっと急斜面で本当に登れるだろうか…。
北穂沢を横切っているデブリもちょっと気になる。


穂高の上を飛行機雲が横切って行くのをのんびり眺める午後。


横尾方面の常念山脈
常念岳は涸沢カールからは屏風岩に阻まれて見えない。
見えているのは東大天井岳と横通岳かな?


涸沢ヒュッテの夕飯。
味もボリュームも大満足で、美味しくいただいた。


夕食後は夕焼けを待つも、今回はほとんど染まらず。
上空には薄雲がいい感じで出ていたので、期待していたけど残念。


さて、明日はいよいよ北穂高岳に挑む。
小屋で昨日までの積雪の情報収集をすると、雪崩やすい箇所はすでに雪崩たとのこと。
ものすごく危険ということはなさそうだが、心して望もう。