稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

御嶽山 - 梅雨の合間を縫って、雲上の極楽浄土へ

御嶽山:山登りの記録

 日程:2013. 6. 23(日帰り)

 天候:曇り のち 晴れ のち ガス

※ この記事は2014年に起きた御嶽山噴火前の山行のもの。

※ 2022年現在、田の原ルートで登頂可能なのは王滝頂上までで、剣ヶ峰には到達できないので、注意のこと。

 

コースタイム

 田の原登山口 6:10 → 大江権現 6:30 → 富士見石 7:25 → 王滝頂上 8:00 - 8:10

 → 御嶽山・剣ヶ峰 8:35 - 8:45 →(お鉢巡り・時計回り)→ 二ノ池 9:50 - 10:10

 → 王滝頂上 10:35 → 田の原登山口 12:15

 登山時間:6時間05分

Introduction:はじめての3000m峰は御嶽山

梅雨の晴れ間を狙って、木曽の御嶽山に登った。

名古屋あたりからでも、視界がクリアな日にはその山容をしっかり捉えることができる独立峰である。

 

複数のピークを持つ御嶽山の山頂部には、荒涼とした火山風景の中に美しい火山湖が点在している。

広大なので、日帰りですべてを回るのは難しく、最高峰の剣ヶ峰を中心に巡ることに。

御嶽山を目指すルートはいくつかある。

今回は梅雨でどれだけ天気が持つかわからないので、最短の田の原ルートを選択した。

 

------

 

登山口へは王滝村から御岳スカイラインで。

スキー場の中を縫うようにワインディングロードをぐんと登ると、その終点が田の原。

標高はすでに2180mもあり、ひんやりとした。

梅雨の青空、夏のはじまりを感じながら

6:10 田の原登山口(登山開始)

天気予報では昼過ぎまで晴れマークが並んでいたが、空は薄曇。

それでも頂上はちゃんと見えているので、青空を期待してスタートした。

 


鳥居をくぐると、しばらくは自然園の中のなだらかな砂利道を行く。

正面に御嶽山が大きく構える。

 


20分ぐらい歩いて、大江権現から本格的な登りがはじまる。

山岳信仰の対象である御嶽山

明治の初めまでは、これより上は女人禁制だったそうだ。

 


樹林帯を抜けて徐々に展望が広がりはじめる。

振り返ると下界はちょっとした雲海のようになっていた。

背後には中央アルプスが並んでいる。

その後ろに見えているのは甲斐駒だろうか?

花はイワカガミぐらいだったけど、たくさん咲いていた。

 


8合目手前の金剛童子あたりで森林限界に達して、山頂方面の視界が開ける。

見上げると、雲がどんどん切れて青空が見えてきた。

 

 

登りやすい道で順調に高度を上げていく。

途中、ハイマツの中から雷鳥と思われる鳴き声が聞こえたが、姿を見ることはなかった。

富士見石を過ぎてしばらくすると、雪渓が現れた。

 


念のためアイゼンを持って行っていたが、使わずとも問題なく登ることができた。

※ ただし、下りは滑りやすくやや難儀。一回、派手に転んだ…

 

 

雪渓を抜けて、9合目の避難小屋から頂上方向を見上げる。

上に見えている建物は王滝頂上山荘。

このあたりが一番きつい登りだが、それももう少し。

 

 

8:00 王滝頂上

田の原から2時間で王滝頂上に到着。

頂上と謳われているが、頂上らしさはなく、通過点といった感じではある。

風が強く、寒い。

神社の社務所を風除けにして少し休憩。

 


御嶽山の最高峰、剣ヶ峰へはもう少し。

神社の脇を抜けると景色が一変する。

緑はなくなり、広大で殺風景な大地が広がっていた。

 

 

奥の院に続く絶壁を眺める。

谷の方では小さく噴煙が上がっているのが見えた。

この翌年、あんな噴火が起きるとは、この時は思いもよらない。

剣ヶ峰への最後の登りは、神社の境内の石段…

これが結構な急勾配で、この日、一番きつかったかも知れない(苦笑)

 

山頂に広がる小宇宙

8:35 御嶽山・剣ヶ峰

そして、標高3067mの剣ヶ峰に登頂。

何気に初めての3000メートル峰の頂上だった。

 


雲が多めなのが残念ではあるが、かろうじて乗鞍岳と槍・穂高連峰が見えた。

下に見えるのはニノ池

 


乗鞍方面をアップで。

乗鞍岳の右奥に槍ヶ岳から奥穂高、前穂高

左側は雲に隠れ気味だけど立山あたりが見えていると思われる。

 


北側は想像以上のスケール感だった火口跡の一ノ池

ここから一ノ池を取り囲む外輪山のお鉢めぐりをして、ニノ池に向かうことにする。

 

どこかのまだ知らぬ惑星のような小宇宙的な世界。

 

お鉢めぐりの入り口は神社の社務所の脇を裏に回る感じで、知らないとちょっと分かりづらいかも。

※ 2022現在、噴火の影響が残って、お鉢巡りルートはいまだ通行止。

御嶽山の西側はこんなに崩れていて、荒々しい風景が広がっていた。

地獄谷に当たるのだろうか?

今なお活きている山ってことを実感する。

 


一度下って、外輪山のピークへ登り返す。

 


北西方面の眺望。

手前の継母岳はなんだか惹かれるピークだけど、登山ルートで通じていない。

ハイマツの緑色と残雪のコントラストに目が引き付けられる。

 


その向こうにも名前のわからない山々が連なっているが、遠く、雲の中に白山を見つけた。

 


外輪山のピーク付近は岩場だった。

北アルプスを望みながら慎重に行く。

 


このあたりで唯一、咲いていた花。

コメバツガザクラだろうか?

風の強い岩場で懸命に咲いている感じがした。

 


また少し青空の比率が高くなってきただろうか。

眼下には荒涼とした賽の河原とその奥に摩利支天継子岳が続いてる。

今回は時間がなかったけど、機会があったら歩いてみたい。

 

雲上の極楽浄土にて

外輪山から眼下に見えるコバルトブルーのニノ池に下っていく。

麓から湧いてくる雲もいい感じだった。

 

 

9:50 二ノ池

降り立ったニノ池の畔。

そこにはあるのは静寂の空間だった。

剣ヶ峰は賑わっていたが、ここまで足を伸ばす人はそう多くないようだ。

 

 

風がやんで、水面が静まり返る。

まるで一瞬、時が止まったかのようだ。

そして、また風が吹けば、再び時は動き出す。

 

そんなのを何度も繰り返して、ただゆっくりと時間が過ぎていく。

御嶽山は信仰の山。

昔の人が極楽浄土を思い描いたのが、なんとなくわかる気がした。

なんだか “時が動いて行く” のを感じる。

帰りは剣ヶ峰を通らず、トラバース道で王滝頂上に抜けた。

王滝頂上からはガスの中に入ってしまい、淡々と下って田の原に戻った。

 

------

(補記)

説明するまでもなく、今の御嶽山はあの噴火で雰囲気、様子が様変わりしてしまっている(2020年に再訪)。

ブログ再編集にあたり、この噴火前の記事を載せるか否か悩んだ。

しかし、これもまた御嶽山の姿であることに変わりはなく、当時の写真、記録をそのまま記事とすることにした。

 

お気に入りの場所になった二ノ池も、今は灰に埋もれて、まさに灰色の世界になっている。

それが悲しいとか、残念とか、そういうのではなく、やっぱり時は流れていくんだな、って思う。

あの噴火だって、このコロナ禍だって、世界の、地球の長い時間軸で見れば、些細な出来事になるんだろうな。

 

最後に、噴火で亡くなられた方々に、心から合掌。

 

------

<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

・  王滝村 観光情報:入山規制など登山情報も