稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

双六岳・黒部五郎岳 - 憧れた夏山風景、”地球”を歩いて北アルプスの懐へ(Day2)

 

<1日目の山行日記> 

 

2日目の記録

 天候:晴れ のち ガス(のち 雷雨)

 コースタイム:

  双六小屋 5:10 → 双六岳 6:20 - 6:30 → 三俣蓮華岳 7:40 - 8:00

  → 黒部五郎小舎 9:20 - 9:40 → 黒部五郎カール(昼食)11 :00 - 11:30

  → 黒部五郎岳 12:30[→ 稜線コース]→ 黒部五郎小舎 14:10(泊)

  登山時間:9時間00分

荒涼たる台地、双六岳から眺める槍ヶ岳

迎えた2日目の朝。

今日はいい天気が期待できそうだが、午後には夕立の予報が出ており、ちょっと心配。

まずは燕岳飢餓岳の向こうから夜が明けて行く。

 

 

雲が朝焼け色に染まり出した。

目の前を薄っすらとガスが抜けて行き、幻想的な朝だ。

 

 

鷲羽岳は三俣山荘からの稜線にガスが押し寄せているが、今日ははっきりと見ることができる。

 

 

結局、雲が邪魔をしてきれいなご来光とはならず、少し残念。

それでも、十分にいい朝の風景だった。

 

 

5:10 双六小屋(2日目スタート)

すっかり明るくなってから双六岳へ出発。

もっと早く出ても良かったのだが、双六岳の風景は青い空のもとで見たかったのもあって。

まずは小屋裏の急登を登って行く。

 

 

ひと登りして振り返れば、昨日はほとんど見えなかった穂高の姿が。

よく見ると左端に槍の穂先がちょっとだけ写っている。

20分登って三俣山荘に向かう巻き道との分岐。

山肌に朝日が当たり出して、ほのかなオレンジ色の中を登る。

 

ここまで登って来ると槍ヶ岳の姿がはっきりと。

やっぱり槍は無条件に格好いい。

 

 

双六岳に向けては、ちょっとした岩場を登りになる。

 

 

徐々に三俣蓮華岳へ続く稜線が近づいて来た。

あそこを歩くのが楽しみで仕方ない。

 

 

岩場を登り終えると、双六岳の山頂が見えて来た。

 

双六岳の山頂はなだらかな台地になっている。

そして振り返れば、有名なあの槍ヶ岳の風景。

わずかに草の生えるのみの荒涼とした頂上台地。

その向こうに、浮かぶように槍ヶ岳がそこにある。

ずっとずっと見たかった風景の中に今、自分が立っている。

 

 

左側には抜戸岳から笠ヶ岳への稜線が続いている。

 

 

それにしても、この風景、好きすぎる。

ここは北アルプスなんだけど、ありのままの地球の景色、って感じがした。

写真的には朝の時間帯はどうしても逆光になるので、この場所の臨場感がぼやけてしまって惜しい。

 

 

6:20 双六岳

風景を楽しみながら、ゆっくり、たっぷり時間を掛けて、双六岳の山頂に到着。

青い空が嬉しい。

 

 

では、ぐるりと山頂からの眺望を見て行こう。

まずは、本当に笠の形の笠ヶ岳の方向。

奥には焼岳乗鞍岳も見える。

 

 

 

これから向かう黒部五郎岳には、ちょっと雲が掛かっている。

それでもしっかりとカールの形がわかって、早くあそこに立ってみたくなる。

 

 

三俣蓮華岳への稜線。

ちなみに一番近いピークは丸山で、三俣蓮華は丸山に重なるように見えている。

背後には鷲羽岳水晶岳薬師岳など、名だたる山々が控えている。

 

 

四方に稜線を延ばす鷲羽岳

 

 

そして、槍ヶ岳穂高連峰

 

夏を謳歌する稜線、三俣蓮華岳から黒部五郎岳

ひと通り双六岳からの眺望を楽しんだら、三俣蓮華岳に向けて再出発。

この稜線、見るからに気持ち良すぎる。

 

 

今日もたくさんの花たちとともに。

朝の陽を浴びるチングルマ

ヨツバシオガマも輝いている。

ハクサンフウロ三姉妹(勝手に女子設定)

双六岳から下ってきた稜線。

コバイケイソウもたくさん咲いていた。

 

 

最高の風景の中、丸山への登りは足取りも軽く。

 

 

双六岳を振り返ると、景色が雄大すぎる。

 

 

丸山のピークが近づくと、なにやら鳴く声が聞こえる。

そう、雷鳥に会うことができた。

母親とのツーショットは撮れなかったが、周りには5羽ほど雛たちの姿も。

警戒心がなさすぎで、捕まえられちゃうんじゃないか、って距離まで近づいて来た。

 

雛が可愛すぎる。もちろん捕まえちゃダメ(笑)

ほっこりとした気分で、先に進む。

丸山から一旦下って、三俣蓮華岳へ緩やかな登り。

 

 

黒部五郎岳に掛かっていた雲は取れて来たようだ。

晴れているうちに着けるように、ちょっと気持ちが先走りになるが、慌てるのは勿体ないので、ゆっくり風景を楽しみながら。

 

黒部五郎岳のカールを望遠で。

まだまだ、花たちを愛でながら。

ピンク色のヤマハハコ?

ウサギギク

タテヤマリンドウ

7:40 三俣蓮華岳

双六岳から1時間ちょっとで三俣蓮華岳に到着。

鷲羽岳には俄かにガスが掛かって来てしまった。

まだ、8時前だっていうのに、天気が崩れるの早すぎないか…

 

 

槍穂の稜線もガスの中に。

 

 

幸い、黒部五郎岳北ノ俣岳はまだしっかり見えている。

 

 

鷲羽岳水晶岳、祖父岳。

水晶岳を望遠で。

風景をひとしきり楽しんだら、いよいよ黒部五郎岳に向かおう。

 

薬師岳の頭はガスの中だ。

これは、いつまで持つかわからなくなって来た。

 

 

と言っているそばから、あー、黒部五郎岳にも雲が迫って来た。

稜線がガスを押し返して、なんとか耐えてくれている。

 

 

早く行かなきゃ、って焦る気持ちもあるんだけど、稜線の平坦部ではチングルマの大群落。

これには足が止まる。

チングルマ好きには堪らない花道。

 

ミヤマキンバイの群生も。

稜線から雲が離れて、持ち直してくれている。

 

薬師岳もしっかり山容が見えるように。

眼下に黒部五郎小舎が見えて来た。

ここから樹林帯を一気に下ることになる。

明日の登り返しは、今は考えないことに…

 

9:20 黒部五郎小舎

双六小屋の出発から4時間ちょっとで黒部五郎小舎に到着した。

周囲にはコバイケイソウが咲き、とてもメルヘンな雰囲気の中に建っている。

 

 

宿泊の受付を済ませ、余計な荷物を預かってもらって、黒部五郎岳に向かう。

 

山頂へは黒部五郎岳カールコースで。

岩の庭園、黒部五郎カールから山頂へ

黒部五郎小舎まで来ると、なんとなく黒部五郎岳は目前って気になってしまうが、そんなことはない。

コースタイムは2時間半、標高差は500mあるので、やっと登山口に着いたイメージに近い。

 

小屋の前のお花畑を抜けると樹林帯に入る。

そして、いくつか沢を越えて行く。

水のある場所にはイワイチョウがたくさん咲いていた。

 

 

樹林帯を抜けてカールが見えて来た。

しかし、ちょっと遅かったか…、濃くガスが掛かり始めている。

 

 

岩壁が折り重なるように聳える黒部五郎カール

その風景、岩の山岳庭園とでも言おうか、唯一無二といった雰囲気を持っている。

できれば青空を背景に見たかったが、曇り空でも感慨深いものがある。

 

 

雷岩と名前の付いている巨石。

本当に雷に打たれて割れたんだろうな、って思える。

 

 

カールの雪渓から流れ出る大きな沢を渡る。

この流れも黒部川の源流のひとつとなる。

 

 

清い水音を奏でる流れに、てるてる坊主たちもパワーをもらう。

 

 

山頂で食べようと思っていた双六小屋のお弁当。

上はガスで何も見えない可能性が高いから、心地よいせせらぎを聞きながら昼休憩とすることに。

 

 

カールの最奥部には、まだたくさん雪が残っていた。

 

 

カールの内部は緩やかな傾斜が続いたが、ここから山頂の稜線まで一気に急登を登り上げる。

コバイケイソウのお花畑になっている急斜面をジグザクと登って行く。

 

 

この年はどこの山もコバイケイソウが当たり年だった。

前年もそうだったから、2年連続は珍しいらしい。

 

 

道はガレ気味でちょっと歩きづらい。

でも、黒部五郎岳の岩壁は大迫力である。

 

 

だんだんと山頂が近づいて来た。

なんとか真っ白にはならずに済むかな?

 

 

なかなかのキツイ登りをこなして、黒部五郎の肩まで登って来た。

ここにザックをデポしている人が多かったが、帰りは稜線コースを行く予定なので、そのまま上がる。

 

 

最後の登りは山名の由来どおり、岩がゴロゴロ。

ゴーロが転じて「五郎」ということらしい。

12:30 黒部五郎岳

今回の山行の最終目的地、黒部五郎岳に登頂。

黒部五郎小舎からは、30分ほどの昼休憩を入れて3時間弱は掛かっている。

眺望は残念な結果で、辛うじて下のカールが見える程度だった。

それでも、ここまで歩いて来たこと、今ここに立っていることに、確かな達成感があった。

 

雷から逃げるように下山、そして雨上がりの夕焼け

もう少しゆっくりしようかとも思ったけど、遅くなると雨が心配なので、早々に下山開始。

予定通りに稜線コースに進む。

 

 

稜線コースは雄大なカールを見下ろしながらとなる。

地図では破線で「熟達者向け」とあるが、そこまで難しい場面はない。

ただ、一歩の段差が大きいのと、平坦な部分も軽いハイマツ漕ぎになるので疲れはする。

そんな感じで、序盤はスピードも上がらない。

 

岩陰に咲くイワギキョウ。

ここで雷鳴が聞こえてきてヒヤヒヤ。

稜線上は流石に危険を感じるので、めちゃくちゃ飛ばした。

途中、雷鳥を見かけたりもしたけど、スルー即決で、とにかく急ぐ。

 

 

小屋が見えて来て、ここからは樹林帯に入るので、ひとまずは安心。

最後の下りは急で、疲れた足には厳しかった。

 

 

14:10 黒部五郎小舎

最後は慌ただしくなってしまったが、小屋に着いて、CCレモンでほっと一息。

この後、雨が降り出し、3時頃には土砂降りの雷雨になった。

 

 

何度も大きな雷鳴にビックリさせられたが、夕食まではほぼ昼寝で過ごす。

夕食のメニューはトンカツがメインで美味しくいただく。

 

 

夕食後、俄かに雨が上がった。

外へ出ると笠ヶ岳に夕陽が当たっていた。

 

そして、雷雨の残したガスが茜色に染まる。

薬師岳方面は上空を厚い雲が蓋している感じだったが、隙間はきれいな夕焼けになった。

まだ時折、遠雷が響いて来るけど、ゆったりとした時間が流れる。

 

 

そして、いつしか薬師岳の上は茜雲になった。

2日目はこうして終わって行った。

 

2日目:振り返り

双六岳の台地からの槍ヶ岳は何度も写真で見て来たが、あの劇場的な風景は特別すぎる。

この目で見たことで、自分の中でいつまでも大切にしたい風景になった気がする。

いつかはアーベンロートに染まる槍ヶ岳をあの場所から眺められたらいいな。

 

双六岳から三俣蓮華岳の稜線は天気も良かったし、とにかく最高の一言。

北アルプスの夏を実感できた稜線ハイクだった。

 

そして、黒部五郎岳

ガスは残念だったけど、独特の岩の世界を感じることができて満足。

とはいえ、青空のもとでも再訪したいので、次のチャンスがあれば秋の時期かな。

 

明日は新穂高への一気の下山。

どうか足が持ちますように…

 

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<つづき:3日目の山行日記> 

 

<参考>

・ 黒部五郎小舎:どうでもいいけど、なんで ”小舎” なんだろう?