稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

双六岳・黒部五郎岳 - 憧れた夏山風景、”地球”を歩いて北アルプスの懐へ(Day3)

<1日目の山行日記> 

<2日目の山行日記> 

 

3日目の記録

 天候:晴れ

 コースタイム:

  黒部五郎小舎 4:20 → 三俣蓮華岳 6:15 - 6:30[→ 中道]→ 双六小屋 8:15 - 8:35

  →  花見平 9:20 → 弓折乗越 9 :40 → 鏡平山荘 10:15 - 10:35 → イタドリが原 11:30

  → 秩父沢出合 12:10 → 小池新道入口 12:50 → わさび平小屋 13:10 - 13:25

  → 新穂高登山センター 14:30

  登山時間:10時間10分

双六小屋へ折り返し、北アルプスの夏景色

4:20 黒部五郎小舎(3日目スタート)

3日目の朝、まだ完全には明るくない4時半前の黒部五郎小舎。

今日は新穂高まで一気に下山の長い行程なので、早めの出発である。

 

 

樹林帯の中は真っ暗で、ヘッデンを付けて三俣蓮華岳に向けて登って行く。

少し登って振り返ると、黒部五郎岳が白々と少しずつ、はっきりと見えて来た。

 

 

薄く掛かったガスがほんのり朝焼け色に染まり出して、気持ちのいいスタートだ。

朝ぼらけの薬師岳

黒部五郎岳の空もほんのりピンク色。

双六岳の向こうには朝焼け雲。

今日もチングルマは元気に咲いている。

 

 

黒部五郎カールに朝陽が入り始めて、ちょっとモルゲンロートに。

 

 

今日、登れたら最高だったのに…、とは考えないようにしよう。

でも、それほど美しい黒部五郎岳の朝。

 

 

鷲羽岳の肩から太陽が顔を出した。

 

 

三俣蓮華岳までの登り返しは、なかなかしんどい登りが続く。

黒部五郎小舎からの標高差は500mあるので、下山ではなく、まあ普通に登山だな…。

 

 

すっかり全体が明るくなった黒部五郎岳を振り返って。

 

 

6:15 三俣蓮華岳

出発から2時間弱で三俣蓮華岳に到着。

本格的な登りはこれでお終い。

早くも穂高側からガスが上がって来た。

鷲羽岳はガスの中だが、水晶岳はしっかり見えている。
遠くには立山剱岳も。

 

 

西側はすっきり夏の空で、薬師岳もはっきりと。

 

 

そして、黒部五郎岳

 

 

少し休憩して再スタート。

双六小屋までは稜線を行くか、巻道コースに行くか悩んだけど、ここは往路と同じ稜線で。

 

 

時々、ガスが稜線を越えて行く。

クリアな風景もいいけど、これもまた良し。

 

 

そろそろ見納めになる黒部五郎岳の姿をしっかりと目に焼き付ける。

 

 

双六岳の山頂は踏まずに、中道コースに進む。

穂高方面のガスも取れて、正面に槍ヶ岳を見ながら。

 

相変わらず格好いい槍ヶ岳

空の青、草原の緑、残雪の白。

夏の北アルプスって、なんでこんなにも美しいんだろう。

なんだか、ちょっと感動しちゃっているかも。

 

 

花たちも短い夏を目一杯に楽しんでいるだろうか?

 

 

それとも、懸命に生きてるだろうか?

 

コバイケイソウの揺れる丘を見上げながら。

鷲羽岳のガスもすっかり取れた。

最後に頑張って歩いて来たご褒美と思う。

 

 

やっぱり大好きなチングルマ

 

 

花が終わって綿毛となった姿も愛らしくて。

 

 

もう少しで見えなくなってしまう、北アルプス最深部の風景。

名残惜しい気持ちになって来る。

 

 

穂高連峰の険しさもまたいいが。

 

 

8:15 双六小屋

双六小屋まで戻って来た。

黒部五郎小舎からしっかり4時間掛かっているので、やはりこの山域はスケールが大きい。

 

ここで黒部五郎小舎のお弁当を。

笠ヶ岳に伸びる稜線、鏡平小屋のかき氷でご褒美

さて、新穂高まであと5時間半。

長い下りの始まりである。

 

 

正面に笠ヶ岳、抜戸岳を眺めながら下山開始。

初日は小池新道の風景を楽しめなかったので、それを取り返す気持ちで。

 

 

振り返って、少しずつ遠ざかって行く双六小屋。

鷲羽岳はまたガスに隠れてしまった。

 

 

晴れていれば、小池新道からは穂高が良く見える。

こんな素晴らしい眺望だったのか。

 

 

花見平のお花畑もガスの中とは花たちの輝きが違う。

 

夏を謳う花たち。

笠ヶ岳に続く稜線もまたいい。

笠新道は急できついと評判だが、いつか登って、弓折岳まで線を繋ぎたいと思う。

 

 

眼下には鏡平山荘の赤い屋根が見えて来た。

すなわち、かき氷が近づいて来たということ。

 

 

笠ヶ岳までこのまま歩いて行きたくなってしまうこの稜線。

 

 

弓折乗越を通過。

登って来る登山者は暑さでバテている人も多かった。

 

 

槍ヶ岳ってほんと画になる。

 

 

10:15 鏡平山荘

双六小屋から2時間で鏡平山荘まで下って来た。

 

 

そして、お待ちかねのかき氷タイム。

 

トッピング含めて種類が多く、どれを選ぶか悩んでしまう。

選んだのはイチゴ氷にアイスのトッピング。

かなり暑いので、この冷たい氷は生き返る。

 

新穂高まで、まだまだ長い道のり…

体をクールダウンできて、もうひと踏ん張り。

まだまだ新穂高は遠いけど頑張るしかない。

そろそろアルプスの風景も見納めになるので、しっかりと見ておく。

 

 

鏡池でなんとか逆さ槍をゲット。

ただ、これまで素晴らしい風景を見過ぎたので、正直、あまり感動はない。

いい構図のポジションを探すこともなく(苦笑)

笠ヶ岳の稜線が最後まで雄大な景色を見せてくれる。

 

 

シシウドヶ原まで下って来るとかなりの暑さで、ややへばり気味。

登りの日がガスっていたのは、ある意味、助かったのかも知れない。

 

 

シシウドヶ原から下界を見通すと小池新道のスタートの橋がまだあんなに下に…。

それでもこのルートの整備は完璧で、下りやすくて助かった。

 

 

秩父沢で雪渓からの雪解け水をがぶ飲み。

 

 

小池新道のスタート地点まで下山。

暑さにはやられたが、鏡平山荘から2時間と少しで、なかなかのペースで降りて来れた。

あの山の向こうに広がる雄大な風景を思い返す。

13:10 わさび平小屋

林道を20分ほど歩いて、わさび平小屋では冷え冷えの果物が待ってくれている。

リンゴにしようかな。

 

 

でも、こんなに美味しそうに見えるトマトに出会ったことはなく、こっちにする。

トマトの酸味が疲れた体に染みわたる。

 

小屋前の沢で最後の水補給。

新穂高まで残り4kmちょっと。

平坦ではあるけど、なかなか足が進まない。

時々出てくる舗装路がまた足を痛め付ける…

14時半、なんとか余力が残っている状態で、新穂高に下山完了。

双六小屋からは6時間掛かった。

 

 

車に戻って、お風呂は「ひらゆの森」へ。

3日間の汗を流し、国道沿いのあんき屋という食堂でご褒美の鉄板焼き。

野菜大盛りにしたらすごいボリュームだった。

 

振り返り

最終日はこれぞ ”アルプスの夏” という風景を存分に味わうことができた。

長く長く、そして暑い小池新道の下山は、その余韻で頑張れた気がする。

3日間で45km、良く歩いた自分を少しだけ褒める。

 

今回訪れた黒部源流域は、穂高や後立山の険しい稜線とはまた違って、どこか穏やかさのある場所だった。

 

雄大な山々だけでなく、空も、雲も、花も、風も、一緒になって、この夏景色を作っている。

そのどれかでも欠けたら、その場所にあった風景は、同じものにはならない。

つまりは、その時、目の前に広がる風景は、その一瞬のものでしかない。

 

そういう風景に出会いたくて、僕はまた山に登る。

 

 

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<参考>

・ 鏡平山荘:槍ヶ岳穂高の眺望抜群の山小屋。そして、何よりかき氷。

 

・ひらゆの森:新穂高の温泉は混んでいそうだったので、こっちに。