稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

谷川岳 - 神々しいまでの白銀世界を行く (2017.1.7)

 

ルート : 天神平 → 谷川岳 → 天神平 (ピストン)
天候 : 晴れ (山頂付近は風強し)


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2017年の初登りは谷川岳へ。
昨シーズンは冬に一度も山へ行っていないので、2年ぶりの雪山である。

谷川岳といったら「魔の山」なんて呼ばれるけど、あれはロッククライミングでの遭難の話。
冬山を軽視してはいけないけど、3連休の初日、しかも晴天予報となれば多くの人が登るだろうから、
雪山初心者でも敷居はそれほど高くない。

がっつり雪山やスキーに行くわけではない僕は、車に冬タイヤを履かせていない。
ロープウェイまでの道のりはさすがに積雪、凍結しているようなので、次のようなアクセスを計画した。
関越道の月夜野インターから国道17号経由で、新幹線の上毛高原駅へ。
ここまでの路面状況は問題なかった。(もちろん事前にネットなどで状況を把握済み)
駅前の駐車場に車を停めて、路線バスへ乗り換える。

バスの始発は少し遅めの8時。
のんびりバスの写真なんて撮っていたら、新幹線が到着して、続々と登山客がこちらに向かってくる。
慌てて乗り込むと、結局、席は全部埋まって、5名ぐらいが立つこととなった。

この後、水上駅でたくさんの乗客があり、バスは通勤さながらの満員状態に。
ルート的には沼田駅から上越線水上駅へ、そしてバス乗り換えも選択肢にあったが、
上毛高原経由をおすすめしておく。


上毛高原から45分掛かって、谷川岳ロープウェイ駅のベースプラザに到着。
10分ぐらい切符を買う列に少し並んで、ここで登山届を提出する。
谷川岳のロープウェイはゴンドラタイプなので、待ち時間なく、乗り込むことができた。
スキーヤースノーボーダーに混ざって、一気に標高1400メートルの天神平に向かう。
天気は予報通りに快晴である。
白く輝く雪の峰に、早くも気持ちが昂ぶって来る。


天神平に降り立つと、さすがに身の引き締まる寒さ。
久しぶりのアイゼンを付けて、防寒対策もしっかり、身支度を整える。
スタートは9:45で、バス利用だとどうしてもこれぐらいの時間になってしまう。
かなり遅いが仕方ない。周りにも、まだたくさんの登山客がいた。

ありゃ、ストックのバスケットを雪用に変えてくるの忘れた…。
そのままでもいいかなと思ったけど、なんとなくピッケルで行くことにする。

最初から正面に谷川岳が見えていて、ちょっと有り難味に欠けるけど、あの白い頂を目指して出発。


右側には朝日岳笠ヶ岳白毛門の峰々がよく見える。
そういえば、土合橋のバス停で夫婦と思しき一組が下りたけど、あそこを目指しているのか?
いかにも雪深かそうで、大変だろうな。


天神平のゲレンデを横目に見て歩きはじめる。
すでにたくさんのシュプールが付けられているけど、ここは整地していないのかな?
もう10年近く遠ざかっているけど、久しぶりにスキーもやりたくなってきたかも。


こんな時間だから、もちろんトレースはばっちり。
先日に降雪があったようなので、最初のラッセルは大変だったに違いない。
多くの先人に感謝しながら、ウォームアップには少々きつい斜面を登って行く。


20分ぐらい喘ぎ登ると、天神尾根と田尻尾根に分岐(雪に埋もれてよく分からなかったが)に着く。
ここまで来ると、谷川岳がその全体像を見せてくれるようになる。
谷川岳の標高は1977メートルで、2000メートルに少し届かない。
それぐらいの高さしかない山とは思えないほど、どっしりと重厚感に溢れる山容。
そして、純白をまとった頂が美しすぎる。


双耳峰をなす谷川岳
左側が南峰のトマノ耳。右側が北峰のオキノ耳(最高峰)である。
トマノ耳の左斜面には、小さく肩の小屋も見えていて、早くも登頂目前の登山者がいるようだ。


しばらくの間、樹林帯の中のをトラバース気味に進んだ後、天神尾根に乗っかると、
ここからは開放的な風景の中、楽しい雪山ハイクの時間になる。


左側に見えてくるのが俎嵓(マナイタグラ)からオジカ沢ノ頭の稜線。
これぞ迫力と精彩さとを兼ね備えた雪山の姿。


進む方向には、圧倒されるほどの谷川岳の山容。


ここで急斜面の下りがあって、少し渋滞が発生していた。
通過に5分ぐらい掛かったが、もう少し前方では密集して登山者が列をなしていたので、
その集団の中なら、もっと時間を要したに違いない。

渋滞待ちの間にじっくり眺望を楽しむ。
朝日岳笠ヶ岳白毛門には馬蹄形縦走で挑戦してみたいが、チャンスはあるかな?
手前に見えている西黒尾根も登らなくては。


渋滞のボトルネックになっていた急斜面を振り返ると、こんな感じ。
写真の左側は沢に向かって切れているので、ほんの少しだけ高度感がある。
この時はしっかりとステップもできていて、怖さは感じなかったけど、
雪の付き次第ではもっと難易度が高くなるかも知れない。


引き続き、大パノラマの尾根を行く。
尾根筋は風が強いかと思っていたのだが、このあたりは意外にも穏やかで、平和そのもの。


何度見ても美しくて、ため息ばかり出てしまう。


行く先の尾根道に見える行く登山者の列が、いい感じに撮れた。
この写真を見れば、谷川岳がいかに人気の雪山であるか分かるだろう。
翌日からは悪天候になるようなので、余計にこの日に集中したのも知れないけど。
それでも、ストレスになるような混雑ではなく、自分のペースで雪山歩きを楽しむことができた。
遅めのスタートになったけど、それが逆に功を奏したものあるかも。


上の写真の尾根の手前には、熊穴沢避難小屋がある。天神平からちょうど1時間だった。
小屋の埋もれ具合はこんな感じ。例年だとこれからもっと積もるようだ。
疲れは全くないので、そのまま歩みを進める。


避難小屋を過ぎて、このあたりからは風が強くなりはじめた。
スタート直後は歩いていると暑いぐらいでアウターを脱いでいたけど、さすがに寒くなって再び着る。


なかなかの急登が繰り返し現れるようになって、だんだんと息も上がってくる。
振り返れば、遠くに赤城山を望む。 


ひと際、キツイ急登を乗り越えると、森林限界を越えたのか、眩いほどの大雪原が広がっていた。
このあたりは西側からの風がかなり強くて凍えそうだった。


目の前の斜面を山スキーヤーが駆け下りてきた。
すごく恰好が良くて、シュプールも画になっていたのだけど、写真はイマイチだな…。 


俎嵓の高さにだいぶ近づいてきた。ここも真っ白の世界が美しい。


強風と急斜面に苦しめられながらも、一歩ずつ焦らずに登って行く。
頂上はもう近いはずなので、最後のひと踏ん張り。


そして、傾斜がなだらかになって肩ノ小屋に到着。 天神平から2時間とちょっとだった。
小屋の前は休憩する登山者で賑わっていた。
苗場山の方の眺望も開けて、風景はさらに開放的になる。


小屋の向こう側に広がるのは、オジカ沢ノ頭、万太郎山へと続く谷川連峰の主稜線。
風の通り道になっているのか、滝雲のような薄いガスがずっと掛かっていた。
左側に分かれていく俎嵓、川棚ノ頭の稜線の湾曲もいい感じ。


寒風吹き抜ける雪原に佇む指導標。
冬山らしい深い青色の空とのコントラストが、なんだかとても印象に残った。


肩ノ小屋から双耳峰の南側のピークで、トマノ耳までは、もう10分ほど登る必要がある。
夏には笹原が広がっているようだが、今は風紋が刻まれた緩やかな斜面を突っ切って行く。


12:00 谷川岳・トマノ耳
そして、12時ちょうど、トマノ耳に到着。
時間的にはあっけないといえる範囲内だけど、しっかりとした充実感。 


トマノ耳に立ってまず目に飛び込んで来るのが、オキノ耳へと続く稜線。
迫力があるけど繊細にも見える雪庇が続いている。
背後に真っ白な茂倉岳、一ノ倉岳も。


そして360°の大展望。
北東方面は笠ヶ岳朝日岳
その左奥、遠くに見えるのは越後三山の越後駒ヶ岳、中ノ岳かな?
右側は平ヶ岳


山頂の高層湿原が有名な平ヶ岳を望遠で。


尾瀬方面の至仏山と燧ケ岳。


こちらは2年前の冬に登った武尊岳と日光白根山


万太郎山、仙ノ倉岳まで続く谷川連峰主稜線。
稜線を超えていくガスは、さっきまでよりも密度が薄くなってきているようだ。
左奥には浅間山も見える。

 
山頂が平らな苗場山
よく見れば背後に後立山もうっすらと控えている。


茂倉岳、一ノ倉岳に続くたおやかな稜線。


谷川主稜線をアップで。なんというか、荘厳ともいえる雰囲気を持っている。
この稜線はいつか、夏か秋に縦走してみたいと思っているのだが、
このアップダウンの繰り返しは、一筋縄ではいかなそう…


ぐるりと一周、眺望を楽しんだ後、オキノ耳へ向かう。
この冬の初めはなかなか寒くならなかったのでこんな感じだけど、
雪庇はこれからもっと巨大に生長するらしい。


さくさく歩いて15分で谷川岳・最高峰のオキノ耳に到着。
山頂標がかろうじて頭を出していた。


兎にも角にも、風が強くて、雪庇から舞い上がる雪煙がそれを物語っている。
じっとしているとどんどん体温が下がっていくので、とても長居はできない。
急ぎトマノ耳に戻ることにする。


岩には巨大なエビの尻尾が成長中。 


写真だけ見ると穏やかそうな風景だが、実際にはめちゃくちゃ寒い。
他の登山者がたくさんいるので危機感は感じないけど、ひとりだったら心折れそう…


いつの間にか主稜線のガスが消え去っていた。 


雪山が寒いのは当たり前のことで、だんだん最高の雪山ハイク♪ って思えてきた。
なかなか天気の安定しない山域で、これだけ晴れてくれたのは幸運かも知れない。
存分に楽しもう。 


トマノ耳の直下はシュカブラもできていた。


トマノ耳に登り返したあと、肩ノ小屋に緩やかに下っていく。
こうして見ると、この小屋、最高のロケーションに立っている。


凍てついた指導標。


半端ない寒さの中、ゆっくり食事するのも億劫なので、
風の避けられる小屋の影でパンをかじるだけの少し寂しいランチを済ます。

それにしても、2000メートル足らずしかないとは思えない風景が、相変わらず目の前に広がっている。
人が容易に立ち向かうことの許されない、神々しいまでの白銀の世界。
その入り口で、真っ白な世界の美しさに心震え、そして同時に冬の山々に対する畏怖を感じる。

また一歩、雪山の魅力に取りつかれてしまったかな。


昼食後、多少急げば、予定してたバスよりも一本早く帰れそうなので、ガシガシ下って行く。


美しき雪景色に別れを告げて。
午後になって陰影がはっきりしてきたことで、俎嵓は立体的な風景に。


谷川岳も少しまどろんだような感じに見える。
山頂の厳しい世界が嘘のように優しい表情だった。


1時間20分で天神平に下山できた。


アイゼンを外して、ロープウェイで麓に帰還。
ただ、乗ろうとしていたバスが冬ダイヤでは運行しておらず、16時発の便まで1時間以上、待つことに…
ベースプラザの食堂は休日にもかからわず、昼を過ぎたら営業していなかった。
バスの時間調整をする場合は、ロープウェイに乗らないで天神平のレストハウスがいいだろう。

ちなみに翌日からは悪天になったようなので、最高の日に登ることができて幸運だった。
最後にちょっとミスしたけど、今年は幸先のいいスタートが切れたかな?

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