稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

白馬三山縦走 - 心震える山旅、憧れの稜線を越えて (Day 3 ; 2015.8.9)

 

(1日目) 栂池 → 白馬乗鞍岳 → 白馬大池白馬大池山荘 泊)
(2日目) 白馬大池 → 白馬岳 → 杓子岳 → 白馬鑓ヶ岳 → 天狗平 (天狗山荘 泊)
(3日目) 天狗平 → 鑓温泉 → 猿倉 

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お盆休み突入なのに、広々、ぐっすり眠れた天狗山荘の夜。
おかげで、あやうく日の出の時間を逃すところだった…

3日目の朝。
急いで外に出るとびっくり、眼下に雲海が広がっていた。

 


白馬鑓の肩には、雲海から頭を出した頸城山塊。


そして、ゆっくり、今日の日がはじまる。温かい色だな。
昨日の夕方、見送った太陽を、再び迎える。
毎日繰り返す日常なんだけど、山の上で感じることのできる非日常。
今日もいい一日でありますように。


角度的にモルゲンロートとまでは行かないけど、ほんのりオレンジ色に染まった白馬鑓を眺める。


朝の風景を楽しみながら、朝食の弁当を食べて、身支度を整えてから5時に出発。
たくさんの人が不帰ノ嶮に向かって出発して行ったけど、
僕は反対方向、鑓温泉経由で猿倉に下る。


朝日に染まった雲海が波打つよう。


天狗山荘から稜線に上がるまでのちょっと登りの斜面にはウサギギクがたくさん咲いていた。
オレンジ色に変わったウサギギクに見送られて歩き出す。


稜線に出ると、今日も素晴らしい眺望だ。
今回の山行でなかなかの存在感を示していたのが毛勝三山。
気になるけど、登る機会はあるだろうか?


もうすぐ立山・剱ともお別れ。


そして、やっぱり剱岳は無条件にかっこいい。今回の山行で憧れがいっそう強くなった。


昨日、来た道を白馬鑓への鞍部まで戻って、鑓温泉方面へ。
下りはじめはガレ気味の急斜面で慎重に。


6:00 大出原
白馬鑓を見上げるほどまで下って来ると
北アルプス随一のお花畑が広がるという大出原に入る。


まず出迎えてくれたのがハクサンコザクラ。しっかり群生していた。
淡い紫色に、なんだか心が和む。

 
チングルマの綿毛を見上げて。
これまたすごい群生で、花期だったらどんな風景が広がっていたのだろう。


ミヤマキンポウゲ?の群生。


再びハクサンコザクラの群生。


こちらはチングルマと並んで。色んな色の競演ににっこり。


クルマユリはポツポツ咲いている程度だったが、時期によってはすごい群生になるらしい。


本当に、ここは花園と言っていい場所だと思った。
写真を撮ってばかりでなかなか進まなかったけど、
たくさんの花たちに囲まれて、穏やかな気持ちになれたのだからそれでいい。


お花畑の終わりを告げるように、鎖場が登場。
注意を促す看板に気を引き締める。


といっても、それほど難しいわけではなかった。
足場はしっかりしているので、落ち着いて行けば何の問題もない。


7:25 鑓温泉
雪渓に出ると、眼下に白馬鑓温泉小屋が見えてきた。
近づいて行くとほのかに硫黄の香りがしてくる。


これが評判の露天風呂。(このタイミングは誰も入っていなかった)
ここで温泉に浸かってしまったら、そのあと動けなくなるのは間違いない。
ちょっともったいない気もするけど、今回は休憩のみでスルー。
ここから永遠とも思える下山が始まる。
 


鑓温泉からはいくつか雪渓を越えて行く。ただし、アイゼンはなくても大丈夫。
それよりも雪渓を高巻く箇所が、おそらく残雪の状況による期間限定のルートなのだろう、
狭くて、脆くて、ちょっと嫌らしい感じだった。

 
この下山路も花は豊富。
キヌガサソウ


君はシナノキンポウゲ?


再び雪渓を越える。おそらくこれが杓子沢。


このルート、たくさんの沢を越えるので、その度に結構な登り返しがある…。
今通って来た道が落石帯を横切っているのが見えるように、
崩れやすいトラバースもあるので、快適なルートとは言えないかな。


鑓温泉からもう2時間ほど下ったか、小日向のコルあたりから振り返れば、
さっきまでいた稜線がもうあれだけ遠い。
なんだか名残惜しくなってしまう。


またいつかあの稜線を。


まだまだ長い下山は続く。
フワフワのシモツケソウに見送られて。


白馬岳方面はガスで隠れてしまった。
でもあの稜線をずっと歩いてきたことが少しだけ誇らしい。


もうヘトヘトで心折れそうになる頃、猿倉に続く林道に飛び出す。
鑓温泉から3時間半強だったのでコースタイム通りではあるのだけど、とにかくしんどかった。


そこから10分ほどで猿倉にゴール。充実感と達成感で胸がいっぱいだった。


3日間の山旅の最後はカキ氷でクールダウン。


八方に戻る次のバスまで、そこそこ時間があったのでどうしようかと思ったが、
タクシーが相乗りを斡旋していて、名古屋から来たカップルさんと同乗。
前日は白馬山荘の泊りだったそうで、やはり相当の混雑だったよう。

タクシーに揺られて15分ほどで八方に2日ぶりの帰還。
このあと、お盆休みに入った中央道の渋滞には参ったけど、
今回の白馬縦走は絶対に忘れられないものになる。

ひとつひとつの風景が鮮明に心に刻まれた白馬三山の縦走。

憧れの小蓮華山の稜線、
初めての雷鳥との出会い、
めぐりあえたブロッケン現象
どこまでも青い夏空、
何度も元気をもらった花たち、
刻々と変化する夕暮れ。

その時、その場所にしか存在しない、それぞれの風景。
それを見つけにまた山に登ろう、「坂の上の雲」を越えて。 (End)