稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

白馬三山縦走 - 心震える山旅、憧れの稜線を越えて (Day 2 ; 2015.8.8)

 

(1日目) 栂池 → 白馬乗鞍岳 → 白馬大池白馬大池山荘 泊)
(2日目) 白馬大池 → 白馬岳 → 杓子岳 → 白馬鑓ヶ岳 → 天狗平 (天狗山荘 泊)

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2日目の朝、快晴の予感。最高の一日が始まっていく。
小蓮華山の稜線、そして、白馬三山はどんな表情を見せてくれるだろうか? 期待でいっぱい。


あまり早く発ってしまうと、小蓮華山の稜線に陽が当たる前についてしまうので、
はやる気持ちを抑えて、まずは朝食(自炊)を済ませる。
そして、5時過ぎにスタート。小屋から雷鳥坂を登って行く。


歩き始めてすぐに、白馬大池の向こうから太陽が昇ってきた。
もともと寒さはほとんどなかったけど、太陽の温もりになんだかほっとする瞬間。


ハイマツに覆われた雷鳥坂を進むと、少しずつ小蓮華山の稜線が見えてきた。
その前に船越ノ頭までひと登りしなければならない。


右手には三国境から続く雪倉岳朝日岳の稜線が並走するように延びている。


振り返れば、白馬大池が少しずつ小さくなっていく。
別天地と言ってもいいような、素敵な場所だった。
季節を変えて、また訪れてみたいと思った。

 
岩の隙間に朝の陽を受けるイワギキョウ。いや待て、チシマギキョウかも?
このあたりの見分けは良くわからない…


船越ノ頭までもうちょっと。
ここまで傾斜はそれほどきつくない登りだったので、いいウォーミングアップになった。
自分の影がなんだかいい感じ。


小高いピークの船越ノ頭で南側の眺望が開けると、後立山の稜線が姿を現した。
白馬岳は小蓮華山に隠れているけど、杓子岳、鑓ヶ岳から遠くは鹿島槍まで見渡せる。
これは気持ちが昂ぶる。


そして、ついに、この場所に来ることができた。


たおやかに、でも力強く、空へ延びるように続く稜線。
憧れていた風景が目の前に広がっている。
緩やかな弧を描くように高みを目指す尾根道を目で追う。
ここを歩いてみたくて登山をはじめたようなものなので、なんだか感慨深い。

来ようと思えば、登山はじめて2年目とかでも、来れたと思うし、
天気とスケジュールが合わず、計画から2年間、お預けになっていたのもあるけど、
結果的に色んな山を経験してきて、今、ここに立っている。

その間に、自分の中でこの場所に対する想いは確実に大きくなっていたし、
何より、こんなにも絶好の天気の中で、思い描いていたとおりの風景と向き合えていることが嬉しい。

いざ行こう、「坂の上の雲」を目指して。


道の傍らにはタカネナデシコ
このあたりから白馬岳までは結構、風が強くて、一瞬の風の合間を見計らってシャッターを切る。

 
稜線を登っていくと白馬岳も姿を現し、やっと三山がそろい踏み。


眼下には大雪渓が見えた。
トレースはしっかり見えるが、まだ、それほど人は多くないみたいだ。


6:40 小蓮華山
景色を楽しみながら、あっという間に小蓮華山のピークに到着。
新潟県の最高峰というのは、なんだか意外な感じがする。
休憩している登山者で混雑していたので、有名な鉄剣の写真を撮ったら先に進んでしまう。


小蓮華山からは下り基調で緩やかなアップダウンを越えて三国境に向かう。
白馬岳が近くに迫ってきて、最高の気分で稜線漫歩。 


白馬鑓と鹿島槍の間に遠く見える槍ヶ岳。  
まだ終わっていないけど、白馬三山をクリアしたら、次の目標はやっぱり槍かな。


それにしても白馬岳は圧倒的な存在感がある。
立山の中心にいることを実感する。


緩やかに曲線を描く稜線をたどって、一歩一歩、確実に白馬岳へ近づいて行く。


このあたりでは、昨日、白馬山荘に泊まった登山者とたくさんすれ違った。
夕焼け、今朝の日の出ともに、最高だったとのこと。

あと、ひとつ気になる情報が。
白馬三山からの下山路にある鑓温泉小屋だが、今日は予約なしだと泊まれないらしい。
お盆連休初日の土曜日なので、この天気なら一年の中で最も山が賑わう日になるかも。
もともと、今日の宿泊地は鑓温泉への分岐を越えた少し先の天狗山荘なので問題はないが、
鑓温泉からあぶれた人たちが登ってきて、大混雑になることを覚悟しないといけないかも知れない。

三国境から雪倉岳朝日岳に続く稜線を眺めて。いつかはあの稜線も歩いてみたい。


三国境を過ぎると、いくつか急登をこなして行くようになる。
ところどころ、風が特に強かった。


そんな厳しい環境にも負けない花たち。ウサギギクの群生。


イワギキョウか、チシマギキョウかは、やっぱり分からないけど、
岩陰に身を寄り添って咲く姿に、なんだか温かさを感じる。  


このピークを越えたら、そろそろ山頂だろうか?


立山から剱岳も見えて来た。剱岳はやっぱり存在感ある。
この先はずっと剱岳を見ながら歩くことができる。


あの三角の先っぽが山頂だ。もう少し!


8:00 白馬岳山頂
そして、白馬大池を出発してから3時間で白馬岳山頂に立つ。
写真の撮り過ぎで、立ち止まることが多かったせいか、ほとんど疲れていないけど、確かな達成感。


山頂はもちろん360°の大眺望。
「強力伝」 で有名な(読んでないけど…)指示盤越しに見る立山剱岳
その後ろには白山も控えている。


東側を覗き込めば大雪渓。かなりの急斜面。
次の機会にはここを登って来よう。


高度感はそれほど感じないけど、山頂直下はスパッと切れているから、足元に注意しないと。
南側にこれから越えて行く杓子岳と白馬鑓。
その奥には穂高・槍はもちろん、写真だとわかりづらいが、八ヶ岳南アルプスも見えた。



北側はここまで歩いてきた稜線。
少しずつ白馬岳に近づいていく感覚が得られる、最高のルートだった。


ひと通り眺望を楽しんだら白馬山荘に向かって下る。
山荘の向こうには、やっぱり立山剱岳。なんだか日本じゃないみたい。


山荘前のベンチで、白馬大池山荘のお弁当をいただく。
ちょっと早い昼休憩で、この後の縦走に備える。
ここで、昨晩、同部屋だったふたり(ともにソロ)と再会し、しばし山談義で盛り上がる。
ふたりはこのまま大雪渓を下るとのことだった。


お腹が満たされたら、杓子岳に向けて、まずは小高い丸山を越えて行く。
剱岳の眺望が最高!


丸山から来た道を振り返ると、白馬岳は何とも穏やかな山容で、
小蓮華側から見た荒々しさとのギャップが、同じ山とは思えない。


丸山から杓子岳に続く鞍部までは、お花畑が続く。
高山型のタンポポ
調べたら、シロウマタンポポっていうのがあるらしいけど、これがそうなのか?


ミヤマトリカブトと、何だろう?


これから向かう杓子岳と白馬鑓。この稜線、気持ち良過ぎる。
細やかなアップダウンを繰り返して、少しずつ近づいて行く。


大雪渓を見下ろすと、登山者の列が大変なことに。
まさに蟻の行列状態で、渋滞しているように見える。


杓子岳の斜面の崩れっぷりがすごい。


杓子岳には巻き道が付いてて、山頂を通らなくても先に進める。
山頂に続く道は、見るからにザレザレ、ガレガレの急登で、かなり骨が折れそう。
だが、三山縦走がいちおうの目的でもあるので、巻き道の誘惑を断って山頂を目指す。


10:25 杓子岳
思った通りのガレっぷりで、一歩踏み出すごとに足元の岩屑が崩れて、かなり歩きづらい。
息も絶え絶えになって、それでもなんとか白馬三山の2座目、杓子岳山頂に到着。


東側を覗き込むと…怖
ちょうど、ガラガラと大きな音を立てて、岩が転がっていくのが見えてしまった。


山頂の北側にはちょっとしたテラスのようになっている場所があった。
踏み外さないように注意しながら、白馬岳と歩いてきた稜線を眺める。


旭岳と清水岳方面。
白馬岳から黒部渓谷の欅平まで道が続いているそうで、お花畑がすごいらしい。
きっと歩く人も少ないだろうから、いつかは歩いてみたい。

 
ガスったら危険そうな山頂の稜線を抜けて、三山最後の白馬鑓ヶ岳に向けて歩き出す。


巻き道と合流したあたりから見上げた白馬鑓。
鞍部まで下って、そこから大きく登り返す。結構、険しそうだ。


白馬鑓への岩場登りに入ったところで、白馬岳、杓子岳を振り返る。
斜面の中腹に巻き道がくっきり見えるけど、この“誘惑”される感じ、伝わるだろうか?(苦笑) 


道端に咲く花たちに元気をもらって登る。


11:35 白馬鑓ヶ岳
そして、白馬鑓ヶ岳の山頂に到着。
空が青すぎる。
山頂標識の横にある三角点、さわったらグラグラしたんだけど、いいのかな?(苦笑)


今日、歩いてきた道が全部、見えそう。


少し休憩したら、本日の宿泊地、天狗山荘を目指す。
時折、ガスが稜線を越えるようになって来た。


ガレ気味の道を下り、振り返ると、白馬鑓のどっしりとした山容が白く輝いていた。


大好きなイワツメクサ


トウヤクリンドウがたくさん咲いていて、気配はすでに秋へ向かっているようだった。


鑓温泉への分岐を過ぎて、あの緩やかな丘を越えたら…


天狗山荘が見えて来る。
白馬大池を出発して7時間半。時刻は12時半。
思ったよりも順調に来れて、適度な充実の疲労感。


まずは宿泊の受付に向かう。混雑がどんな程度が気になるところだが。
そしたら、意外にも予約はそんなに入っているわけではなさそう。
時間がまだ早いので何とも言えないけど、布団ひとり一枚を確保できるだろうとのこと。

白馬鑓を見上げる天狗山荘のロケーション。
こんな所にテントを張れたら気持ちいいだろうな。 
まぁ、僕の場合、機動力重視で今のところその予定はないけど。(担ぐ体力がないだけ?)


水場は雪渓の雪解け水だった。


小屋の食堂で、釜プリンなるスイーツを発見。
そこそこ疲れていたので、ビール飲んだらかなり回りそうだなと思って、今回は甘いものに。
「ハーフサイズありませんか?」 なんて聞きたくなるほど大きくて、
でも、食べてみたら冷たくて、美味しくて、ペロリといけてしまった。 


スイーツの後は、昼寝したり、外で山を眺めたり、小屋でマンガ読んだり、ダラダラ生活。
そして、17時からの夕飯はお鍋付き。この小屋の名物 「天狗鍋」 なり。
山の上で、こんなあったかい料理を食べられるなんて幸せ。


混雑の方は結局、最終的に6人部屋に4人と余裕ありすぎで、ちょっと拍子抜け。
天狗山荘は不帰ノ嶮を越える人、越えて来た人の集まる場所って感じで、
経験値が高そうな人たちがいっぱいに見えた。

さて、夕食の後は、夕暮れの風景を眺めに、天狗の頭まで行くことに。
小屋番さんに聞いたら、30分ぐらいで着くとのことだった。
すっかり陽が傾いてまどろむような風景の中、緩やかな稜線を散歩気分で歩く。

 
昼過ぎには一度、雲に隠れていた剱岳も、再び顔を出してくれた。


稜線を歩いていると、東側の白馬の麓から薄いガスが上がってくる。
でも、稜線を越えることはなく、ガスは沈みかけた西日に照らされて、ほのかに赤く染まる。
きれいだなと思っていたら…

まさかのブロッケン現象に遭遇。
山に登ってたら、そんなに珍しいことではないのかも知れないけど、
初めての体験だったので、なんかちょっと感動してしまった。


白馬鑓に雲が掛かってきたけど、それもまたいい感じ。


ゆっくり歩いて、小屋で言われたとおり、30分で天狗の頭に到着。
ちょうど日没の少し前で、ナイスタイミング。


ここに来るまで、見渡しのいい稜線で前を行く人は見えなかったから、
やっぱりというか、当然というか、誰もいない。
この夕暮れを独り占めできる幸せ。


南側を眺めれば、不帰ノ嶮を越えて、唐松岳五竜岳鹿島槍まで茜色に染まっていた。
ガスが絡んで、どこか幽玄な雰囲気でもある。

 
立山方面には雲が湧き立っていた。ひと雨、あったかな?


そして、静かに日没の時間。ひとりきりで今日の太陽を見送る。


宿泊地を天狗山荘にしたのは、白馬の稜線からこの夕景を眺めたかったというのが大きい。
今回のルートで白馬三山を縦走する場合、
2泊目は鑓温泉まで下って、温泉を楽しむというのが人気のようだけど。
僕なら温泉よりも、断然、こっちの夕暮れの風景を選ぶかな。

一日が終わっていく時間の流れを感じる、この瞬間、瞬間の移ろい。
その流れの中に身を置いて、山や空と向き合う。
心や気持ちが静かに鎮まって行くような感覚。

そんな時間を過ごしたくて、僕はまた山に登るだろう。

暗くなる前に山荘に戻らなくては。
白馬鑓がガスに飲み込まれて行きそうで、幻想的な風景になった。


様々な山の風景を噛みしめて、明日は猿倉に下山する。

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(1日目) 栂池 → 白馬乗鞍岳 → 白馬大池白馬大池山荘 泊)
(2日目) 白馬大池 → 白馬岳 → 杓子岳 → 白馬鑓ヶ岳 → 天狗平 (天狗山荘 泊)
(3日目) 天狗平 → 鑓温泉 → 猿倉