稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

武尊山 - 雪原と樹氷の真っ白な稜線 (2015.2.21)

 

ルート : 川場スキー場 → 剣ヶ峰山 → 武尊山 (ピストン)
天候 : 快晴 (風もとんどなし)

 

詳細な山行記録は … ヤマレコ

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12月の北横岳、1月の編笠山に続き、今シーズン3回目の雪山は上州武尊山へ。
昨年だったか、雑誌「山と渓谷」で取り上げられ、いつか必ず行こうと決めていた山である。
天気は快晴予報で、結果的にも今シーズン3戦3勝となった雪山ハイク。
今回も歓声とため息の連続だった。

コースは川場スキー場のリフトトップから剣ヶ峰山を越えて山頂に至るルート。
距離にしたら片道3kmにも満たないが、開放的な稜線歩きができるようで楽しみ。

川場スキー場には立派な立体駐車場があって、車でのアクセスは最高なのだけど、
スキー場手前の坂道は凍結しているので、さすがに夏用タイヤでは無理。
でも、ありがたいことに、麓の道の駅「川場田園プラザ」から無料のシャトルバスが出ている。

バスの始発は8時なので、これに間に合うように出発したつもりだったが、関越道が事故渋滞…
8時を逃すと1時間ないので、随分と遅い出発になってしまうな、と諦めかけていたが、
何とかギリギリセーフ。

「もうすぐ出発しまーす」の声に急かされるように、急いで準備してバスに乗り込む。
バスは満員で、登山装備の人もちらほら。
道の駅から見えた武尊山方面は雲ひとつなく、雪が白く輝いている。
ここから山頂は見えていないが、右側のピークが初めに越える剣ヶ峰山のようだ。


普通にいけば30分ぐらいで到着するところだが、
スキー場目前の急坂を登れない車が道を塞いでいるようで、15分ぐらい足止め。
それでも、今日の行程は余裕があるので、センターハウスでゆっくりと準備する。

リフト券売り場で登山届を提出してチケット購入。
しっかりと証明書が発行されて、これがないとリフトに乗せてくれない。
ちなみに、下山時も報告が必要で、多少の手間は掛かるけど、
登山者に対する受け入れ態勢が行き届いて、好感が持てた。

1本目のリフトに乗り込む。
この川場スキー場は子供の頃、家族で良く滑りに来ていたので、なんだか懐かしい。


2本目のリフトに乗り継いでゲレンで最上部へ。
終点が近づいて来ると武尊山の山頂が姿を現す。
正面の岩山を越えたら、その先に真っ白な稜線が待っているのがわかる。
歩き出す前から、胸が高鳴る。


リフトを降りると、数人が登山の準備をしていた。
前日に雪が降ったようだが、10時前の出発時にはしっかりとトレースができていた。
先行された皆さんに感謝。
すぐに急登があるので、はじめからアイゼン装着で行くことにする。


リフト乗り場の裏の丘を越えると、さっそく最高の雪景色が始まる。
まずはリフトから見えていた大きな岩山を巻いて行く。


いきなりの急登でシンドイが、振り返ると開放感のある眺め。
写真だとわかりづらいが、富士山や八ヶ岳も見えていた。


そして、左側には谷川岳を中心とした上越国境の山々。
この天気なら、あっちも賑わっていることだろう。

 
最初の急登を終えてひと段落。
先行者の後を追って、どこまでも青い空と樹氷の中を行く。
風もほとんどなく、最高の雪山日和。


稜線に出ると、行く先に空に突き出るような剣ヶ峰山が見えてきた。


10:20 剣ヶ峰山
最初の見所、というか難所がこの剣ヶ峰山となる。
稜線の上に唐突に存在する急峻なピーク。
こちらから登るのに問題はないが、あの向こうには急斜面の下りが待っている。


まずは、空に登って行く感じで直登する。
距離は短いので、息はそれほど上がらない。

 
狭い剣ヶ峰山の山頂へ。
ナイフリッジというほどではないけど、両側は切れ落ちていて、ちょっとした緊張感。
視界が悪い時や強風の中ではあまり通りたくないかな。


でもそこから見える景色は最高。上越会津の山々を見渡す。


遠く浅間山を眺めて。
眼下に見えるのは稜線に続く獅子ヶ鼻山。


谷川岳をアップで。
雪の付かない急峻な岩壁、迫力がある。


そして正面には目指すピークの武尊山山頂。
翼を広げたような雄大な山容に見惚れてしまった。


さて、事前の調べでちょっと嫌らしいと思っていたのが、ここからの下り。
かなり急斜面で、下りはじめはちょっと腰が引けた。
ただ、今回は雪がたっぷりと付いていたおかげで、意外と難しさは感じず、
スムーズに降りることができた。


急な部分を降り終えて、剣ヶ峰山の山頂を見上げるとこんな感じ。
あのトップからの一歩目がちょっと怖い。


さぁ、ここからは開放的な稜線歩きのはじまり。


剣ヶ峰山を振り返ると、カッコよすぎるシルエット。
スケールは大きくないのかも知れないけど、あの槍ヶ岳に負けないぐらいの尖り具合。
ここを越えて来たことが、ちょっとだけ誇らしく感じる、雪山初心者(苦笑)


稜線は結構アップダウンがあった。
適度にフカフカの雪質が心地よい。
ところどころに雪庇があるけど、この日はしっかりとトレースをたどれば大丈夫。


思った以上に成長していた樹氷の間をすり抜けて進む。


そして今度は広大な雪原の稜線。なんか日本じゃないみたい。


あいかわらず雲ひとつない青空が嬉しい。
このあたり、風の通り道っぽいけど、ほとんど無風状態で、歩いているとちょっと暑いぐらい。


それにしても、さっきから後ろを振り返ってばかり。剣ヶ峰山の姿が気になって仕方ない。
いつもにも増して亀足タイムになる。
真っ白に輝いた剣ヶ峰山は神々しさすら感じる。


ほんと、しつこいぐらいだけど、美しすぎて、何枚写真を撮ったかわからない。


この先は雪庇が成長していて、少し気を付けなければいけないポイント。
トレースのすぐ脇に大きな落とし穴が開いていたので慎重に。
 



雪庇の脇を抜けたら、山頂直下の広い斜面に入る。
山頂に向かって登山者の列が続く。


最後はなかなかの登りだった。
トレースは急な部分を避けるように、左側を大きく巻いて行った。
樹氷の斜面の向こうに尾瀬の山々を見ながら。


山頂目前。これが最後のひと登り。


11:50 武尊山・山頂
そして、武尊山山頂に到着。
写真を撮りまくりながらでも、2時間での到達だった。


山頂はもちろん360度の大パノラマ。
まずは北西方面。谷川岳から朝日岳巻機山までの上越国境。


谷川岳から仙ノ倉山に続く稜線。その背後に山頂部が平らな苗場山


巻機山も行ってみたい。
池塘の草紅葉が美しい秋かな?


北方面。上越から越後の山々。


中ノ岳とその肩に見えるのが越後駒ヶ岳だろうか?


北東方面。尾瀬の山々。


至仏山平ヶ岳
ゴールデンウィーク至仏山に行こうかと計画中。


こっちは、燧ケ岳と会津駒ヶ岳
ワタスゲの揺れる燧ケ岳が懐かしい。


前武尊に続く稜線。
ひとり分ぐらいのトレースが見えるけど、どこまで行ったのだろうか?


日光白根山も紅葉シーズンに登りたい。


群馬のシンボル? 赤城山


歩いてきた剣ヶ峰山からの稜線。
背後に浅間山八ヶ岳、奥秩父の山々。よく探すと富士山もあるが、見えないか…
これでぐるっと一周。


山頂も風は穏やかだったので、昼休憩にカップラーメンを食べてから下山開始。
正面に谷川岳朝日岳を見ながら。
いつかは馬蹄形縦走に挑戦したい。


帰りはとにかく剣ヶ峰山がカッコいい。
今度は振り返る必要ないので、スイスイ進める。


下山とはいえ、剣ヶ峰山に向けて、そこそこの登り返す必要あり。
逆光で稜線がキラキラしている。


眩しい太陽と雪景色。
すっかり雪山に魅せられてしまった自分がここにいる。


振り返れば、白く輝く武尊山が少しずつ小さくなって行く。
最高の時間をくれた、この山々に感謝。


剣ヶ峰山まで戻ってきた。
今日のメインはもちろん武尊山だが、剣ヶ峰山も主役といってもいい存在感。
午後の傾きかけた陽に照らされて、朝とはまた違った見え方。


トラバースルートもしっかり踏まれているようで、こちらに進む人も多かった。
しかし、結構な急斜面を横切っており、
先行者が苦戦している様子が見えてしまったので、山頂経由を選択する。
この暖かい気候だと、雪崩の危険性もありそうだし。


剣ヶ峰山のピークの取り付きには、こんなシュカブラも。


距離は短いけど、この登りはキツイ…


剣ヶ峰山の直下の急斜面に挑む。
登りだとほとんど怖さは感じないけど、慎重に。


剣ヶ峰山のピークで最後のパノラマを楽しむ。


剣ヶ峰山からは途中、尻セードを楽しんだりしながら、リフト乗り場に帰還。
帰りは武尊山から1時間半かからないぐらいであっという間。


賑やかなゲレンデを見下ろしながら、リフトで下る。
すれ違うスキーヤーの視線が時々恥ずかしかったが、
あの真っ白な頂まで自分の足で歩いてきたことが、ちょっとだけ誇らしくて胸を張った。