稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

編笠山 - 穏やかな冬の日、青空と八ヶ岳と (2015.1.25)

 

ルート : 富士見高原 → 編笠山 → 青年小屋 → 西岳 → 富士見高原 (周回)
天候 : 晴れ のち 薄曇り (風は終日穏やか)

 

詳細な山行記録は … ヤマレコ

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高気圧に覆われて、絶好の雪山日和が予想された日曜日。
ちょっと遅くなったが、2015年の初登りは八ヶ岳編笠山へ。

晴れ予報とはいえ、厳冬期の2500メートル級は初めて。
前回の北横岳も標高は同じぐらいだけど、ロープウェイで一気に2200メートルからのスタートだったし、
山頂まではお散歩感覚で行けてしまったので。
少し身構えていたけど、結果的には穏やかな天気に助けられ、最高の雪山を楽しむことができた。

観音平への道が閉鎖されている冬は、富士見高原から編笠山へ向かうのがメインルートとなる。
小淵沢インターから富士見高原までは橋の上など、ところどころ凍結気味だったが、問題なし。
まだ暗い6時を少し回ったところで富士見高原リゾートの駐車場に到着。
停まっているのは5台程度で、もっと人が多いかと思っていたので拍子抜け。

明るくなってきてから準備をして、徐々に浮かび上がってくる甲斐駒に見送られて出発。


計画では編笠山に登り、青年小屋、西岳と周回して戻ってくるルート。
ただ、前週の中頃にかなりの雪が降ったようで、トレースの状態がちょっと心配(他力本願…)。
おそらく、前日の土曜も好天だったので、編笠山までは問題ないはず。
そこから先は行ってみないとわからないので、状況を見て判断することに。
ワカン、スノーシューは持ってないので、トレースがなかったら潔く引き返すことを決めて進む。

林道を歩き始めて、振り返ると甲斐駒が少しだけモルゲンロートになっていた。


序盤は林道や散策路など分岐が多いが、道標がしっかりしているので助かる。
西岳に道を分ける五叉路から編笠山までは220分の表示。どのくらいで登れるか?


雪はスタートからしっかりあって、盃流しのあたりはアイスバーン状態になっていたのでアイゼン装着。
臼久保岩小屋を過ぎたあたりから急登の始まり。
まだ陽の届かない薄暗い樹林帯の登りはとにかくしんどくて修行の時間。
ちょっと心が折れそうになった…


とにかく無心で耐え登って、臼久保岩小屋から1時間半ぐらい。
シャクナゲ公園と思われるあたりから空が見えるようになった。

 
ところどころでは雪の量が多く、木の枝をかわすために、しゃがんだり、這って進んだり。
振り返れば、ツララの垂れた木の間から北岳が顔を覗かせていた。


森林限界まではもうすぐな予感。
左から鳳凰三山北岳甲斐駒ヶ岳仙丈ケ岳と並ぶ南アルプスの面々。


そして標高2300mを越えると、ついに森林限界を突破。
ここまでのつらい登りが報われる瞬間。
風もほとんどなく、最高の時間が始まった瞬間でもある。


右手を見れば富士山。思わず “おはようございます” と言いたくなってしまう(笑)
空には次々に飛行機雲ができては消えていく。


どれも登ってみたいけど、いずれも未踏の南アルプス


木曽駒、空木岳中央アルプスも白く輝いて見える。


御嶽山はまだ少し噴煙が上がっていた。


あとで向かう予定の西岳の向こう側には北アルプスが並んでいる。
穂高から白馬までの峰々を一望、すごい!


立山方面をアップで。麓は雲が掛かっているが稜線はくっきり。
真ん中は双耳峰の鹿島槍。右側が五竜岳。左の三峰は爺ヶ岳


その北側は白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳の白馬三山。
縦走を計画するも、2年連続で日程と天候が合わずに断念している。
今年こそはあの稜線を歩きたい。


岩稜帯もちゃんとトレースが付いていたので歩きやすかった。
風もないし、傾斜もそれほどでないので、ピッケルに持ち替えることなく、ストックのままで行く。
ただし、時々、大穴が開いているので注意。


「頑張って」の看板と富士山。麓は気温が高いのか、少し靄が出ているようだ。


有名な「最後だ ダッシュ!」の看板はトレースから外れていた。
だけど、せっかくなので写真を撮っておく。

 
10:30 編笠山・山頂
そして、本当にダッシュしたくなる距離に山頂。
でもダッシュはせず(当然)、その場所からの風景を想像しながら、
最後の数歩を踏みしめるように、噛みしめるように…



その瞬間、目に飛び込んできた風景は思い描いていたもの以上だった。


堂々たる八ヶ岳の核心部。
ここまで登って来る途中には、一度もその姿を目にすることはなかったせいか、
余計に胸に迫るものがある。

本当に、素晴らしいの一言に尽きる眺望。
先客は2名だけで、静かな山頂。
風はほとんどなくて穏やかなので、ゆっくり風景を楽しむことがでそう。
 
主峰の赤岳。夏になったらあの頂も目指してみたい。


赤岳に負けない存在感の阿弥陀岳


こちらは3年前の夏に登った権現岳ギボシ


赤岳、阿弥陀岳権現岳、それぞれに個性があるんだけど、
お互いが調和し合って、ひとつの風景を作っている。
なんかこう、色々書きたいんだけど、その圧倒されるような様に、率直に感動した。

あらためて、冬晴れの完璧な八ヶ岳を。
この風景を見たら、ここまでの苦労が苦労でなくなった。


編笠山の山頂は、ほぼ360度のパノラマ、
こちらは北八ヶ岳方面。蓼科山と昨年末12月に登った北横岳が見える。


西岳の背後に、遠く北アルプスを望む。


その中でも、特に目が行くのがやはりこの部分。
穂高の峰々から大キレット、南岳、そして槍ヶ岳に続く槍穂連峰。


南アルプス。シャープな山容の北岳、甲斐駒とたおやかな仙丈ケ岳の対比。


360度の眺望の〆は、南側の富士山。
富士山は職場(平塚)からよく見えて、僕にとっては見慣れた存在であるのだけれど、
それでも山から見る富士山は特別に思う。
展望が開けたところでは自然とその姿を探してしまうし、見つけたらなんだか嬉しくなってしまう。


最後に縦構図で八ヶ岳
空が青すぎる。
八ヶ岳ブルー” なんて言われ方をするけど、なんだか素敵な響き。


こんなにも抜けるように青い空が見えるのには、ちゃんと理由があるみたい。
八ヶ岳の北斜面で空気中の水分が落とされて、南麓側には乾いた空気が流れて来る、とのことだ。
ということは、この青色は、“純粋な空の色” と言ってもいいのかも知れない。



さて、天候があまりにも穏やかなので、ここで早めのお昼でもいいかなとも思ったが、
西岳方面のトレースがどうなっているか分からないので、先に進むことにする。
とりあえず、青年小屋へはしっかり踏まれていたので、そこまで行って判断することに。


山頂直下の樹林帯を抜けると、眼下に青い屋根の青年小屋が見えてきた。
目の前は権現岳ギボシが迫ってくるかのように構えている。


権現岳の山頂を望遠で。
よく見ると、山頂部直前のトラバースに登山者の姿が。
冬の権現岳の難易度がどの程度なのかは未調査だけど、まだ挑戦する自信はないかな。


トレースを外れなければ踏み抜くことはなし。
雪質はフカフカ、景色は最高。なんだか楽しくなる下りだった。


風の模様、シュカブラも。 


青年小屋目前の岩稜帯も、雪のおかげで苦労することなくスイスイと歩けた。

  
写真を撮りながら、20分の下りで冬季休業中の青年小屋に到着。
入り口が半分くらい雪で埋もれていた。
有名な 「遠い飲み屋」 の提灯は、さすがにぶら下がっていない。
いつか泊まってみたいかも。


心配していた西岳のトレースは思った以上にしっかりと付いているので、予定通り進むことする。
その前に昼休憩。
寒ければ冬季小屋でと考えていたが、太陽がポカポカ、暖かいぐらいなので外で食事にした。


休憩後、西岳に向けてリスタート。
さすがにこちらは雪が深かったけど、ほとんど踏み抜きはなかった。
前日、ラッセルしてくれた人たちはさぞかし大変だったろう。感謝。


ルートはほとんどが樹林帯で、しかもこそこそアップダウがあって、ここで疲れが一気に倍増…
でも、ところどころでは視界も開けていい雰囲気に。


こちら側から見る権現岳は、また随分と様子が違う。尖っていて格好がいい。
(訂正… 尖って見えるのはギボシ


さっきまでいた編笠山の山頂と、背後に南アルプス
昼ごろから雲が出る予報になっていたが、その通りにいつの間にか青空は消えていた。


12:40 西岳
青年小屋から1時間と少し掛かって西岳に到着。


青年小屋方面から来るとあまりピークって感じがしないけど、なかなか開放的な山頂だった。
南側と西側が開けていて、数人が景色を見ながら休憩していた。


鳳凰三山の眺望。地蔵岳オベリスクもはっきりと見える。


編笠山の肩に顔を出す富士山。


少し風景を眺めた後、下山開始。
すぐに樹林帯に入ってしまい単調で面白みはなく、淡々と下る。
疲れていた割には順調で、西岳から1時間ちょっとで不動清水まで下りることができた。
ここからは林道と散策路を進む。
全然、写真を撮らなかったけど、カラマツ林がいい雰囲気だったので、最後の一枚。


駐車場に戻ったら、朝はガラガラだったのに、ほぼ満車の状態だった。
初めから編笠山のピストンを決め込んで、遅めの出発の人が多いのかな?
だとしたら、その人たちは、あの “八ヶ岳ブルー” を感じることはできただろうか?

今思えば、山頂で快晴の八ヶ岳を眺めることができたのは幸運だったかも。
宇宙まで続くような青い空が、鮮明に心に刻まれた冬の一日。