稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

北横岳 - どこまでも白く、どこまでも青く (2014.12.27)

 

ルート : 北八ヶ岳ロープウェイ → 北横岳 → 三ツ岳 → 雨池峠 → 北八ヶ岳ロープウェイ (周回)
天候 : 快晴 (山頂は風強し)
 
詳細な山行記録は … ヤマレコ

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このところバタバタしてたり、山に行けるタイミングでは天気が悪かったりで、9月以来の山行。
ということで2014年の紅葉シーズン、どこにも行けず…

気を取り直して、久しぶりの山登りに選んだのは八ヶ岳の北横岳。
今シーズンは年末の時期にしては雪の量が多いようで、楽しい雪山ハイクが期待できそう。
北横岳はスキー場のロープウェイで楽々のアプローチができるので、
ゆっくり写真撮影しながら行くつもり。

車が冬仕様でないので、北八ヶ岳ロープウェイへのアクセスは茅野駅からバスで行くことにした。
駅前の駐車場に車を停めて、バスターミナルに向かう。
ちなみに、ターミナルの窓口であらかじめ往復券を購入するのがお得。(往復¥2500→¥2200)
7:55の始発は登山客ばかりが30名ほど。全員座ることができた。

途中、ビーナスラインの路面状況をバスの中から見ていたが、
日陰部分はやはり凍結しており、バスを選択したのは正解だったみたい。

茅野駅からバスに揺られて1時間、北八ヶ岳ロープウェイの山麓駅に到着。
空は思わずにやけてしまうような快晴。


ロープウェイの切符を買ったら、始発の9時に乗れてしまう時間だったけど、
そこそこ並んでいたので、ここは慌てずにゆっくり準備をする。
ロープウェイは20分間隔での運行。
次の便は空くだろうと思っていたが、スキーヤースノーボーダーがたくさんで、結局、満員だった。

混雑で写真は撮れないが、窓の外には真っ白な木々と八ヶ岳が見え隠れ。
7分であっという間に着いた山頂駅の標高は2200メートル。
風は強くないけど、さすがに寒い。
情報板では気温-14℃となっていた。


山頂駅の前は坪庭という名の溶岩台地で、広大な雪原が広がっている。
それは目映い白と青の世界。


少し右手に目をやれば縞枯山
その名前のように“縞枯れ現象”が見られることで有名だが、
木々が雪に覆われた冬は全然わからない…


こちらは雨池峠に続く森。
とても気持ち良さそうな道だけど、まずは北横岳の山頂を目指そう。


歩き出す前から予想以上に素晴らしい白銀の風景で、早速の撮影タイムとなってしまったが、
啄木鳥のオブジェに見送られて、いざ出発。
とりあえずはアイゼンなしで行くことにする。


坪庭を一段上がって振り返ると、ロープウェイ駅の向こうに中央アルプス御嶽山


御嶽山にはまだ噴煙が上がっているのが見えた。
あの山に眠っている人たちのことを想うと胸が痛む。
鎮魂の願いを込めて。


こちらは南アルプスの眺望。鳳凰三山北岳、甲斐駒、仙丈ケ岳がずらりと並ぶ。
南アルプスはいまだ未踏で、どれも登ってみたい山ばかり。


成長中のスノーモンスターを見上げる。


雪に埋もれた溶岩台地を突っ切って進む。
時折、突風が吹きぬけて、雪煙が舞い上がる。
さすがに寒くて、顔とか痛いけど、こんな最高の天気のもとなら、それすら楽しい。


雪原の向こうに見える雨池山。ただただ美しい世界だった。
帰りはトレースがあれば三ツ岳を経由して、あの雨池山から雨池峠に抜ける予定である。


ほとんど平らな坪庭から、登りに入ると樹林帯の中へ。
雪は締まっていて、傾斜もそれほどでないので、まだまだアイゼンなしで行ける。


見上げればきれいな霧氷も。


だいぶ登ってきて、木が途切れたところから。
広大な坪庭を見下ろした向こう側に、たおやかな山容の縞枯山が広がる。


坪庭を行く登山者が小さく見える。


登って行くほどに雪深くなる。
足取りは軽いが、上から雪がどっさりと落ちてこないか少し不安になってしまう…


樹氷の森の中に立つ北横岳ヒュッテが見えてきた。
あちこちで写真を撮りまくってきたけど、それでもここまで出発から1時間。


山頂への最後の登りは急登のようなので、ここでアイゼン付ける。
それにしても、この空、どこまで青いのだろう。
小屋の煙突から昇る煙が温かそう。


小屋の裏手から続く登りは確かに急だったけど、距離はそれほどでなく、あっけなく山頂が迫る。
樹林帯を抜けたら、一気に風が強くなったが…


そして、北横岳の南峰に到着。
とにかく素晴らしいの一言だった。

まず、正面に飛び込んで来るのが蓼科山と、その背後の北アルプスがくっきり。


穂高連峰を望遠で。
穂高、北穂高と続いて、大キッレトを越えて、槍ヶ岳は…思ったほど目立たない気が?
一生懸命にその尖がりを探してしまった。


乗鞍岳は真っ白。
手前の雪原は霧ヶ峰だと思う。


振り向けば、八ヶ岳の全容。


最高点はすぐ隣の北峰にある。
樹氷の間を抜けて、5分も掛からない距離。


11:00 北横岳・山頂
北峰には山頂標識と蓼科山
相変わらずの雲ひとつない青空にプリン型の蓼科山が映える。


北峰まで来ると蓼科山から続く双子山方面に続く雄大な山容を見渡すことができた。
その向こうにあるのは鹿島槍や白馬岳の後立山連峰なのだが、
ちょうどうっすら雲が掛かってしまい、いまいちはっきり見えなかった。


こちらは中央アルプス。木曽駒と空木岳


景色は最高だけど、風が強くて、動いていないどんどん体が冷えていってしまう。
もっとこのパノラマを楽しみたかったが、長く居ることはとてもできないやしない。
樹氷のプロムナードを通って南峰に戻り、北横岳ヒュッテまで一気に下った。


北横岳ヒュッテ前の広場で昼休憩。
下山は三ツ岳方面へばっちりトレースが付いていたので、予定通りに雨池峠に向かうことにする。
ここからは岩稜帯も通るので、ピッケルもしっかり装備。


坪庭から北横岳のルートは人が多くて賑やかだったけれど、
三ツ岳へ進路を取ると急に人が少なくなり、静かな雪山歩きになった。
トレースは一本分で、少しでも外れると思いっ切り踏み抜く。


ただ、そうやって雪にまみれるのも、なんだか妙に楽しい気分。
そして、なにより美しすぎる純白の世界。
こんな風景の中を歩けることが幸せ。


どこまでも白く、どこまでも青く…
ここは別世界と言ってしまってもいいのではないか?

岩が出てきたが、雪のおかげでむしろ歩きやすく、問題なし。


北横岳方面を振り返って。
風の通り過ぎる音が聞こえるだけの白い風景の中を行く。


名前のとおり三つの峰がある三ツ岳。
北横岳から行くと最初に越えるのがⅢ峰。


夏道は鎖場を越える岩場もあるようだが、雪に埋もれていてどこかよくわからなかった。
トレースは岩の間を巻いて行くところが多い。
時々、深そうな穴が開いているので注意しながら進む。


少し雲が掛かっているが、浅間山が見えてきた。


ひと際、目立っていた岩の柱。


トレースは細いながらも続いていて、三ツ岳Ⅱ峰に到着。
エビのしっぽも発達中。


結氷した雨池を見下ろしながら、Ⅰ峰に向けて一旦、下り。
あそこまで行ってみたいが、さすがに時間がなさそう。


Ⅰ峰でここまで越えて来た三ツ岳の全容を振り返る。
少し緊張感があったけど、楽しい雪山ハイクだった。


三ツ岳Ⅰ峰から雨池峠へもきちんとトレースは続いていて、ひと安心。
ただ、雪の量が一段と増え、踏み抜きは多い。
下りはじめは写真だと伝わりにくいけど、かなりの激下り。
とにかく急斜面で転げ落ちるように下って行く。


樹林帯に入っても急斜面は続く。
尻もちをついたら、そのまま尻セードで制御不能になりそうなので、とにかく慎重に下った。

雨池山との鞍部で進路を南に変えて、そこからの登りが地味にしんどかった。
雪の重みで垂れ下がった木の枝を掻い潜る必要がある箇所も多い。
雨池山からはトレースが正規のルートに沿っているか若干、怪しく、
木々を掻き分ける感じでちょっと不安になるも、なんとか雨池山展望台に出て、ほっと一息。


最後の急坂を下って降り立った雨池峠は白い木々に囲まれていて、どこかメルヘンな雰囲気。
このあたりのトレースもしっかり踏まれていて、スノーシューやワカンなしでも歩けた。


13:55 縞枯山
しばらく歩くと、雪原に佇む三角屋根の縞枯山荘が見えてきた。


時間に余裕があるのでコーヒーブレイク。
縞枯山荘は薪ストーブが温かい、素朴な雰囲気の山小屋だった。
今度はこういうところに泊まって、ゆっくりと過ごすのもいいかも。


名残惜しいけど、そろそろ帰らなくては。
ロープウェイまで戻る途中の風景も白くて青い。


あっという間にロープウェイ駅に到着してしまった。
スキー客で賑わっているらしく、ロープウェイは10分毎の運行になっていた。
ちょうど出発したばかりだったので、わずかな時間でも、この風景を惜しむように写真を撮る。


最後まで雲ひとつない青空で幸運だった。


凍り付いてるロープウェイ駅から縞枯山
本当に帰りたくないぐらい美しかった。


ロープウェイから八ヶ岳。そろそろ天狗岳に挑戦したいが、行けるのはいつになるだろうか。


ちょうど乗り継ぎよく茅野駅行きのバスに乗り込むことができた。
歩いた距離としては短かったが、程よい疲労感でウトウト。
気がついたら、茅野駅に着いていた。

最高の天気、最高の雪山、最高の一日を過ごせたことに感謝。