稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

竜ヶ岳 - 笹原のシロヤシオ、羊の群れを追って (2014.5.24)

 

ルート : 宇賀渓 → 遠足尾根 → 竜ヶ岳 → 石榑峠 (周回)
天候 : 晴れ (風もほとんどなし)

詳細な山行記録は … ヤマレコ

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5月の下旬、鈴鹿の竜ヶ岳では “羊の群れ” を見ることができるという。

といっても、もちろん本当の羊ではなく、笹原の中に咲くシロヤシオがその正体である。
見頃を迎えた土曜日、五月晴れの予報に迷わず竜ヶ岳に向かった。

たくさんの人が訪れるだろうから、空いているうちに登って、少しでも静かな風景を楽しみたい。
宇賀渓キャンプ場の入り口にある落合橋の無料駐車場を5時45分にスタート。
観光案内所で入山料200円を支払い、登山届を提出して登山開始。


20分ほど林道を歩いて、遠足尾根に進路を取る。
登りはじめがなかなかの急斜面で、杉林の中をジグザクと一気に高度を稼ぐ。
いつもながら、最初のひと汗が堪える・・・

植林を抜けると岩山があり、伊勢平野が見下ろせた。


鈴鹿っぽいカレンフェルトのちょっとした岩場を越えると尾根に乗っかる。
ここからは緩いアップダウンの快適なトレイルが続く。
しばらくは林の中を行くが、ところどころに鮮やかなヤマツツジが咲いていた。


やがて林を抜けて、展望が開けてくる。
山頂方向に向かって笹原が続いているのがわかる。


そして、はじめましてのシロヤシオ
身を寄せ合うように、そして、少しうつむくように、白く可憐な花が咲いていた。
僕もそうであったように、多くの人たちが心奪われる理由がわかった。


笹原の向こうに広がる鈴鹿の山並み。手前に構える山は去年に登った釈迦ヶ岳だと思う。


道はシロヤシオの密集地帯に入っていく。
初夏の青空に映えるシロヤシオを見上げながら。


シロヤシオのトンネルを抜けて。


こっちのシロヤシオはブーケのように咲き誇っていた。


これは下山してから観光案内所の管理人さんに聞きた話だが、
ここ3年のシロヤシオはイマイチだったようで、今年は久しぶりに花付きが良いそうだ。

まだ蕾だったが、ヤマツツジと紅白の競演も。


ほんとにもう、写真ばかり撮っていて、かなり遅いペースで進んでいるが、まだ人は少ない。
金山尾根との合流付近から北側の眺望は福寿草で有名な藤原岳


治田峠分岐までは、距離は短いが急な斜面を登る。
振り返ると登って来た遠足尾根を見通すことができた。尾根の左右で植生が違うのが面白い。


治田峠分岐まで来ると、笹原の広がる竜ヶ岳の山頂部が目の前に広がった。
楽しみにしていた “羊の群れ” も見えてきた。


登山道から少し外れた笹原の中に、ひと際、白く咲くシロヤシオの木を見つけた。
薄い踏み跡が続いていたので、そばまで近づいてみた。
シロヤシオの咲く谷を隔てて、山頂を見渡すことのできる斜面に立つ立派な一本木だった。


どこかのんびりと時間の流れるような竜ヶ岳。
そんな風景を切り取ることができた気がする、お気に入りの一枚となった。

山頂に向けて再び歩き出すと、登山道の脇にも笹原の中にも、まだまだたくさんのシロヤシオ
唄うように咲いて。


群れからはぐれた子羊が一匹。みたいに見える?


谷を埋め尽くすように、シロヤシオの森が広がる。


シロヤシオの木々の間を飛行機雲が貫いて行った。


だいぶ山頂が近づいてきた。
流れてきた雲がいいアクセントを作ってくれた。


いつまでも歩いていたくなるトレイル。
今までに、こういう笹原の続く風景を歩いた記憶はない。
シロヤシオの季節でなくとも、きっとまた歩いてみたくなっただろう。

 


山頂直下。笹の海を雲の影が流れて行った。


北側にもシロヤシオの森が広がっている。
奥に見える山は平らな山頂部 “テーブルランド” が特徴的な御池岳。


振り返ると、笹原に点在するシロヤシオがまさに “羊の群れ” のようだった。
うん、確かにそう見える。


9:05 竜ヶ岳・山頂
そして、広い山頂に到着。
写真を撮っているうちにかなりの人に抜かれたが、まだそれほど混んではいなかった。


山頂からは360度の眺望。南側は左から釈迦ヶ岳御在所岳、雨乞岳と鈴鹿の名山が並んでいる。
雨乞岳はまだ未踏で、山頂部には竜ヶ岳と同じく広い笹原が広がっているようそうで、
機会があったら登りたいの山のひとつ。


そして、山頂から “羊の放牧地” を見下ろすとこんな感じ。
なんだか心の和む風景。


一番、羊みたいに見えた部分をアップで。


羊が1匹、羊が2匹… と数えていると、
穏やかな天気のせいもあってか、眠くなってきそう。
時間は9時を少し回ったところで、お昼には早かったので、そのまま進むことにした。

帰りは表道で石榑峠に下る。気持ちのいい笹の海を行く。


数は少なくなるけど、こちら側にもシロヤシオが咲いていた。


尾根から折れて急坂を下っていくと石榑峠の車道が見えてきた。
何台も車が止まっているのが見え、たくさんの登って来る人たちとすれ違った。
こちら側から登れば、比較的、楽に山頂まで行けそうだ。


新緑の中に鎮座する重ね岩。

 


ヤマツツジも少し咲いていた。


石榑峠からはしばらく車道(車は通行止)を歩いて、小峠から再び登山道へ。
宇賀渓の本谷に沿って下るルートは何度も渡渉を繰り返したり、岩を昇り降りしたり。

急なハシゴを下ると滝音が聞こえ、長尾滝が現れた。


新緑と水の飛沫が気持ちいいので、ここで少し休憩をする。

 

長尾滝のあとも渡渉やロープのある岩場が続き、なかなかアスレチックなルートだった。
中道の分岐を過ぎれば、道は穏やかになって、ゴールを目指す。
道中には小さな滝があって、ここでも水に癒される。

 


宇賀渓に戻るとたくさんの車が停まっていたが、うまく時間をずらすことができたようで。
そして、最高のタイミング、最高の天気のもとシロヤシオを愛でることができて幸運だった。