稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

蝶ヶ岳 - 槍穂を眺める稜線に過ぎゆく時間 (Day 2 ; 2014.5.12)

 

(1日目) 三股 → まめうち平 → 蝶ヶ岳蝶ヶ岳ヒュッテ 泊) → 蝶槍
(2日目) 蝶ヶ岳 → 三股

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翌朝、夜中からかなり強い風が吹いていたので、しっかりと着込んで外に出る。
ただ、気温は何度だったかわからないが、冷え込みはそれほどでなく、
凍えることなく夜明けを待てそうだ。

瞑想の丘より、4時20分の空。
雲は多めだけど、浅間山や遠くには日光の男体山白根山のシルエットが見えた。


反対側を向けば、まだ薄暗い中に穂高が浮かび上がって来ていた。


まだ日の出までは時間があるが、少しずつ景色に色が付きはじめる。
槍穂の稜線もだんだんと明るくなる。


いまだ上空は雲が蓋をしているけど、南東の方角にはしっかりと八ヶ岳、富士山の姿。


富士山の右手前は甲斐駒だろうか?


朝の槍ヶ岳の風景が刻々と変化していく。
北鎌尾根の斜面がほのかに、でもはっきりと赤く色づいて来た。


そろそろ夜明けが近い。
だいぶ雲がなくなり、薄い雲が空を抜けていく。なんだか幻想的な朝焼けになってきた。

安曇野の水田は茜色に輝いている。きっと田植えのこの季節にしか見ることのできない風景。


八ヶ岳の空は優しい茜雲に。


そして、穂高ではモルゲンロートの始まり。
奥穂や北穂、各々のピークからはっきりと赤く染まっていく。


さらに、稜線からどんどんと茜色のラインが降りて来る。


いつか見たいと思っていた風景が目の前に広がっているけど、
それをどういう言葉にすればいいのかはわからず、シャッターを切り続けた。
そして、ただただ、ゆっくり朝の時間が流れていった。


南岳から槍ヶ岳の稜線はしっかりと雪が付いているので、一段と赤く見える。


背中に光を感じて振り返れば、いつの間にか日の出の時間を迎えていた。
太陽の輪郭はぼやけて、しっかりとしたご来光とはならなかったが、温かさを感じる朝日。


常念岳への稜線も赤く染まった。


ゆっくりだけど、あっという間に時間は過ぎ、
穂高のモルゲンロートもそろそろ終わりを迎えようとしていた。
稜線の赤味は少しずつ和らいで、今度は徐々に白色を帯びて輝き出していく。


これが初めてアルプスの稜線で迎えた朝、僕が見た風景だった。
おそらくいつまでも記憶から消えることのない、その時、その場所にしかない時の流れを感じながら。

冷え込みはたいしたことなかったが、さすがに30分以上、強い風にさらされた体は冷えていた。
ヒュッテに戻ると温かいストーブが嬉しい。

 

自炊で朝食を取った後、7時前には山を降りることにした。
午後からは天気が崩れる予報だったし、
気温が上がって雪が緩むと、昨日、苦戦した急斜面が厄介そうだったので。

荷物をまとめて、槍穂にお別れの挨拶。


最後まで槍ヶ岳は凛々しかった。
少しだけ後ろ髪、引かれる思いで下山する。


お世話になった蝶ヶ岳ヒュッテ。またいつか。
この次は常念からの縦走かな。


まだ雪の締まった樹林帯をどんどん下る。あれだけきつかった急斜面も下りではあっという間。
蝶沢のトラバースからの常念岳
上空にはすでに雲が広がりはじめていた。


三股が近くなると、花いっぱい。写真撮影で立ち止まる回数が増える。
前日の朝はまだちゃんと花が開いていなかったキクザキイチゲ


ニリンソウイチリンソウ? どっちだろう?


ショウジョウバカマ


力水の近くに咲いていたサンカヨウ


沢のそばに咲いていた花は、ワサビのように見えるけど、自生しているのだろうか?


青いキクザキイチゲは、なんだか可愛らしい。


花咲く春の森を抜けて、三股にゴール。山頂から3時間半だった。


車に戻って、ザックを下ろして、蝶ヶ岳の稜線を見上げた。
また今度、それはいつになるか分からないけど、
再びあの場所に立った時、目の前に広がる風景に思いを馳せながら。  (End)