日程 : 2019.2.17(日) 日帰り
ルート: 三城牧場 → 百曲り → 美ヶ原・王ヶ頭 → 王ヶ鼻 → 三城牧場(周回)
天候 : 晴れ
------
冬の美ヶ原へ。
美ヶ原自体は登山を始める前に、ドライブや家族旅行で何度か訪れたことがある。
そんなお手軽に来られてしまう場所だが、しっかりと「日本百名山」に選ばれている。
でも、駐車場から横移動で行けてしまうので、山という感覚はなく、高原のイメージ。
僕は「百名山ハンター」ではないが、冬の風景は知らないし、登ってみようと思い立つ。
それに、登山として登るなら、容易にはたどり着けない冬でしょ。
なんて思っていたが、調べてみると冬でも車で上がれてしまう、とな。。
王ヶ頭、山本小屋などのホテルも普通に営業しているそうで…、知らなかった。
でも、今回は麓からしっかり「登山」して来た。
ある意味、自己満足かも知れないが、自分の足で登り上げた故に感じることができた美ヶ原。
そこにあった風景に心動かされた山行になる。
------
今回の山行のスタートは三城牧場。
松本とビーナスラインの通る扉峠を結ぶ峠道の途中に位置する。
この日、松本市街から三城まで積雪、凍結はなかった。
観光施設の「三城いこいの広場」は冬季営業していないが、駐車場は開放されており、ここを利用させてもらった。
ちなみに、トイレは使えなかった。
8:50 三城牧場(登山開始)
だいぶ遅い時間のスタートだが、これは王ヶ鼻ホテルのカフェのランチタイムに合わせるためだったりするのだが、それはまた後に話そう。
駐車場からは目指す王ヶ頭を仰ぎ見ることができた。
あの崖の上に平らな台地が広がっているというのは、知らなければ想像つかないだろう。
登山口にあった地図。
登りは百曲りコース、下りはダテ河原コースを使って周回する予定。
歩き始めは、やっぱり雪がない。
キャンプ場の中を進んでいくと、このあたりはまずまず雪がある。
新雪っぽい感じだったが、いつ降ったのだろうか?
雪面に陽が差し込んで、「宝石箱や~」状態。
あまり上手く撮ることができなかったが、キラキラと光が反射して綺麗だった。
登山道に入って、沢沿いを進む。
ところどころで雪の下が凍っているので注意しながら。
凍てついた渓流の美。
芸術的とも思える氷の世界である。
東屋のある広小場で茶臼山に向かう道と分岐し、百曲りの登りが始まる。
ここからは長めのピッチでジグザク登りが続く。
百曲りは陽当たりの良い斜面を登って行くので、雪が溶けている箇所も多かった。
登りに関して言えば、アイゼンは不要だった。
視界の効く林の中を登る百曲りは、なかなか好きな雰囲気で楽しく歩くことができた。
中腹まで登ると、景色が大きく開けて来る。
近くの真っ白なピークは鉢伏山や高ボッチ山。
遠くの方は少し霞み気味だが、鉢伏山の背後には木曽駒ヶ岳などの中央アルプス。
よく見ると尖った宝剣岳も見ることができる。
御嶽山は半分雲の中。
乗鞍岳は残念ながら、辛うじて見える程度だった。
進む正面にある茶臼山には、霧氷がびっしり付いている。
逆光なのが惜しいが、美しい風景。
やがて大きな岩壁が見えて来る。
特に名前は付いていないようだが、なかなかの迫力であった。
眼下は大きく視界が開けていて、気持ちのいい山歩きが続く。
美ヶ原を下から歩く人は珍しい?かも知れないが、百曲りはオススメのコースといえる。
ちなみに「百名山」の著者、深田もここを登ったそうだ。
崖上に少しだけ霧氷が。
濃紺の青空とのコントラストが素晴らしい。
山頂台地が見えて来た。
ここからだと、美ヶ原が崖の上にあるのが良く分かるだろう。
あと少しで百曲りの登りもお終い。
等高線だと結構な急斜面だが、実際のルートはジグザクに拓かれているので、傾斜はかなり緩く、歩きやすかった。
初心者でも余裕を持って登れるのではないだろうか。
王ヶ頭に直接向かうアルプス展望コースが分岐。
ここも歩いてみたかったが、雪原のメインルートに向かう。
そして、美ヶ原の頂上台地に飛び出す。
例年と比べて雪は少ないようだが、どこまでも続くような広々とした風景にちょっと感動。
左手に王ヶ頭のアンテナ群も見えて来た。
茶臼山方面を歩く登山者が何人か見えた。
きっと霧氷の森を楽しめたことだろう。
頂上台地をしばらく進むと「塩くれ場」で、ここで山本小屋から王ヶ頭に向かうメインルートに合流する。
団体グループを含めて、そこそこのスノートレッカーの姿がある。
百曲りでは誰にも会わなかったが、冬でも確かに美ヶ原は人気があることが証明される。
ちなみに「塩くれ場」は、放牧している牛たちに塩を与える場所で、牛が舐めて上部がすり減った岩が点在するとのことだが、今は雪の下。
ところで、牛たちは冬の間って、どこにいるのだろう?
さて、王ヶ頭に向かう前に、美ヶ原のシンボルである「美しの塔」に寄り道をしよう。
11:00 美しの塔
塩くれ場から10分ほどで美しの塔。
石造りの塔と青い空、そして、背景には雪原と王ヶ頭のアンテナ群。
これぞ美ヶ原という風景だ。
もともとは遭難防止のために建てられた「霧鐘塔」であるそうだ。
てっきり観光用のランドマークだと思っていたのだが、ちゃんと使命を持ってここにある。
仲間が面白がって、思いっ切り鐘を鳴らす。
その鐘の音が、青く広い冬晴れの空に吸い込まれて行く。
そして、頭の中で流れるのは、♩あの鐘を鳴らすのは あなた~…
もうエンドレスなんだけど…
もと来た道を戻り、王ヶ頭を目指す。
雪原を貫く一本道が気持ちいい。
こんな素晴らしい景色の中に人工物…と嘆く声もあるようだが、なんか僕は好き。
唯一無二とも思える美ヶ原の冬景色を行く。
伸びやかな風景が堪らなくいい。
雪のない季節、一帯は放牧地になっているので道の外に立ち入ることはできない。
冬はどこでも歩きたい放題で、スノーシューのグループが小高い丘を目指していた。
時々、王ヶ頭ホテルの雪上車が行き交い、道は雪が耕されたような状態。
おかげで結構、沈み込むので、なかなか疲れる。
面倒くさがらず、ワカンを使っても良かったかも。
白い大地と青い空。
その中に伸びる緩やかなS字の線形が画になる。
雪上車がなかなかのスピードで迫って来る。
王ヶ頭のホテル宿泊者を美しの塔まで運んでいるらしい。
雪を蹴散らし、雪原を駆け抜ける雪上車が格好いい。
ほんと広々で、とにかく気持ちがいい。
もっと雪があって真っ白なら、なお良かったが、これでも大満足である。
遠くに浅間山。
王ヶ頭がだいぶ近づいてきた。
というか、ずっと前から見えているのに、なかなか近づかない…。
雪原の向こうに、蓼科山と八ヶ岳の峰々。
肉眼では富士山(一番右)も見えているんだけど、写真では分からないかな。
霞んでいて少し見づらいけど、南アルプス連峰。
左から鳳凰三山から甲斐駒、北岳、間ノ岳、仙丈ヶ岳、塩見岳の並び。
思わぬところで疲れてしまった、もうすぐ王ヶ頭。
12:00 王ヶ頭
美しの塔から1時間掛かって、王ヶ頭に到着。
乱立するアンテナ群が宇宙基地みたいで格好いい。
反対側を振り返れば、広い広い美ヶ原の台地。
そして、風に乗るように、小さく、でもしっかりと鐘の音が聞こえて来る。
小さく美しの塔が映っているが、分かるだろうか? 探してみてほしい。
詩人・尾崎喜八は「美ヶ原熔岩台地」という詩の中で、
登りついて不意にひらけた眼前の風景に
しばし世界の天井が抜けたかと思う。
と詠っている。
なるほど「世界の天井」か。
ちょっと大袈裟だけど、それほどまでに、空と台地が大きく広がる美ヶ原の風景。
おそらく我々と同じく百曲りを登って来た時の情景と思うが、とても共感できる表現だ。
------
さて、今回の山行のメイン行事ともいえるランチタイム。
王ヶ頭ホテルのカフェでいただく。
ここは山小屋ではない。ちゃんとしたホテルと思っていい。
色々とメニューがあって悩むところだが、ビーフシチューにした。
さすがはホテル?で、普通にでなく、ちゃんと、しっかり美味しかった。
値段もそう高くないし(¥1100)、温かい部屋で、のんびりと過ごすお昼。
普段の山行では考えられない、贅沢な時間だった。
あまりゆっくりしていると本当に動けなくなりそうなので、重い腰を上げて再出発の準備。
ホテルの入口の窓には氷の結晶が付いていて、じっくり観察。
まずはホテルの裏手にある王ヶ頭の三角点へ。
ここが美ヶ原の最高点で、いちおう頂上の扱いになっているみたい。
八ヶ岳方面の眺望。
あちらも雪が少なく見えるが、残りの冬山シーズンで天狗岳あたりに行きたいと思っている。
乗鞍岳はずっとこんな感じで、雲が退いてくれることはなかった。
少し先に見えるアンテナの建つ場所が王ヶ鼻。
さらに景色がいいらしいので当然、足を延ばすつもりでいた。
王ヶ鼻に向かう途中、北アルプス方面の眺望。
緩やかな高原の先に、針ノ木岳、蓮華岳、爺ヶ岳が良く見えている。
立山や鹿島槍は、残念ながらガスの中だった。
正面に存在感のある常念岳。
そのピークの左側には、槍ヶ岳がぎりぎりガスに飲まれず、姿を見せてくれている。
王ヶ鼻へはホテルのバスも通る車道を進む。
最後は車道を逸れて、ちょっとだけ登りがある。
13:50 王ヶ鼻
美ヶ原の端っこ、王ヶ鼻に到着。
やや霞が掛かっているのが惜しいが、眼下に松本の街並み、正面に北アルプスの峰々。
最高のロケーションである。
やっぱり最初に目が行くのは、槍ヶ岳と常念岳。
穂高はここまでずっとガスが掛かっていたが、このタイミングで何とか見える状態に。
西穂高、前穂高、奥穂高、涸沢岳、北穂高、いちおうすべて見えている。
後立山方面は状況変わらず。
鹿島槍ヶ岳、五龍岳、白馬岳のピークは、残念ながら雲の中のままである。
王ヶ鼻にある石像群。
美ヶ原は御嶽信仰の山でもあり、みんな御嶽山の方向を向いているらしい。
眺望を楽しんだら、王ヶ頭に戻る。
名残惜しい北アルプスの眺望。
白馬岳はやっぱりダメで、小蓮華岳あたりの稜線だけ見えていた。
鹿島槍も惜しいんだけどな。
爺ヶ岳は真っ白だ。
下山はダテ河原コースで行く。
王ヶ鼻の直下まで、少しだけアルプス展望コースを歩く。
ダテ河原コースは短いピッチで九十九折りが続く。
陽当たりがいいので、地面が出ている部分も多かった。
しかし雪の残っている箇所は氷化しているので、アイゼンを付けて下った。
山小屋(御嶽教の小屋らしい?)まで来れば、急な下りはお終い。
その後もしばらくは雪道、氷道、泥道のミックスで、ちょっと神経を使った。
王ヶ鼻から2時間で下山完了。
駐車した三城いこいの広場までは、少々の車道歩き。
最後に王ヶ頭を見上げて。
あの上に広がる風景を思い出しながら、今回の山行は終了となった。
以下、おまけ。
帰路で松本市街に降りていく途中に見た夕焼け。
薄らと茜色に染まる常念岳と槍ヶ岳。
← ランキング参加中。よろしければポチっとのエールを。