稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

銀杏峰&部子山 - 白山の大展望を背に、白い稜線を空中散歩

 

日程 : 2018.3.17(土) 日帰り
ルート: 宝慶寺いこいの村 → 名松新道 → 銀杏峰 → 部子山(ピストン)
天候 : 晴れ


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福井の越前大野にある銀杏峰。
「ぎんなんほう」ではなく「げなんぽ」と読む。

結論からいうと、この山は非常に秀逸で、ぜひおすすめしたい名峰である。
とにかくロケーションが最高で、大野盆地を挟んで正面に大きく見える白山が素晴らしい。
真っ白な白山を眺めながらの開放的な雪山ハイク。
ちょっと距離は長くなるが、部子山まで続く稜線の空中散歩もセットで楽しんできた。

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一般的な冬季の登山ルートのスタートは「宝慶寺いこいの村」になる。
北陸道の福井インターから越前大野経由で1時間掛からないぐらい。
最後は車1台分の幅で除雪された山道を登ると、いこいの村の駐車場に到着する。
しかし、雪で埋もれていて、駐車スペースとして除雪されているのは6台分程度だった。
すでに満杯状態だったが、駐車場付近は路駐しても問題のない道幅が確保されていた。


7:10 宝慶寺いこいの村(出発)
雪はたっぷりあるので、初めからアイゼン着用でスタートする。
右手の急斜面に踏み跡があり、これに取り付く。
「名松新道」というルートで登って行くが、夏期のルートを忠実にトレースしているかは分からない。


踏み抜きを心配していたが、雪は良く締まっており、アイゼンが効いて登りやすい。
部子山まで行くとなると長丁場になるので、もう少し早く出発したかったが、なんだかんだで7時を回ってしまった。
少し巻いて行きたい。


しばらくは樹林帯の中を急斜面と緩斜面の繰り返し。
一部、杉林の中は踏み跡が錯綜してルートが分かりにくいところもあった。


朝日が差し込んで眩しい早春の森。
今年の福井は記録的な大雪が報道されたぐらいだから、積雪量は多いのだろうか?
"根開き"が始まっており、どれもなかなかの深さだった。


淡々と登り続けて、仁王の松を過ぎると、麓の景色が開ける箇所も出てくる。
そして、木々には霧氷が付いている。
移動中、下界から見える周囲の山の上部が白くなっていることを気づいていた。
だから、驚きはしなかったが、今回の山行では期待していなかったので嬉しい誤算である。


遠目から見て枝先に雫が付いていたので、早くも溶けて来ているのかと思ったが…
よく見ると、凍ったままの氷の粒だった。
前日は雨のようだったので、これは雨氷なのだろうか?


人間の心理は不思議、というか現金なもので、雨氷と分かると途端に美しく見えてくる。
棘のように繊細な霧氷と丸い氷の粒が、逆光にキラキラと輝いて綺麗だった。


あまり霧氷&雨氷に時間を取られていると、目標の部子山まで行けなくなってしまう。
良く探せばいい被写体がありそうで、もっとゆっくり撮影を楽しみたい気もするが、ほどほどに切り上げて先へ進む。


上に行くほど木は疎らになり、時々、目指す白い峰が見えるようになる。
このあたりは地形のせいか、陽当たりのせいか、霧氷は。付いていなかった


明るい森で気持ちがいいが、幾度と繰り返し急登が出てきて、なかなかキツい。


何かの拍子に振り返ると、木々の間から白山が見えるようになっていた。
これにはテンションが上がる。


前山という名の小ピークの手前は、相当気合いが必要な急斜面だった。


登るほどに開けていく視界。
雲海とまでは言えないが、大野盆地に掛かった雲から頭を出す白山と荒島岳が何ともいい。
厳しい急登で休み休み登って行くが、その度に振り返り、この眺望を楽しんだ。


本当に素晴らしいの一言。
たっぷり雪を被った姿は、まさしく「白山」の名のとおり。


8:55 前山
どんどん気分が高まって行く中、スタートから約2時間で前山に到着。
銀杏峰まで2/3ぐらいの位置である。
白山側はまさに遮るもののない眺望で、ここまででも、すでに大満足の図。


右から白山の御前峰、大汝峰、七倉山、四塚山


別山と三ノ峰


荒島岳と遠方に乗鞍岳

ひと通り眺望を楽しんで再出発する。
前山からは少しだけ下って、その後はまた急登が待っている。
銀杏峰の山頂は見えるピークのまだ奥にある。


再び霧氷の森に突入する。


青空を背景に、空を覆う純白の霧氷。


近寄ってみると、枝に氷の板が成長しているのがわかる。
この氷は触ると簡単に取れるので、水分補給に最適だった(苦笑)


左側にはクラックができている箇所もあり、いつ崩壊してもおかしくなさそう。
近づきすぎないように注意して進む。


登るほどに大野盆地と雲がミニチュア感を増していき、箱庭を眺めているような感覚になる。
何度も振り返らずにはいられない風景である。


白山の西側に位置していた山々も存在感を示していた。
おそらく加越国境の大日岳あたりだと思う。


天気も最高の快晴で、照り返しの眩しい雪原を登って行く。


右手に最終目的地の部子山と、それに続く真っ白な稜線が見えた。
これはまだまだ遠いぞ…


このまま飛び立てそうな雪原の向こうに広がる白山の眺望が気持ち良すぎる。
今シーズンベストの登山日和だったのではないだろうか?


銀杏峰の山頂付近は緩やかな台地状になっている。
この斜面を登れば、山頂まではもう少し。


白山をバックに行く山友 1


白山をバックに行く山友 2

吹き曝しの山頂付近は風が強く、霧氷と言うよりも氷の華が咲いているようだった。


雪原を突っ切って、祠の建つ山頂へ。


10:00 銀杏峰・山頂
そして、スタートから3時間で銀杏峰に登頂。
陽当たりのいいせいか、それとも風のせいか、山頂の祠の周りだけは雪が溶けていた。


山頂に立てば、これまで見えなかった南側の眺望も得られるようになる。


最も存在感を示しているのは能郷白山
こちらも残雪期に登ってみたいと思っているが、道のりが長く、かなりハードらしい。


南西方面はよく分からないけど、結構、立派な山がたくさんある。
三周ヶ岳や金糞岳あたりだろうか?
伊吹山もこっちの方角だと思うのだけど(もっと左側?)、同定できない…


白山は安定の素晴らしさ。


この日は遠方もくっきり見えた。
乗鞍岳


御嶽山


さあ、ここがゴールではない。休憩もそこそこに部子山へ再出発。
銀杏峰の山頂付近はなだらかな台地状になっていて、まずは広い雪原を行く。


雪原の端まで来ると、正面に真っ白な部子山が大きく見える。
広々とした稜線を伝う空中散歩の始まりである。
スタートが下りなのが若干悲しいが…


あっという間に稜線の鞍部まで降りてきた。この開放感が堪らない。
これだけ広い稜線だとガスった時は危ないかも知れないが、今日はそんな心配も必要ない。
ちなみに、銀杏峰と部子山の間は雪がないと激藪なので、この稜線歩きを楽しめるのは冬だけの特権である。


銀杏峰を振り返る。
結構下ってしまったので、帰りが大変そう…


小さなアップダウンを繰り返して部子山へ向かう。


霧氷と白山のコラボレーション。


部子山へは大きく回り込んで、北東の尾根から登ることになる。
山頂手前のクラックが少し気になるので、注意しなければ。


P1294を過ぎたあたりから見上げた部子山。
ルートは木々の立つ右側の尾根に取り付き、正面の急斜面を直登する。
先行者が数名が確認できるが、見るからに厳しそうで、相当の労力を求められそうだ。


稜線の最低鞍部から部子山本体の登りに掛かる。
林を抜けるまでは緩やかな登り。


すぐに遮るものがなくなり、部子山へのラストアタックとなる。


銀杏峰から随分と遠くまで来てしまったものだ。
今は帰りのことは考えず、目の前の目標に向かって進むのみ。


でも、何度も振り返りながらの歩みになってしまう理由は、そこに白山があるから。


これが最後の急登である。
写真では伝わりにくいかも知れないが、とにかく急で、休み休みでないと登り切れない。


一歩一歩、気合を入れてクリアするしかない。


角度を表現するとこんな感じ。
背景を見ると水平が取れていないようなので…、実際はもっと急なはず。


喘いで急登をクリアすると…、まだ先があった。
でもここはもう穏やかなもの。


11:40 部子山・山頂
そして、小さな祠が祀られた部子山に登頂。
感覚的にはもっと時間が掛かったように感じたが、銀杏峰からは1時間半だった。
まずまず順調なタイムだろう。


ここ部子山も文句なしの大展望である。
まずはお決まりの白山。麓に盆地が広がっているのもいい。


銀杏峰の山頂の向こうに控える御嶽山


荒島岳乗鞍岳


荒島岳と白山の間には槍穂連峰が見えた。
穂高から奥穂高、北穂高から大キレット、そして槍ヶ岳まで続く。
雪を被っていない黒っぽいピークが槍ヶ岳で、その左の真っ白な峰は笠ヶ岳だろうか?


南側の能郷白山伊吹山方面。


さあ、白い稜線を辿って、銀杏峰に戻ろう。


正面に白山を見ながら、急斜面を慎重に下って行く。
昼を回ったが、雪はしっかりと締まったままで歩きやすかった。


P1294の手前でランチタイムにした。
すっかり陽が高くなったせいか、部子山の雪面が反射して輝いていた。


最高のロケーションでのランチ。といっても簡単にカップ麺だけど。


この場所は風がなく、陽射しが眠たくなったが、まだ先は長いので、長居はせずに再出発。
銀杏峰への帰路は登り基調となるので、気合の入れ直しが必要である。


木々のフレームに入った白山。


腹一杯の体には少々堪えるアップダウンをこなして行く。


白山の中腹に掛かっていた雲は、この時間になるとほとんどなくなっていた。


1箇所だけ狭く、雪が緩い場所があったので、ちょっと注意が必要かと。
といっても、難しい場面ではない。


穏やかな表情だけど、しっかりと存在感のある山容の銀杏峰。
いこいの村からの往路では銀杏峰の雄大さを感じることはできないので、ぜひ足を伸ばして、この稜線を歩いてみて欲しい。


銀杏峰へここが最後の登り。結構疲れてきたけど、頑張るしかない。


振り返ると、陰影ができて立体感が増した部子山がいい感じ。


周囲の木々には、霧氷というか、エビのしっぽが付いていた。
陽射しで暖かく感じる一日だったが、この時間でも溶けることはなかった。


銀杏峰の山頂まで戻ってくると、時刻は14時ちょっと前。
なんだかここで終わりの気分になってしまったけど、もちろん、まだまだ下界まで降りなければならない。


銀杏峰からの下山は、迫ってくるような白山を正面に見ながら。
そろそろ見納めの大展望を噛みしめながら下る。


樹林帯の急斜面は雪が緩すぎず、固すぎず、サクサク下るには丁度いい具合の雪質だった。
順調そのもので、銀杏峰から1時間半で下山することができてしまった。


流石に疲労感はたっぷりだが、白山の大パノラマ、真っ白な部子山へ稜線、あの開放的な風景たちを思い出すと、笑みがこぼれてしまう。
文句のない青い空のもと、最高級の春山を楽しむことができて幸運だった。

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