稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

綿向山 - 青空に映える霧氷を見上げて (2014.1.18)

 

ルート : 御幸橋 → 表参道 → 綿向山 → 竜王山 (周回)
天候 : 曇り 時々 晴れ (小雪も)


詳細な山行記録は … ヤマレコ

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前の週に登った三峰山で霧氷にすっかり魅せられてしまい、今度は青空を期待して綿向山へ。
鈴鹿山脈の西側に位置する綿向山は、やはり美しい霧氷が見られることで有名な山である。

天気予報は午前中、晴れだが、夕方から平地でも雪の予報が出ており、早めの行動とした。
アクセスは名古屋から下道でいなべに向かい、石博峠のトンネルを抜けて行った。
ちょっと凍結を心配していたが、道路脇にわずかに雪があるくらいで特に問題はなかった。

登山口がある西明寺御幸橋に車を停めて、歩きはじめたのは7時。
予報に反して、曇り空のスタートだった。
メインルートの表参道で山頂を目指す。
川沿いの林道を歩いて15分、ヒミズ谷出合の小屋の前から登山道がはじまる。


小屋のすぐ先で鉄製の橋を渡ると、杉林の中をピッチの長いつづら折れで登って行く。
積雪は2合目あたりから。
踏み固められており、滑らないよう慎重に歩く。


3合目ぐらいからは、むしろ雪質が良くなったことでグリップが効いてくる。
5合目の小屋のところでアイゼンを付けている人がいたけど、僕はこのまま進み続けることにした。

杉林の中に朝の陽が差し込んできた。


1時間半ぐらいで7合目の行者コバに到着。
このあたりから霧氷が見られることが多いようだが、この日は付いていなかった。
山頂の方向を見上げるも、木々に囲まれていて確認はできず。
楽しみにしていただけに不安になるが、ここは信じて登るしかない。

行者コバから先の夏道は通行禁止で、尾根に沿って登って行くことになる。
ここでアイゼンを装着。

あたりはブナの森になったが、登って行けども一向に霧氷は現れず、雪まで降ってきた。
目の前の斜面は予想以上の急登で、息も絶え絶え。
後ろから来た御夫婦も「今日はダメかな」と諦めムード…

でも、ひとつ尾根を越えたような感じで、登りが少し緩やかになると景色が一変した。


霧氷に覆われたブナの森。
小雪の舞う音のない森に、繊細な氷の花が咲く。
今日もまた見ることできて嬉しい。

望んでいた青空ではないけど…と、思っていたら、いつの間にかガスが切れてきているでは。


本当に、瞬く間に、真っ白な世界から青空に切り替わっていく。
そして、霧氷に陽が当たって輝き出す。


向こう側の尾根の木々もぎっしりと霧氷で包まれている。


少し霞んでいるが、木々の切れたところから北側を眺めることができた。
山頂あたりが平らなあの山はおそらく御池岳だろう。


山頂目前で分岐するイハイガ岳へのルートは霧氷のトンネルになっていた。
ここを歩くのが楽しみだが、まずは山頂へ。


そして、祠のある綿向山の山頂に到着。


山頂からの鈴鹿の山並み。
正面に雨乞岳。その右側に尖った山容が特徴的な鎌ヶ岳。


不思議なことに、山頂付近は霧氷がほとんどなかった。
ちょっとした地形の差なのだろうか? 随分と違うものなのだな。

夏道から山頂の鳥居を見上げてみると、さっきまでの曇り空が嘘のように、晴れ渡った空。


ほとんど疲れを感じなかったので、少し山頂からの景色を楽しんだ後、先に進むことにした。
山頂から少し戻って、イハイガ岳への稜線に足を踏み入れる。


先行のグループに続いて霧氷のトンネルへ。


見上げれば青空に映える霧氷。
霧氷をはじめて見たのは、昨年の丹沢山。(レポートにしていないけど)
その時は、完全にガスの中だった。
いつかこんな風景を見てみたいと思っていた念願が叶った。


自然とため息がこぼれてしまう。そして、思わず、ひとりでニンマリ。


見事に同じ方向に霧氷が成長している。


あまり踏まれていないので、フカフカの雪質も楽しい雪歩き。
大きく踏み抜くこともなく、普通の靴で問題なし。


雨乞岳と鎌ヶ岳を眺めながら稜線を進む。御在所岳は雨乞岳の裏側に隠れているのだろうか?
東側の斜面には霧氷が全く付いていなかった。


「くぐると幸せを呼ぶと言われている」そうだ。
雪の重みで曲がったのかな?
いちおうミーハー的にくぐっておいた。見事にザックが引っ掛かり、ひとり苦笑い。


まだまだ続く霧氷トンネル。
もうこのあたりは鼻歌交じり。


トンネルを抜けると目映い雪原が広がっていた。


稜線に沿って続くトレースをたどる。
心地の良い穏やかな風が時々、粉雪を舞い上げながら通り過ぎていく。

 

竜王山への分岐地点から綿向山の山頂方向を振り返る。
このルート、距離は短いが、風景の変化もあって何とも楽かった。


先行グループは竜王山に降りて行ったようで、イハイガ岳方面にはトレースがなかった。
でも、ルートはしっかり見えているし、雪も締まっているので、もう少し進んでみる。
稜線には小さな雪庇ができていた。


広い雪原を下っていく。
雨乞岳の左側にはイブネ、クラシの稜線が伸びている。


振り返えると自分だけのトレース。


正面に雨乞岳。
特に白さが目立つ山頂付近は、良く写真を目にする、あの開放的は笹原の海だろうか?
機会があったら、大峠から清水頭の稜線をたどってみたい。


雪の状態はまだ行けそうだったけど、空には急速に雲が広がって来たので、ここまでとする。
風はないので、鈴鹿の山並みを眺めながら早めのランチにした。

鈴鹿マッターホルンともいわれる鎌ヶ岳。
春に登った時にはそれほど急峻には感じなかったが、結構、尖っている。


イブネ、クラシの稜線は、地図では破線になっているが、いつかは歩いてみたい。


近江の麓を見下ろす。霞んでいて琵琶湖は見えなかった。


稜線を戻って、帰りは竜王山経由で。
降りはじめがとにかく急斜面で…、転げ落ちるように下る。


ルートはずっと林の中で、特に展望もないのでひたすら歩き続ける。
竜王山まで細やかなアップダウンが続いて、いいトレーニングの時間になった。
竜王山でアイゼンを外して、麓まで落ち葉と泥んこで滑る斜面を下って、結構、疲れた。

車での帰り道、ブルーメの丘のあたりから綿向山を見上げて。


結局、青空が出ていた時間は1時間弱だったのだから、
青空に映える霧氷を見ることができたのは、かなり幸運だったことになる。

山のくれた“ご褒美”に感謝。