稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

荒島岳 - 新緑の木漏れ日の中で、ブナの声を聴きながら

荒島岳:山登りの記録

 日程:2013. 5. 25(日帰り)

 天候:晴れ 時々 ガス

 

コースタイム

 旧カドハラスキー場 6:05 → リフト降り場跡(登山口)6:40 → 深谷ノ頭 7:30

 → シャクナゲ平 8:00 - 8:10 → 荒島岳 9:05 - 9:25 → シャクナゲ平 10:15

 → 小荒島岳 10:30 → シャクナゲ平 10:55 → 旧カドハラスキー場 12:40

 登山時間:6時間35分

Introduction:美しいブナ原生林に会える山

5月終盤。

山は新緑で溢れてるに違いない。

写真で見た荒島岳のブナの森に惹かれ、タイミングを見計らっての新緑登山である。

 

荒島岳福島県大野市にある標高1500mほどの山である。

日本百名山にも選出されているが、福井は深田久弥の出身地であることから “地元贔屓” だなんて言われることもあるようだ。

だが、結論からいえば、登りごたえもあるし、申し分なくいい山だと思った。

 

登山ルートは四方からあり、その中でも北側の勝原コース、西側の中出コースが良く歩かれている。

中でも前者の勝原コースは美しいブナの原生林を登るルートで、必然的にこれを選んだ。

さっそく新緑のブナ森の中へ

6:05 旧カドハラスキー場(登山開始)

スタートは廃業になったカドハラ(勝原)スキー場。

6時前に到着したが、駐車場には15台ぐらいが先着しており、すでに出発している人たちも多そうだった。

準備を整えて、ゲレンデ跡の急坂(コンクリート道)を登る。

歩きはじめには辛い急登だった…

 

 

ただ、道の両サイドにはタニウツギがいっぱい咲いて、目を楽しませてくれた。

 


コンクリート道が終わると、今度はゲレンデの縁を沿うように石がゴロゴロの急斜面となる。

これを登り切って、リフト乗り場の跡があるスキー場の最上部に到着。

ここからは、背後に経ヶ岳がよく見えた。

 

 

ここに登山口があり、これを過ぎると楽しみにしていたブナの森の中に入っていく。

朝の光が新緑のブナの葉を通して降り注ぐ。

なんて気持ちのいい道なんだろう。

ただただ清々しい空間に足を踏み入れる。

風格のある大木を見上げて。

 


途中に “トトロの木” と名前が付けられている木があった。

アニメに出てくる大木のイメージとは違うけど、洞の中に小トトロなら住めそう?

 


空に向かって手を広げるように伸びるブナ。

 


“白山ベンチ” というポイントでちょっとだけ展望が開ける。

良く晴れているのだが、少し霞がかっていて、白山はうっすら見える程度だった。

写真ではほとんどわからないか…

まだまだ続くブナ森。

斜度はだんだんときつくなるが、ブナが陽射しを遮ってくれて、あまり暑さを感じることなく登ることができた。

時折、葉っぱたちが風にざわめいて、その音が心地よい。

 


見上げれば、柔らかな光が降ってくるようである。

それは、なんだか木の優しさに包まれるように。

 


陽の光を透かした葉っぱの色が好き。

 


深谷ノ頭のあたりは若い木が多かった。

 


そこにいる歴史を感じるような大木、まだすらっとした若木

色んなブナに出会うことができたが、みんな若葉色で光り輝いていた。

 

なんだか、この新緑の中を歩けただけですっかり満足してしまい、ここでゆっくりと過ごすのもいいかもと思ったが、きちんと山頂を目指すことにする。

大展望… のはずの山頂へ

8:00 シャクナゲ

傾斜が緩くなり、ブナ森を抜けるとシャクナゲに到着する。

ここは大きく視界が開ける場所である。

相変わらず少し靄っぽいが、白山がしっかり見えてきた。

 


シャクナゲ平を過ぎると、もちが壁と呼ばれる急登が始まる。

地図では危険マークも付いている箇所であるが、危険を感じることはなかった。

途中、鎖やロープも出てくるが、使わなくても十分に登れる感じ。

 


ところどころで木々が途切れると、残雪の白山が青空に浮かび上がっている。

この夏は白山に登ってみたい。

左が御前峰、右が別山である。

もちが壁を登り切って山頂方面を見上げると、ガスが通り抜けるようになっていた。

嫌な予感…

写真で見えている小ピークは前荒島である。

 


白山にも雲が押し寄せて来ている。

 

 

9:05 荒島岳
最後の登りをこなして、荒島岳の山頂に着くと…

やっぱりガスガスだった。

楽しみにしていた眺望は残念ながら叶わず。

 


ガスっていなければ、こういう眺望だったの図。

360°の大パノラマ… のはずだったのだが。

晴れてくることに期待し、かなり早めの昼休憩で待ってみたが、風が強くて寒すぎる。

今回は諦めて下山することにした。

下山は花を探しながら

登って来る時に色々な花を見かけたので、下山は写真に収めながら。

薄紅色のカタクリ

ヒメイチゲ。ちょっと恥ずかしがり気味。

イワウチワはもう終わってないだろうと思っていたが、少しだけ残っていた。

 


大きな葉に小さく可憐な花を乗せたサンカヨウ

今回、好きになった花のひとつ。

 

 

正面に目をやれば、白山が雲に飲まれていくところだった。

 


もちが壁からシャクナゲ平を挟んで見えるピークは小荒島岳

まだ時間も早いので、ちょっと寄り道してみる。

 

 

10:30 小荒島岳

シャクナゲ平から20分ぐらいで荒島岳のピークに立つ。

ここからは登った印象よりも立派な山容の荒島岳が良く見える。

山頂付近はに笠雲のように雲が掛かっていた。

雲の中にあるのは、本当にピークの部分だけなわけで、これで眺望ゼロなのだから…

 

 

少しの間、荒島岳の眺望を楽しんで、シャクナゲ平に戻る。

その道中でも、まだまだ花コレクトは続く。

黄色く輝くキジムシロ。

ブナに混じって、カエデの新緑も。

 

 

葉っぱに隠れるように、ミヤマカタバミ

 


華奢で色白、守ってあげたくなるような、チゴユリ

 


どれも群生って感じではないけど、種類は多く、春の荒島岳はブナだけでなく、花も楽しめる山だった。

シャクナゲ平まで戻り、再び新緑のブナ森を下っていく。

途中、ブナの木に寄り掛かってみてた。

見上げると、若葉色がキラキラと輝いていた。

背中から、ブナの息遣いが聞こえてくるような気がした。

幹に手を当ててみる。

そして、耳を当ててみる。(変な奴に見られたかも?)

 

ぬくもり、優しさ、確かにそれも感じるのだけれど、何より伝わってくるのは力強さ。

この木はずっと前からここにいて、今年もまた、夏、秋とこの新しい息吹を育んでいく。

そして、厳しい冬を越えても、この木はこの場所に立っていて、また春に芽吹くのだ。

 

この森は “生きている力” を感じることのできる場所だと思った。

 

スキー場まで戻ると、最後の下りは疲れた足には堪える浮石と容赦ない陽射し…

それでも、若葉色の木漏れ日で溢れるブナの森を思い出すと、自然と頬が緩んでしまうのであった。

 

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<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

大野市観光ガイド:荒島岳の登山情報。その他の大野市の山も。