稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

釈迦ヶ岳・三池岳 - 曇り空でも満開のシロヤシオ、鈴鹿県境稜線を行く

釈迦ヶ岳・三池岳:山登りの記録

 日程:2022. 5. 15(日帰り)

 天候:曇り

コースタイム

 八風キャンプ場 7:00 → 岩ヶ峰 8:35 → 岩ヶ峰尾根分岐 9:00

 → 釈迦ヶ岳 9:10 - 9:25 → 仙香池 10:20 → 中峠 10:30 → 八風峠 10:50

 → 三池岳 11:00 - 12:10 → 八風峠 12:25 → 八風キャンプ場 13:50

 登山時間:6時間50分(歩行距離:9.3km)

Introduction:シロヤシオの回廊となる鈴鹿県境稜線

5月の鈴鹿といえばシロヤシオ

ゴヨウツツジの別名を持ち、白く大ぶりな花が寄り添うように咲く落葉樹である。

満開となると樹木全体が真っ白になる。

 

鈴鹿シロヤシオの名所として真っ先に挙げられるのは竜ヶ岳である。

広い笹原に点在して咲くシロヤシオが ”羊の群れ” のように見えることで有名だ。

たくさんの登山者が訪れるが、静かに楽しみたいのなら、今回のルートをおすすめしたい。

 

行き先は、釈迦ヶ岳と三池岳である。

そのふたつのピークを結ぶ鈴鹿県境稜線は、シロヤシオを回廊のようになる。

今回は八風キャンプ場を起点とした周回コース。

曇り空だったのは残念だったが、満開のシロヤシオを楽しんで来ることができた。

岩ヶ峰尾根、イワカガミロードで釈迦ヶ岳

7:00 八風キャンプ場(登山開始)

菰野町の八風キャンプ場を過ぎて、ぽつぽつとある路肩に駐車スペースに車を停めてスタート。

釈迦ヶ岳への登りに使うルートは岩ヶ峰尾根である。

数年前までは破線ルートだったと記憶しているが、今はちゃんと実線になっているようだ。

八風キャンプ場の前にある橋のところから林道に入る。

林道を数分歩くと左側の岩に「釈迦ヶ岳」の目印がある。

この先で沢に出て渡渉があるが、この日は特に問題はなかった。

 

 

取り付きは杉林の急登だが、尾根に乗っかると比較的緩やかになる。

踏み跡も明瞭で、迷うことはないだろう。

 

ヤマツツジが綺麗に咲いていた。

岩ヶ峰尾根はところどころで小さなアップダウンを繰り返し、高度を上げて行く。

いかにも鈴鹿っぽい花崗岩のザレ場も何度か通過する。

 

視界が開けて、三池岳に続く県境稜線が見えた。

天気は思ったほどは晴れてくれず、高曇りだ。

 

 

陽射しがあれば新緑ももっと映えるのだが。

それでも、静かで気持ちのいい山歩き。

 

 

正面の丸いピークが岩ヶ峰だと思う。

左奥のピークが釈迦ヶ岳だろうか?

 

 

足元にはイワカガミがたくさん咲いていた。

イワカガミロードと名付けたいぐらいの数だった。

岩ヶ峰尾根は岩登り要素が随所にあり、なかなかアスレチックなコースだった。

特別に危険な箇所はなかったが、下りにはあまり使いたくない感じだった。

 

 

今回の山行の目当て、シロヤシオの花が見られるように。

イワカガミと合わせて、花を楽しみながら登ることができた。

 

このイワカガミはピンク色が一段と濃い。

反対に色の薄い個体も。

8:35 岩ヶ峰

岩ヶ峰のピークはシャクナゲの木に囲まれていて、ここで小休憩。

 

 

岩ヶ峰を少し過ぎたところに、見晴らしのいい花崗岩のピークがあった。

天気は変わらず、晴れ間を見ることはできない…

 

 

岩ヶ峰からは一旦軽く下って、県境稜線に向かって一気の急登となる。

ここはなかなかきついところ。

 

 

シャクナゲの花が新緑の背景に映える。

 

 

最後は足掛かりのほとんどない急斜面をロープ頼りに登ると、不意になだらかな県境稜線に飛び出す。

ここから釈迦ヶ岳へは、あと10分ほどである。

ちなみに、岩ヶ峰尾根の分岐に標識はなかったので、下山で利用する場合は要注意。

 

 

濃尾平野を見渡せたが、霞んでいて遠くは判別できなかった。

 

 

県境稜線には期待通りにシロヤシオがたくさん咲いていた。

ただ、風が強くて撮影には苦労する。

 

 

そうきつくない登りをこなして、釈迦ヶ岳の山頂はもう少し。

 

 

9:10 釈迦ヶ岳

スタートから2時間と少しで最初の目的地となる釈迦ヶ岳に登頂。

東側は大きく開けていて、気持ちのいい眺望が得られる。

釈迦ヶ岳鈴鹿セブンマウンテンに数えられる一座である。

岩ヶ峰尾根では誰にも会わなかったが、おそらく朝明渓谷からの登山者が数人いた。

 

県境尾根で三井岳へ、満開のシロヤシオの下を行く

釈迦ヶ岳で少し休憩した後、折り返すように県境稜線を辿って三池岳を目指す。

心配した風もなんとか大丈夫そうで、快適な稜線歩きが始まる。

 

 

稜線はとにかくシロヤシオでいっぱいだった。

陽射しと青空がないのが残念だが、それでも清楚で可憐な花が愛くるしく思える。

 

 

三池岳まで続く稜線を眺めて。

釈迦ヶ岳から一旦、大きく下った後は比較的なだらかなアップダウンを繰り返す。

 

東側は大きく崩壊している箇所も。ルート上は問題ない。

花の中心の斑模様がピンク色で、ちょっとお洒落な感じのシロヤシオ

 

 

南峠という小さなコルを過ぎたあたりに、知る人ぞ知る仙香池という池がある。

稜線のルートからは逸れた西側にあるそうで、これは見ておかなければ。

標識などはなく、ここかな?こっちかな?という感じで、見つけることができた。

薄い踏み跡があったが、知らないと通り過ぎるだろう。

 

 

ひょうたん型でそこそこ大きさがあったが、雨上がりで普段より大きくなっているかも知れない。

新緑の木々が水面に映り込む静寂の空間。

なんだか落ち着く雰囲気のある場所で気に入った。

紅葉の時期なんかにも来てみたくなる。

仙香池を後にし、小さな仙香山を過ぎると三池岳がだいぶ近づいて来た。

 

 

仙香山からすぐに中峠に到着。

稜線を行き交う登山者はさほど多くなく、静かな山歩きが続く。

 

 

中峠から上がったところにある花崗岩の巨石。

「The rest rock」なんてお洒落な名前が付いているようだ。

岩の上に乗って、釈迦ヶ岳から歩いて来た稜線を一望。

これはいいインスタスポットとなりそう。

The rest rockのすぐそばに「左:北仙香山、右:八風峠」の分岐があって、左に進むと数分で北仙香山のピーク。

そのまま県境稜線のコースに通り抜けで戻れると思ったら、行き止まりだった。

 

北側に竜ヶ岳が良く見通せたので、良しとしよう。

県境稜線は開放的な区間が多くて、歩いていて気持ちがいい。

 

 

10:50 八風峠

八風峠まで来れば、三池岳はもう目前である。

ここは素通りして、一気に山頂を目指す。

 

 

八風峠を過ぎるとこの日、一番のシロヤシオに出会った。

まさに鈴なりに咲いている。

 

 

紅く縁取られた葉っぱも可愛い。

惜しむらくはこの天気で、やはり青空のもと白く輝くような花を見たかったな。

 

 

もうひと登りで三池岳。

山頂は小さなピークが三つって感じになっている。

 

 

11:00 三池岳

釈迦ヶ岳から1時間半で三池岳に到着。

ここからさらに少し進んだところに三角点があって、そちらが最高点だが、今回はここを最終目的地とする。

 

 

山頂からは歩いて来た県境稜線を見通すことができた。

景色が良くて、歩きやすい、おすすめのルートだった。

稜線の後ろ側に見えているのは御在所岳や雨乞岳だろうか?

 

 

さてさて、ランチの時間である。

今回のメインは岐阜の郷土料理「鶏ちゃん(けいちゃん)」。

スーパーで味付き肉を買って来た。

野菜に味が染みて美味しい。

今回は醤油味だったが、他に味噌、塩味など色々あるので、また試してみたい。

 

デザートはワッフル。コンビニだけど。シロヤシオの花を添えて。

下山の八風街道、古道に想いを馳せる

下山は一度、八風峠まで戻って、かつて近江と伊勢を結んでいた古道の八風街道を下る。

山頂から直接、キャンプ場方面に続く尾根道というルートもあるが、地形図からだとそちらの方が急な下りみたい。

 

 

八風峠の鳥居。

織田信長も京からの帰路でここを越えたとのこと。

 

八風キャンプ場に向けて降下開始。

道は緩やかで、どことなく古の道を感じることができる。

 

鮮やかなヤマツツジ

坂中の地蔵。

石畳ぽいところもあって、当時の往来に想いを馳せてみたり。

 

 

八風街道を下って行くと沢音が大きくなって、栗木谷に出合う。

 

清い流れを何度か渡渉して進む。

河原を歩いて、道はやがて荒れた林道になる。

 

 

三池岳から1時間半で八風キャンプ場に下山となった。

 

あとがき

シロヤシオ鑑賞がメインだった今回の山行。

期待通りに満開だったが、できれば曇り空でなく、やはり青空がほしくなってしまった。

それでも、回廊のように咲き誇るシロヤシオを愛でながらの稜線歩きは楽しかった。

 

釈迦ヶ岳と三池岳の間の県境良稜線を歩く時は、ぜひ仙香池にも立ち寄ってほしい。

登山道からは見えない位置なので、ちょっとした”宝さがし”感も味わえるし。

いっそう静かな時間が流れる空間で、ゆったりと鈴鹿の自然を感じられるので。

 

------

<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)