稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

入道ヶ岳・鎌ヶ岳 - 険しい鎌尾根を越えて、アカヤシオはどこへ?

入道ヶ岳・鎌ヶ岳:山登りの記録

 日程:2022. 4. 30(日帰り)

 天候:晴れ

コースタイム

 宮妻峡 6:20 → 入道ヶ岳 8:05 - 8:20 → イワクラ尾根分岐 9:45 → 水沢岳 10:25

 → 岳峠 12:00 → 鎌ヶ岳 12:20 - 13:20→ 岳峠 13:30 → カズラ谷分岐 13:55

 → 宮妻峡 15:15

 登山時間:8時間55分(歩行距離:10.8km)

Introduction:鎌尾根縦走とアカヤシオを楽しむ

鈴鹿槍ヶ岳とも呼ばれ、尖った鋭鋒が遠くからでも目立つ鎌ヶ岳

笹原の草原が広がり、眺望が素晴らしい入道ヶ岳

どちらも登ったことがあるが、いずれもう一度、訪れたいと思っていた。

 

理由のひとつが、このふたつの山を繋ぐ「鎌尾根」の存在だった。

鎌尾根は鈴鹿の県境尾根の中でも特に険しい区間である。

岩場のアップダウンや痩せ尾根が続き、眺望も良く、アルペン的な雰囲気が楽しめそう。

この時期だと山肌をピンク色に染めるアカヤシオの花も楽しみになる。

 

今回のルートは次のような感じ。

起点は宮妻峡である。

そこから入道ヶ岳に登って、そこからイワクラ尾根を経て県境尾根へ。

水沢岳を越えると鎌尾根に入り、鋭峰・鎌ヶ岳を正面に見ながらの縦走となる。

鎌ヶ岳に登頂後、下山はカズラ谷のルートで宮妻峡に戻る周回コースである。

新緑降り注ぐ宮妻新道、好展望の入道ヶ岳へ

スタートの宮妻峡へ向かう途中、今回登る鈴鹿の山並みが見えた。

入道ヶ岳(左側のピーク)はクリア。

鎌尾根、鎌ヶ岳には雲が掛かっているが、予報からすれば、直に晴れるだろう。

 

 

6時に宮妻峡キャンプ場の駐車場に到着。

GWとあって、すでに10台ぐらい停まっていた。

 

 

6:20 宮妻峡(登山開始)

準備を整えたら最初の目的地、入道ヶ岳に向けて出発。

バンガローの並ぶキャンプ場を抜けると、宮妻新道の登山口がある。

入道ヶ岳には反対側の椿大神社から登るのがメジャーなので、こちらはひっそり。

静かな山登りが楽しめそうだ。

 

 

すぐに沢をふたつ渡る。

ひとつ目は問題なかったけど、ふたつ目が… この山行の核心部だった…

前日の雨のせいか、かなり水量が多い。

飛び石で岩伝いに行こうとするも、どれも一歩足りない。

最初から濡れたくないので、ここは潔く靴を脱いで渡渉した。

 

 

渡渉し終わって、靴を履きながら眺める宮妻峡の流れ。

新緑のモミジが眩しい。

 

 

無事に宮妻峡を渡るとすぐに登りが始まる。

なかなか急登で、一気に息が上がる。

 

 

尾根に上がると、登りは幾分緩くなる。

新緑の木々がトンネルのようで気持ちいい。

 

 

見上げれば、若葉色の葉っぱたち。

陽に透けてモザイク模様を作り、キラキラと揺れている。

 

瑞々しい春の色。

「山笑う」とはこのことかも。

木々が切れたところで、これから歩く鎌尾根を見渡すことができた。

結構歩きがいがありそうだ。

雲もちゃんと晴れて来てくれた。

 

 

若いブナたちの新緑が清々しい。

 

 

道に白い花が落ちていて、見上げると…、ん?シロヤシオ

アカヤシオを見に来たはずなのに、時期が早すぎないか??

ちょっとうつむき加減で、なんだか恥ずかしがっているかのように咲く姿が可愛らしい。

 

 

このあたりは古道感があって好きかも。

宮妻”新道”ではあるんだけど。

 

 

鎌ヶ岳の後方の御在所岳もガスが取れて来た。

ロープウェイの鉄塔も白く輝いている。

 

 

不意に樹林帯を抜けて、背の低い笹原の広がる風景に飛び出す。

 

 

広々とした笹原の斜面の向こうに、鎌ヶ岳まで伸びる鎌尾根を一望。

これは最高の一言。

絶対に晴れた日に歩きたいと思って、ずっと温めておいて良かった。

 

 

北の頭で入道ヶ岳登山では最も一般的な椿大神社からの北尾根ルートとの合流する。

宮妻新道は変化があって、色んな景色が楽しめるのでおすすめできるルートだった。

 

 

鎌ヶ岳が大きく聳える北の頭での眺望。

あそこまで歩いて行くのが楽しみ。

でも、なかなか遠くに見えるので…、やや不安な気持ちにもなる。

 

 

ここまで来ると入道ヶ岳の山頂はもうすぐ。

白い鳥居が立っているのが見える。

 

鈴鹿の街と伊勢湾を眺めながら山頂へ。

8:05 入道ヶ岳

スタートから2時間弱で入道ヶ岳に到着。

思いっ切り逆光だったが、おかげで神々しい鳥居が撮れた。

入道ヶ岳は椿大神社御神体そのものであり、古くから信仰されて来た山である。

まだ人影のほとんどないこの場所に立つと、なんだか神聖な気持ちになれた。

シンボリックな鳥居の建つ入道ヶ岳の山頂。

山頂は草原になっていて、鈴鹿四日市を一望する展望台である。

この好展望も入道ヶ岳の特長で、最高に気持ちがいい。

 

 

やや霞んではいるものの視界は比較的クリア。

恵那山、中央アルプス御嶽山などまで見えた。

 

御嶽山乗鞍岳

イワクラ尾根から鎌尾根へ、アカヤシオを探しながら

入道ヶ岳で小休憩した後、次は鎌ヶ岳を目指す。

まずはイワクラ尾根に進み、鈴鹿山脈の主稜線である県境尾根に向かう。

 

 

広々とした入道ヶ岳の山頂を通り抜けて行く。

どこかの公園の写真といっても信じてしまいかねない開放的な空間。

2時間で登って来れるなら、ここでランチ会や昼寝でゆっくり過ごすのもいいかも。

 

 

入道ヶ岳と言えばアセビの花も名物のひとつ。

もう終盤ではあったが、少し残ってくれていた。

 

 

のんびりハイキング気分から一転、イワクラ尾根に入ると道は険しくなる。

 

 

イワクラ尾根では花たちが心地よい春を彩ってくれていた。

特に足元にはイワカガミがたくさん。

 

色鮮やかなミツバツツジも。

ここにもシロヤシオが咲いていた。

イワカガミの名前のとおり、葉っぱが鏡みたいに輝いている。

イワクラ尾根は思っていた以上にハードな道のりだった。

細かいアップダウンが続き、そのひとつひとつが急なのである。

岩場を越えて行くようなところもあり、ここで体力を使った。

 

県境尾根の合流までもうすぐ。

正面に見えるのは水沢岳である(地図だと宮越山の表記も)。

稜線まで新緑が上がって来ていて、気持ちいい。

 

 

入道ヶ岳から1時間ほどで県境尾根に入り、まずは水沢峠へ向かう。

基本は木々の茂る稜線だが、途中、ザレ場もあった。

 

 

水沢峠を過ぎて、ザレ場から入道ヶ岳と歩いてきたイワクラ尾根を見渡して。

 

 

10:25 水沢岳

水沢峠から水沢岳は距離は短いが、なかなか急な登りだった。

こういった感じで、徐々に体力を奪われていく。

 

 

水沢岳を過ぎると、いつの間にか鎌ヶ岳が大きく近づいていた。

ここからが鎌尾根と呼ばれている区間になる。

険しいアップダウンが続くので、気を入れなおす。

 

 

水沢岳からすぐに「キノコ岩」に出る。

眺めはいいが、花崗岩のザレた斜面はなかなか滑りやすく、慎重に下って行く。

 

 

キノコ岩を下り切って振り返ると丸い岩がニョキニョキと。

これがキノコに見えるってことなのだろう。

 

 

キノコ岩を過ぎるとしばらくは平和な道となる。

明るい稜線は歩いて気持ちがいい。

 

街と海を眼下に見ながら。手前は雲母峰。

このあたりはハルリンドウがたくさん咲いていた。

 

 

それにしても、アカヤシオが全然見当たらない。

登山道に落ちている花は多いので…、前日の強雨でみんな吹き飛ばされたのでは?と心配になって来た。

 

そんなことを考えながら歩いているうちに、鎌尾根の核心部に入ったようだ。

岩場のアップダウンを何度も越えて行くことになる。

正面のピークの下部が衝立岩である。

写真だとかなり険しいが、ここは左側を巻くように道が付いて危険はない。

 

 

息を切らしながら登って行くと、やっとアカヤシオが見られるように。

ちゃんと咲いていてくれて嬉しい。

花数はそれほど多くはないが、濃いピンクの花が青空に映える。

 

 

衝立岩を登り切ったピークからは広々とした眺望が得られた。

雨乞岳とイブネが大きく見える。

 

 

ここにだけシャクナゲが咲いていた。

 

 

鎌ヶ岳がだいぶ近づいて来た。

鈴鹿の槍” と言われるだけあって、しかっり尖っている。

景観とは反対に、しばらくは穏やかな道で岳峠を目指す。

 

 

ここのアカヤシオは見事だった。

少し陽に透けて淡いピンク色になった花も好き。

 

 

岳峠の少し手前にまたちょっと険しい岩場が出て来る。

アップダウン続きで疲れて来たが、鎌ヶ岳はもう近いので頑張って行こう。

 

鎌ヶ岳の山頂へ、悪魔的な様相を見せる鋭鋒

小さな岩のピークに達すると、鎌ヶ岳山頂部の全容が目に飛び込んで来る。

ガレガレで斜めに鋭く割れた岩壁。

なんだか近寄りがたい雰囲気を放っていて、ちょっと圧倒される。

それでもそんな姿が格好いい。

 

 

先に進むとちょっとだけ鎖場があるが、難しいことはない。

 

 

岳峠手前のピークに上がって、あとは鎌ヶ岳の本体を残すのみ。

写真だけ見ると、こんなの登れるの?と思ってしまうが、ルートは右側の沢状のところに付いている。

 

 

12:00 岳峠

鎌尾根最後の鞍部である岳峠を通過して、最後の登りに掛かる。

ここは気合を入れて行こう。

 

 

大小の岩で埋もれる沢を詰めて行く。

その先にもう2段階、急な短い岩場をクリアすれば山頂である。

 

 

最後の登りは息も絶え絶えだが、岩場に咲くタチツボスミレに励まされて。

 

 

12:20 鎌ヶ岳

そして、やっと鎌ヶ岳に登頂。

入道ヶ岳から4時間だった。

山頂は武平峠や湯の山方面から登って来た登山者で賑わっていた。

 

 

山頂は鋭鋒だけあって、なかなか開放的な眺望である。

正面には横に長い御在所岳が目の前に大きく見える。

 

 

こっちは名古屋方面の眺望だが、だいぶ霞んで、遠方の山々を判別するのは難しくなった。

 

 

反対側には、入道ヶ岳から歩いてきたイワクラ尾根と鎌尾根。

歩きごたえ満載だった。

疲れたけど、いいトレーニングにもなったかな。

 

 

御在所岳の左側には、大きい谷を挟んで向こうに雨乞岳

 

 

この景色のいい岩の上でランチとした。

今回のメニューはカップヌードルカレーに御飯を入れて炒めたチャーハン。

ちょっと話題になっていたのでやってみたが、これが美味しい。

簡単なので、色んな味を試してみたくなった。

付け合わせにキュウリとミニトマトのナムルも。

デザートは端午の節句が近いので柏餅。

昼休憩後、下山を開始する。

ちょうど人が少なくなったので、改めて山頂看板を撮りなおす。

 

 

すでに足に来ているので、岳峠までのガレ場を慎重に下る。

正面の鎌尾根はなかなか険しく見える。

 

 

岳峠のあたりは分岐が入り組んでいるので、少し注意した方がいい。

まず長谷谷のルートが分岐、その先の岳峠で雲母峰、カズラ谷への分岐がある。

本来はここを曲がれば良かったのだが、宮妻峡の文字がなかったのでスルー。

ひとつ目の鎌尾根のピークを上がったところにも分岐があり、そちらからでも問題ないが、無駄に登ることになった…。

行きでここに宮妻峡の看板があるのを確認していたので、勘違いしてしまった。

まあ、おかげで、もう一度、迫力のある鎌ヶ岳を眺めることができたが…

 

 

15分ほどで雲母峰とカズラ谷の分岐。

宮妻峡へはカズラ谷を下る。

 

 

足元には身を寄せ合うようにハルリンドウ

 

 

カズラ谷ルートは落ち葉がたくさん積もっていて、これが滑る滑る。

疲れた足にも厳しい…

とはいえ、道はしっかりしており、順調に下って行く。

 

 

カズラ谷分岐から1時間ほど淡々と下るとカズラ滝

大きくはないが、前日の雨のせいか水量は多く、まずまずの迫力があった。

 

 

新緑の木漏れ日が落ちる沢の流れ。

カズラ谷を2回渡渉して、キャンプ場に続く林道に出る。

 

 

宮妻峡の駐車場に戻ってゴール。

 

あとがき

今回の入道ヶ岳、鎌ヶ岳の周回コース、なかなかの歩きごたえがあった。

鎌尾根はアルペン雰囲気満天。

落ちてしまう様な危険箇所はないものの、しっかり岩場歩きが楽しめた。

何より、少しずつ近づいて来る鎌ヶ岳が気分を盛り上げてくれる。

 

迫力のある風景も、新緑も、花も、色々と変化があって退屈することはなかった。

アカヤシオはなかなか登場せず不安になったけど、最後はちゃんと咲いてくれていて、これも期待どおり。

 

最後は疲れたけど、夏山に向けてもしっかりいいトレーニングになっただろう。

 

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<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)