稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

伊吹山 - 寒風吹きすさぶ、極寒の伊吹へ

 

日程 : 2018.2.18(日) 日帰り
ルート : 上野登山口 → 伊吹山(ピストン)
天候 : 曇り 時々 晴れ(山頂付近は風強い)


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中京圏に住んでいるなら一度は登らなくてはいけない山。
そんな風に勝手に思っていた伊吹山

「天下分け目の関ヶ原」に聳え立つ伊吹山は、高山植物の楽園で有名である。
麓から山頂直下までドライブウェイが通じており、労せず山頂に立てることから、観光の山というイメージが強い。
でも、冬の間はしっかりと雪山の世界になり、もちろん登るならこの時期と決めていた。

前回の藤原岳から見えた伊吹山の山頂部は真っ白。
余談となるが、積雪量最高記録を有しているのは伊吹山なのだそうだ。
それも「日本一」でなく、「世界一」というから驚く。
記録はちょっと古く昭和2年ではあるが、11.8メートルを記録している。
まあ、有人観測とか色々条件はあるようだけど、世界一とは意外すぎる。
地理的に日本海側からの季節風の通り道になるのが雪の多い要因であるが、今回も強風の中の登山となった。

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積雪期に一般的には唯一の登山ルートとなるのが、上野という集落から登る表登山道。
上野集落には民間の駐車場がいくつかあり、どこも¥400程度のようだった。
呼び込まれるように今回利用させてもらった「高橋さん」は、色んなレポで名前を目にする。
お宅の前のいいポジションをラスト1台でGet。


麓で雪が積もることは、そう多くないようだが、たまたま前日に降雪があったみたい。
ピューと吹き出す融雪水を避けながら集落のメイン通りを登り、突き当たりが三ノ宮神社。


7:45 上野登山口(出発)
神社の横にあるゲートをくぐって出発。
新雪がどのくらい積もっているか分からず、ちょっと不安を抱えてのスタートである。
ここはうっすら積もっている程度なので、とりあえずノーアイゼンで進むことに。


ゲートのすぐ先から山道が始まる。


まずは植林帯をつづら折りで登って行く。


30分ほど登るとスキー場の跡地に出て、ここが1合目になる。
ここからは急な登りとなるので、なくても行けると思うがアイゼンを付けてしまう。
ちなみに、奥の三角屋根の建物は公衆トイレで、まだ序盤だが冬季はこれが最終になる。


ゲレンデ跡を登って行く。入山者が多く、トレースはばっちりで有難い。
周囲は廃業した民宿や売店が並んでいて、ちょっと寂しい雰囲気だった。
ただ、ひと際大きな伊吹高原荘だけは営業しているようであった。


関ヶ原を眼下に見下ろしながら進む。


天気は雲と晴れ間が半々といった感じ。
天気予報だと時間が遅いほど晴れてくるようなので、これからに期待。
雪の量はなかなか多く、トレースを外すとしっかりと踏み抜いてしまう。


このあたりは大きな見どころも特になく、淡々、黙々と登る。


そろそろイベントが欲しいと思いかけた頃、3合目の手前でついに伊吹山が登場。
ちょっと高圧電線がうるさくて残念だけど、威圧的ともいえる山容が目の前に広がった。
1400m足らずとは思えない迫力があり、そして、見るからにキツそう…。
最後の急斜面を見せつけられると、少し心が折れそうになった。


3合目の東屋で休憩してから再出発。このあたりはまだなだらか。


望遠で最後の急斜面を覗くと、最前線がさっきからあまり進んでいないように見える。
まさかラッセルしているのか?


5合目付近から眺める山頂方面。この開放的な風景は、間違いなく伊吹山の魅力。


6合目にある避難小屋が近づいてきた。
最後の登りが壁のように立ちはだかるが、登山者の列が絵になる。


10:25 6合目避難小屋
スタートから2時間半と少しで、6合目の避難小屋に到着。
やや疲労を感じるが、伊吹山登山はこれからが本番と言っていいだろう。
ちょっと空模様が怪しい感じになって来たのが気になる。


小休止の後、再出発をすると、空に雪雲に覆われて小雪が舞い始めた。
風はそれほど強くなかったが、気温はぐっと下がったように感じ、かなり寒い。


ただ、雲は終始、流れており、タイミングによっては陽も差し込む状況。
陽が当たっている斜面は真っ白に輝いていて美しかった。


雪が舞う中、ここからは広大な雪原の急斜面をひたすら登ることになる。
前方のラストの登りが急すぎるので伝わりにくいが、このあたりでもかなり斜度である。
写真だけなら、北アルプスとかと見間違ってもおかしくはないだろう。


頂上直前の鞍部を目指す登山者の列。あそこは相当に厳しそうである。


また天気が回復してきた。やっぱり雪山登山は青空の下がいい。
といっても、登りがとにかくしんど過ぎで、楽しむような余裕はないのが、正直なところ。
このあたりは雪も深く、一歩一歩で体力を確実に奪われていく感じ。


木々には霧氷が付いていた。前日の降雪を考えたら、この霧氷は予想外である。


登って来た斜面を振り返る。
この写真だと、どれだけ急なのかが、少しは伝わるだろうか?


霧氷は嬉しい誤算ではあるが、やはりじっくり楽しむ余裕はなし。


周囲に木々が茂る沢形状の部分に入ると、ここからが一番キツいところ。
基本的には上に行けば行くほど、角度が急になっているイメージ。
一番隊が苦戦しているように見えたのは、このあたりか。
恐らく膝下ラッセルぐらいだったと予想される。感謝しながら登らせてもらう。


息が上がったら霧氷を眺めながら小休止。
時間が掛かってもいいから、こまめに休み休みで登って行く。


もう少しでこの急斜面もゴールなんだけど、最後の距離がなかなか縮まらない…。


藻掻き、喘ぎながら登っている自分とは対照的に、静寂で美しき白銀世界が広がる。


目立つ一本木の横を通り抜けて…


ついに山頂台地の入り口にあたる鞍部に到達。
避難小屋を出発して1時間程度であるが、感覚的にはもっと掛かったように感じる。
兎にも角にも、本当にキツかった。


あとは頂上に向かって緩やかなプロムナード。
急登から解放されて、心も軽やかに散歩気分でゴールを目指す。
でも、当然の如く風は強く、暑いぐらいの体が一気に冷えていくのを感じる。


数分進むと、伊吹山神社が見えてきた。


11:35 伊吹山・山頂 
神社の裏側に回り込むと山頂を示す標識。
標識の傍らには日本武尊の像があるのだが…、氷雪が纏わり付いて何が何だが識別できず。


スタートから4時間弱での登頂だったが、それ以上の山に登ったような感覚だった。
その分、達成感も大きかったように思う。
この日のコンディションがどの程度のものかは分からないが、またひと回り、雪山での自信が付いたかな。

でも、そんな感慨に浸るよりも、腹が減っていることに気づく。
売店(もちろん冬季休業中)のそばにできた吹きだまりの影に隠れて、昼食を取る。

昼食の後は広々とした山頂台地を少しだけ散歩。
吹き曝しの平らな雪原を、立っていてよろめいてしまうような突風が時折、駆け抜ける。

 


三角点を示す標識には、立派なエビの尻尾が成長していた。


鈴鹿方面の眺望。
雲が多めで、少し霞も掛かっていて、あまり遠くまで見ることはできなかった。
白い山頂は霊仙山である。


北側の眺望。
幾重にも山々が折り重なっているが、ひと際、白いピークは能郷白山だろう。
その後にあるはずの白山までは、残念ながら確認できず。


伊吹山の山頂は、まさしく極寒の世界だった。
本当に1400メートルしかないのか、疑いたくなってしまう。
少しでも体を動かしていないと、あっという間に冷えていった。


伊吹山神社は「お菓子の家」状態だった。


12時半、眼下に琵琶湖を望みながら下山開始。


下りはじめは、少し足がすくんでしまうような急斜面で、滑落しないよう慎重に降りていく。
ただ、雪質は柔らかすぎず、ちょうどいい加減で、サクサク下ることができた。


少し斜度が小さくなったらシリセードしてみたけど、フカフカであまり滑らず。
雪と戯れながらどんどん下って行く。
この時間、登ってくる登山者もまだたくさんいた。


雪山の下りは早い早い。


すっかり青空になった伊吹山の勇姿を振り返り見て。ここでお別れとなる。


1合目でアイゼンを外す。
そこから先は、泥んこと凍結のミックスでちょっと歩きづらかった。
最後の最後で転ばないように慎重に。


山頂から2時間半で無事に下山完了。


真冬の伊吹山は、なかなか骨のある厳しさであった。
今年から雪山を始めた仲間たちは、今年の目標を伊吹山と掲げていたので、それが達成できて満足そうだった。

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