稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

日光白根山 - 水色・空色・夏の色、山上の別天地へ (2016.8.13)

 

ルート : 菅沼 → 金精山 → 五色山 → 前白根山 → 奥白根山 → 菅沼 (周回)
天候 : 晴れ のち ガス

 

詳細な山行記録は … ヤマレコ

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8月のお盆休み、日帰りで登れる山の中から選んだ日光白根山

これまで意識したことはなかったけど、
関東最高峰、もっと言えば、関東以北の国内最高峰はこの日光白根山らしい。
ちなみに標高は2578m。
北海道とか、もっと高い山があるのかと思い込んでいたので、かなり意外だった。

そんな日光白根山、主な登山路は4つ。
最もメジャー、かつ、お手軽なのが、丸沼高原のスキー場からゴンドラで上がってしまうルート。
山頂駅から標高差500mちょっと、2時間半ぐらいで登れてしまうらしい。

しっかり自分の足でということになると、菅沼、金精峠、日光湯元が登山口に挙げられる。
このうち一番歩かれているのが、菅沼から弥陀ヶ池を経由するルート。
後者の2つは事前の調べだと、他ルートと比較すると記録が少なく、孤独な山行になりそうだが、
途中、劇的な展開が仕掛けられているので、こちらを選択することに。

といっても、登山口は菅沼に設定。
ここから金精峠に登ることができて、次のようなルートを組めば、ピストンなしの周回コースを作れる。

菅沼から金精峠を経由して五色山へ。
そこから外輪山に沿って前白根山を通り、本峰の奥白根山に登頂。
下山は弥陀ヶ池を経由して菅沼に戻る。
 ・・・ といった感じで、コースタイムは7時間ぐらいになる。

頑張って早起きして、関越道の沼田インターから国道120号を1時間ちょっと走り、
金精峠西側に位置する菅沼の登山者用駐車場(¥1000)に着いたのは5時半過ぎ。
入口の隣にはお土産物屋さんがあって、そこのトイレを使うことができた。
準備を整えて、6時少し前にスタート。

 


弥陀ヶ池経由で直接、奥白根山に登る場合には駐車場の奥に進むが、
金精峠へは200mぐらい国道を歩いてから登山道に入ることになるので、間違いのないよう。

最初は国道に沿うように笹原を抜け、そのうち涸沢に出るので、それを登って行く。
倒木があったり、あまり歩きやすくはないかな。
やはり歩く人は少なそうだけど、ルートは明瞭なので不安はない。


涸沢を登り切らないうちに、今度は左側の斜面に誘導され、苔むす古道風の登山道になる。
広葉樹の明るい日差しが見えるようになると金精峠はもうすぐ。 


ウォーミングアップというには少々きつい坂道を登り切り、50分ほどで金精峠に到着。
峠には小さな社殿の金精神社がある。
中を覗き込むと、そこに祀られているのは… (名前から分かると思うので、以下、自主規制)


金精峠は東側の眺望が抜群だった。
朝の逆光がちょっと眩しいけど、男体山が立派に聳えている。
湯ノ湖も見えているが、戦場ヶ原はガスで覆われていた。


ちなみに、金精峠へは金精道路のトンネルの東側からもアプローチするルートもあるが、
崩壊地の滑りやすいザレ場があり、階段も壊れていたりして快適な道ではないようだ。

稜線に沿った穏やかな道を進んでいくと、前方に金精山の笈吊岩の岩壁が見えてくる。


金精山は笈吊岩を巻くように北西側の急斜面から登っていく。
距離は短いがなかなか急峻で、このあたりは少し嫌らしいかも。
岩場自体は難しくないけど、やや荒れ気味で、足元が濡れている場所も多いので注意は必要。


金精峠から45分掛かって、金精山に到着。
やたら看板が多いが、栃木百名山であるようだ。


ここも東側の眺望が良好。
男体山の他に見えているのは、大真名子山や女峰山のピークだろうか。
眼下にはウネウネとした金精道路の道すじと、朝霧が晴れてきた戦場ヶ原も見える。


金精山からは一旦の下りとなる。思った以上に高度を下げるので、ちょっと気持ちが萎える・・・
国境平で湯元からの道と合流し、五色山に向かう。
途中、ちょっと薮っぽいところも抜ける。


五色山の直前まで来ると、気持ちのいい笹原の稜線に出る。


8:25 五色山
そして、最初の目的地である五色山に到着。
スタートから2時間半の行程だった。


このルートを選んだ理由は五色山からのこの眺望。
ここまで姿を現さなかった(木々の間からは少し見えるところもあるが)奥白根山が目の前に登場!
そして眼下には、神秘的な青色の水を湛えた五色沼
鬱蒼とした森の中を歩き続けて来た後には、なかなか気持ちが昂ぶる展開である。


奥白根山の山頂をアップで。重厚感のある山容に圧倒される。


右側に素晴らしい景色を眺めながら、五色山から前白根山へ外輪山を移動する。
天気も最高で、なんて幸せな時間なんだろう。


五色沼の畔をアップで。
この青色、どう表現すればいい?
とにかくキレイすぎる。空の色を映しているのかな?


五色山から前白根山までは30分ほどの稜線散歩だった。
白根山奥白根山を見るためにあるような立地で、なんとも開放的な場所だ。


白根山から続く笹の稜線は、地図では途中から登山道の表示がなくなっているけど、
白根隠山というピークに繋がっているみたい。
あっちも絶対に気持ちいいだろうな。


ここからはいよいよ本峰の奥白根山に向かって行く。
歩き始めは下りになるが、正面に広がる奥白根山五色沼は、またちょっと違ったアングルで、
これもなかなか絶妙なバランスで画になりますな。


花もポツポツ咲いていて、目立っていたのがハクサンフウロ


ハンゴンソウも多かった。


さて、ここで選択を迫られる。
直接、奥白根山に向かう尾根経由の最短ルートにするか?
それとも、寄り道になるが五色沼を経由するか? ちなみに、五色沼へは100mほど下る必要あり。
ガスが上がってきそうな気配もあったので、早く山頂に着きたいが…


9:30 五色沼
悩んだ末、五色沼に寄ることにた。
あの神秘的な沼の畔にどうしても立ってみたかったので。
ただ、沼に至る道は全体的に浮石が多く、地味に疲れる下りだった。
これでも、結果的には、この苦労は絶対にすべきだと思った。


その理由はこの風景!
林を抜けると、ハンゴンソウの黄色い大群落と不思議な水色の五色沼が目の前に。 


沼の畔には静かに波が打ち寄せていた。


この水の色のグラデーション、感動ものだった。
ここを別天地と呼ばずして、何と呼べばいいのか。


五色沼から見上げる奥白根山
さっきよりも高く見える(下ったのだから当たり前…)けど、今は気にしない。


岸辺にはお花畑が広がっていた。ハクサンフウロの群落も。


これはシラネニンジンかな?


こんな素敵な場所なのに、自分以外、誰もいない五色沼
本当に静かに、そして穏やかに時間が流れていた。
ここでゆっくりしたくなって、山頂は行かなくてもいいかななんて、ちょっと本気で思った。


思い返してみれば、山の上の湖や池って、かなり好きな風景として心に刻まれている。
これまで訪れた場所だと、八方池白馬大池だったり、木曽御嶽山の三ノ池
山岳の険しさと、水のある優しい風景のコントラストは、いつだって鮮明な記憶となる。
この日光白根山五色沼で過ごした時間もそのひとつになりそうだ。

ここを離れるのは惜しいけど、やっぱり登らないわけにはいかず、奥白根山に向けて最後の登りへ。 


五色沼から15分ぐらいで避難小屋。ここで、前白根山の下で分岐した道と合流する。
ちょっと覗いたけど、なかなかきれいな小屋だった。
ただ、ネズミが出るとの看板が掛かっていた。


小屋前の平原を行く。
あれれ、やっぱりガスが上がって来ちゃったか…


奥白根山への登り口で一度、樹林帯に入る。
雲の動きが速いけど、晴れているうちに山頂に立てるだろうか?


ここまでアップダウンを繰り返してきたので、想定以上の疲労感。
上がって来るガスとのタイムレースになりそうだが、否応なしにペースが落ちる。


樹林帯を抜けたら、これまた山頂に向けて、心折れそうになる急斜面…
天気はもう少し持ちそうだけど、日差しが暑くて堪らん。


五色沼が見下ろせるようになってきた。
雲の割合は確実に増えていっているな。


五色沼をバックに、マルバダケブキのお花畑。


さらに増していく斜度…
ここまでほとんど人に会わなかったけど、
このあたりでは、山頂から下りてくる人たちとたくさんすれ違い、五色沼を経由して下山するみたい。
「あそこに見えているのはピークですか?」 と聞くと、まだあの先にあると悲しい回答が返ってくる。
絶対に頂上じゃないとは思ったけど…


上の方は砂礫帯になっている。火山の雰囲気がしてきた。


息も絶え絶え、休み休み登り続けて、やっと頂上が見えた。
ガスとの競争には負けてしまったみたいだけど。


山頂部には、なかなかダイナミックな地形が広がっていた。
前方の窪地は火口跡かな?


11:15 奥白根山・山頂
五色沼から1時間半で奥白根山に到着。
あまりに苦しかったから、もっと掛ったような気がする。
まずは山頂に鎮座する奥白根神社の祠で登頂のお参りを。


あたりは別ルートで登ってきた登山者でいっぱいで、かなりの賑わいだった。
子供連れのグループもたくさんいたので、やはり丸沼高原からゴンドラで来る人が多いみたい。

一番高いのはあっちのようで、ちょっとした岩場を登って行く。


ということで、日光白根山奥白根山)の山頂に立った。
ご覧のとおり、ガスで何も見えない…


それでも時々、ガスが抜けて、山頂に荒々しい風景が現れた。


昼休憩をしながら天候の回復を待ってみたが、
ガスは濃くなるばかりなので、ここは潔く下山に取り掛かかる。
弥陀ヶ池に向けて、北側の急斜面を降りていく。


少し下るとガスが切れ出し、眼下に弥陀ヶ池が見えた。 
下からはまだまだ登って来る人がたくさんで、ここもなかなかの急斜面なので大変そうだった。


かなり足が堪えているようで、
いつも以上に鈍足で、コースタイム45分のところを1時間掛かって弥陀ヶ池に降り立った。


この池は小さいけど、落ち着いたなかなかの雰囲気だった。


ちょっと休憩した後、木道を渡って菅沼への下山路に進む。


あとはひたすら修行の時間。歩きやすいルートではあったが、とにかく足が進まない。
前回の山行から3ヶ月も開いちゃうと、こんなにも歩けないのか?
休みがてらに苔の鑑賞。 


この木のトンネルを抜ければ、登山口の駐車場だ。
かなり長く感じたけど、弥陀ヶ池からコースタイムどおりの1時間半で下って来ることができた。


山頂でのガスは残念だったけど、結果的に今回の山行の主役は五色沼になった。
神秘的な水色を満々と湛え、畔にはお花畑。まさに山上の別天地。
そんな風景をひとり占めできたなんて、山頂の混雑から考えたら、何て幸せなことなんだろう。

五色沼でゆっりくしたせいで、山頂でガスってしまった疑惑があるけど、今回はそれでも良し。
他の季節はどんな風景を見せてくれるのだろう?
また歩いてみたくなる山だった。