稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

涸沢 - 秋色で溢れる場所へ (Day 2 ; 2013.10.4)

 

(1日目) 上高地 → 横尾 → 涸沢 (涸沢ヒュッテ 泊)
(2日目) 涸沢散策 → 屏風の耳 → 徳沢 → 上高地

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布団1枚に2人の小屋の夜、やはり熟睡はできなかったが、それなりに眠ることができて迎えた朝。
まだ薄暗い外に出ると、予報どおりに晴れていた。
これは、モルゲンロートが期待できそうだが、どうだろう?

さすがに10月の北アルプスは寒かった。
上着を着込んで、小屋のテラスで朝弁当を食べながら、陽が差して来るのを待った。

涸沢カールの夜が明けていく。


しかし、東の空は雲が出てきて太陽を遮ってしまい、結局、モルゲンロートにはならず。
期待していただけに、ちょっと残念。

それでも、陽が上がるにつれて、今日もまた涸沢の色が輝き出す。


さて、気を取り直して、出発とする。
夜、布団の中で、せっかくなので奥穂か北穂にピストンしようかとも考えたが、
翌日、雨になりそうだったので、今回はこのまま下山することに決めた。
(小屋の混雑もすごいことになりそうだし…)

下山の前に、朝のカールの散策に向かった。
まずテン場を通り抜けて、涸沢小屋の方へ。


涸沢小屋のテラスから奥穂を仰ぐ。


涸沢小屋からザイテングラートの方に登ってみた。
ナナカマドが真っ赤。


涸沢ヒュッテから続くパノラマコースとの合流はかなり上のようなので、岩を渡ってショートカット。


パノラマコースのナナカマドもすごかった。一面、鮮やかな赤色の世界。


カール中央、メインの紅葉はボリューム満点。色づきも最高。
空は少し靄が掛かっているようで、抜けるような青空にはならなかったけど、
順光の紅葉は色の輝きが違う。


色づいていないナナカマドもいいアクセントである。


同じようなショットだが、何枚も撮ってしまう。
それはもう、撮りまくりなのだが、一枚、一枚、噛みしめるように、シャッターを切る。


自然と目が行く、涸沢槍。やはり存在感がある。


縦構図も、お気に入りの一枚。


再びカールと穂高の稜線を仰ぎ見る。
この紅葉は、すごい、きれい、でしか表現できない。

おそらく、この日、日本で一番、色に溢れている場所は、ここ涸沢だろう。

 

たっぷり二時間、ゆっくり散策、写真撮影をして、涸沢ヒュッテに戻った。
名残惜しいが、そろそろ下山に向かうことにする。

ありがとう、涸沢。またいつの日か。


帰りはパノラマコースを行く。途中の屏風の耳に寄るためである。
あっという間に小さくなる涸沢。後ろ髪引かれる思いで進んでいく。


眼下に見るのは、前日、登ってきた沢沿いの道。
登って来る時は黄色で埋め尽くされているように感じたが、これからまだまだ色づきそうだった。


パノラマコースは絶壁に沿っているので緊張感を持って。


屏風の頭が近づいて来た。
涸沢から見た時、屏風の頭もすごいことになっていそうと思ったが、黄色の密度が高い。



高度を上げると、槍ヶ岳も見えてるようになってきた。


紅葉の木々の間からも槍。
その存在感に、自然とレンズが向いてしまう。


屏風のコル手前で、上高地(徳沢方面)の展望が開ける。こちら側もいい色づきだった。


コルにザックをデポして、屏風の耳に向かう。
空身ではあるが、思った以上の急登で息が切れる。
途中、落ち着いたところで、雲の上に富士山や南アルプスが顔を出していることに気づく。


人が集まっているところが屏風の耳のピークのようだ。もう目の前。


屏風の耳に立つと…
それはもう、ものすごい大パノラマだった。


これは間違いなく、僕の写真では伝え切ることなんてできない。

槍・穂高連峰の稜線が視界一杯に広がる。
そして、稜線から急激に落ち込む斜面に取り付く、色鮮やかな紅葉。

穂高の稜線の懐にあるのが、さっきまでいた涸沢カール。
上から見下ろすと、全然、違った印象になる。


前穂高岳から延びる北尾根の紅葉。


穂高の斜面は紅葉がパッチワークのよう。
ちょっと現実味のないスケール感でミニチュアのようにも見えてしまう。


北穂、大キレット、南岳、槍ヶ岳まで続くパノラマ。


槍ヶ岳のアップ。
これまで、槍ヶ岳をここまで意識して見たことはなかったが、やはりかっこいい。
山登りをはじめて3年目。いつかは必ず登りたい山となった。


足元を覗き込めば、切り立った斜面をぎっしりと紅葉が埋めつくしている。


紅葉盛りの穂高の裏側には、ひっそりと常念岳
ピラミダルな美しい山容は、やはり登ってみたい気持ちにさせられる。


30分くらいゆっくりとこの風景を目に焼き付けて、屏風のコルに戻る。
登りは喘いでいて余裕がなかったが、帰りは写真を撮りながら。


ここの黄色も鮮やかだった。


屏風のコルでザックを回収して下山開始。
とりあえずの目標、梓川が見えているが、結構、遠そうだ…


激坂を下って、奥又白谷の出合。ここからは傾斜が緩やかになる。


道はやがて車も通れる林道になり、新村橋で梓川の左岸に渡る。
ゴールまではまだ距離があるが、なんだか終わった気分。


徳沢でソフトクリーム休憩。


やっぱり上高地までの残りは長かった…。
明神からは下山の登山者と観光客が入り乱れて、賑やかになったが、
鈍足で進んでいると、ふと人気がなくなり、上高地の森に静けさが訪れる。


すると、長いゴールまでの道のりが少しだけ楽しくなる。
あの涸沢の風景の余韻が鮮やかな記憶に変わる頃、河童橋に辿り着いた。


あの穂高の山並みの向こう側に見た、秋色に溢れる涸沢。
またいつか訪れたいと願いながら、バスに乗り込んだ。  (End)