稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

鉢伏山 - 美ヶ原ロングトレイル、笹原の稜線からレンゲツツジの丘へ

鉢伏山:山登りの記録

 日程:2022. 7. 2(日帰り)

 天候:晴れ

コースタイム

 扉温泉 5:15 → 美ヶ原高原ロングトレイル合流 6:55 → 二ツ山 7:50 - 8:15

 → 前二ツ山 8:55 → 鉢伏山 10:00 - 11:05 - 前鉢伏分岐 11:20 - 扉温泉 13:10

 登山時間:7時間55分(歩行距離:13.4km)

Introduction:笹原のトレイルからレンゲツツジの丘へ

今回はレンゲツツジの咲く鉢伏山へ。

鉢伏山松本盆地を形作る一角で、北アルプスを眺めるのには絶好の位置にある山。

山頂は高原状になっていて、そこに咲くレンゲツツジは夏の始まりの風物詩となっている。

時期的には少し遅いかなと思ったが、YAMAPやヤマレコの記録を見る限り、まだ楽しめそう。

 

鉢伏山自体は山頂近くまで車で行けてしまう、お手軽な山である。

からしっかり歩けるルートを探して見つけたのが、「美ヶ原高原ロングトレイルだった。

支線が色々とあるが、メインは松本の牛伏寺を起点として美ヶ原に至る約45kmのトレイル。

さすがに全部を歩くことはできないが、その一部を使った周回コースを計画した。

 

スタートは扉温泉に設定した。

鉢伏山から二ツ山は美しい笹原の稜線が広がっており、ここをどうしても歩きたかった。

二ツ山の先にある三峰山はビーナスラインからすぐなので、そっちに車を停めて、自転車で扉温泉に下ってのスタートを当初は考えた。

しかし、色々調べていると、扉温泉から二ツ山と三峰山の間の稜線に登る尾根道を発見。

思いっ切りバリエーションルートだが、過去レコもあったので、これを使うことにした。

ということで、扉温泉から二ツ山、鉢伏山の右回り周回コースに決定。

扉温泉から二ツ山へ、バリルートで美ヶ原高原ロングトレイルに乗る

5:15 扉温泉登山口(登山開始)

扉温泉の明神館を過ぎた先が登山口。

4台分ぐらいの駐車スペースがあり、5時で一番乗りだった。

ちなみに、少し離れた桧の湯の近くには、美ヶ原高原ロングトレイル用の駐車場もあった。

 

 

登り始めてこの道を真っすぐ行けば鉢伏山だが、すぐにバリエーションルートへ。

穴口沢に沿った尾根で、地形図ではP1413、P1471、P1502と繋ぐ。

取り付きは良くわからないが、バンガローか何かを作っているところから入って行く。

 

 

適当に斜面を乗り上げて行くが、ここがめちゃくちゃ急で、息が一気に上がる。

尾根に乗っかると道が付いているように見えた。

美ヶ原ロングトレイルにぶつかるまでに、人の手が入った箇所もあったので、おそらく林業の作業道に使われているのだろう。

 

 

P1413まではとんでもない急登…

しかし、30分ぐらい頑張ると傾斜は緩くなる。

というか稜線まではあと150m足らずなので、多少のアップダウンはあるが、平行移動に近い感覚。

尾根は広いが、下草もないのでルートはわかりやすかった。

P1471あたりからは明瞭な尾根道となる。

ただ何度か獣の気配を感じて…、ちょっと怖くて、時々、大声を出しながら行く(苦笑

 

 

6:55 美ヶ原高原ロングトレイル合流

この看板のところで二ツ山と三峰山との稜線に到達。

スタートから1時間半と少しで登ることができた。

藪漕ぎや特に危険な箇所もないので、おすすめできるバリルートかも。

写真は登って来たバリルート側を振り返って撮ったもの。

ここからは正規の登山道で二ツ山に向かう。

整備されているだけで、なんだか安心感があるのは間違いない。

しばらくはカラマツの林の中を行く。

 

美ヶ原高原ロングトレイルの道標。

あたりは整然と並ぶカラマツ木々。

下草は笹原になっていて、手入れされた庭園のような美しさがあった。

 

 

この道標のところから二ツ山へは標高差300mの急登となる。

 

 

所々で木々が切れて眺望が得られるように。

向こうに見えるのが三峰山で、ビーナスラインからお手軽に登ることができる。

 

 

北アルプスも見えて来た。

朝方は湿気の多い空気だったので、遠方は見えないかもと思っていたが、稜線上部はクリア。

 

 

立山爺ヶ岳鹿島槍五竜岳、白馬岳まで全部しっかり見える。

梅雨明けは早かったが、まだまだ雪は多い。

 

 

後方には本当にまっ平らな美ヶ原が。

 

王ヶ頭のアンテナ群をアップで。

なかなかシンドイ急斜面を長めのピッチでジグザグと登って行く。

不意にカラマツ林を抜けて、立枯れが目立つようになる。

 

傾斜が緩くなると気持ちのいい笹原が広がっていた。

 

 

青空に伸びる立枯れの木が画になる。

 

 

やがて平らになって、二ツ山への分岐の道標が見えた。

ここまでスタートから2時間半。

 

 

笹原の向こうには、立山と後立山の峰々が並んでいた。

 

二ツ山から鉢伏山へ、気持ちよすぎる笹原の稜線

二ツ山へは稜線を少しだけ外れる。

距離にしたら、わずか200m程度なので、気軽に立ち寄れる。

一帯は立枯れだらけで殺伐とした風景にも見えるが、その場ではとても穏やかな空間に感じた。

 

夜露か前日の雨が残っていて、ちょっと足元が濡れた。

八ヶ岳蓼科山

八ヶ岳は早くも雲に攻められていた。

 

 

反対側には槍ヶ岳

天を貫くような姿はやっぱり格好いい。

 

 

7:50 二ツ山

二ツ山のピーク自体は木々に囲まれていて、眺望はない。

目的地とするには物足りないかも知れないが、個人的にはこのあたりの雰囲気と合わせて、印象に残る山となった。

 

 

分岐まで戻って休憩とする。

想定よりも1時間ほど巻けているので、ゆっくり風景を楽しむことにする。

開放的な風景の先に続く北アルプスの峰々。

白馬岳にも少しずつ雲ができ始めたようだ。

クリアなうちに眺めることができて良かった。

鹿島槍五竜岳も歩きに行かないと。

立山針ノ木岳蓮華岳

穂高岳槍ヶ岳、そして常念岳

キレットはちょうど蝶ヶ岳の稜線に隠れてる。

涸沢あたりはまだまだ雪が多そう。

鉢伏山まで4.5km。

まだまだ距離はあるが、ここからがこのルートのメインステージといえる。

今回もお天気なのは、この子たちのおかげかな?

さて、鉢伏山に向けて、再出発。

明るく開けた道で足取りも軽くなる。

 

右手に美ヶ原を眺めながら。

左手に見える中央アルプスは少し霞んでいる。

振り返ると浅間山

やがて前方が大きく開けて、視界にこの風景が飛び込んで来る。

これから進む稜線を一望でき、最高すぎる。

 

 

笹原をジグザクと登る登山道。

その奥には乗鞍岳が顔を覗かせている。

 

 

緩やかな曲線を描く笹の斜面が綺麗。

その先に横一列に並ぶ北アルプス

なんだか日本じゃないみたい。

 

 

ここの斜面はちょっと手強そう。

でも、こんな風景の中なら楽しく行ける。

 

足元にはニガナが咲いていた。

どこまでも青く深い夏の空を見上げながら。

笹の緑色とのコントラストが堪らん。

 

 

いつでもそばには美ヶ原。

 

 

振り返ると笹の葉で反射した夏の陽射しが眩しい。

 

 

八ヶ岳蓼科山は、もうすぐ雲に飲まれそう。

標高が高いところは、どこも雨が心配だ。

 

 

正面は前二ツ山のピーク。

こんなに広々とした風景はなかなかないだろう。

 

 

乗鞍岳はまだ快晴。

 

 

笹原をうねるように行くトレイル。

ここは楽園といっても差し支えない、そんな感じのする場所だ。

気温は高いはずだけど、稜線は風が抜けて爽やか。

 

笹の海が広がっている。

8:55 前二ツ山

前二ツ山のピークを過ぎても、まだまだ開放的なコースは続く。

 

 

もうひとつの目当て、レンゲツツジがぽつぽつと見られるようになって来た。

鹿島槍より北側はガスに飲まれてしまった。

 

 

なかなか現われないので、もう終わっているかもと心配だったが、しっかり鮮やかなレンゲツツジに出会えて嬉しい。

 

 

左の高まりが鉢伏山だろうか?

ラストスパートに入る。

 

 

といっても、鉢伏山に近づくほど、レンゲツツジがたくさん咲いているので、足を止める回数が自然と増えてしまう。

 

青空を背景に。

大きく近づいてみて。

レンガ色の花が目立つコウリンタンポポも。

鉢伏山、山頂に広がるレンゲツツジの楽園

鉢伏山荘から登って来る道と合流して、山頂までもう少し。

 

 

でも、ここからがまた進めなくなる。

その理由はこの風景。

松本の街を見下ろして、その向こうに並ぶ穂高の山々。

 

レンゲツツジ穂高

鉢伏山の山頂三角点は開けていないので素通り(苦笑

展望台のある先端が最終目的地だ。

 

レンゲツツジに囲まれて立つ鳥居は、鉢伏山を象徴する風景。

 

 

このあたりはちょうど花の盛りのようだ。

 

 

さっきの笹の海とはまた別の楽園が、ここにもうひとつあった。

 

眩しいほどの紅色。

10:00 鉢伏山

レンゲツツジをたっぷり愛でながら、二ツ山から1時間半で鉢伏山に到着。

アマチュア無線で交信している人がひとりだけの静かな山頂。

展望台は登れないようになっていた。

展望台の先は雲と霞でよく見えないが、眼下には諏訪湖が広がっている。

 

一番、目が行くのは、やっぱりここ。

穂高岳槍ヶ岳常念岳の並びもだいぶ雲が湧いて来てしまった。

 

 

展望台の前のベンチでランチとする。

「牛ガーリック飯」というまぜご飯の素を炒めたが、青ネギを忘れたので、彩りはイマイチ…

トマトは最近、毎回食べている。

今回はキムチ風味に味付け。

 

 

ふと視線を感じたような気がして…、鹿さんがこっちを見ていた。

 

 

デザートは凍らせて持ってきたグレープフルーツのゼリー。

まだ冷たくてさっぱり。

 

 

この広い風景を眺めながら、贅沢なランチタイムだった。

 

 

お腹もいっぱいになったし、山の風景も花も満喫できたので、そろそろ下山しよう。

東側にはそんな遠くないところに積乱雲が出来ていたので、雨に降られる前に降りたいところ。

 

 

その前に、もう少しだけレンゲツツジを楽しんでいく。

 

てるてる坊主と記念撮影。

この鳥居はとても画になっていた。

穂高を向いているということは、山を崇めて建てられたのだろう。

 

 

眼下に鉢伏山荘の青い屋根が見えて来た。

あそこまで林道が通っているので、鉢伏山はちらほら観光客の姿も見かけた。

正面の鉢伏山に雲の影が落ちていた。

 

 

鉢伏山荘には美味しいコーヒーがあるらしいが、寄り道せずに下山。

 

 

扉温泉への下山路。

初めはカラマツが清々しい林を降りて行く。

 

 

急なジグザグの下りが終わると小さな沢に出合う。

ここで顔を洗ってさっぱり。

 

ここからは沢沿いの道となる。

わさび沢の本流と合わさると水量が増えて、なかなかの渓流美だった。

 

苔もいい感じ。

ちょっと大きめの滝も。

ここの丸太橋は滑りそうで怖いので、下の岩場を歩いた。

 

 

鉢伏山から2時間で扉温泉に下山完了。

 

あとがき

美しい笹原と鮮やかなレンゲツツジを存分に味わえた今回の山行。

鉢伏山の山頂の雰囲気もさることながら、二ツ山からの広々としたトレイルが堪らなかった。

笹原を渡る風に吹かれて、アルプスの峰々を眺めながらの快適ハイク。

車で鉢伏山荘まで登ってしまって、二ツ山をピストンするのでもいいかも知れない。

 

登りに使ったバリルートをちょっと整備すれば、変化に富んだかなりいい周回コールになると思うが、どうだろう?

こういうところを歩き慣れている人には、ぜひお薦めしたい。

 

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<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

・美ヶ原高原ロングトレイル:美ヶ原を巡る総延長45kmのトレイル