稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

白山 - 夏の白山・花めぐり (Day 2 ; 2013.7.22)

 

(1日目) 別当出合 → 砂防新道 → 御前峰 → 南竜ヶ馬場 (南竜山荘 泊)
(2日目) 南竜ヶ馬場 → 別山 (未踏) → チブリ尾根 → 市ノ瀬

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2日目の朝。
目が覚めて小屋の窓から外を見ると…
まだ夜明け前で暗いが、ガスで真っ白だということはわかる。
ただ、予報では雨が来るのは午後から。少しでも晴れてくれればいいのだが。

小屋の弁当を食堂で食べて、出発の準備を終えて外に出ると、
願いが通じたのか、東の空が朝焼け色に染まっていた。

 


いい感じにガスが切れてきて、青空が広がってくる中、5時に南竜を出発。

 


小川を渡って、別山への南縦走路を目指す。
余裕があれば別山を越えて、ニッコウキスゲの群落地、別山平まで下りたいと考えている。

出発してすぐに現れるのが南竜湿原。
ガスが絡んで雰囲気のある湿原には、ハクサンコザクラがたくさん咲いていた。

 


湿原を抜けると、一旦、赤谷に向かって少し下ることになる。
沢へ降りる場所に雪渓があり、距離はちょっとだけだが、凍っていて嫌な感じ。
南竜を同じタイミングで出発した団体さんはストックで降りて行ったが、
持っていない僕は慎重を期して軽アイゼン装着。

赤谷を過ぎると、急な油坂に取り付く。
このあたりからガスに巻かれてしまい、出発時の期待は早くも崩れ去る。
結局、このあと青空を見ることはなかった。

視界のない登りを喘ぎながらこなし、道はいつしか稜線に出ているようだった。
道の脇にはニッコウキスゲが目立つようになっていった。

 


南縦走路で楽しみにしていたのが、このニッコウキスゲである。
ちょっと水に濡れて、黄色がいっそう鮮やかに見える。

 


展望が得られないのは残念だが、とにかく花が多くて、楽しみながら歩くことができた。

ただ、ところどころで樹林帯に入ると、すごい虫の大群…
覚悟を決めて、草にとまっている虫たちを掻き分けながら進むことになる。

天池ではハクサンイチゲが咲いていた。
“ハクサン” と名前が付く花は、これで何種類目だろう?

 


小さな池の畔を行く。
この南縦走路は変化に富んでいて、晴れている時にもう一度、歩いてみたい道。

 


斜面にはコバイケイソウの大群落。今年は各地の山で大当たりだったそうで。
この場所は白い絨毯になっていた。

 


ハクサンコザクラらしい立ち姿。

 


ここも道の両脇をコバイケイソウが埋め尽くしていた。

 


チブリ尾根の分岐が近づく頃、この日、一番のニッコウキスゲのお花畑が現れた。

 


斜面を見上げると黄色く染まった草原が一面に広がっていた。
視線の先はガスで境界線が曖昧で、鮮やかなニッコウキスゲの黄色が白い世界に溶けていく。
どこか幻想的な風景だった。

 


朝、花を広げて、その日の夕方には萎んでしまうというニッコウキスゲ
今日、ここに咲いてくれた君たちに感謝。

 


この場を離れがたい気持ちだったが、天気が本格的に崩れてくる前に進まないと。
チブリ尾根・分岐の手前で、今回、最後のチングルマ

 


南竜から付かず離れずだった団体さんは別山の山頂に向かって行ったが、
ガスガスで間違いなく何も見えないので、僕はパス。
10分足らずの距離だが、またの機会が訪れれば。

御舎利山へわずかに登り返して、そこから長いチブリ尾根がはじまる。
市ノ瀬まで9kmの下りである。下りはじめのガレ場を慎重に降りていく。

 


花の数は南縦走路に比べて圧倒的に少ないので、淡々と下るのみ。
それでも、少しだけ咲いている花もあった。
ミヤマイワニガナだろうか?

 


500メートル標高を落として、きれいなチブリ尾根避難小屋で昼休憩。
避難小屋を出て、まさに十数歩のところで、急に雨が…
小屋に戻って、雨具を調えて再スタート。

最後のニッコウキスゲ群生を行く登山道。

 


このあと、雨は急速に強まって土砂降りに…
あっという間に道は川となり、修行の時間がはじまった。
徐々に膝も痛み出し、長い長いチブリ尾根を超鈍足で下っていく。

雨は弱まらず、心が折れそうになったが、
ブナの森に入ると立派な木々のおかげで、少しだけ雨をしのぐことができた。
叩き付ける土砂降りを大きく枝葉を広げたブナが受け止めてくれる。

 


いつしか雨が上がっていた。
カツラの古木の下をくぐれば、ゴールの市ノ瀬までもうひとふん張り。

 


最後はヘトヘトになって市ノ瀬にたどり着いた。
月曜の午後だと、駐車場はさすがにガラガラになっていた。

 


花で溢れる山、白山。
今回の山行、天気はもうひとつで期待した展望は得られなかったけど、
その分、じっくりと花と向き合うことができたように思う。  (End)