稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

鉢伏山 - 美ヶ原ロングトレイル、笹原の稜線からレンゲツツジの丘へ

鉢伏山:山登りの記録

 日程:2022. 7. 2(日帰り)

 天候:晴れ

コースタイム

 扉温泉 5:15 → 美ヶ原高原ロングトレイル合流 6:55 → 二ツ山 7:50 - 8:15

 → 前二ツ山 8:55 → 鉢伏山 10:00 - 11:05 - 前鉢伏分岐 11:20 - 扉温泉 13:10

 登山時間:7時間55分(歩行距離:13.4km)

Introduction:笹原のトレイルからレンゲツツジの丘へ

今回はレンゲツツジの咲く鉢伏山へ。

鉢伏山松本盆地を形作る一角で、北アルプスを眺めるのには絶好の位置にある山。

山頂は高原状になっていて、そこに咲くレンゲツツジは夏の始まりの風物詩となっている。

時期的には少し遅いかなと思ったが、YAMAPやヤマレコの記録を見る限り、まだ楽しめそう。

 

鉢伏山自体は山頂近くまで車で行けてしまう、お手軽な山である。

からしっかり歩けるルートを探して見つけたのが、「美ヶ原高原ロングトレイルだった。

支線が色々とあるが、メインは松本の牛伏寺を起点として美ヶ原に至る約45kmのトレイル。

さすがに全部を歩くことはできないが、その一部を使った周回コースを計画した。

 

スタートは扉温泉に設定した。

鉢伏山から二ツ山は美しい笹原の稜線が広がっており、ここをどうしても歩きたかった。

二ツ山の先にある三峰山はビーナスラインからすぐなので、そっちに車を停めて、自転車で扉温泉に下ってのスタートを当初は考えた。

しかし、色々調べていると、扉温泉から二ツ山と三峰山の間の稜線に登る尾根道を発見。

思いっ切りバリエーションルートだが、過去レコもあったので、これを使うことにした。

ということで、扉温泉から二ツ山、鉢伏山の右回り周回コースに決定。

扉温泉から二ツ山へ、バリルートで美ヶ原高原ロングトレイルに乗る

5:15 扉温泉登山口(登山開始)

扉温泉の明神館を過ぎた先が登山口。

4台分ぐらいの駐車スペースがあり、5時で一番乗りだった。

ちなみに、少し離れた桧の湯の近くには、美ヶ原高原ロングトレイル用の駐車場もあった。

 

 

登り始めてこの道を真っすぐ行けば鉢伏山だが、すぐにバリエーションルートへ。

穴口沢に沿った尾根で、地形図ではP1413、P1471、P1502と繋ぐ。

取り付きは良くわからないが、バンガローか何かを作っているところから入って行く。

 

 

適当に斜面を乗り上げて行くが、ここがめちゃくちゃ急で、息が一気に上がる。

尾根に乗っかると道が付いているように見えた。

美ヶ原ロングトレイルにぶつかるまでに、人の手が入った箇所もあったので、おそらく林業の作業道に使われているのだろう。

 

 

P1413まではとんでもない急登…

しかし、30分ぐらい頑張ると傾斜は緩くなる。

というか稜線まではあと150m足らずなので、多少のアップダウンはあるが、平行移動に近い感覚。

尾根は広いが、下草もないのでルートはわかりやすかった。

P1471あたりからは明瞭な尾根道となる。

ただ何度か獣の気配を感じて…、ちょっと怖くて、時々、大声を出しながら行く(苦笑

 

 

6:55 美ヶ原高原ロングトレイル合流

この看板のところで二ツ山と三峰山との稜線に到達。

スタートから1時間半と少しで登ることができた。

藪漕ぎや特に危険な箇所もないので、おすすめできるバリルートかも。

写真は登って来たバリルート側を振り返って撮ったもの。

ここからは正規の登山道で二ツ山に向かう。

整備されているだけで、なんだか安心感があるのは間違いない。

しばらくはカラマツの林の中を行く。

 

美ヶ原高原ロングトレイルの道標。

あたりは整然と並ぶカラマツ木々。

下草は笹原になっていて、手入れされた庭園のような美しさがあった。

 

 

この道標のところから二ツ山へは標高差300mの急登となる。

 

 

所々で木々が切れて眺望が得られるように。

向こうに見えるのが三峰山で、ビーナスラインからお手軽に登ることができる。

 

 

北アルプスも見えて来た。

朝方は湿気の多い空気だったので、遠方は見えないかもと思っていたが、稜線上部はクリア。

 

 

立山爺ヶ岳鹿島槍五竜岳、白馬岳まで全部しっかり見える。

梅雨明けは早かったが、まだまだ雪は多い。

 

 

後方には本当にまっ平らな美ヶ原が。

 

王ヶ頭のアンテナ群をアップで。

なかなかシンドイ急斜面を長めのピッチでジグザグと登って行く。

不意にカラマツ林を抜けて、立枯れが目立つようになる。

 

傾斜が緩くなると気持ちのいい笹原が広がっていた。

 

 

青空に伸びる立枯れの木が画になる。

 

 

やがて平らになって、二ツ山への分岐の道標が見えた。

ここまでスタートから2時間半。

 

 

笹原の向こうには、立山と後立山の峰々が並んでいた。

 

二ツ山から鉢伏山へ、気持ちよすぎる笹原の稜線

二ツ山へは稜線を少しだけ外れる。

距離にしたら、わずか200m程度なので、気軽に立ち寄れる。

一帯は立枯れだらけで殺伐とした風景にも見えるが、その場ではとても穏やかな空間に感じた。

 

夜露か前日の雨が残っていて、ちょっと足元が濡れた。

八ヶ岳蓼科山

八ヶ岳は早くも雲に攻められていた。

 

 

反対側には槍ヶ岳

天を貫くような姿はやっぱり格好いい。

 

 

7:50 二ツ山

二ツ山のピーク自体は木々に囲まれていて、眺望はない。

目的地とするには物足りないかも知れないが、個人的にはこのあたりの雰囲気と合わせて、印象に残る山となった。

 

 

分岐まで戻って休憩とする。

想定よりも1時間ほど巻けているので、ゆっくり風景を楽しむことにする。

開放的な風景の先に続く北アルプスの峰々。

白馬岳にも少しずつ雲ができ始めたようだ。

クリアなうちに眺めることができて良かった。

鹿島槍五竜岳も歩きに行かないと。

立山針ノ木岳蓮華岳

穂高岳槍ヶ岳、そして常念岳

キレットはちょうど蝶ヶ岳の稜線に隠れてる。

涸沢あたりはまだまだ雪が多そう。

鉢伏山まで4.5km。

まだまだ距離はあるが、ここからがこのルートのメインステージといえる。

今回もお天気なのは、この子たちのおかげかな?

さて、鉢伏山に向けて、再出発。

明るく開けた道で足取りも軽くなる。

 

右手に美ヶ原を眺めながら。

左手に見える中央アルプスは少し霞んでいる。

振り返ると浅間山

やがて前方が大きく開けて、視界にこの風景が飛び込んで来る。

これから進む稜線を一望でき、最高すぎる。

 

 

笹原をジグザクと登る登山道。

その奥には乗鞍岳が顔を覗かせている。

 

 

緩やかな曲線を描く笹の斜面が綺麗。

その先に横一列に並ぶ北アルプス

なんだか日本じゃないみたい。

 

 

ここの斜面はちょっと手強そう。

でも、こんな風景の中なら楽しく行ける。

 

足元にはニガナが咲いていた。

どこまでも青く深い夏の空を見上げながら。

笹の緑色とのコントラストが堪らん。

 

 

いつでもそばには美ヶ原。

 

 

振り返ると笹の葉で反射した夏の陽射しが眩しい。

 

 

八ヶ岳蓼科山は、もうすぐ雲に飲まれそう。

標高が高いところは、どこも雨が心配だ。

 

 

正面は前二ツ山のピーク。

こんなに広々とした風景はなかなかないだろう。

 

 

乗鞍岳はまだ快晴。

 

 

笹原をうねるように行くトレイル。

ここは楽園といっても差し支えない、そんな感じのする場所だ。

気温は高いはずだけど、稜線は風が抜けて爽やか。

 

笹の海が広がっている。

8:55 前二ツ山

前二ツ山のピークを過ぎても、まだまだ開放的なコースは続く。

 

 

もうひとつの目当て、レンゲツツジがぽつぽつと見られるようになって来た。

鹿島槍より北側はガスに飲まれてしまった。

 

 

なかなか現われないので、もう終わっているかもと心配だったが、しっかり鮮やかなレンゲツツジに出会えて嬉しい。

 

 

左の高まりが鉢伏山だろうか?

ラストスパートに入る。

 

 

といっても、鉢伏山に近づくほど、レンゲツツジがたくさん咲いているので、足を止める回数が自然と増えてしまう。

 

青空を背景に。

大きく近づいてみて。

レンガ色の花が目立つコウリンタンポポも。

鉢伏山、山頂に広がるレンゲツツジの楽園

鉢伏山荘から登って来る道と合流して、山頂までもう少し。

 

 

でも、ここからがまた進めなくなる。

その理由はこの風景。

松本の街を見下ろして、その向こうに並ぶ穂高の山々。

 

レンゲツツジ穂高

鉢伏山の山頂三角点は開けていないので素通り(苦笑

展望台のある先端が最終目的地だ。

 

レンゲツツジに囲まれて立つ鳥居は、鉢伏山を象徴する風景。

 

 

このあたりはちょうど花の盛りのようだ。

 

 

さっきの笹の海とはまた別の楽園が、ここにもうひとつあった。

 

眩しいほどの紅色。

10:00 鉢伏山

レンゲツツジをたっぷり愛でながら、二ツ山から1時間半で鉢伏山に到着。

アマチュア無線で交信している人がひとりだけの静かな山頂。

展望台は登れないようになっていた。

展望台の先は雲と霞でよく見えないが、眼下には諏訪湖が広がっている。

 

一番、目が行くのは、やっぱりここ。

穂高岳槍ヶ岳常念岳の並びもだいぶ雲が湧いて来てしまった。

 

 

展望台の前のベンチでランチとする。

「牛ガーリック飯」というまぜご飯の素を炒めたが、青ネギを忘れたので、彩りはイマイチ…

トマトは最近、毎回食べている。

今回はキムチ風味に味付け。

 

 

ふと視線を感じたような気がして…、鹿さんがこっちを見ていた。

 

 

デザートは凍らせて持ってきたグレープフルーツのゼリー。

まだ冷たくてさっぱり。

 

 

この広い風景を眺めながら、贅沢なランチタイムだった。

 

 

お腹もいっぱいになったし、山の風景も花も満喫できたので、そろそろ下山しよう。

東側にはそんな遠くないところに積乱雲が出来ていたので、雨に降られる前に降りたいところ。

 

 

その前に、もう少しだけレンゲツツジを楽しんでいく。

 

てるてる坊主と記念撮影。

この鳥居はとても画になっていた。

穂高を向いているということは、山を崇めて建てられたのだろう。

 

 

眼下に鉢伏山荘の青い屋根が見えて来た。

あそこまで林道が通っているので、鉢伏山はちらほら観光客の姿も見かけた。

正面の鉢伏山に雲の影が落ちていた。

 

 

鉢伏山荘には美味しいコーヒーがあるらしいが、寄り道せずに下山。

 

 

扉温泉への下山路。

初めはカラマツが清々しい林を降りて行く。

 

 

急なジグザグの下りが終わると小さな沢に出合う。

ここで顔を洗ってさっぱり。

 

ここからは沢沿いの道となる。

わさび沢の本流と合わさると水量が増えて、なかなかの渓流美だった。

 

苔もいい感じ。

ちょっと大きめの滝も。

ここの丸太橋は滑りそうで怖いので、下の岩場を歩いた。

 

 

鉢伏山から2時間で扉温泉に下山完了。

 

あとがき

美しい笹原と鮮やかなレンゲツツジを存分に味わえた今回の山行。

鉢伏山の山頂の雰囲気もさることながら、二ツ山からの広々としたトレイルが堪らなかった。

笹原を渡る風に吹かれて、アルプスの峰々を眺めながらの快適ハイク。

車で鉢伏山荘まで登ってしまって、二ツ山をピストンするのでもいいかも知れない。

 

登りに使ったバリルートをちょっと整備すれば、変化に富んだかなりいい周回コールになると思うが、どうだろう?

こういうところを歩き慣れている人には、ぜひお薦めしたい。

 

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<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

・美ヶ原高原ロングトレイル:美ヶ原を巡る総延長45kmのトレイル


権現岳 - 並み居る八ヶ岳の峰々を眺めに、編笠山とセットで周回

権現岳:山登りの記録

 日程:2022. 5. 28(日帰り)

 天候:曇り のち 晴れ

コースタイム

 観音平 5:35 → 雲海 6:25 → 押手川 7:00 → 編笠山 8:10 - 8:35 

 → 青年小屋 9:05 - 9:15 → 東ギボシ 10:35 → 権現岳 10:55 - 11:05

 → 三ッ頭 12:00 - 13:00 → 八ヶ岳横断歩道分岐 15:25 → 観音平 16:00

 登山時間:10時間25分(歩行距離:11.7km)

Introduction:八ヶ岳最南端、好展望の鋭鋒へ

5月末、そろそろ夏山を意識してしっかり歩きたい季節。

残雪の心配がなくて、それなりの高山… で選んだのが、八ヶ岳権現岳である。

 

八ヶ岳は北部が穏やかな山容、南部が険しい峰々の連なりになっている。

その中で、権現岳八ヶ岳連峰の最南端エリアに位置している。

山頂付近には適度な岩場となっており、いいトレーニングになりそう。

 

そして、八ヶ岳の端っこということで、大きく景色が開けている。

赤岳や阿弥陀岳など南八ツの中心部だけでなく、南アルプスも一望できる好立地なのである。

この眺望も今回の山行の大きな楽しみである。

 

ルートは小淵沢近くの観音平を起点とし、まずは編笠山へ。

編笠山から一旦、青年小屋に下り、そこから岩場も登場する急登で権現岳に向かう。

下山は三ッ頭から八ヶ岳横断歩道に出て、観音平に戻る周回コースである。

観音平から編笠山へ、風の唸る山頂からの眺望

5時半前、観音平の駐車場に到着すると、メインスペースがまさに一杯になったところだった。

林道を進んだ奥にもうひとつ駐車場があって、僕らはそちらに車を停めた。

ちなみに、下山時にはかなり下の方まで路上駐車が続いていた。

 

5:35 観音平(登山開始)

6月間近の5時半はすっかり明るい。

その中、最初の目的地である編笠山を目指してスタートを切る。

 

 

しばらくはゆるゆると林の中を登って行く。

ウォームアップにはちょうどいい感じ。

すぐに朝陽が差し込むようになった。

歩き始めて50分ほどで「雲海」と名前の付いたポイントに到着。

地名としては珍しいが、雲海が良く発生するのだろうか?

ここからは富士山が綺麗に見えた。

 

 

雲海からしばらくすると岩のゴロゴロとした道に変わり、傾斜も増して行く。

 

 

7:00 押手川

押手川では、編笠山をショートカットする青年小屋へのトラバース路が分岐する。

体力や時間に不安がある場合は、編笠山を省く選択肢もあるだろうが、それはあまりにも勿体ない。

ちなみに、押手川という名前ではあるが、水の流れは見当たらなかった。

押手川を過ぎると、コメツガやシラビソの森が鬱蒼と広がって来る。

林床には苔が蔓延って、いかにも八ヶ岳って感じがする。

 

 

まずまずの急登を黙々と登って行くと、一瞬だけ視界が開けて南アルプスが見えた。

稜線には少し雲が掛かっているが、いい眺めだ。

 

 

編笠山の山頂が近づくにつれて、斜度はどんどん厳しくなって行く。

 

ちょっとした梯子も。なんにも問題はなし。

山頂直下でやっと樹林帯を抜ける。

逆光気味ではあるが、富士山と甲府盆地を一望できた。

 

 

南アルプスも合わせて、なかなか贅沢な眺めである。

編笠山の上空は雲が覆っているようで、頭の上では風が鳴いている。

 

 

傾斜が緩くなって山頂は目前となる。

時折、ガスが割れて青空も見えるが、強い風で一瞬のうちに通り過ぎて行ってしまう。

 

 

8:10 編笠山

そして、スタートから2時間半で編笠山に到着。

山頂は岩で敷き詰められている。

晴れていれば八ヶ岳の峰々を一望できるはずだが…、赤岳や阿弥陀岳の上部はガスの中だった。

これから目指す権現岳は辛うじて見えた。

ちなみに、編笠山には積雪期に一度、登っている。

その時は、それは素晴らしい「八ヶ岳ブルー」で、白銀の峰々を楽しめたのだが…

 

参考記事:編笠山 - 穏やかな冬の日、青空と八ヶ岳

 

南アルプス側は稜線のガスが相変わらず纏わり付いて取れないが、良く晴れている。

このパノラマ感はなかなかのもの。

 

 

そして、富士山にはどうしても目が行ってしまう。

 

 

北側は雲が多め、というか、八ヶ岳が雲を作っている感じだった。

そして、爆風が吹き荒れている。

薄っすら北アルプスの山並みが見えているようだが、判然としない。

 

 

休憩しているうちに、南アルプスのガスが減って来てくれたようだ。

北岳を望遠で。

甲斐駒の山頂はまだガスの中。

青年小屋から権現岳へ、険しく楽しい岩場登り

編笠山の山頂は爆風でゆっくり休憩という感じではなかったが、25分ほど滞在して先へ進む。

眼下に見える青年小屋に一旦、下る。

正面にどんと構えるピークは、これから登るギボシ権現岳

 

 

下って来た編笠山を振り返って。

青年小屋の近くは岩がゴロゴロとした斜面になっている。

 

 

9:05 青年小屋

「遠い飲み屋」の赤提灯がぶら下がる青年小屋

中には入らなかったが、ボトルキープまで出来るらしい。(いつか飲みに来ようかな)

そして、小屋前には「ラブランコ」があって、青年小屋は色々と話題が多い。

 

 

青年小屋から権現岳に向かう。

少し登って振り返ると、均等が取れた形の編笠山の姿がいい感じ。

すっかり天候が回復してきて、青空が支配的に。

すぐにちょっとした岩場が出て来るが、ここはガンガン登って行く。

それにしても、空が青いと気持ちいい。

 

 

編笠山と背後に南アルプスの眺め。

 

 

遠方の視界もかなり良くなって来た。

諏訪の街の向こうには乗鞍岳が見える。

まだたっぷりと雪が残っている。

北岳甲斐駒ヶ岳仙丈ヶ岳の峰々。

青年小屋から30分ほど登ると「のろし場」という開けたピークに出る。

奥が権現岳で、手前が西ギボシ、これに隠れて東ギボシがある。

権現岳よりもギボシの方が存在感がある。

 

 

西ギボシへの登りは、ややザレ気味だった。

 

 

すっかり岩場中心になって、ここからがこのルートの核心部である。

 

 

足場はしっかりしているので、岩場としてはかなり歩きやすい部類。

危険を感じるような箇所はなかった。

 

 

行く先に荒々しい東ギボシの山肌。

その奥には阿弥陀岳と赤岳が見える。

すっかり晴れてくれて嬉しい。

ここが西ギボシのピークかな?

南アルプスを一望する、堪らない開放感。

そういえば、編笠山ではあれだけの爆風だったのに、いつの間にかほとんど止んでいた。

 

 

急峻な東ギボシ

対して、穏やかな権現岳のピーク。

これだけ見ると、今回の山行はギボシの方が主役なのかと思えてしまう。

 

 

それにしてもすごい迫力だ。

ルートは右側の中腹をトラバース気味に登って行く。

 

 

権現岳の岩に登る登山者のシルエット。

格好いいけど、怖そう…

ギボシをトラバース中。

足場は平らにならされているので、難しい局面はない。

 

 

数ヶ所で鎖場が出て来るが、どこもホールドがしっかりしているので、鎖を使わなくても行けると思う。

 

 

ギボシのピークへは登山道を少し外れる感じで、左手の岩場を登って行く。

 

 

10:30 東ギボシ

ギボシには不動明王の石像が祀られていた。

 

 

数人が立てば埋まってしまうような狭いピークからはこの眺望。

赤岳阿弥陀岳がどっしりと構える八ヶ岳の風景が広がる。

その奥には横岳硫黄岳も続いている。

 

 

一番目立つのは、やはり赤岳。

格好良すぎる。

いつか赤岳からキレットを越えて権現岳に縦走したいと思っていたが…

赤岳直下の斜面の険しさを見て、無理かも、と思い始めている…

 

 

北アルプス穂高槍ヶ岳あたりはしっかり見えるようになった。

北部はまだ雲が多い。

穂高岳から大キレット槍ヶ岳の峰々。

涸沢のカールにはまだ雪がたっぷりある。

 

 

御嶽山も見えるようになっていた。

 

 

もう何度撮ったかわからない南アルプスの眺望。

 

 

たっぷり景色を楽しんだので、権現岳の本峰に向かう。

ちなみに、眼下に見える権現小屋はコロナ禍以降、休業になっているので注意。

 

権現小屋の前から東ギボシを振り返って。

権現岳のピークへは小屋からほぼ水平移動。

天辺はこの岩場の上。慎重に登る。

10:55 権現岳

そして、観音平のスタートから5時間で権現岳に登頂となった。

岩の間に鉄剣が刺さっているのが格好いい。

「山なめんなよ」の牛は意味不明だが??

山頂からの眺望は、ギボシで十分満足しちゃったので、少しだけ。

東側、白く見えるのは野辺山のレタス畑だろうか。

 

 

南側の下山方向に三ッ頭のピーク。

富士山にはたいぶ雲が掛かってしまった。

 

三ッ頭を経由して下山、最後はカラマツの若葉

権現岳のピークは広くないので、昼食は三ッ頭で取ることにして、早々に下り始める。

前方には編笠山南アルプスの大展望。

 

 

山頂直下は鎖で急な岩場を降りて行く。

 

 

南側から見る権現岳は、また違った表情。

岩壁がそそり立っていて、迫力がある。

 

 

12:00 三ッ頭

鞍部から50mほどの登り返すと三ッ頭である。

「刀利大権現」の古そうな石碑があり、権現岳は信仰の山なんだとわかる。

 

 

赤岳、阿弥陀岳権現岳がきれいに並んでいる。

景色がいいので、ここでランチにしよう。

本日のメニューは、ビーフンのグリーンカレー掛け(ミニトマトたっぷり目)。

カレーはいなばの缶詰でお手軽料理。

カレーの辛さ(予想以上に辛かったけど)とトマトの酸味が相性抜群だった。

 

山友はソーセージとベーコンをキャベツと一緒に豪快に焼く!

シンプルに美味すぎた。

 

 

デザートはわらび餅。

きな粉は半分ぐらい風に飛んで行ったような…。

冷え冷えで(体感よりも気温が低かったのかな?)これも美味。

いつもながら食べ過ぎ。

 

 

ランチ後、再出発して、すぐに三ッ頭の三角点ピーク。

赤岳、阿弥陀岳の景色はここで見納め。

 

 

女山方面の道と分かれ、観音平に向けて尾根道を下る。

 

 

今回の山行では、花はまだほとんど咲いていなかったが、ヒメイチゲを発見。

 

 

権現岳がどんどん遠くなって行き、少し名残惜しい気分。

 

 

しばらく下ると樹林帯に入って、カラマツの新緑が気持ちいい下山路となる。

 

 

ヘリポート跡にあったベンチ。

ちょっと疲れて来たので、ここで昼寝しちゃいたい…

 

 

キバナスミレはたくさん咲いていた。

 

 

急なところがほとんどなく、下りやすい道が続く。

 

カラマツの若葉が本当に清々しい。

八ヶ岳横断歩道に出て、あとは観音平まで水平移動… ではなく、そこそこのアップダウンがある。

 

 

最後はしっかり登り返しがあって、観音平にゴール。

 

あとがき

今回の編笠山権現岳の周回、かなり歩きごたえのあるコースだった。

八ヶ岳らしい深い森から始まり、ギボシ権現岳への岩場登り、下山でのカラマツ新緑。

変化に富んでいて、飽きることはなかった。

 

八ヶ岳南アルプスの眺望も抜群で、赤岳、阿弥陀岳の峰々を間近に感じることができた。

編笠山の爆風からの天候回復も幸運だったし、また山行のいい思い出がひとつ増えたかな。

 

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<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

・ 青年小屋:ご存じ「遠い飲み屋」。いつかは泊まってみたい。

 

釈迦ヶ岳・三池岳 - 曇り空でも満開のシロヤシオ、鈴鹿県境稜線を行く

釈迦ヶ岳・三池岳:山登りの記録

 日程:2022. 5. 15(日帰り)

 天候:曇り

コースタイム

 八風キャンプ場 7:00 → 岩ヶ峰 8:35 → 岩ヶ峰尾根分岐 9:00

 → 釈迦ヶ岳 9:10 - 9:25 → 仙香池 10:20 → 中峠 10:30 → 八風峠 10:50

 → 三池岳 11:00 - 12:10 → 八風峠 12:25 → 八風キャンプ場 13:50

 登山時間:6時間50分(歩行距離:9.3km)

Introduction:シロヤシオの回廊となる鈴鹿県境稜線

5月の鈴鹿といえばシロヤシオ

ゴヨウツツジの別名を持ち、白く大ぶりな花が寄り添うように咲く落葉樹である。

満開となると樹木全体が真っ白になる。

 

鈴鹿シロヤシオの名所として真っ先に挙げられるのは竜ヶ岳である。

広い笹原に点在して咲くシロヤシオが ”羊の群れ” のように見えることで有名だ。

たくさんの登山者が訪れるが、静かに楽しみたいのなら、今回のルートをおすすめしたい。

 

行き先は、釈迦ヶ岳と三池岳である。

そのふたつのピークを結ぶ鈴鹿県境稜線は、シロヤシオを回廊のようになる。

今回は八風キャンプ場を起点とした周回コース。

曇り空だったのは残念だったが、満開のシロヤシオを楽しんで来ることができた。

岩ヶ峰尾根、イワカガミロードで釈迦ヶ岳

7:00 八風キャンプ場(登山開始)

菰野町の八風キャンプ場を過ぎて、ぽつぽつとある路肩に駐車スペースに車を停めてスタート。

釈迦ヶ岳への登りに使うルートは岩ヶ峰尾根である。

数年前までは破線ルートだったと記憶しているが、今はちゃんと実線になっているようだ。

八風キャンプ場の前にある橋のところから林道に入る。

林道を数分歩くと左側の岩に「釈迦ヶ岳」の目印がある。

この先で沢に出て渡渉があるが、この日は特に問題はなかった。

 

 

取り付きは杉林の急登だが、尾根に乗っかると比較的緩やかになる。

踏み跡も明瞭で、迷うことはないだろう。

 

ヤマツツジが綺麗に咲いていた。

岩ヶ峰尾根はところどころで小さなアップダウンを繰り返し、高度を上げて行く。

いかにも鈴鹿っぽい花崗岩のザレ場も何度か通過する。

 

視界が開けて、三池岳に続く県境稜線が見えた。

天気は思ったほどは晴れてくれず、高曇りだ。

 

 

陽射しがあれば新緑ももっと映えるのだが。

それでも、静かで気持ちのいい山歩き。

 

 

正面の丸いピークが岩ヶ峰だと思う。

左奥のピークが釈迦ヶ岳だろうか?

 

 

足元にはイワカガミがたくさん咲いていた。

イワカガミロードと名付けたいぐらいの数だった。

岩ヶ峰尾根は岩登り要素が随所にあり、なかなかアスレチックなコースだった。

特別に危険な箇所はなかったが、下りにはあまり使いたくない感じだった。

 

 

今回の山行の目当て、シロヤシオの花が見られるように。

イワカガミと合わせて、花を楽しみながら登ることができた。

 

このイワカガミはピンク色が一段と濃い。

反対に色の薄い個体も。

8:35 岩ヶ峰

岩ヶ峰のピークはシャクナゲの木に囲まれていて、ここで小休憩。

 

 

岩ヶ峰を少し過ぎたところに、見晴らしのいい花崗岩のピークがあった。

天気は変わらず、晴れ間を見ることはできない…

 

 

岩ヶ峰からは一旦軽く下って、県境稜線に向かって一気の急登となる。

ここはなかなかきついところ。

 

 

シャクナゲの花が新緑の背景に映える。

 

 

最後は足掛かりのほとんどない急斜面をロープ頼りに登ると、不意になだらかな県境稜線に飛び出す。

ここから釈迦ヶ岳へは、あと10分ほどである。

ちなみに、岩ヶ峰尾根の分岐に標識はなかったので、下山で利用する場合は要注意。

 

 

濃尾平野を見渡せたが、霞んでいて遠くは判別できなかった。

 

 

県境稜線には期待通りにシロヤシオがたくさん咲いていた。

ただ、風が強くて撮影には苦労する。

 

 

そうきつくない登りをこなして、釈迦ヶ岳の山頂はもう少し。

 

 

9:10 釈迦ヶ岳

スタートから2時間と少しで最初の目的地となる釈迦ヶ岳に登頂。

東側は大きく開けていて、気持ちのいい眺望が得られる。

釈迦ヶ岳鈴鹿セブンマウンテンに数えられる一座である。

岩ヶ峰尾根では誰にも会わなかったが、おそらく朝明渓谷からの登山者が数人いた。

 

県境尾根で三井岳へ、満開のシロヤシオの下を行く

釈迦ヶ岳で少し休憩した後、折り返すように県境稜線を辿って三池岳を目指す。

心配した風もなんとか大丈夫そうで、快適な稜線歩きが始まる。

 

 

稜線はとにかくシロヤシオでいっぱいだった。

陽射しと青空がないのが残念だが、それでも清楚で可憐な花が愛くるしく思える。

 

 

三池岳まで続く稜線を眺めて。

釈迦ヶ岳から一旦、大きく下った後は比較的なだらかなアップダウンを繰り返す。

 

東側は大きく崩壊している箇所も。ルート上は問題ない。

花の中心の斑模様がピンク色で、ちょっとお洒落な感じのシロヤシオ

 

 

南峠という小さなコルを過ぎたあたりに、知る人ぞ知る仙香池という池がある。

稜線のルートからは逸れた西側にあるそうで、これは見ておかなければ。

標識などはなく、ここかな?こっちかな?という感じで、見つけることができた。

薄い踏み跡があったが、知らないと通り過ぎるだろう。

 

 

ひょうたん型でそこそこ大きさがあったが、雨上がりで普段より大きくなっているかも知れない。

新緑の木々が水面に映り込む静寂の空間。

なんだか落ち着く雰囲気のある場所で気に入った。

紅葉の時期なんかにも来てみたくなる。

仙香池を後にし、小さな仙香山を過ぎると三池岳がだいぶ近づいて来た。

 

 

仙香山からすぐに中峠に到着。

稜線を行き交う登山者はさほど多くなく、静かな山歩きが続く。

 

 

中峠から上がったところにある花崗岩の巨石。

「The rest rock」なんてお洒落な名前が付いているようだ。

岩の上に乗って、釈迦ヶ岳から歩いて来た稜線を一望。

これはいいインスタスポットとなりそう。

The rest rockのすぐそばに「左:北仙香山、右:八風峠」の分岐があって、左に進むと数分で北仙香山のピーク。

そのまま県境稜線のコースに通り抜けで戻れると思ったら、行き止まりだった。

 

北側に竜ヶ岳が良く見通せたので、良しとしよう。

県境稜線は開放的な区間が多くて、歩いていて気持ちがいい。

 

 

10:50 八風峠

八風峠まで来れば、三池岳はもう目前である。

ここは素通りして、一気に山頂を目指す。

 

 

八風峠を過ぎるとこの日、一番のシロヤシオに出会った。

まさに鈴なりに咲いている。

 

 

紅く縁取られた葉っぱも可愛い。

惜しむらくはこの天気で、やはり青空のもと白く輝くような花を見たかったな。

 

 

もうひと登りで三池岳。

山頂は小さなピークが三つって感じになっている。

 

 

11:00 三池岳

釈迦ヶ岳から1時間半で三池岳に到着。

ここからさらに少し進んだところに三角点があって、そちらが最高点だが、今回はここを最終目的地とする。

 

 

山頂からは歩いて来た県境稜線を見通すことができた。

景色が良くて、歩きやすい、おすすめのルートだった。

稜線の後ろ側に見えているのは御在所岳や雨乞岳だろうか?

 

 

さてさて、ランチの時間である。

今回のメインは岐阜の郷土料理「鶏ちゃん(けいちゃん)」。

スーパーで味付き肉を買って来た。

野菜に味が染みて美味しい。

今回は醤油味だったが、他に味噌、塩味など色々あるので、また試してみたい。

 

デザートはワッフル。コンビニだけど。シロヤシオの花を添えて。

下山の八風街道、古道に想いを馳せる

下山は一度、八風峠まで戻って、かつて近江と伊勢を結んでいた古道の八風街道を下る。

山頂から直接、キャンプ場方面に続く尾根道というルートもあるが、地形図からだとそちらの方が急な下りみたい。

 

 

八風峠の鳥居。

織田信長も京からの帰路でここを越えたとのこと。

 

八風キャンプ場に向けて降下開始。

道は緩やかで、どことなく古の道を感じることができる。

 

鮮やかなヤマツツジ

坂中の地蔵。

石畳ぽいところもあって、当時の往来に想いを馳せてみたり。

 

 

八風街道を下って行くと沢音が大きくなって、栗木谷に出合う。

 

清い流れを何度か渡渉して進む。

河原を歩いて、道はやがて荒れた林道になる。

 

 

三池岳から1時間半で八風キャンプ場に下山となった。

 

あとがき

シロヤシオ鑑賞がメインだった今回の山行。

期待通りに満開だったが、できれば曇り空でなく、やはり青空がほしくなってしまった。

それでも、回廊のように咲き誇るシロヤシオを愛でながらの稜線歩きは楽しかった。

 

釈迦ヶ岳と三池岳の間の県境良稜線を歩く時は、ぜひ仙香池にも立ち寄ってほしい。

登山道からは見えない位置なので、ちょっとした”宝さがし”感も味わえるし。

いっそう静かな時間が流れる空間で、ゆったりと鈴鹿の自然を感じられるので。

 

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<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)