稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

入道ヶ岳・鎌ヶ岳 - 険しい鎌尾根を越えて、アカヤシオはどこへ?

入道ヶ岳・鎌ヶ岳:山登りの記録

 日程:2022. 4. 30(日帰り)

 天候:晴れ

コースタイム

 宮妻峡 6:20 → 入道ヶ岳 8:05 - 8:20 → イワクラ尾根分岐 9:45 → 水沢岳 10:25

 → 岳峠 12:00 → 鎌ヶ岳 12:20 - 13:20→ 岳峠 13:30 → カズラ谷分岐 13:55

 → 宮妻峡 15:15

 登山時間:8時間55分(歩行距離:10.8km)

Introduction:鎌尾根縦走とアカヤシオを楽しむ

鈴鹿槍ヶ岳とも呼ばれ、尖った鋭鋒が遠くからでも目立つ鎌ヶ岳

笹原の草原が広がり、眺望が素晴らしい入道ヶ岳

どちらも登ったことがあるが、いずれもう一度、訪れたいと思っていた。

 

理由のひとつが、このふたつの山を繋ぐ「鎌尾根」の存在だった。

鎌尾根は鈴鹿の県境尾根の中でも特に険しい区間である。

岩場のアップダウンや痩せ尾根が続き、眺望も良く、アルペン的な雰囲気が楽しめそう。

この時期だと山肌をピンク色に染めるアカヤシオの花も楽しみになる。

 

今回のルートは次のような感じ。

起点は宮妻峡である。

そこから入道ヶ岳に登って、そこからイワクラ尾根を経て県境尾根へ。

水沢岳を越えると鎌尾根に入り、鋭峰・鎌ヶ岳を正面に見ながらの縦走となる。

鎌ヶ岳に登頂後、下山はカズラ谷のルートで宮妻峡に戻る周回コースである。

新緑降り注ぐ宮妻新道、好展望の入道ヶ岳へ

スタートの宮妻峡へ向かう途中、今回登る鈴鹿の山並みが見えた。

入道ヶ岳(左側のピーク)はクリア。

鎌尾根、鎌ヶ岳には雲が掛かっているが、予報からすれば、直に晴れるだろう。

 

 

6時に宮妻峡キャンプ場の駐車場に到着。

GWとあって、すでに10台ぐらい停まっていた。

 

 

6:20 宮妻峡(登山開始)

準備を整えたら最初の目的地、入道ヶ岳に向けて出発。

バンガローの並ぶキャンプ場を抜けると、宮妻新道の登山口がある。

入道ヶ岳には反対側の椿大神社から登るのがメジャーなので、こちらはひっそり。

静かな山登りが楽しめそうだ。

 

 

すぐに沢をふたつ渡る。

ひとつ目は問題なかったけど、ふたつ目が… この山行の核心部だった…

前日の雨のせいか、かなり水量が多い。

飛び石で岩伝いに行こうとするも、どれも一歩足りない。

最初から濡れたくないので、ここは潔く靴を脱いで渡渉した。

 

 

渡渉し終わって、靴を履きながら眺める宮妻峡の流れ。

新緑のモミジが眩しい。

 

 

無事に宮妻峡を渡るとすぐに登りが始まる。

なかなか急登で、一気に息が上がる。

 

 

尾根に上がると、登りは幾分緩くなる。

新緑の木々がトンネルのようで気持ちいい。

 

 

見上げれば、若葉色の葉っぱたち。

陽に透けてモザイク模様を作り、キラキラと揺れている。

 

瑞々しい春の色。

「山笑う」とはこのことかも。

木々が切れたところで、これから歩く鎌尾根を見渡すことができた。

結構歩きがいがありそうだ。

雲もちゃんと晴れて来てくれた。

 

 

若いブナたちの新緑が清々しい。

 

 

道に白い花が落ちていて、見上げると…、ん?シロヤシオ

アカヤシオを見に来たはずなのに、時期が早すぎないか??

ちょっとうつむき加減で、なんだか恥ずかしがっているかのように咲く姿が可愛らしい。

 

 

このあたりは古道感があって好きかも。

宮妻”新道”ではあるんだけど。

 

 

鎌ヶ岳の後方の御在所岳もガスが取れて来た。

ロープウェイの鉄塔も白く輝いている。

 

 

不意に樹林帯を抜けて、背の低い笹原の広がる風景に飛び出す。

 

 

広々とした笹原の斜面の向こうに、鎌ヶ岳まで伸びる鎌尾根を一望。

これは最高の一言。

絶対に晴れた日に歩きたいと思って、ずっと温めておいて良かった。

 

 

北の頭で入道ヶ岳登山では最も一般的な椿大神社からの北尾根ルートとの合流する。

宮妻新道は変化があって、色んな景色が楽しめるのでおすすめできるルートだった。

 

 

鎌ヶ岳が大きく聳える北の頭での眺望。

あそこまで歩いて行くのが楽しみ。

でも、なかなか遠くに見えるので…、やや不安な気持ちにもなる。

 

 

ここまで来ると入道ヶ岳の山頂はもうすぐ。

白い鳥居が立っているのが見える。

 

鈴鹿の街と伊勢湾を眺めながら山頂へ。

8:05 入道ヶ岳

スタートから2時間弱で入道ヶ岳に到着。

思いっ切り逆光だったが、おかげで神々しい鳥居が撮れた。

入道ヶ岳は椿大神社御神体そのものであり、古くから信仰されて来た山である。

まだ人影のほとんどないこの場所に立つと、なんだか神聖な気持ちになれた。

シンボリックな鳥居の建つ入道ヶ岳の山頂。

山頂は草原になっていて、鈴鹿四日市を一望する展望台である。

この好展望も入道ヶ岳の特長で、最高に気持ちがいい。

 

 

やや霞んではいるものの視界は比較的クリア。

恵那山、中央アルプス御嶽山などまで見えた。

 

御嶽山乗鞍岳

イワクラ尾根から鎌尾根へ、アカヤシオを探しながら

入道ヶ岳で小休憩した後、次は鎌ヶ岳を目指す。

まずはイワクラ尾根に進み、鈴鹿山脈の主稜線である県境尾根に向かう。

 

 

広々とした入道ヶ岳の山頂を通り抜けて行く。

どこかの公園の写真といっても信じてしまいかねない開放的な空間。

2時間で登って来れるなら、ここでランチ会や昼寝でゆっくり過ごすのもいいかも。

 

 

入道ヶ岳と言えばアセビの花も名物のひとつ。

もう終盤ではあったが、少し残ってくれていた。

 

 

のんびりハイキング気分から一転、イワクラ尾根に入ると道は険しくなる。

 

 

イワクラ尾根では花たちが心地よい春を彩ってくれていた。

特に足元にはイワカガミがたくさん。

 

色鮮やかなミツバツツジも。

ここにもシロヤシオが咲いていた。

イワカガミの名前のとおり、葉っぱが鏡みたいに輝いている。

イワクラ尾根は思っていた以上にハードな道のりだった。

細かいアップダウンが続き、そのひとつひとつが急なのである。

岩場を越えて行くようなところもあり、ここで体力を使った。

 

県境尾根の合流までもうすぐ。

正面に見えるのは水沢岳である(地図だと宮越山の表記も)。

稜線まで新緑が上がって来ていて、気持ちいい。

 

 

入道ヶ岳から1時間ほどで県境尾根に入り、まずは水沢峠へ向かう。

基本は木々の茂る稜線だが、途中、ザレ場もあった。

 

 

水沢峠を過ぎて、ザレ場から入道ヶ岳と歩いてきたイワクラ尾根を見渡して。

 

 

10:25 水沢岳

水沢峠から水沢岳は距離は短いが、なかなか急な登りだった。

こういった感じで、徐々に体力を奪われていく。

 

 

水沢岳を過ぎると、いつの間にか鎌ヶ岳が大きく近づいていた。

ここからが鎌尾根と呼ばれている区間になる。

険しいアップダウンが続くので、気を入れなおす。

 

 

水沢岳からすぐに「キノコ岩」に出る。

眺めはいいが、花崗岩のザレた斜面はなかなか滑りやすく、慎重に下って行く。

 

 

キノコ岩を下り切って振り返ると丸い岩がニョキニョキと。

これがキノコに見えるってことなのだろう。

 

 

キノコ岩を過ぎるとしばらくは平和な道となる。

明るい稜線は歩いて気持ちがいい。

 

街と海を眼下に見ながら。手前は雲母峰。

このあたりはハルリンドウがたくさん咲いていた。

 

 

それにしても、アカヤシオが全然見当たらない。

登山道に落ちている花は多いので…、前日の強雨でみんな吹き飛ばされたのでは?と心配になって来た。

 

そんなことを考えながら歩いているうちに、鎌尾根の核心部に入ったようだ。

岩場のアップダウンを何度も越えて行くことになる。

正面のピークの下部が衝立岩である。

写真だとかなり険しいが、ここは左側を巻くように道が付いて危険はない。

 

 

息を切らしながら登って行くと、やっとアカヤシオが見られるように。

ちゃんと咲いていてくれて嬉しい。

花数はそれほど多くはないが、濃いピンクの花が青空に映える。

 

 

衝立岩を登り切ったピークからは広々とした眺望が得られた。

雨乞岳とイブネが大きく見える。

 

 

ここにだけシャクナゲが咲いていた。

 

 

鎌ヶ岳がだいぶ近づいて来た。

鈴鹿の槍” と言われるだけあって、しかっり尖っている。

景観とは反対に、しばらくは穏やかな道で岳峠を目指す。

 

 

ここのアカヤシオは見事だった。

少し陽に透けて淡いピンク色になった花も好き。

 

 

岳峠の少し手前にまたちょっと険しい岩場が出て来る。

アップダウン続きで疲れて来たが、鎌ヶ岳はもう近いので頑張って行こう。

 

鎌ヶ岳の山頂へ、悪魔的な様相を見せる鋭鋒

小さな岩のピークに達すると、鎌ヶ岳山頂部の全容が目に飛び込んで来る。

ガレガレで斜めに鋭く割れた岩壁。

なんだか近寄りがたい雰囲気を放っていて、ちょっと圧倒される。

それでもそんな姿が格好いい。

 

 

先に進むとちょっとだけ鎖場があるが、難しいことはない。

 

 

岳峠手前のピークに上がって、あとは鎌ヶ岳の本体を残すのみ。

写真だけ見ると、こんなの登れるの?と思ってしまうが、ルートは右側の沢状のところに付いている。

 

 

12:00 岳峠

鎌尾根最後の鞍部である岳峠を通過して、最後の登りに掛かる。

ここは気合を入れて行こう。

 

 

大小の岩で埋もれる沢を詰めて行く。

その先にもう2段階、急な短い岩場をクリアすれば山頂である。

 

 

最後の登りは息も絶え絶えだが、岩場に咲くタチツボスミレに励まされて。

 

 

12:20 鎌ヶ岳

そして、やっと鎌ヶ岳に登頂。

入道ヶ岳から4時間だった。

山頂は武平峠や湯の山方面から登って来た登山者で賑わっていた。

 

 

山頂は鋭鋒だけあって、なかなか開放的な眺望である。

正面には横に長い御在所岳が目の前に大きく見える。

 

 

こっちは名古屋方面の眺望だが、だいぶ霞んで、遠方の山々を判別するのは難しくなった。

 

 

反対側には、入道ヶ岳から歩いてきたイワクラ尾根と鎌尾根。

歩きごたえ満載だった。

疲れたけど、いいトレーニングにもなったかな。

 

 

御在所岳の左側には、大きい谷を挟んで向こうに雨乞岳

 

 

この景色のいい岩の上でランチとした。

今回のメニューはカップヌードルカレーに御飯を入れて炒めたチャーハン。

ちょっと話題になっていたのでやってみたが、これが美味しい。

簡単なので、色んな味を試してみたくなった。

付け合わせにキュウリとミニトマトのナムルも。

デザートは端午の節句が近いので柏餅。

昼休憩後、下山を開始する。

ちょうど人が少なくなったので、改めて山頂看板を撮りなおす。

 

 

すでに足に来ているので、岳峠までのガレ場を慎重に下る。

正面の鎌尾根はなかなか険しく見える。

 

 

岳峠のあたりは分岐が入り組んでいるので、少し注意した方がいい。

まず長谷谷のルートが分岐、その先の岳峠で雲母峰、カズラ谷への分岐がある。

本来はここを曲がれば良かったのだが、宮妻峡の文字がなかったのでスルー。

ひとつ目の鎌尾根のピークを上がったところにも分岐があり、そちらからでも問題ないが、無駄に登ることになった…。

行きでここに宮妻峡の看板があるのを確認していたので、勘違いしてしまった。

まあ、おかげで、もう一度、迫力のある鎌ヶ岳を眺めることができたが…

 

 

15分ほどで雲母峰とカズラ谷の分岐。

宮妻峡へはカズラ谷を下る。

 

 

足元には身を寄せ合うようにハルリンドウ

 

 

カズラ谷ルートは落ち葉がたくさん積もっていて、これが滑る滑る。

疲れた足にも厳しい…

とはいえ、道はしっかりしており、順調に下って行く。

 

 

カズラ谷分岐から1時間ほど淡々と下るとカズラ滝

大きくはないが、前日の雨のせいか水量は多く、まずまずの迫力があった。

 

 

新緑の木漏れ日が落ちる沢の流れ。

カズラ谷を2回渡渉して、キャンプ場に続く林道に出る。

 

 

宮妻峡の駐車場に戻ってゴール。

 

あとがき

今回の入道ヶ岳、鎌ヶ岳の周回コース、なかなかの歩きごたえがあった。

鎌尾根はアルペン雰囲気満天。

落ちてしまう様な危険箇所はないものの、しっかり岩場歩きが楽しめた。

何より、少しずつ近づいて来る鎌ヶ岳が気分を盛り上げてくれる。

 

迫力のある風景も、新緑も、花も、色々と変化があって退屈することはなかった。

アカヤシオはなかなか登場せず不安になったけど、最後はちゃんと咲いてくれていて、これも期待どおり。

 

最後は疲れたけど、夏山に向けてもしっかりいいトレーニングになっただろう。

 

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<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)

 

藤原岳 - 花盛りの孫太尾根を登って、福寿草に会いに

藤原岳:山登りの記録

 日程:2022. 4. 9(日帰り)

 天候:快晴

 

コースタイム

 孫太尾根登山口 6:40 → 丸山 7:45 → 草木 8:25 → 多志田山 9:15

 → 藤原岳 10:00 - 11:00 → 多志田山 11:55→ 草木 12:15 → 丸山 13:00

 → 孫太尾根登山口 14:00

 登山時間:7時間20分

Introduction:花いっぱいの孫太尾根から藤原岳

このシーズンは雪山を休んでしまったので、5ヶ月ぶりの登山。

新緑にはまだ早いので、春の花を探しに行こう、で、選んだのは鈴鹿藤原岳

 

藤原岳石灰岩の山。

山頂部は広々と開けており、石灰岩の浸食でできたカルスト台地が特徴的な風景を作っている。

代表的な登山ルートはふたつ。

三岐鉄道西藤原駅付近を起点とする大貝戸道(表道)と聖宝寺道(裏道)がある。

これ以外にも山頂に至るルートは豊富で、以前の山行では木和田尾から大貝戸へ周回した。

 

今回は南東側に伸びる孫太尾根を登る。

数年前までは破線ルートだったが、近年になって整備されたようで、人気になっている。

道中は春の花で溢れるらしい。

その花たちの中で、今回の主役となるのは福寿草である。

孫太尾根、足元を彩る春の花

登山口を目指して青川沿いに車を走らせると、正面に登る孫太尾根が見える。

藤原岳の山頂は一番奥に少しだけ見えるピークがそれだろう。

 

 

孫太尾根だが、駐車場が少々厄介である。

新町集落の外れに登山口があり、そのそばの墓地の空きスペースが便利だが、どうにもキャパ不足。

そんな中、「喫茶マイハウス」という古民家カフェが地主さんと協力して、春限定で店の前に臨時駐車場を開設してくれている。

ここをありがたく使わさせてもらった。

 

その駐車場の前は、ちょうど桜が満開だった。

 

 

原っぱにはヤギが放牧されていて、しっかりポージングしてくれた(笑

 

 

「マイハウス」は古民家カフェ&雑貨店で、地元猟師のジビエ料理もやっているらしい。

下山後、駐車場のお礼に寄りたかったのだが、この日は営業していなかった…

民家の庭先を抜けて孫太尾根へ。

 

 

6:40 孫太尾根登山口(登山開始)

10分ほどで正規の登山道(墓地前の登山口のすぐ先)に合流した。

序盤からしっかり標高を稼いで行く。

 

 

ひと登りして孫太尾根に乗ると、鈴鹿らしい石灰岩の風景が現れる。

 

 

青川の向こうに竜ヶ岳と藤原岳を結ぶ県境尾根が見える。

帰りは県境尾根の治田峠から青川へ下ることも考えたが、数年前の豪雨で荒れて通行止めになっているとのこと。

 

 

本日最初の花はタチツボスミレ

朝陽を浴びて気持ち良さそう。

1時間でたいぶ登って来た。

桑名方面だと思うが、逆光で眩しい。

 

 

丸山でちょっと休憩。

孫太尾根には真新しい看板が随所にあり、ルート上に不安はなかった。

 

 

丸山を過ぎると一気に花が増える。

まずはミスミソウ(雪割草)。

四方に伸びていて元気。

これはミノコバイモで、絶滅危惧種だそうだ。

花の内側の方が斑紋が濃い。

下向きに控えめに咲く姿が可愛らしい。

ヒロハノアマナは、なんかハワイ語みたいな名前(笑

 

 

孫太尾根に新緑はまだない、木々の間から青空が覗いて気持ちのいい山登り。

 

 

向かいの山肌は石灰石の採掘でこのような姿。

自然と文明の対峙、と言っては大袈裟だろうか。

こんな形でも山の恵みをもらっているんだな。

 

 

木々が開けて藤原岳の山頂が見えた。

まだまだ距離はある。

 

 

孫太尾根はいくつかピークがあって、数ヶ所では巻き道が付けられている。

どのピークも眺望があるわけではないが、行きはなんとなくすべてのピークを踏んで行くことに。

 

 

「草木」はそのピークのひとつ。

ちょっと面白い名前だが、由来は字の通り「草や木がたくさん生えている」ってことなのだろうか??

 

 

明るい尾根道を行く。

 

 

多志田山に近づくとまだ残雪があった。

木々の間から藤原岳のピークも見える。

 

 

存在感のあったブナの巨木。

新緑を待って、今は力を蓄えている感じ。

 

頭上には宿り木。

多志田山の登りに掛かる前の穏やかな尾根道。

新緑や紅葉の時期にも歩いてみたくなる道である。

 

小さな小さな芽吹き。

多志田山から藤原岳、春を謳う福寿草たち

9:15 多志田山

スタートから2時間半で多志田山に到着した。

藤原岳の手前、最後のピークで、ここで県境尾根と合流となる。

 

 

ここで小休止。

最近のお気に入りはナッツとじゃがりこトレイルミックス

 

 

多志田山からは少しだけ雪道を歩く。

雪山シーズンを休んでしまったので、久しぶりの雪を踏む感覚がなんだか楽しい。

 

 

藤原岳に向けて、もうすぐ最後の登りを迎える。

遠目から見ると結構きつそう。

でも、あの斜面で福寿草が待っている。

 

 

登りに入るとセツブンソウを発見。

小さくて可憐な花だ。

 

 

そして、石灰岩の混ざる急斜面を登って行くと…

 

 

いよいよ福寿草の登場である。

春の陽を浴びて輝くように咲く福寿草

やっぱりこの黄色には元気をもらえる気がする。

 

身を寄せ合うように咲く姿が可愛い。

横顔も素敵。

みんなで上を向いて、春を謳う。

まだ少し眠たい感じ?

最後にてるてる坊主と記念撮影。

色んな表情の福寿草に出会えて、なんだか温かい気持ちになれた。

 

 

藤原岳山頂、広々と続くカルスト台地

福寿草の咲く急斜面を抜けて、眺望が開ける。

背後には竜ヶ岳と、そのさらに奥には御在所岳や雨乞岳の姿が。

 

 

この石灰岩の斜面を登り切れば、山頂のカルスト台地が待っている。

 

 

山頂部に乗り上げると、広々と平らなカルスト地形が続いていた。

遠くの眺望は春霞で見えなくて、ちょっと残念。

 

 

藤原岳のピークにたくさんの人が見える。

孫太尾根はそれほどでなかったが、圧倒的に大貝戸から登って来る人が多い。

 

 

10:00 藤原岳

スタートから3時間半で藤原岳に登頂した。

看板の背景には御池岳が見える。

 

 

山頂は人が多いので、少し先まで進んで昼休憩とすることに。

正面は藤原山荘方面に広がるカルスト台地

 

 

その奥には霞んでしまっているが、伊吹山

 

 

御池岳と天狗岩を見渡せるこの場所でランチにする。

ちなみに天狗岩の方がこちらよりも標高が30mほど高く、藤原岳の最高点になっている。

 

 

腰を下ろそうとしたら、周囲には可愛らしいセツブンソウが咲いていた。

踏まないように気をつけないと。

 

 

本日のメニューはサラダチキンとネギの参鶏湯(サムゲダン)。

写真では見えていないけど、もち麦も入れている。

市販のスープを使ったが、めちゃ美味しかった。

 

デザートは春なので苺大福。

下山の孫太尾根、春の花を見つけながら

昼休憩の後、ピークに戻って下山開始。

県境尾根はところどころ残雪が見えていて、今シーズはかなり雪が多かったようだ。

いつか竜ヶ岳からのルートを繋いでみたい。

これから下る孫太尾根を見下ろして。

 

 

再び福寿草の群生地に。

急斜面で頑張って咲いている。

少し寝坊してしまった、みたいな福寿草

福寿草に混ざって、ヒロハノアマナたちも。

なんか ”五戦隊” みたいに、きれいに隊列を組んでいた。

 

孫太尾根は “難路” と記されているが、整備が進んで特に危険な場所はなかった。

花がたくさんで、春はおすすめのルート。

 

 

藤原岳に別れを告げて。

 

 

帰りは予告どおり?巻き道をふんだんに使って、少しでも楽をする。

花を探しながら行こう。

 

起きかけのミヤマカタバミ

ミヤマカタバミヒロハノアマナの競演。

タチツボスミレの群落があった。

セントウソウ。小さすぎて、ピントを合わせるのが難しい。

スハマソウ?かな。

ミヤマカタバミ

丸山を過ぎて、あとは淡々と下る。

5ヶ月ぶりの登山で、だいぶ足と膝がやられている…

 

 

カタクリが少しだけ。

ヤマザクラ

3時間で「マイハウス」前の駐車場に帰還した。

綺麗に咲くしだれ桜が出迎えてくれて、今回の山行はお終い。

 

あとがき

孫太尾根はまさに花盛り。

随所で春の小さな花がたくさん咲いていた。

主役の福寿草は、寄り合い咲く姿、上を向いて春を謳うような姿、どれも可愛くて元気を分けてもらえた。

 

大貝戸からのルートよりも静かで、花いっぱいの孫太尾根。

ぜひ春の藤原岳登山におすすめしたい。

 

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<参考>

・ ヤマレコ:山行記録(登山地図など)


・ マイハウス(MY HOUSE):カフェ、ジビエ料理、雑貨などを扱うお店。春には登山者向けに臨時駐車場を開放してくれている。

 

【街歩き】常滑 - 春の風に吹かれて煙突さがし

Introduction:常滑ぶらり、やきもの散歩道

 日程:2023.4.16

 天候:晴れ

 

この週末は鈴鹿の国見岳に登ってアカヤシオを愛でようと思っていた。

土曜は春の嵐で雨降り。

明けた日曜も抜けて行った低気圧が発達して、これは冬型の気圧配置に近い。

こうなると鈴鹿の稜線は風が強そうだし、青空も怪しくなって来る。

 

泣く泣く山行を中止にし、代わりにたまには街歩きでもしようかな。

と、思い立った行き先は常滑である。

知多半島の真ん中あたり、セントレアの対岸に位置するこの街は焼き物(常滑焼)が有名。

今はもう使われていないが、レンガ造りの煙突が点在し、古い街並みが残る。

狭い路地を繋いだ「やきもの散歩道」が整備されているので、ここをゆっくり巡ろう。

とこにゃんに挨拶、煙突さがしのスタート

名鉄に揺られて降り立った常滑駅

名古屋からはセントレア行きの特急に乗れば30分ぐらい。

 

 

駅前にあったやきもの散歩道の案内板。

駅から東に10分ほど行った ”陶磁器会館” をスタートに、1.6kmのコースが設定されている。

いくつかの名所を辿りながら、曲がりくねった路地を行く一周コースである。

今回はコースに拘らず、気ままにぶらりと行くつもり。

 

 

「いってらっしゃい」と、招き猫に見送られてスタート。

常滑では、あちらこちらで招き猫を見かける。

東に向かって切通しになっている緩やかな坂道を登って行く。

やがて頭上の高いところに掛かる北山橋をくぐる。

左手に細い急坂の路地があるので、これをエイっと登るとさっきの橋の袂に出る。

そこに現れるのは…

 

 

なかなかの圧を感じる巨大招き猫。

その名を「とこにゃん」という。

”見守り猫” らしく、この街の安全と平和を守っているようだ。

顔の下にはライトが設置されているので、夜には光るのだろう。(ちょっと怖そう…)

 

とこちゃんに挨拶を済ませたら、煙突さがしのぶらり散歩のスタート。

早速、ひとつめの煙突を発見。

建物に挟まれるように立つ煙突だった。

このあたりには陶器作りの工房が点在して、味わい深い雰囲気がある。

 

 

陶器を扱うギャラリーもたくさんで、中には陶芸体験ができるところもあるようだ。

古民家を使っているのだろうか、しっとりと趣のある佇まい。

 

 

 

ギャラリーのひとつに入ってみる。

柔らかな春の陽射しで、作品のひとつひとつが温かみのある優しい色合いに。

 

端午の節句が近いので、陶器の鯉のぼりもあったり。

見上げれば、屋根の向こうに煙突みっけ。

 

 

煙突の袂に、遊び心に溢れるオブジェ。

この時は ”急須猫” 探してやろう、と思っていたけど、すぐにすっかり忘れる(苦笑

 

 

そして、そばにはツルニチニチソウが咲いていた。

 

猫を追いかけて、デンデン坂、土管坂

細い路地に入ってずんずん進むと、横から出て来た猫さんと鉢合わせ。

しばらく対峙した後、くるりと向きを変えて反対方向に進む猫を追いかけて奥へ。

 

 

 

散歩中、他にもたくさん猫を見かけた。

そうそう、この常滑はアニメ映画「泣きたい私は猫をかぶる」の舞台である。

ファンタジー系の切ない恋の物語で、自分的には好きな世界観だったし、ヨルシカの曲も良かった。

コロナで劇場上映が中止になり、代わりにNetflixで公開された作品。

今でもNetflixで配信されているので、観たことない方はぜひ。

 

・ 泣きたい私は猫をかぶる:常滑が舞台の切ない青春ストーリー

陶磁器会館にはロケ地マップと巡礼ノートがあった。

人がすれ違うのにも少し気を遣うような狭い路地を進んで行く。

このあたりには古民家カフェがたくさんあって、これらを巡るのも楽しそう。

左側は子供たちの作った焼き物の絵画かな?

常滑の街では色んなところに陶器が使われていて、それだけで味がある。

日常に馴染んでいて、どこも落ち着きのある風景を作っていた。

 

 

右手から登って来る坂はデンデン坂

この坂の途中には廻船問屋瀧田家があって、船が入って来た時にでんでん太鼓で伝えたのが名前の由来、という説がある。

ちなみ、この坂を下から登って来るのが正規コース。

廻船問屋瀧田家は今回はスルー(¥200)

デンデン坂はかなりの急坂。

片側の壁は古い焼酎瓶が敷き詰められて並んでいて、常滑らしい風情があった。

 

誰かが椿の花を飾っていて、なんだかお洒落に。

坂の下まで下って行くと、民家の軒先にノースポールが咲いていた。

春の陽を受けて、背伸びしている感じに見える。

背後のトラの置物も気になる。

デンデン坂を登り返して、もと来た道を少し行くと、今度は土管坂に出会う。

左右の壁には土管(明治期)と焼酎瓶(昭和初期)が積まれている。

路盤の丸い模様は、土管を焼成する時に使った “ケサワ” という焼台なのだそう。

左右、足元を常滑焼に囲まれた空間は、どこかノスタルジック。

 

ちょっとだけスーパーマリオを思い出した(笑

土管坂の前にある公園にはネモフィラが咲いていた。

土鍋のカレーうどん&カメラで溢れるカフェ

やきもの散歩道はこの先、登窯などのある一番南側の地区に向かう。

しかし、ここは土管坂を登って、一旦ショートカット。

ランチとして目星を付けていたカフェに向かうことにした。

 

やきもの散歩道の駐車場をかすめて北上すると、煙突や窯跡が点在するエリアへ。

ひと際目を引く、背の高い煙突が一本。

 

 

こっちは窯と隣接する煙突。

蔦の絡んだ様がレンガと馴染んで、これまた情緒的な風景である。

 

 

朽ちて行きそうな窯には部分的に光が当たって、どこか物悲しさも感じる。

 

てるてる坊主たちの記念撮影。

この窯の裏手に回ると、とてもいい雰囲気の長屋が現れる。

ケヤキから落ちる木漏れ日が心地よい空間である。

この長屋、もとは土管工場だったらしい。

ここにある侘助が本日のランチと決めて来た店である。

 

 

11時開店の5分ほど前だったが、すでに先客もあり入れてもらえた。

甘味処ではあるのだが、うどんもやっており、「土鍋カレーうどんが気になって、この店を選んだ。

かき氷などの甘味も気になるが、今日のところは…

味わいと落ち着きのある佇まいの店内。

やがて運ばれて来たカレーうどんは、土鍋の中でグツグツとしている。

当然の如く熱々で、出汁がしっかりと香るカレーが美味しい。

うどんはあまり見慣れない半透明のもので、モチモチしていて、カレーに良く絡む。

 

 

初めからすごく辛いってことはないけど、途中で温泉卵を入れてマイルドに。

そして、最後には残ったルーの中に御飯を投入して、カレーおじや風にして〆る。

いやはや満足。

 

 

侘助:甘味とうどん。名物「土鍋カレーうどん」はおすすめ。


お腹も満たされて、散策を再開。

侘助の向かいには、陶器や籠の雑貨を扱うスペースもあった。

 

 

ギャラリーや工房の集まるエリアに向かうと、ちょっと面白い煙突が。

木が煙突から突き抜けて生えている。

これが今回の煙突探しで、一番個性的な一本かな。

 

 

ぶらぶら歩いていると、「Kyoto Cafe 写真展」と小さな看板が出ているギャラリーを発見。

気になって入ってみることに。

ここも古民家を改装したギャラリーカフェのようで、SUGI CAFE」という名前。

急な階段が掛かっており、2階によじ登る感じで、いかにも隠れ家的。

 

 

カフェの営業は12時からのようで、まだ時間前。

でも、ギャラリーの方は勝手に入れる感じだったので、お邪魔しちゃう。

 

窓際に飾ってあったモノクロの写真。

真っ暗だけど、こういう演出なのかと思った(苦笑

窓から差し込む光でできた明と暗がいい。

おそらく板張りの床が軋む音を聞いて、カフェのご主人が来て、ライトを付けてくれた。
「カフェの中にも写真があるので、ぜひ見て行ってください」と。

 


ギャラリーの写真をぐるっと見させてもらって、今度はカフェの方へ。

店内は写真だけでなくで、カメラがたくさん。

どれもフィルムカメラで、聞けば、家にまだまだいっぱいあるとのこと。

 

ご主人のこだわりを感じる空間。

食後の珈琲をいただいて行くことに。

クラシック音楽が流れ(たぶんめちゃいいスピーカーで高音質)、ゆったり珈琲を待つ。

 

カメラってインテリアとしても秀逸。
エチオピアモカ。すごくいい香り。

珈琲を飲み終わったら、物腰の柔らかいご主人とちょっとカメラの話を。

フィルムの魅力を教えてもらったり、自分は普段は山で写真を撮ってる話をしたり。

見つけたのはたまたまだったけど、居心地が良すぎるカフェだった。

常滑に来る機会があったら、再訪は確定的である。

 

SUGI CAFE:クラシック音楽とカメラで溢れる居心地のいい空間。

登窯へ、風景に馴染む煙突たち

すっかりゆっくりとしてしまったが、まだまだ煙突さがしは続く。

やはり一本一本、みんな違う表情を持っていて、見つける度になんだか嬉しくなる。

 

小高い丘にあって、森の中に立つように見える。

昔の陶器工房そのままって感じ。

昼前にショートカットした登窯のある地区を目指して、ゆるり散歩しながら。

 

「急須 有リマス」

マグカップを買って帰ろうかと思ったが、選び切れなかった…

新緑と春の空に映える煙突たち。

 

木に飲まれて行ってしまいそう。

新緑も鮮やか。

やきもの散歩道の一番南側は、工房やギャラリーが密集していて、ノスタルジックな風景が広がる。

 

 

アイビーに埋もれそうな猫の置物と一緒に。

個性的な作品を扱うギャラリーも多かった。

そして、やきもの散歩道で一番のランドマークと言っていい「登窯」にやって来た。

登窯というのは、斜面を利用して階段状にたくさんの焼成室を並べた大型の窯である。

熱の対流を利用して、炉内温度を高温で一定に保てるように工夫されているらしい。

この陶栄窯は、現存する(昭和49まで使用)登窯では日本最古、最大級だそうだ。

10本の煙突が並ぶ姿は、なかなか壮観だった。

 

みんな煙突の高さが異なるんだけど、なんでだろう?

内部の様子を覗くこともできる。

登窯をぐるっとして、隣の登窯広場へ。

広場の中央には陶器でできた大きなオブジェがある。

ここは「泣きたい私は猫をかぶる」でなかなか重要で切ないシーンで出てくる場所だ。

映画そのままで、ちょっと感動。

 

 

これで、やきもの散歩道はだいたい回れたので、そろそろ煙突さがしもお終い。

駅に戻る途中で、全体が蔦に飲み込まれた煙突があって、これが最後の一本。

 

 

陶磁器会館から駅に下って行くところで、大きな招き猫に見送られて。

 

あとがき

今はもう使われていない古い焼き窯や煙突たち。

切り取り方によっては寂しげでもあるのだけれど、それよりもなんだか温もりを感じた。

そこに根付いている焼き物の文化が、風景に馴染んで味わいとなっているのかな。

 

そういうのが伝わってきて、それがとても輝いて見える。

常滑は、そんな魅力的な街だった。

 

また、ぶらりと歩きに来よう。

 

 

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<参考>

・ とこなめ観光ナビ:「やきもの散歩道」のページにコース地図あり。