稜線に吹く風のむこうへ

その場所だけにしかない風景と出会うために山へ。写真で綴る山登りの記録と記憶。

鹿島槍ヶ岳 - ガスからの逆転、過ぎゆく夏空と十五夜の月(Day2)

<1日目の山行日記> 


2日目の記録

 天候:晴れ 時々 ガス

 冷池山荘 4:40 → 布引山 5:40 → 鹿島槍ヶ岳 6:25 - 6:50 → 布引山 7:20

 → 冷池山荘 8:00 - 8:20 → 爺ヶ岳南峰 9:40 - 9:50 → 種池山荘 10:25 - 10:35

 → 駅見峠 12:05 → 柏原新道登山口 13:00 → 扇沢 13:10

 登山時間:8時間30分

鹿島槍の山頂へ、十五夜の月が残る朝

4:40 冷池山荘(2日目スタート)

鹿島槍の登頂から扇沢への下山を目指す2日目。

ご来光は途中の布引山あたりで見れればいいかな、で、4時半過ぎにスタート。

9月のこの時期だと、日の出は5時半ぐらい。

 

 

歩き始めると、東の空はすでに朝焼け色だった。

そして、眼下には一面、雲海が広がっている。

 

 

夜明け前のブルーモーメントの空に浮かび上がる爺ヶ岳

 

 

立山剱岳は月明かりに照らされて。

日は明けたが、十五夜の月がなんとも美しい。

 

 

一層、明るさを増した東の空。

うねるような雲海もわずかに朝焼けに染まる。

空を貫く雲もいいアクセント。

遠くには富士山と八ヶ岳のシルエットも。

だいぶ明るくなって来た。

鹿島槍には雲ひとつなく、登頂が楽しみである。

 

立山の空もほのかにピンク色に染まり始めた。

その中を間もなく沈んで行く月もやはり美しい。

 

 

鹿島槍の前衛峰になる布引山に向かう。

ここはしっかりと登ることになる。

このあたりは稜線の西側にルートがついているので、日の出を逃すんじゃないかとヒヤヒヤ。

 

 

スタートのタイミングを間違えたかも…

と、ちょっと早足で進むと、鞍部になっているところで、ちょうど朝陽が登って来た。

 

 

立山剱岳は少しだけモルゲンロートになっていた。

 

 

荒々しい岩峰を包み込むように、剱岳にも朝がやって来た。

 

 

布引山に向けて最後の登りになると、南側にも連なる峰々が見えるように。

近くには針ノ木岳蓮華岳

その背後には穂高連峰槍ヶ岳の姿も。

 

穂高槍ヶ岳

5:40 布引山

布引山に立つと目の前に鹿島槍が大きくそこにあった。

山肌が朝陽でオレンジ色に染まっている。

 

 

爺ヶ岳の向こうに、ほんのり朝焼け色の雲海を見下ろす。

 

 

陽の当たる南峰とまだ影になっている北峰のコントラスト。

とても重厚感のある風景を作られている。

 

 

わずかな時間でも明るさがどんどん増して行く。

雲もいい演出をしてくれている。

それでは、鹿島槍に向かって最後の登りに掛かろう。

 

 

剱岳に重なるように "影鹿島槍" 。

太陽を背に受けて、もちろん小さすぎて見えるはずもないんだけど、あのどこかに自分の影も写っていると思うと、その壮大な山の風景に、どこか心昂るものがある。

 

 

南峰に続く最高の稜線を行く。

稜線を挟んで荒々しさと穏やかさが同居する風景。

もっと時間が経つと左側にも陽が回って来て、写真的にはいいんだろうけど。

 

 

山頂が大きく近づいて来た。

 

 

すっかり青空となった立山連峰を横目に登り続ける。

いつの間には、月は消えていた。

 

 

最後の登りはそこそこ急斜面で、さすがに息が上がる。

 

鹿島槍山頂、全方位の眺望に心躍る

6:25 鹿島槍ヶ岳

そして、鹿島槍ヶ岳・南峰に登頂。

朝の風景を堪能しながらのゆっくりペースだったので、疲れはないけど、達成感はあり。

それではぐるっと眺望を楽しもう。

 

 

北側にはこれまで見えていなかった後立山の峰々。

五竜岳にはまだ陽が当たっていないが、大きくどっしりとした山容で存在感がすごい。

いつかは八峰キレットを越えて縦走してみたい。

 

 

五竜岳の背後には白馬三山。

白く輝く山が白馬鑓ヶ岳で、その後ろにわずかに見える三角のピークが白馬岳

杓子岳は白馬鑓に隠れて見えていないのかな?

白馬大池から小蓮華岳の穏やかな稜線もまた歩いてみたい。

 

 

妙高山火打山などの頸城山塊

その右側は高妻山、乙妻山など。

 

 

なかなか険しい稜線が繋がる吊尾根の向こうに鹿島槍の北峰。

体力と時間を考えて、今回は行かなかった。

 

 

種池山荘から爺ヶ岳、冷池山荘から布引山と今回歩いて来た稜線をすべて見通すことができた。

その背後に広がる北アルプス南部の峰々がものすごいパノラマ。

 

 

前穂高岳奥穂高岳槍ヶ岳穂高連峰のエースたちが勢揃い。

 

 

近場だと針ノ木岳がなかなかの存在感を出していた。

その背後にあるのは水晶岳

 

 

屏風のように立ちはだかる剱岳立山連峰

その左には薬師岳も。

 

薬師岳

立山連峰の雄山、真砂岳別山の並び。

そしてやっぱり剱岳

いやはや、全方位の素晴らしすぎる眺望だった。

最後に、今回歩いてきた稜線をバックに記念撮影。

 

 

爺ヶ岳経由で下山、扇沢までの長い道のり

6:50 下山開始

団体グループが到着して賑やかになったので、そろそろ下山とする。

といっても、冷池山荘からは爺ヶ岳に登り返さないといけないのだが…

稜線は最高なので、もう少し風景を楽しんで行こう。

下山でも何度も撮ってしまう立山剱岳

歩く自分の影が写り込んだ写真って、なんか好き。

 

少し下って振り返ると、早くもガスが通り抜けるようになっていた。

いいタイミングでの登頂だった。

 

 

進む先にもガスが絡み始めた。

まだ7時、ちょっと早すぎないか…

 

 

下山は少し花を撮りながら。

イワツメクサ

オヤマノリンドウ

ヤマハハコ

山頂から1時間と少しで冷池山荘まで戻って来て、休憩後、爺ヶ岳を目指す。

冷乗越から見上げると、かなりガスが支配的になっている。

前日に続き、爺ヶ岳とは相性良くないのかな…

 

 

それでもガスが晴れるタイミングもあり、そこそこ風景を楽しみながらの登り返し。

真っ白だった前日に比べれば、気分が全然違う。

 

 

爺ヶ岳のピークはガスで見えなかったり、晴れて見えたりを繰り返していた。

 

 

眼下に見える深い沢は棒小屋沢で、黒部峡谷の十字峡に繋がっている。

 

 

爺ヶ岳の中峰。

タイミング的にガスが来てイマイチの眺望だった。

直前まで雷鳥がいたらしいが、隠れてしまって会えなかった。

 

 

前日はピークを踏んでいない南峰に、ちゃんと登って帰ることにする。

これが今回の山行で最後の登り。

 

 

9:40 爺ヶ岳・南峰

冷池山荘から1時間半で爺ヶ岳・南峰に到着。

もっとヘトヘトになるかもと思っていたが、意外と余力を残して登ることができた。

 

 

中峰と北峰を振り返る。

爺ヶ岳も想像以上にいい山だった。

積雪期にも来てみたいな。

 

この子はイワヒバリかな?

爺ヶ岳から種池山荘へ下って行く。

ガスがなければ正面に剱岳を望むことができる区間なのだが。

 

 

完全にはクリアにならなかったが、ガスの隙間から覗く立山剱岳を見ながら。

 

 

10:25 種池山荘

種池山荘まで戻って来た。

名物のピザを食べている人が多かったが、一人ではさすがに手を出せなかった。

少し休憩して、柏原新道の下山に入る。

 

 

山荘前の斜面は、夏の初めには一面の花畑になるらしい。

白く見えるのはチングルマの花穂で、ぜひ咲いている時にも来てみたいものだ。

 

 

あとは淡々と扇沢を目指すのみ。

時折ガスが晴れて種池山荘が見え、遠ざかる稜線がなんだか惜しい。

 

 

柏原新道はやはり歩きやすく、それほど疲れずに下って行けた。

それでも、駅見岬から見た扇沢のターミナルはまだまだ遥か下で、ちょっとだけ萎える…

 

 

柏原新道は下の方が急なので、最後まで気を抜かずに。

 

 

さすがに最後は疲れたが、種池山荘から2時間半で下山完了。

駐車場まで5分足らずだけど、この舗装路歩きが地味にシンドイ締め括りだった。

 

 

あとがき

快晴だった朝の鹿島槍

西の立山連峰の空に十五夜の月が沈んで行く中、東側には朝焼け色に染まる雲海。

気持ち良く到達した山頂からのどこまでも見渡せそうな全方位の眺望が心に残る。

 

なんとなく爺ヶ岳とは相性が良くない気もするけど、これは次に取っておこう。

 

夏と秋がせめぎ合うアルプス。

今回もまた、たくさんの忘れがたい風景に出会えた山行となった。